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貴族

登録日:2018/05/22 Tue 12:41:39
更新日:2026/08/19 Wed 18:28:09
所要時間約 20 分で読めるとは、いい度胸してるな貴様らァッ!!






苦労も知らねえ貴族のガキがッ!
今度こそおとなしく死にやがれ!

俺もつい最近知ったんだがな。



貴族(aristocrat)とは、封建社会における特権階級で、一般大衆とは比べ物にならない大きな権力を持ち、その権力は主に世襲により受け継がれる。
また、後述するフィクション世界(特に小説家になろう発祥の異世界が舞台の作品)に登場する架空のナーロッパのトンデモ貴族についても本項目で解説していく。


貴族の必要性

原始農耕社会は基本的に共産的である。
コミュニティ内の全ての住民が直接食料生産に携わり、自分の食べるものは自分で手に入れる、というシンプルな構造の社会において貴族は必要ない。

しかし、コミュニティの大型化と分業制が進むにつれ、コミュニティ同士が利権をめぐって争うことも増えてくる。
そうなると、他コミュニティとの交渉・調停をする、あるいは戦争に臨むために、コミュニティの統率を行う強力な権力者が求められるようになる。

だが、直接的には食料生産には一切貢献しないその権力者すなわち「政治家」は、短期的な視点で見ると「浪費者」でしかない。
昔の社会で「働かず食える人間」を養う余裕というのは僅かしかない。
よって、一人またはごく数人の「働かずに政治だけやっていればいい人間」を何とかして決める必要がある。

だが、その決め方が問題だ。
今の社会と違い、民衆への教育も不十分な原始社会では選挙などするのは難しいし、やっても衆愚政治になるだけである。

かといって、いちいち競い合わせていたら社会そのものが疲弊してしまうし、
「誰でも勝てば政治家になれる」としてしまうのは権力争いを加速させるばかりで、コミュニティ崩壊の原因になる。

だからこそ「貴族という特権階級を最初から決めてしまい、権力はこの血族の中でだけ回していく」という社会構造が世界各地で自然と出来上がっていったというわけである。

社会が発展していくと宗教家や大地主、大商人(資本家)、高位の軍人(将軍や提督など)と言った勢力も貴族に匹敵するかそれ以上の影響力を持つようになり、貴族側もそれらと折り合いすることを求められるようになる。
その一方、新興勢力を貴族として取り込む(或いは同格の権威として認める)地域も現れ、近代以降は社会的エリートへの恩恵として機能することになった。

貴族制というと、民主主義に比べて劣っているように見られがち。
だが、実際にはこのように「資源の不足」「教育の未熟」が合わさって自然発生したものであるため、
詳しくは後述するが、そのような問題が解決していないのに貴族制を無理に廃止しようとすることはかえって混乱の種になる。
現在の社会にどちらが適しているか?」というだけの問題なのだ。

貴族の特権と責任

貴族は、一般人から納められた税金を使って生活することが認められている。
ただし、基本的にその建前は世界中どこであっても「戦争準備金」である。
つまり、貴族は民衆から金を集めてそれで軍備を整え、いざという時に戦争に乗り出すことが義務として課せられているのである。
これを「ノブレス・オブリージュ」と言う。
「普段楽をしているのも、戦争の時に最前線に立つため」というわけである。
実際に古代ローマでは、出陣していたファビウス氏族がたった1人の幼い男子を残して一族郎党全員が戦死するという事態も起こっており、「ノーブレスオブリージュ」の典型ともされている*1
日本でも華族には軍務に就くよう奨励されていた他、学習院も元々は華族の跡取りを対象に、この精神を養わせるために創設された物である。

「戦争になる前に敵対する可能性のある他の勢力の下に説得に赴く」「戦争中の相手に和平交渉を担う」「人質として同盟相手の下に逗留する」という外交的な仕事も貴族の責任である。
女でも、政略結婚先となった他のコミュニティーが母国の敵に回らない様に気を配ると同時に、母国が嫁ぎ先の我慢の一線を越えない様に警告しなければならないので、無能な人間には任せられない。いざとなったら、開戦寸前の息子の軍勢の間に自ら割って入ってでも、同盟や平和条約の破綻を防がねばならないのだ。
また、春秋時代の楚の荘王の王妃は令尹(宰相)を批判した際に「自分は夫の(主に政治的な)利益に繋がると思えば自分以上の美人を含めた女性を何人も紹介したのに令尹は一人もこれぞという人物を王に推挙していない」と苦言を呈している。
王妃の立場としては夫を独占したいだろうし、自身の息子を王太子に立てたいと思うのは当然だが、国の為に有益と思えば私情や私利を殺し、有能だったり人脈を持っている人物を推挙したりする自制心と、自身が推挙した相手が暴走しない様にいざとなったら抑止できる政治力が必要とされるのだ。

またそれだけでなく地域のために民衆を集めて労働させたり、地域内の揉め事を裁定したりということも貴族の特権・義務として存在している。

世界の貴族

ヨーロッパ

基本的には以下の通り、「公爵・侯爵・伯爵・子爵・男爵」の5段階が多いだろう。
フィクションでも頻繁に登場するタイプの貴族なので、爵位同士の上下関係は覚えておくといいかもしれない。
爵位 英名 概要 解説
公爵 Duke 最上位の貴族 王族に次ぐ存在で、地方どころではない広大な領地(公国)を持つ。貴族の中でも別格中の別格で、実質王族関係者専用。
侯爵 Marquis 王族以外では実質最上位、国境を守る軍事貴族 なろう系でも頻出の「辺境伯(Margrave、マーグレイブ)」はここ。国境を守る存在なだけに力も権限も伯爵を上回るが、時代が進んで平和になるとポンパドゥール侯爵夫人のようにただの名誉爵位として使われるようにもなる。
伯爵 Count 地方の支配者・標準的な大貴族 一地方(伯領)を治める権限を有する。ヨーロッパ貴族の基本形でありフィクションでも馴染み深い爵位。イギリスのみ「Earl(アール)」と呼ぶ。
子爵 Viscount 伯爵の補佐・準中枢貴族 伯領内の街や城の管理などを行う地方官僚的存在。
男爵 Baron 最下位の貴族 一城・一村程度の領地で、王や上位貴族への直接奉仕が義務。

