アルガス・サダルファス

登録日:2012/02/19 Sun 18:02:34
更新日:2025/09/03 Wed 03:44:18
所要時間:約 7 分で読めます





家畜に神はいないッ!!



アルガス・サダルファスは、日本のゲーム【FINAL FANTASY TACTICS】登場する架空の人物。
この作品の重要なテーマである『貴族と平民の格差』を強烈に体現しているキャラクター。

年齢は17歳。
ジョブは見習い戦士(専用)→ナイト。
声優:吉野裕行(イヴァリース クロニクル)


概要


チャプター1で盗賊団に殺されかけた所をラムザ一行に助けられ、行動を共にすることになる、大貴族エルムドア侯爵の部隊に所属する平隊員。
ラムザたちに救助された際には見栄を張って騎士を名乗ったが、実際にはまだ騎士の称号を授かっていない見習い。騙りもディリータに即バレた。

ラムザ一行に骸旅団に攫われたエルムドア侯爵の救助を依頼する。
仲間としてはNPCであり、ラムザやディリータとはまた異なる一部ナイトの技を使用できる特別仕様の見習い戦士。

元々は貴族の家系だったが、祖父が五十年戦争で味方を売った(という疑惑を掛けられ死亡した)ため没落してしまった一族の出身。
家の再興を望んでおり、そのためか『身分』や『貴族らしさ』というものに人一倍強いこだわりを見せる。
「ブレイブストーリー」によると、そういった執着や血気に逸る姿から騎士団内では疎まれていたらしい。


序盤こそやや血気盛んな青年だったが、骸旅団との戦いの中で彼の内面が徐々に露見していく。

正義感からとはいえ、捕虜にした骸旅団員にエルムドア侯爵の居場所を吐かそうとする際のあまりに行き過ぎた(ラムザが止めなければ殺しかねない勢いだった)暴力行為。
そして平民出身の者を人間扱いしない暴言の数々。
特に骸旅団のリーダー・ウィーグラフの妹ミルウーダと戦った際に放った上記のセリフはあまりにも有名。

ちなみにこのセリフは貴族の圧政により平民が置かれている貧困生活を『神の意志だ』などと抜かしたアルガスに対し、ミルウーダが『神は全ての人民を救済する存在だ』という至極真っ当な反論をした際に浴びせた暴言である。

貴族思想にどっぷり浸かったあまりに差別的なこの発言にミルウーダも返す言葉がなく、カーソルには

「!」


と表示されたのみ。
文字通り絶句である。

ラムザやディリータも流石にドン引きし、敵であるミルウーダに同情する始末。


極めつけは平民出身のディリータの妹・ティータが攫われた際にディリータの目の前で嫌みったらしく「平民出身の娘など助ける価値もない」と言ってしまう。
当然これはディリータを激怒させ、彼に殴られ、温厚なラムザにすら「失せろ!二度と自分の前に現れるな!」と言われて2人と袂を分かつことになる。



そして、舞台はチャプター1の最終地点・ジークデン砦へ

骸旅団に捕らえられたティータをゴラグロス*1が盾にした際、アルガスは何故かラムザの次兄にして北天騎士団団長ザルバッグの配下として現れる。
そのザルバッグの命令を受けたアルガスは


ゴラグロスを始末するためティータを射殺した。

それも

ディリータの目の前で。


これにより、彼はラムザと怒り狂ったディリータに殺害されることになる。

最期の言葉「く…くそッ……おまえたち……な、軟弱どもに………やられ……」
彼は最期まで反省することなく、その生涯を閉じた。


──とまぁ現代の日本人視点だとひたすら嫌なやつ、というかただのゲスであるものの、舞台背景を考えると「民衆を守るべき騎士」としては失格でも、一般的な貴族に近いのはラムザよりも彼の方である点は見逃せない。
悲しいがどこの国にもこういう「昔の貴族」が複数いたのが現実である。

また、アルガスは骸旅団に仲間が全滅させられたという事も忘れてはならない。
そもそも困窮に追い詰められた事も原因とはいえ、骸旅団は思想的テロリストである。
にもかかわらずその骸旅団の幹部を庇うわ、その思想に寄り添おうとするわ、挙げ句に「彼女は本当に僕らの敵なのか……?」とか言い出すラムザやディリータの方にも、実は大いに問題がある。
プレイヤーは主役であるラムザに感情移入してしまうが、実の所チャプター1のラムザはいわゆる現実の見えていない甘ちゃんでしかない。

