登録日:2011/05/12 Thu 23:02:34
更新日:2025/03/05 Wed 18:14:26
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■天使の9階級
『天使の9階級』とは、5世紀頃にギリシャ人の偽ディオニュシオスが著書
「天上位階論」に記した、
天使の霊的位階を顕した図式。
神と
人を結ぶ存在である天使を、同書で説いた霊的進化段階に応じて3位階×3階級の9つの階級で分類した物である。
この分類は、その後の「カトリック教会」が教義を補完する目的でアリストテレスの哲学を元に
キリスト教の教義に合わせる形で体系付けられた
「スコラ神学」や、
詩人ダンテらが提唱した
キリスト教的宇宙観と融合し、更に強化される事になった。
これらの神秘主義は科学的合理主義の前にやがては廃れてゆく事になったが、現在でもキリスト教の霊的宇宙世界の説明体系の基本として広く用いられている。
【九つの階級】
《上級天使》
▲第一階級:熾天使(Seraphim)
●天体:第九天
「セラフ」(複:セラフィム)
神に最も近い位置にある天使で、本質は光と純粋思考であるとされる。
「熾」とは火が燃え上がる様を顕す。
光と純粋思考が本質の為に本来は実体が無いともされるが、物質世界で目撃される場合には
六枚の翼に四つの頭と二つの燃え上がる車輪を伴う。
熾天使が住まう第九天とは、恒星を越えた先にあると云う架空の天体。
義人エノクによれば熾天使は四人居て神の四方(東西南北)を囲むとされる他、七人が存在するともされるが、
これは四大天使や七人の大天使の伝説と習合した説である可能性が高い。
悪魔の王と呼ばれる『
ルシファー』はかつて
“天上で最も偉大な天使”であったとされる事から熾天使の長であったともされるが、
堕天した現在でも熾天使の支配者の地位に在るとする説すら存在する。
ミカエルら四大天使や
メタトロンを熾天使の地位に置く説もあるが、
これは起源を異にするミカエルらの伝説と天使の階級との伝説の間に多くの
矛盾を抱える為か本当に一定していない。
▲第二階級:智天使(Cherup)
●天体:恒星天
「ケルプ」(複:ケルビム)
智天使とは「神の叡智」を顕す事から名付けられた名称であり、神の知恵や知識を注ぎ込む役割を持つとされる。
ヘブライ人は四つの頭と四つの翼を持つ姿で顕し、現在もこれに倣った記述をされる事が多い。
神の戦車の引き手であるとも言われることから、人面獣身で描かれることもある。
狛犬の如き「エデンの園」の守護者としても名高い。
四大天使の一人
ウリエルは智天使の長であるとも云われる。
▲第三階級:座天使(Throne)
●天体:土星
英語「ソロネ (トロネ、スローネ、スローン)」(複:スローンズ(トロウンズ))、ラテン語「トロヌス」(複:トロニー)、ギリシャ語「トロノス」(複:トロノイ)、ヘブライ語「オファニム」、ヘブライ語「ガルガリン」
異形揃いの上級天使の中でも、預言者エゼキエルの目撃(霊視)談で有名な天使。
姿は複数の「眼」の付いた燃え上がる「車輪」である。
……こんな説明がされている所為か「神」の乗る「戦車」や「玉座」その物=メルカバーと同一視する説も存在する。
※余りにも異形である為かUFOであるという説すら存在する。
エゼキエルの目撃によれば人面、獅子、牡牛、大鷲の四つの頭と四つの翼に直線的な脚を持つと説明されており、
これは黄道十二宮の金牛宮、獅子宮、天蠍宮、宝瓶宮の霊的な合体であるともされる。
また、この目撃例に従った座天使は四つの頭に四つの翼を持つ事から、智天使と混同して記述されている場合もある。
ガルガリン(日)、オファニム(月)と呼ばれる場合もある事から、黄道、星宿、天道の意訳を顕した存在かも知れない。
《中級天使》
◆第四階級:主天使(Dominion)
●天体:
木星
英語「ドミニオン」(複:ドミニオンズ)、ラテン語「ドミナーティオ」(複:ドミナーティオーネース)、ギリシャ語「キューリオテース」(複:キューリオテーテス)
名は「支配」を意味しており、
物質世界の全てを「神」の名に於て統治する役目を持つ。