よく「騎士は貴族の下」と解釈されがちだが、少なくとも制度上は誤りである。
そもそも法的身分である貴族と、職能である騎士とは上下関係にあるものではない。伯爵以上の大貴族が騎士として叙任していることはよくあるし、リチャード獅子心王のように騎士である王も存在する。
もっとも大貴族から下命を受けて活動する子爵以下の下級貴族のほとんどは騎士でもあったし、爵位が無い=土地が無い騎士の生活水準は男爵以下であることが多かったから、「騎士は貴族の下」と解釈するのも自然な話ではある。

ヨーロッパの爵位の特徴として、基本的に「個人」ではなく「土地」に冠せられることが挙げられる。そのため、以下のような性質を有する。

・爵名と家名は別物

銀河英雄伝説カリオストロ伯爵のイメージのせいで勘違いされがちだが、本来は「〇〇伯爵領」という土地を保持している人が「〇〇伯爵」という「爵名」という肩書きで呼ばれるのであり、家名とは別物である。「『〇〇伯爵領』を代々継いだから我が家も『〇〇家』に改名しよう」というケースもなくはないが、基本的にこの爵名は家名と一致するものではない。そして土地と同じく爵名は相続もするので、同じ「〇〇伯爵」だからと言って同一人物とは限らない。
たとえば「サンドイッチ」の語源とも言われる「サンドイッチ伯爵」。彼は4代目のサンドイッチ伯爵にあたり、本名はモンタギュー家のジョン、「ジョン・モンタギュー」である。フルネームにすると

「第4代サンドイッチ伯爵ジョン・モンタギュー(John Montagu,4th Earl of Sandwich)」

となる。

・一つの家が複数の爵位を保持できる

前述のとおり爵位は土地に冠せられるものなので、相続等によって一つの家が複数の爵位を持つことは普通にある。というかそれが普通。そして出世して上の爵位を授爵されても、元の爵位は消えずに残る。
たとえば上記の「(第4代)サンドイッチ伯爵」はサンドイッチ伯の他に子爵と男爵も保有している。名乗る際は最上位の爵名(この場合は「サンドイッチ伯爵」)のみ名乗る。
余った爵位は「従属爵位」といって勲章代わりにしたり、一族に分け与えて分家を作ったりできる。とりわけ上から2番目の爵位は儀礼称号として推定相続人≒長男に分け与えるのがならわし。
爵位の数は所有する土地の数であり、ひいては勢力の強さにもつながる。なので「有力・広大な土地の爵位を複数有することで国の北半分を支配し、王家すら凌ぐ勢力を誇る伯爵家」「大量の爵位を有し半ば独立国家じみた公爵家」などというのも普通に存在した。そして大抵は警戒されて滅ぼされた

日本と異なり、イギリスなどでは現在でも貴族という立場そのものは健在である。
イギリスでは授与された本人のみに適用される一代貴族と言う制度もあり近年はこれで貴族になるのが主流。
現在では貴族としての特権はほぼ無いものの、先祖伝来の土地や文化財により裕福な暮らしをしている人もいる。
一方で、そのようなものは手放してしまい名前だけは貴族のものを受け継いでいても、暮らし向きはごく平凡、という人もまた多いようだが。

中国

一般に「貴族」とは呼ばれないが、周王朝以前は広大な中華大陸を治めるのに「封建制」を施行し、革命期に活躍した武将たちを封建領主に据えていた。
彼らは与えられた領土を運営し、いざ戦役となると兵士や戦車部隊などを束ねて中央に馳せ参じる義務を負っているなど、一般にイメージされるヨーロッパ的な「貴族」そのものの特徴を持つ
孟献伯という大臣(伯爵)が、庶民の貧困を気にして、馬車は小振りで従者も少なく、と質素倹約をしていたところ、「それは公務の放棄で、いざ戦いとなった時にその馬車に乗って従卒を率い、戦闘に出ることを無視している。名声を求めて本義を忘れた姑息な男だ」と批判された話もある。

欧州貴族階級の訳語として広く使われる「公爵・侯爵・伯爵・子爵・男爵」という五段階の称号も、もともとは周朝の封建領主の称号である*2

しかし、この貴族制を内包した封建制は、春秋戦国時代を経て官僚を派遣して土地を治める郡県制に取って代わられていき、秦の始皇帝漢の高祖によって完全に消滅した。

三国時代に大いに勢力を誇った地方豪族が、魏国の「九品官人法(九品中正法とも)」を足掛かりとして中央政府に進出した。そうした地方豪族を「貴族」と呼ぶこともある。
ただし、当時・当人たちは「士大夫」と称していたし、中国では「士族」と呼ぶ*3ので、ほぼ日本限定のローカル呼称であることは注意
また「士大夫」という呼び方は紀元前の周代から二十世紀の清代、比喩まで含めると現代までとにかく幅広く使われる用語*4なので、うかつに使わないほうが無難。

さてこっちの「貴族」だが、前身の豪族のころから、彼らは中央政府の意向に面従腹背を繰り返してきた。
それがさらに中央政府への足場を作り、それらを世襲させたことで、魏晋南北朝時代にあってはそれはそれはすさまじい派閥闘争と君権の無力化を生じさせた。
後漢全盛期の人口が6000万だったのに、魏呉蜀「三国」の人口がたった800万ほどしか「登録」されなかった、つまり「国家が徴税・徴兵などの実効支配を及ぼすことができたのは、全人口の15%程度だった」といえば、少しはわかるだろうか。
それもあって君主や国家の権力は大変脆弱で、ある皇帝などは「生まれ変わりがあるなら、二度と皇帝には生まれたくない!!」と叫んだとされるほど。