当然アルガスはコンプレックスの塊かつ悲観的な考えを持っているため、言動は過激であり、差別と偏見に満ちた誤った言葉も多い。
だが、少なくとも彼がラムザに告げた「武家の棟梁としての名門貴族ベオルブ家の責任を果たせ」と言う言葉は(どのように果たすかは別として)間違いなく正しいのだ。
他にも「(困ってる人間に対して手当たり次第に手を差し出すのは立派だが)『次からは』見捨てることも考えろ。友好的な人間ばかりとは限らない」と助言?らしき事も発言している。*2

ティータ殺害の件に関してもザルバッグが明確に悪い。更にアルガスは貴族にこだわる心情&そもそも彼の微妙な立場から逆らえない事情があったというのは明白であり、仮に人質が誰だろうとザルバッグは撃つように命令しただろうという事をしっかりラムザに説いていれば、ディリータは無理でも少なくともラムザとの戦いは避けられた可能性はあった。

直後の発言に関しても暴言ではあるが「ディリータとティータはここにいてはいけなかった」という趣旨の話もしており、二人のことを思いやる気持ちがあるようにも聞こえる。

ここでのアルガスの発言を要約すると「平民なら平民らしく暮らしているべきだった、貴族の近くにいること自体が間違い」といったもので、その趣旨は結局彼の思想である「身分をわきまえろ」という悲観的な一言に集約される。
そのため嫌味な言動だと言われることもあるのだが、それ自体はアルガスが作中の展開を通して行き着いた答えであり、アルガス本人も身分には逆らうことができないのを自覚しての台詞であるとは思われる。
また、実際そういった差別が当たり前の世界観なのでアルガスの考えを否定することはできない。

ただ、アルガスはその後激昂するディリータを挑発して決闘を了承、更に貴族らしい振る舞いをしないラムザに逆上し、挙げ句の果てには骸旅団そっちのけで部下*3まで使って私闘に走るまでしてしまっている。

この私闘の原因はアルガスがディリータに対して本来ならばする必要がない挑発をしたばかりか、自ら彼との決闘を望んだ節もあったので、つまりアルガスが死んだのだけは完全に100%彼の自業自得と言われている。
後述のように自らと境遇を重ねている節もあるティータを(ザルバッグの命令とはいえ)殺害したことで狂いかけていたという可能性は充分にあり得るのだが、だとしても彼がこんな奇行に走る必要はなく、悪手を重ね過ぎたと言えるだろう。

なおアルガスは、このように作中の行動を振り返ると自らの保身を考えているようで全く考えていない。
それどころか本人にさほど非がなかったとしてもほぼ弁解しないなど、彼自身に何もメリットがない行動も取っている。

....そういった彼の一面は、ある意味では一貫していて潔く見えなくもないかもしれない。
問題は、それが周囲に迷惑をかける原因にもなっていることなのだが。


ちなみにディリータ兄妹やミルウーダにあれだけ身分の差云々を言ってた割には、実は当のアルガス本人があまり身分の差を弁えてない一面がある。
彼はラムザ一行に救助された直後、ラムザの長兄ダイスダーグに「仲間の仇討ちのために兵士100人を与えてほしい」と直訴している。
仲間の仇と言うと聞こえは良いが、侯爵拉致事件が起きたのはベオルブ家の主君・ラーグ公の領地ガリオンヌであり、またダイスダーグはラーグ公の軍事面における名代であるため彼の下にいる兵士たちもまたラーグ公の配下である。
一方のアルガスは被害者であるエルムドア侯爵の部下とはいえガリオンヌにおいては単なる余所者の一兵卒。
そんな奴が「自分の主君より身分が上の大貴族の領内で」「その大貴族の兵士を借りて」「何の権限もないけど軍事行動させろ」と言ったのである
当然この発言にはダイスダーグも「身分をわきまえぬか、アルガス殿!」と叱責している。