別に破壊神に化けたウルトラマンでは無い。
上級天使が、より古い時代の霊的な幻視や知識により導き出された存在であるのに対し、
これ以下の階級の天使は
キリスト教的な世界支配の解釈により都合良く考え出された存在である為か、設定がやや俗的である。
姿も冠を頂き、手に本や笏を持つ威厳ある天使の姿としか顕されない。
◆第五階級:力天使(Virtue)
●天体:火星
英語「ヴァーチャー (ヴァーチェ)」(複:ヴァーチュズ)、ギリシア語「デュナミス」(複:デュナメイス)、ラテン語「ウィルトゥース」(複:ウィルトゥーテース)
光輝く姿を持つと伝えられる天使で、肉体を持たない霊的な「力」を象徴するとされる天使。
ここで云う「力」とは星の運行や奇跡を司る「神」の「力」その物であるとされる。
一方で、キリスト昇天の際に天まで付き従った天使が力天使であるとも説明されており、キリストの受難を象徴する赤い薔薇を持つ姿で顕される。
四大天使の一人である
ラファエルは力天使の長であると云う。
◆第六階級:能天使(Power / Authority)
●天体:
太陽
英語「パワー」(複:パワーズ)、英語「オーソリティ」(複:オーソリティーズ)、ラテン語「ポテスタース」(複:ポテスターテース)、ギリシャ語「エクスシーア」(複:エクスシーアイ)
主天使が「支配」し、力天使がもたらした「神の力」による「摂理」が働く世界を維持する役目を持つ天使。
「勝利」の天使でもあり、悪魔との戦いでは最前線で戦う役目を持つとも云われる。
神が最初に創造した天使達であるともされており、悪魔との
最前線に赴くと云う性格からか悪に染まり易く、多くの「堕天使」が生まれた階級であるともされる。
ギリシア語の「エクスシーア」は、(することを許されている)権限・自由・許可、などの意味合い。
英語の「パワー」(力)だと意味が広すぎて何をあらわしているか分かりづらいが、
英語ではもっと分かりやすい「オーソリティ」(権威・権力・威信・権限・職権・権力者による許可・認可・自由裁量権などの意味)という訳語が能天使にあてられている場合もある。
日本語の聖書では能天使をあらわすと解釈される単語は主に「権威」と翻訳されている。
《下級天使》
▼第七階級:権天使(Principality)
●天体:金星
英語「プリンシパリティ」(複:プリンシパリティーズ)、ラテン語「プリンキパートゥース」(複数形も同じ)、ギリシャ語「アルケー」(複:アルカイ)
権天使は人間社会を舞台に働く下層第一位にある天使。
役目は人間社会全体の監視と文明の盛衰のコントロール。更に宗教の擁護と信仰者の守護とされる。
国家単位の守護者であり、その役目故にか正統的で厳格な価値観を持つとされる。
威厳ある天使と云う姿からか、主天使と混同された記述も存在する。
「天にあるものも地にあるものも、見えるものも見えないものも、王座も主権も、支配も権威も、万物は御子において造られたからです。」
(コロサイの信徒への手紙 1:16)
「神は、この力をキリストに働かせて、キリストを死者の中から復活させ、天において御自分の右の座に着かせ、すべての支配、権威、勢力、主権の上に置き、今の世ばかりでなく、来るべき世にも唱えられるあらゆる名の上に置かれました。」
(エフェソの信徒への手紙 1:20-21)
といった聖書内の権力を意味する言葉の列挙を天使階級と解釈した中で、「支配」がこの天使階級。
同様に「王座」は座天使、「主権」は主天使、「勢力」は力天使、「権威」は能天使である。
▼第八階級:大天使(Arch Angel)
●天体:
水星
英語「アークエンジェル」(複:アークエンジェルズ)、ラテン語「アルカンゲルス」(複:アルカンゲリー)、ギリシャ語「アルカンゲロス」(複:アルカンゲロイ)
人間を守護する役目を持つ天使の声を聞き「神」に伝える役目を持つとされる。
「堕天使」との戦いに於ても天使の軍勢を率いて戦ったとも云われる。
元々「大天使」とは偉大なるミカエルらの尊称であったが、天使の9階級では下層第二位に組み込まれた為に、
後々にまで続く混乱を呼び込む事になった。