国家よりも強いこうした貴族の存在はもちろん国家の悩みの種だった。
しかし、隋の文帝が作り上げた科挙制度は、貴族層が掌握していた「人事権」を皇帝が握る布石となった。
さらに唐の太宗が制定した貞観氏族志によって「貴族」の素性を暴いて権威を落とし、逆に科挙官僚の社会的地位を引き上げたことで、貴族の影響力は衰退。
中華史上唯一の女帝・武則天が人材発掘にいそしみ科挙官僚を手足として抜擢し、玄宗がその遺産を引き継いだことで、貴族層は無力化した。
最期は唐滅亡期の戦乱の中にとどめを刺されたという。

日本

ヤマト王権(後の朝廷)が成立していく過程で有力豪族に国政機能の一部を分掌するようになり、それらを元に貴族階級が成立していったと考えられている。
この代表例としては「源平藤橘」の四家が有名。この中では藤原氏が最も力を付けた貴族として知られるだろう。
藤原氏は「南北式京」四家に分かれることになるが、その中でも北家が最も繁栄し他の藤原氏から頭一つ抜けて君臨した。

平安時代後半以降は貴族の家格固定化が進み朝廷で公卿(高官)に就ける家が限定されるようになった。
そのため公卿になれる家を堂上家、なれない家を地下家と呼ぶ様になった。基本的に「公家」と呼ばれるのは堂上家のことを指す。
公家の中でも順位はあり、上から摂家、清華家、大臣家、羽林家、名家、半家の順に分かれており、それぞれ就ける役職に差があった。
上位の摂家(摂政・関白になれる)と清華家(大政大臣になれる)は皇后候補を輩出できる家であり皇族との結びつきが特に強かった。摂家に関しては後継者がいない場合、親戚筋の皇族から養子を貰うこともあった(皇別摂家)。

藤原氏はここでも圧倒的であり公家の約七割(97%が北家、3%は南家)を占めていた。
あまりにも同族が増えた結果、藤原氏に限らず鎌倉時代以降の公家は地名や屋敷名を苗字として使い、他の同族と区別する風習が生まれた。
摂家は北家(正確には藤原道長の子孫たる摂関家)から分かれた家で構成された。最初は「近衛・九条」の二家のみだったが、後に近衛家からは鷹司家、九条家からは二条家・一条家の分家が誕生した。
この五家が現在まで続く「五摂家」で第二次世界大戦期まで度々国の要職を担ってきた。
戦後もこの一族から神職や赤十字などの要職、内閣総理大臣に就いていることなどからしてその影響力は衰えていないと言える。
清華家についても久我家(村上源氏)と広幡家(正親町源氏)以外の「三条・西園寺・徳大寺・花山院・大炊御門・今出川・醍醐」の七家は北家系。これらの家も歴史に幾度となく顔を覗かせている。

ここまでなら諸外国のものとあまり変わりはないのだが、その後大きな変化がある。
なんと公家の多くが「武力」を完全に手放し、実際の政治と直接関わることから離れてしまったのだ。

そのため軍事的役割は自警団などに端を発する地方武装勢力と清和源氏・桓武平氏・秀郷流藤原氏などの下級貴族(軍事貴族)が結びついて武士団が担うようになった。
流石に公家のトップである摂関家だけは強力な私兵集団を擁していたが、其れも保元の乱で自壊し、武士から新たに清華家として台頭した平家と河内源氏も短期間で滅亡し、承久の乱で天皇家の親衛隊も大打撃を受けたので、朝廷の武力は武士の組合である幕府にとても及ばないものになってしまった。
「武力の外注」という他の国の貴族にはまず見られない現象である。前述のような貴族の成り立ちを考えるとある意味当然だが。
武士に権力を奪われた後は公家は「建武の新政」などの一時期を除きほとんど完全なお飾りと化していた。
日本人の感覚からするとピンとこないかもしれないが、「軍部が700年間実権を握っていたのに一度も易姓革命が起こらなかった」は普通の国ならまずあり得ない事態である
こうして台頭した武士の上位層は「武家貴族」として公家とは別の貴族集団として見做されるようになった。

明治維新後、公家・武家の貴族制度を統一するために新たに華族という形で再編される。
華族は欧州貴族と同様に公爵・侯爵・伯爵・子爵・男爵の五爵制が採用され、以前からの家格に応じた物が与えられた。

+ 華族の区分
爵位 対象
公爵 摂家、徳川宗家など
侯爵 臣籍降下した元皇族、清華家、徳川御三家、15万石以上の大名家、琉球王家など
伯爵 臣籍降下した元皇族、大納言経験者が多い大臣家・羽林家・名家、徳川御三卿、5万石以上の大名家、東西本願寺法主家など
子爵 大納言経験者が少ない大臣家・羽林家・名家、半家、1万石から5万石未満の大名家、足利家など
男爵 上位華族の分家かつ華族に相応しい財産を持つ家、実績ある地下家、有力大名家の家老家、有力寺社の社家・僧家など
また維新の功績が大きい者については
  • 元から公家・大名家だった者は基準より上の爵位(下位の羽林家出身で本来は子爵相当の岩倉具視公爵など)
  • それ以外の身分の者は功績に応じた爵位(下級武士出身で本来は対象外の伊藤博文侯爵など)
が与えられている。

20世紀に入ると新規の授爵は士族・平民向けが主になる。主に戦争で活躍した高級軍人や国務大臣経験者が多かったが、政府関係者に留まらず大企業(財閥)経営者や顕著ある実績を上げた学者などにも授爵された。