なお、その後ティータが攫われた際には「平民だからどうせ俺みたいに兵なんて動いてくれないぜ(意訳)」と拗ねている。

つまり平民相手には身分の差を持ち出して高圧的に出るくせに、自分は上位の貴族相手に身分を弁えない要求をするとんだダブスタ野郎なのがアルガスでもある。
彼は大人ぶってはいるものの、実際は精神的に未熟な子供でしかないというのが透けて見える部分が多い。
これでラムザ相手に貴族の責任がどうのとよく言えたもんである。

ただし、上記のティータ誘拐に関しての発言を考察するに、「(自分みたいな感じで)平民はダメだな」という自虐的なニュアンスが含まれているらしき部分も結構ある。
まぁ、だとしてもそんな歪んだ思想を押し付けられ、勝手に同じ存在に見られた平民はたまったもんではないが。

結局この後はラムザの独断でアルガスも一緒に侯爵救出に向かうのだが、それを唆したのはザルバッグだったりする。何やってんだよ団長。


結局、ラムザは貴族の都合に翻弄され、ティータを助ける事が出来なかった。
ディリータは持たざるものである事実に絶望し、現貴族制への憎悪から血塗られた覇道を決意する。
そしてその射殺を命じたのが兄ザルバッグだったという事実と合わせて、ラムザにベオルブ家から逃げ出すという選択を取る。*4
後にガフガリオンの元で傭兵として経験を積み、甘ちゃんから一廉の英雄として成長していく……が、同時にその活躍は、歴史の裏に埋もれていくのである。

嫌われキャラであることは間違いないが、FFTの世界観を表す重要なキャラであり、物語を大きく動かしたキャラの一人であることもまた事実である。*5







移植版『獅子戦争』では


PS版ではこれでおしまいだが、PSP版ではエルムドア侯爵との戦闘前にゾンビ化してラムザと戦う事に。
何気に生前の主君に再び仕えることになった。まぁこの時のエルムドアはルカヴィが彼の死体を動かしているだけの実質別人だが。

ちなみにこのときの彼の肩書きはただの

アルガス*6

ついでにいかにデスナイトになって暗黒剣が使えるようになったからって、今更ラムザに敵うわけもなく、フルボッコされる運命にある。
しかも、何故か装備品以外でのステータス異常への耐性がない。
蛙にするなり鶏にするなり好きにいじめてあげよう。
……設定ミスだと思うが、何分アルガスなので、制作側もわかってて放置していたと受け取ってもいい気がしなくもない。

倒すと母親に助けを求めながら死ぬ。
この時点のラムザはシスコンである為、アルマしか眼中になく、今更アルガス等どうでもよく、ラムザからは特にそれについて反応してもらえない、見事に惨めな最期を遂げた
ただしプレイヤーには「あのアルガスが最期に縋った相手が母親である(あるいは、縋れる相手が母親しかいなかった)」点は色々と考えさせられるものがあったようで、彼がどのような家庭環境で育ったのか考察の対象になることも。


さらに共同戦線では10体のアルガスを討伐するミッションまで。
最強の暗黒剣「ヴァルハラ」はこのミッションでしか手に入らないため、大量のアルガスたちが虐殺されることとなった。
スタッフ狙ってやってるだろ……

もはやただの戦闘員黒いアイツモブキャラである。
アルガスの明日はどっちだ!?



おまえでなければできない追記・修正がたくさんあるんだ!
それができないヤツの代わりに果たさねばならない!

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最終更新:2025年09月03日 03:44

*1 骸旅団の副団長。前任のギュスタヴがウィーグラフに粛清された後、副団長に就いた。

*2 なお序盤のイグロース平原でアルガス本人を救助しないと出ない発言。自身こそが反面であると言う皮肉的な発言でもある訳だが

*3 なおこの時のアルガスと一緒にいるのは北天騎士団の団員である。つまりアルガス本人ではなく、飽くまでザルバッグの部下である。

*4 ザルバッグの立場からすればテロリストの要求を呑むわけにはいかない為仕方ない。仮に飲んだ場合骸旅団の助長に留まらず模倣犯の増長など治安悪化に歯止めがかからない為。

*5 たまに勘違いする人がいるが、この評価は矛盾しない点である事は留意されたし。簡単に言えば、『アルガスは嫌いだが、一部の発言には一理ある』『発言や身振りは酷いが、背景や立場を考えたらやむを得ない面もないとは言えない』とか。

*6 初登場時は【剣士アルガス】だった