ミカエルは勿論、他の四大天使(
ガブリエル、ラファエル、ウリエル)やメタトロン(天の宰相と呼ばれるユダヤの天使)、
古い時代には
サタンと同一視された
サマエルと云った大物天使もやはり「大天使」であるとされる。
最も有名なのが「神」の御前に立つ七人の大天使であり、
先の四大天使に加えてメタトロン、レミエル、サリエル、アナエル、ラグエル、ラジエルらが候補に挙げられている。
四大天使筆頭のミカエルは大天使の長にして熾天使の長ともされる。
また、これらの事実から、固有名詞のある大天使を熾天使として扱ったり、大天使そのものを熾天使の上位に置く分類をする作例も見られる。
▼第九階級:天使(Angel)
●天体:
月
英語「エンジェル」(複:エンジェルズ)、ラテン語「アンゲルス」(複:アンゲリー)、ギリシャ語「アンゲロス」(複:アンゲロイ)
ヘブライ語の「マラーク(使者)」を語源とするギリシャ語の「アンゲロイ」から生み出された「神」の御使い。
更に遡るとペルシャ語の「アンゲロス」を経てサンスクリット語の「
アンギラス(神霊)」まで至るともされる。
元々は聖書に於ける「御使い」全てを指す言葉であったが、天使の9階級に組み込まれた場合には「使者」「伝令」の役目を持つ「人間」の守護者として扱われる。
四大天使の一人ガブリエルは天使の長とされている。
天使が両性具有や無性であると云う伝説は、「守護する人間の反対の性別に変化していく」と云う俗説から生まれた物。
天使の総数については様々な説があるが、上記の説に従えば全人類に憑く位には居るらしい事が解る。
追記・修正は中間管理職になってからお願いします。
- 創作とかで大規模な敵組織の階級(上にいくほど強くて少数になっていく)として使えそうだな -- 名無しさん (2015-07-25 15:34:50)
- 天使階級を称号に使ってる作品なんて、同人含めれば掃いて捨てるほど有りそうだけどな。 それにしてもなんで大天使を第八階級にしたんだろうな、これ考えた奴は…… -- 名無しさん (2015-08-27 06:51:13)
- 機体の名前だけで見るとセカンドシーズンで4階級も下がったのかサーシェス -- 名無しさん (2016-06-19 07:57:22)
- キリスト教が大ヒットしたのってこうゆう細かい設定が山ほどあったからだと思うの -- 名無しさん (2016-06-19 08:18:56)
- 厨二病の極みみたいな設定だよな… -- 名無しさん (2016-06-19 10:14:17)
- ↑2より正確には受け入れて貰いたい先の信仰に逢わせてアレンジしてたのが、時代が進む内にオリジナルがあやふやになってく内にどれもこれもがキリスト教由来って話にされちゃったかららしい。だから古い宗教とか歴史の遺物とか発見されると「これをパクってたのか!」てのが明らかになったりするとか。 -- 名無しさん (2016-06-19 10:31:49)
- 天使として格が高くなるほど、現代人の想像力では、どんな姿なのか描けない方々。 -- 名無しさん (2016-11-26 19:28:36)
- 後付けに次ぐ後付けのせいで4大天使が全体から見ると下っ端になってしまったのは少年漫画の後付け設定の被害者感ある -- 名無しさん (2016-11-26 19:35:03)
- これって誰が和訳したんだろう。「熾天使」とか「セラフィム」からはどうやっても出てこないよね -- 名無しさん (2018-02-06 06:13:50)
- ノリで作ったら何か設定がガバガバになったの小説家になろうみたいで好き。さすが世界最古のラノベ -- 名無しさん (2018-02-06 06:49:25)
- ↑2 階級毎の設定からだと思う。 -- 名無しさん (2018-02-06 07:09:29)
- セラフィムっていう言葉自体も「燃え上がるもの」みたいな意味があるはず。他もだいたい言葉の意味を漢字1文字にして「天使」をつけたもの -- 名無しさん (2019-12-18 21:06:38)