その一方、板垣退助のように「貴族は功績を認められた本人に対する一代貴族制に限るべきでは?」と言う意見も当初から存在し、華族制度に対する風当たりは近代化の進展もあり高まっていった。
そうした空気感に配慮してか大正時代以降になると、政府も家柄や先祖の功績を理由にした新規の授爵は原則拒否するようになる。
臣籍降下した旧皇族向けを除き、新規の対象は上記の様な本人の実績に基づく者に限定され、授爵される爵位も男爵にほぼ限定されるようになった。
政府内でも華族縮小案が議論されるようになり、皇族と結びつきの強い公家系華族*5以外は授爵本人から数世代経った場合、平民になる仕組みが考案されたりもした。

最終的に日本国憲法の公布と共に華族制度もまた終わりを告げ、かつてのような特権階級ではなくなった*6
しかし現在でも華族の末裔(旧華族)は所謂「名家」扱いされ、経済的に恵まれている一族や社会的地位の高い職業に就いている人物は依然として多い*7
旧華族一覧が21世紀になっても作成されたり、旧華族の集いが定期的に開催されたりしているなど、その影響が完全に消えた訳ではないようだ。

それとは別に、位階制度での分け方もある。
従五位下の位階を受けた人間は通貴と呼ばれ、本人一代に限り下級貴族として扱われ従三位以上、もしくは四位参議公卿、貴と呼ばれる上級貴族として扱われた。
逆に言うと、日本で言う貴族は家長、もしくは嫡出長男がほぼ自動的に通貴の位に昇れる家柄を指す。
この視点で言うと、鎌倉時代の北条得宗家と赤橋家、足利家も貴族と言えるし、江戸時代の大名は大半が五位の位を与えられていたので、こちらも貴族に該当するし、大名としては極小クラスの越前葛野松平家*8や1万石に満たない高家吉良家は従四位下や上の近衛権少将なので下手な大名よりも貴族としての家格は高い。
明治維新後も位階制度は残っており、中佐以上に昇格した軍人*9や次官経験がある官僚、代議士が従五位や正五位の位を授けられ、華族家の跡取りと同等の一代貴族として扱われた。
従三位となると、国務大臣経験者や大将クラスの軍人が該当し、男爵家当主より格上の席次が与えられた。

現代の位階制度は第二次大戦終結以降は故人に死亡日に遡って授与される、叙位の境界が従四位(これ以上だと天皇勅受で大型の位記になる)に変更され、生者が一代貴族を名乗れない制度に改変された。

朝鮮半島

朝鮮王朝時代に存在していた官僚「両班(ヤンバン)」が、良民(両班、中人、常民)と賤民(奴婢、白丁)に分けられる身分階級の最上位に位置する貴族階級(中華帝国における士大夫)に相当した。この両班は官僚を輩出する一族そのものを指す名称でもある。

この両班は自然発生的に形成されてきた他国の貴族とは少々成立の経緯が異なる。
基本的に朝鮮王朝は自らを偉大な中華帝国文化圏の一員と位置付ける「小中華思想」に基づいて成り立ってきたため、高麗建国の際統治機構として唐や宋の制度を参考に武官、文官の二系統の官僚組織を立ち上げた。
本来はこの武官(武班)と文官(文班)の二つを合わせた官僚組織そのものの呼び名こそが両班だったのである。

無論宗主国に倣い朝鮮も西暦958年に科挙制度を導入するのだが、五品以上の上級文臣の子は自動的に官吏になれるというルールがあったため、それら上級文臣が世襲によって権力を独占し門閥を形成し始める。
高麗はこれら王族と貴族化した門閥文臣によって支配されていた。この体制は1170年に起きた武官側の軍事クーデターによる政権乗っ取りと続く元軍の侵略で一旦崩壊するが、このとき雌伏していた文官の生き残りたちは「新興儒臣」という集団を形成。元崩壊後の李氏朝鮮王朝成立に伴う政界再編に乗じてさらに版図を広げ、これが後に貴族階級としての両班のルーツとなる。
李氏朝鮮王朝では軍事政権時代に権力を握っていた郷里出身の文臣を官僚から追放、科挙の受験資格を大幅に制限したことで科挙は事実上受験費用を賄える門閥貴族のボンボンの専売特許と化し、次第に両班という言葉はこれら門閥貴族階級のことを指す言葉となっていった。
つまり両班とは地方豪族が中央に進出して政治権力を握ったものではなく、最初から政治屋として産み出された官僚が権力の集中と門閥化により貴族へと成長したものだといえる。

この両班だが、厄介なことに重税を湯水の如く使い潰す上に自身は特権により他国の貴族なら負うであろう貴 族 の 責 務(ノブレスオブリージュ)を免れた挙げ句、人民に対する横暴も許されるというあんまりにもあんまりなテンプレ腐敗官僚そのものなのだ。*10
そもそも儒教の影響で肉体労働とは下賎な下等民のやるものという傲慢な思想に染まりきっていたので、真面目に働いて稼ごうという意識がなく、自国民にまで「盗賊」「転んでも自分で起きない」「箸と本より重い物は持たない」などと唾棄されるほど腐敗を極めた。
おまけに両班の特権を金で売り買いする不届き者が横行したため、李氏朝鮮王朝末期には金で特権を買った「自称両班」が大増殖。血みどろの権力闘争を繰り広げる世紀末状態に……!
その惨状を、マリ・ニコル・アントン・ダヴリュイは自身の著書『朝鮮事情』において「世界一傲慢な貴族」とまで評した。

当然、当時は立憲君主国として発展していた日本に此等の特権が認められるはずもなく
  • 教育を受ける権利と子女に教育を受けさせる義務*11
  • 職業選択・居住の自由
  • 私有財産の保障
  • 法律の根拠無しに逮捕・監禁されない身体の自由
  • 納税の義務
  • 止むを得ず国民の権利を制限せざるを得ない場合は国民の代表である国会の賛同を経た法律の手続きを順守しなければならない
と併合後は両班の特権を悉く潰す政策が施行された

韓国は儒教文化により「家柄」「血筋」のブランドを過剰に崇拝する権威主義の強い影響を受けており、朝鮮王朝が滅亡した現代でも、血筋を鼻にかけて高級官僚や財閥トップの座にいる一族が未だに影響力を持ち続けている。
因みに朝鮮民主主義人民共和国は労働者の国を標榜している(共産主義)ため、ブルジョワ階級である両班の血統はむしろ忌避される傾向にある。

ローマ

ローマの建国王ロムルスによって百人の有力者が集められたのが始まり。
彼らはラテン語で「父」を意味する「パーテル」*12と呼ばれ、元老院を構成した。
当初はあくまでも王に対する助言機関だったが、七代目の王タルクィニウスの時代にやりたい放題やった王を追放。以後は国家ローマの意思決定機関となる。
だがローマが地中海世界の覇権を握る頃になると、統治能力の衰えからスッラやカエサル等の独裁を許し、初代皇帝アウグストゥスによってローマが帝政に移行した後は、皇帝に対する助言機関に戻る。

アメリカ

国の成り立ち、政治の構造上・制度の上での貴族は存在しない。
しかし歴代の国の重鎮には、ヨーロッパから渡ってきた王侯貴族の血を受け継いだものが多いのもまた事実である。
またブッシュ家やクリントン家、ケネディ家といった大統領・有力政治家を多く輩出してきた家系が「貴族階級」と揶揄されることもある。

フィクションにおける貴族キャラ



宮廷内なんて閉鎖的な空間であり割と黒い部分はどこの部署でもあるもの
大体の問題は黙認するのがほとんどだ…新人に対して強い言葉で教育することも多い

だが…あの鍛冶課はオレの想像以上に闇があるのかもしれない
あの鍛冶課…そしてモルガン…まだ何か隠していることがありそうだな


ファンタジー世界観の場合大抵一度は出てくる。
概ね、「体制よりの保守派」の悪役として出てくることが多い。

味方サイドであっても、無能だったりギャグキャラだったりとあんまりいい扱いはされない場合が多い。
これは、味方サイドの有力貴族が有能であった場合、本編における*13多くの問題を鶴の一声で解決できうる存在になってしまいかねず、そうなると(大体平民だったり旅人だったりな)主人公の出る幕が無いから……と言うのが原因だろう。
上述したまっとうな貴族だった場合は、主人公サイドからは疎まれつつもやるべきことはきっちりやっている有能ぶりを発揮していたり、主人公とは敵対しつつも一定の敬意を持たれていることもある。
もちろん主人公サイドとも敵対せず、有能・友好的な場合もある。

他方で、貴族ではあっても、完全なトップという立場ではない場合も多い。
「多くの貴族の中の一人にすぎない」「上に王様がいる」「一応最高権力者だが、天災や隣国との関係に苦慮している」と言ったような「実力はあっても立場には一定の制限のある貴族」が味方としては多い。
「魔王討伐を勇者に依頼する王様」などは典型例と言える。
これも、「貴族が動けば全て解決」という事態を避けるためだろう。

その一方で主人公として活躍するパターンも当然ある。
その場合は選民思想の薄い公平な視点を持った異色の貴族として登場することが多い。
主人公格の貴族だと召使や平民など下々に対する態度が柔らかく、そこから恋愛感情が生じて……、というパターンは昔から少女漫画では使い古された展開である。
この場合、『他のいけ好かない貴族連中と違って主人公サマは〜』的に持て囃されるのがお約束だが、領民の支持は得られても他の有力者などからリーダーシップや威厳が求められる立場である自覚を疑われ発言力が低下する危険な側面もあり、いざという時にどう威厳を出すかが問われる。


このように「身分差を強く意識し、下層に惨く当たる選民思想(そして無能)」か「身分差を全く気にせず、下層にやさしく接する博愛主義(そして有能)」の二分化が激しく、
「身分差は厳然として意識をするが、とりたてて下層につらく当たるわけではない(有能か無能か、もしくは真ん中辺りか)」といういわば「普通の貴族」は主要キャラとして登場することは極めて稀で、そもそも登場することもあまりない。
(数少ない例を挙げると、強い特権意識の持ち主だがそれ故に貴族は平民を導く存在でなくてはならないという高潔な使命感を持つ『FE風花雪月』のローレンツは現実に近い形の善良な貴族だと思われる。他にも『王様の仕立て屋』の場合は、服飾を語る上で貴族を多く登場させているため「普通の貴族」もわりと多く登場している。)


また、その血筋から財閥・王族系キャラとかぶりやすいのが特徴である。
初めて「ノーブレスオブリージュ」という言葉が使われたのは「『貴族が義務を負う(ノブレス・オブリージュ)』ならば、王族はそれに比してより多くの義務を負わなければならない」という文脈なので、違いがわかりにくいからかもしれない。

なお、日本語における爵位はヨーロッパ各地の時代や国によって制度が異なる爵位を、中国語由来の言葉に強引にコンバートし、更に日本独自の解釈を加えたものなので、実体とは微妙に~完全に異なる部分がある
(もっともポピュラーな「王」ですら、絶対的トップの王から実権が無い王まで色々あるが、爵位も同様なのだ)
なので聞きかじりの知識で「○○伯は名前から田舎っぽいが実は偉い」とか「市民が○○になれることは通常ない」などと断言すると実は間違ってる可能性があったり、ましてや現実とルールが異なる異世界モノの貴族制度にツッコミを入れると爵位警察になってしまったりするので注意が必要。

あと辺境伯がすっごい人気
よく使われる辺境伯の設定としては「国境の最前線の領地を預かる貴族」
「戦争に直結する領を守るための強力な武力、他国との交易による富力、他人種と交わることによる開放的な気風、領としての独立性を持つなど強大だが、首都から離れているため田舎貴族と舐められることもある」などである。
あまりに人気が高すぎて色んな作品で出るため、辺境伯の概念は知ってるけど、リアルの歴史で具体的に誰が辺境伯だったかは知らない、なんて人も多いのではないだろうか。*14