- 『グッド・オーメンズ』のアジラフェルの階級は権天使だが、元はエデンの東の門を守る役目で、炎の剣を持っていたので智天使だったはず。炎の剣をアダムとイブに与えたため降格させられたのだろうか? -- 名無しさん (2020-08-19 07:52:58)
- 翻訳者が今生きてたら超有名なラノベ作家になってそう -- 名無しさん (2020-08-19 08:54:39)
- そもそもこれって「超有名人のディオニシウスさんかと思ったら別人だったでござる」な謎の存在、偽ディオニシウスさんが考えた設定じゃなかったっけ?だから設定に矛盾がありまくると何処かで読んだのだが -- 名無しさん (2020-08-19 08:59:57)
- ブレイズ&ブレイドの各職業の最強武器の名前に使われてるからそれで知ったわ -- 名無しさん (2020-10-31 01:21:31)
- ガンダム00で天使の名称について詳しく知ることが出来た思い出がある。イメージとしては鎧を纏った巨大ロボっぽい感じ。 -- 名無しさん (2021-09-02 22:39:07)
- 四つの頭と四つの翼を持つ姿...ケルビムはクインテッサ星人だったのか -- 名無しさん (2021-09-02 23:17:21)
- 原作で神の側近だったミカエルを下から2番目の階級にしちゃうというクソ二次設定のお手本みたいな設定。この頃に比べると現代は創作者も読む側も設定の匙加減こなれてきてると感じる -- 名無しさん (2022-03-17 22:17:20)
- 主天使は「主権」の「主」、力天使は「権力」の力、能天使は「権能」の「能」らしいね…言わずもがな権天使は「権力、権威、権限」なんかの「権」 被り過ぎだろ 執着が凄くて怖い -- 名無しさん (2022-08-07 03:16:59)
- ↑2 ガバ設定も数百年続けば、「第8位ながら神に直接上奏できる集団」「単なる役割の違いで実力は大天使の方が上」「純粋霊的な存在の上級天使が人界と関わるために一時的に顕現する階級」等、創作の糧になるからな。現代の考察勢にそこまでの時間求めるわけにもいかんし。 -- 名無しさん (2022-08-07 07:03:04)
- VirtueとPowerの訳逆だろう、とは一度は通る道。 -- 名無しさん (2022-08-07 07:12:10)
- ↑2「ヘタな士官なんかより軍曹のほうが発言力ある」みたいな? -- 名無しさん (2022-08-07 07:36:11)
- バランとミストバーンが(地上侵攻にあたっては)六団長としてハドラーの部下になる、みたいな……監督する権天使さんも胃が痛い。 -- 名無しさん (2022-08-08 21:17:03)
- 上位になるほど化物じみた姿になるのはなんの嫌がらせなんだ -- 名無しさん (2022-08-08 21:25:31)
- ↑悪魔と天使は表裏一体って暗示…? -- 名無しさん (2023-01-26 14:30:05)
- ↑2 他の宗教の神々も強いものほど人の姿からかけ離れていたりするし、そういうものなんだろう -- 名無しさん (2023-01-26 14:58:49)
- 神は己の姿に似せてアダムを創造ったって設定が…… -- 名無しさん (2023-04-09 17:58:33)
- ヴァーチャーとパワーそういや日英逆だったな。…なんでこうなったんだっけ。誰が決めたんや? -- 名無しさん (2023-12-07 22:51:26)
- 後付けの繰り返しで設定がガバい事になるのってこれの他にも。ソロモン72柱「なんか設定被り多いんすけど…」ギリシャ神話「ゼウスが先祖設定入れる事を何度もしたおかげでえらい事になった!」クトゥルフ神話「四大属性を後付けしました!火属性にクトゥグアという神性を後付けしました!」 二次設定でなんじゃあこりゃあな事になるのは世界中でしょっちゅうある事やな -- 名無しさん (2024-10-30 22:23:15)
- ↑あとは他宗教とのマウント合戦もお約束だな。 -- 名無しさん (2025-03-05 18:14:26)
最終更新:2025年03月05日 18:14