また、近年なにかとメディアミックスされる素人執筆のネット小説、小説家になろう作品、俗に言うナーロッパではまた違った側面があり……

+ 以下、所謂『ナーロッパ』のトンデモ貴族
  • モブの貴族=無能
自身の私服を肥やすために重税を課したり、名声欲しさにあらぬ争いをでっち上げたり、基本的に問題しか起こさない。
それでいて厄介な実力者だったり警護や間諜組織で領民の反乱や亡命の芽はしっかり潰している。
酷いものになると、人類と魔族で戦争を繰り広げている中で国家予算の1/5を私物化、退陣して娘に尻拭いをさせる裏で売国行為を続けるなんて作品も。
主人公が貴族や王族の場合、主人公の立案が無ければ延々と会議を続ける、まともに案という案を出さない(出しても揚げ足の取り合いで有耶無耶になるだけ)、主人公持ち上げマシーンと化す

  • 貴族の権威は振り回すくせに、義務は果たさない
戦争が起きた際には真っ先に逃げ出すのは鉄板。国家はもちろん日頃から血税を納めてる領民への最大の裏切りに他ならず、国からは逆賊として、領民たちからも裏切り者として追い回され、一族郎党火あぶりや晒し首にされてもおかしくない(このテのナーロッパ貴族連中は個人としてはそこそこ戦闘力やらがあるため力ずくで逃げ切るのだが)。
ちなみに上記「国家予算の1/5を私物化〜」の国王も、「大勢いる魔導士のうちの1人として、魔力切れを起こしながらも国土一面を防御する大魔法の詠唱を行う」という形で使命はちゃんと果たしていた。

  • 蛮族かと思うくらいに過激で攻撃的
貴族令嬢である主人公に対する冷遇や不遇・劣悪すぎる待遇のケースの作品が極めて多い最大の要因
自分の納める土地の平民に対し、平気で暴力を振るったり、馬車のスピードを一切落とすことなく人混みの中を突っ込もうとする。
治安が荒れて野盗が出現するようになっても、平定しようとか治安を安定させようなどとは一切考えず、貧困街の焼き払いやら野盗狩りツアーやらを開催して解決しようとする。
なろうに限らず、『貧民風情が気安く私に触れるな。服が汚れただろうが〜!』と領民に因縁をつけるシーンを諸君は一度は見たことはあるのではないだろうか?
そのせいで通りすがりに過ぎない主人公が、彼らの暴挙に見かねてレジスタンスの一員や独自の第三勢力として…なら兎も角野盗と一緒になって貴族を襲撃するという世紀末な行動が正当化されてしまう*15「思い知れ、金も食料もない暮らし!!!」
架空戦記や追放モノにおいては、錬金術師に投資して作物を品種改良・食料の増産を図る、経済の安定のためにも戦争を一時的に止めて停戦協定を結ぶなど、主人公の経済的・平和的な提案を完全無視。
「食糧は隣国を侵攻して奪えばいい」「相手国の王族を皆殺しにして相手国民を全員奴隷にする」という身の毛もよだつ提案を会議の場で口にしたりする。
そのせいで、主人公が祖国を見限って敵国に投降したり、戦争は有利に進んでいたはずのに、有能な人間が全員離反してしまい一気に不利になったなどの展開が起きたりする。

  • 勉強出来る環境があるはずなのに無教養
「勉強」ということが大嫌いであり、自国の歴史すらロクに知らなかったり、外国語や古代の文字を読むことが出来ないことが多い。
ただ、これは主人公にも当てはまることがあり、この場合は「型にはまらない独創的な発想を持つ」という点が注目されることが多く、また側近や博士系キャラが優秀という形でフォローされる。
とあるアニメ化までされた作品で、異世界で貴族に転生したブラック企業社畜の主人公が、その世界での社会制度への不満から「勉強は嫌いです!」と家庭教師相手に突っぱねるシーンがあった。しかし、作中人物どころか視聴者からも子供がダダをこねているようにしか見えなかったため「中身はおばさんのくせに」「そんなんだからブラック企業にしか入社出来ないんだよ」と軽く炎上した

  • 主人公が貴族の場合、長男や次男坊ではなく、三男以下が人気
権力争いや責任などとは無縁だが、衣食住の面では不自由なく暮らせて動かしやすいためである。
文化的な側面から見ても、中世ヨーロッパの文化レベルで1日3食の食事や文字の読み書きの勉強など、現代日本の一般人レベルの暮らしがしたいのならば、貴族階級は必須である。
そして前述したパターンで逃げ出した親兄弟の代わりに戦争や魔物討伐に駆り出されるのもお約束であるそして大活躍して支持を掻っ攫う。

  • スキルや魔力などに恵まれない自分の子供を追放する
お腹を痛めて産んだ自分の実の子供だろうが、「スキルに恵まれなかった」「魔力を持っていない」という理由だけでいない者扱いしてしまう。
でも殺したら物語が始まらないので、赤子を殺さずにわざわざ森の中とかに運んで捨てる。*16
魔力測定器は2桁までしか測れないのに主人公が三桁以上の魔力を持っていた…というのもお約束である。計測器は壊れない。
そしてスキルなどに頼らないで活躍する、スキルの真価を発揮して活躍する主人公に「ザマァ」されるのがお約束である。
どのスキルが貰えるのか完全に運任せのくせに、目当てのスキルが得られなかったら「この親不孝者!」と実の息子をぶん殴る、なんて作品もある。なお、その主人公父親貴族の末路はお察し

  • 「戦闘向けのスキル」に執着する
土地を納めるのには役に立たない「賢者」やら「剣聖」というスキル持ちを願い、
「錬金術」や「鑑定」、「政神」と言った事務系作業に役に立ちそうなスキル持ちを毛嫌いする。
爵位返上して傭兵とか剣闘士でもやってろよ。

  • 現代日本からの物品や食品には興味津々
主人公が異世界を出入りできたり、地球産の物品を購入できる能力を持っている場合は、
有用と見るや否やそれらに頼ることのリスクを考えず目先のニンジンの如く飛びつき、頭のひとつも下げない不遜な態度を繰り返す主人公を笑って許したり、権力を使って主人公を囲おうとしたりする。
そして、図に乗った主人公からぼったくり価格でモノを買わされたり、挙句いきなり手を切られて一気に没落するのもお約束である。
聖戦士ダンバインドレイク・ルフトの様に異世界人に大金を託して地球の技術を現地で調達出来る素材で再現すると同時に、作る、使う人材の大量育成や現地人でも使いやすい様に改良を目論む超有能も居る。しかも、『人が実力や実績で公正に評価される世の中を作りたい』と言う理想まで抱えていたので、世界征服の一歩手前まで行ってしまっている。

フィクションで王族や貴族を主人公やその盟友にする理由

先述した通り、王族や貴族と言う存在は軍事・治安維持・外交と言った普通の平民には手に余る厄介事に対処する為に、権限を委託され、平民から金を徴収する事が出来る。
そうした地位でなければできない活躍というのはやはり存在している。最低限、そうした権限を行使できるか、必要に応じて貸してくれる上司なり盟友なりがいなければ、いくら有能でもその有能さを発揮できない。
一庶民が個人の実力だけでその地位にのし上がるというのも流石にリアリティに欠けるし作者が描きたい部分ではないため、最初から貴族キャラか、権限を貸してくれる貴族がいる方が都合がいいのである。

また、貴族は領内に外敵に侵攻され、誰の目にも明確な被害が出た場合は報復するなり、占領地を解放or捕虜を救出するなり、被害を補えるだけの条件で和睦を引き出すなりしないと面子≒権威を保てない
無論、国や領邦の司令塔が不在というのは問題なのだが、すげ替えることは簡単だ。*17
また、貴族と言えども跡取り候補の優先順位が低い子供は相応の功績を示して、独立なり分家創立なりの根拠を作らなければ『田分け』として一族の勢力そのものが弱体化・若しくは意思統一が出来なくなってしまう。

であるので、フィクションの主役や主要な盟友として起用するには都合が良い一面がある。
例として比較的知名度が高い
と言ったフィクションの主人公は家族を愛していると言う動機を除いたとしても、身内を捕虜にした外敵を自らの手で叩き潰して捕虜を奪回するぐらいの実績を挙げないと失墜した権威と国民の支持を回復するのが難しいと言う側面も存在している。

また、貴族や王族は外交担当者としても教育を受けているので、語学が堪能で遠隔地の住民と意思疎通が出来、地理・歴史に詳しいのも当然であるし、政略結婚した身内なり、親世代が嘗て共同戦線を張った元同盟者なりが国外に居て助力してくれてもそれ程不自然ではない。
そもそも、読み書き出来る人間自体が希少と言う地域や時代が現実の歴史でも長かったのだ。
王族や貴族が主役だったり、主役の補佐役だったりした場合は、言語の壁を大幅に省く事が出来るし、地理や歴史の基礎知識が有ると言う前提で周囲も接するので情報を引き出し易い一面もあるだろう。
高貴な身分と言うのは、言語の壁や地理・歴史の問題を大幅に緩和出来る設定でもあるのだ。

貴族を打ち倒した先に…?

資本主義・民主主義国家で生きる現代人にとって、封建社会の貴族政治は息苦しいものである。
実力がある人間が家柄がないという理由で歴史に埋もれ、血筋だけの無能が実権を握るというのも、今の現代人からしたら我慢ならないものだろう。

故に、フィクションでは「悪徳貴族を打ち倒そう」「革命を起こして貴族政治を廃止しよう」「世襲を廃止して実技を重視、能力主義の国を作ろう」という作品が多い。

しかし一方で、
「いきなり国の社会制度を大きく変えて、民衆は付いてきてくれるのか?」
「身分制度が廃止されて民主主義資本主義に変わっても、結局は金持ちが実権を握るだけなのでは?」
「主人公らに王政が総崩れにされ、国中が大混乱に陥っているのを果たして隣国は黙って見過ごすのか?」
という問題もある。

このテの作品の多くは君主制を頭ごなしに否定し「誰もが国家に関与できる世にしたい」といった思想の元で共和制や民主主義を推し進める事が多いが、民主主義などには「民の間で複数の派閥が好き勝手に生まれ、足の引っ張り合いをする事で政策の策定が遅れる」「選ばれた代表が平気で民意を裏切る可能性がある」「一度政争が起こると収拾がつかなくなり政府機能が麻痺し簡単に国全体の情勢が乱れる」といった欠点も多くあり、安易な実力主義も「実力だけあれば学も教養も無い蛮人だろうと危険思想の持ち主でも平等に君臨出来てしまう」という新たな独裁国家の土壌になりかねないのだ。

主人公たちや読者、民衆にとっては暴君以外の何物でもない貴族連中であっても、彼等なりに政治に関与する有力者たちの支持を得・或いは形はどうあれ施政を維持するだけの能力があるからこそ存続出来ているわけで、目先の義憤の為に彼等を総崩れにしたところで不満を募らせた大半の民衆が暴徒と化して略奪やらを行い、これらの収拾も考えねば悪政以下の無法地帯が生まれるだけである。

…といった国の抱える資本や、抱えている農業や産業、周辺国家の情勢、それらを加味した上で何十年…時には何世代すにも渡って地道に改革を進めるならば兎も角、近年の創作では「力を授かった主人公による急激な改革による世直し」が行われる場合が多い。

回復術士のやり直し』という作品では、主人公は最初から個人的な復讐のために、復讐対象が王族貴族だったため「ついで」に社会制度をぶっ壊すことになった。
主人公は当然、復讐を完遂して壊された国のことなど考えていない。
…が、主人公の活動の過程で、たまたま「残された人間が有能でかつ聖人だった(洗脳して聖人にした)」「戦争をしていた国と和解した」という形で、幸運にも丸く収まるのであった。
物語序盤は主人公のあまりの視野の狭さゆえに故郷が滅びそうになったは内緒だ。

…といった具合に、急激な改革によって生まれる問題を主人公の(主に洗脳・改変系の)チートパワーやあらゆるご都合主義をつぎ込んで強引に解消することで「成功」に持ち込むパターンが少なからずあるのが実情。
尤も、これらの作品は主人公たちの思想の正当性より悪徳貴族連中が「ザマァ」させられるまでの過程に重きを置かれている訳だが。


FE風花雪月』のエーデルガルト=フォン=フレスベルグは、既存の貴族社会を壊して誰もが自由に生きられる世界を作るべく行動を起こす。
彼女と敵対するルートではまさにこの通りの怪訝を多くのキャラから指摘されて、主人公とその下に付いた学生たちは彼女と戦うことになる。
ライバルのディミトリは弱者を切り捨てることが出来ず、*18
もう一人のライバルであるクロードは、(彼女以上の野心こそ抱いているものの)隣国の脅威にも対応する側であるので、彼女の行いを「早急すぎる」と批判する。*19
しかし、エーデルガルトに味方するルート及びDLCの地下書庫では、「急な改革である事は承知だが、貴族を裏で掌握している闇の勢力と女神の眷属が大陸に深く根付いており、誰かが動かねばいずれ手遅れになる」という彼女の気苦労を知ることができる。


もちろん、急な改革の負の側面を描いた作品も存在する。

幼女戦記』では、レガドニア協商連合という国がナショナリズムの暴走により、帝国相手に勝てない戦争を仕掛けてしまう。
そして、民主主義と求心力の権下、最悪の化け物であるメアリー・スーの台頭に繋がってしまう…

主な貴族キャラの特徴

  • 高慢
  • 選民思想
  • 金髪碧眼
  • 極端なイケメンor怠惰な生活で肥満体
  • 貴族でないものは人として扱わない
  • 見栄っ張り
  • 無能
  • 俺様キャラ
  • 世間知らず、または浮世離れしている
  • 貴族としてのプライドが良くも悪くも高い

フィクションにおける貴族系キャラの一覧(善悪問わず)






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最終更新:2026年08月19日 18:28

*1 当時のローマは多方面に敵がおり、ファビウス氏族は「ある敵とは軍事面・資金面ともにファビウス氏族だけで戦う」と提案、それが受け入れられていた。そしてこの戦いまでは敵を撃退し続けていたのだ。

*2 例えば、桓公や管仲で有名な「斉」は「侯爵」。ちなみに「公爵」は殷王朝の末裔である宋国のみで、伯爵以下は勢力が小さく実質は臣下で、有力国家クラスの封建領主はほとんど侯爵だった。「諸侯」と呼ばれるのはこれが由来。

*3 中国語版Wikipedia「維基百科」では「士族 (中国)」と表記。

*4 というか「中国史における、広義の官僚or知識人」といった程度の意味。

*5 華族制度自体が皇族の親衛隊的役割を期待して設立されたので爵位を問わず公家系の方が権威は高かった。

*6 当初の新憲法案では既存華族を一代貴族化することなどが検討されていた。昭和天皇は公家系華族だけで華族制度を継続させたい意向を示していたが、内外の理解が得られないという理由で当時の内閣が反対したため断念している。

*7 ただし全員が当てはまるわけではない点は留意すること。

*8 徳川吉宗が藩主をしていた役所と警備兵若干の小藩

*9 連隊長や軍艦の艦長、各国大使館の駐在武官や駐在武官補と言ったクラス以上

*10 全部は書ききれないが、例えば兵役は免除されており賦役など大半の税も納付義務がなかった。そのくせ家・衣服・墳墓・祭礼に関して常民以下から好き勝手に財産を巻き上げても罪に問われないどころか、その事が権利として保証されている。

*11 尤も、法律に使われている公用語である日本語の授業導入や朝鮮語授業も「文法が似ている日本語の教科書をベースに作った方が労力が省ける」と考えて教科書や授業マニュアルを作ったので「言語を奪った」と戦後に非難される要因になったが

*12 この言葉から後に貴族を表す「パトリキ」という言葉が生まれた。

*13 権力財力が求められる・あれば即座に終われる

*14 豊臣政権下で関東に移封された徳川家康も、(上杉や伊達など)北陸や東北勢の抑えに配置された辺境伯と言えよう

*15 とある作品において、原作および書籍版では貴族本人がご丁寧に野盗狩りツアーの声明をだしたので主人公は山賊に加勢、チートパワーを以て貴族を蹂躙するのだが、漫画版では『まだ情報を集めていないので、どちらが悪なのか分からないまま人を殺してしまった』と後悔、原作と漫画でシナリオの趣旨が変わるターニングポイントとなる

*16 中には、赤子を殺せと命じられた部下が赤子を憐れんで秘密裏に国外に逃がすなり匿ったり、或いは葬る寸前でトラブルが起こり赤子を逃がしてしまうパターンも。

*17 降格や別の有力者に逆らえず政争に担ぎ出されるばかりの針のむしろ暮らしはまだいい方。地位を追われて追放・幽閉されたり、場合によっては殺されたりも歴史上は枚挙に暇がない。

*18 「風花雪月 無双」において、「所詮は現状維持」「問題の先送り」と批判される

*19 こちらは「自分さえ良ければそれでいい」という集団の長なので、利益さえ提示すれば実力主義にも貴族主義にも傾いてくれる