ひとふたしきちたいかんゆうどうだん
全長 |
5,000mm(ブースター付) |
全幅 |
1,190mm |
直径 |
349mm |
重量 |
約700kg(ブースター付) |
動力 |
固体燃料ロケットブースター(推力偏向装置付)+ ターボジェットエンジン |
中間誘導 |
慣性誘導+GPS誘導 |
終末誘導 |
アクティブ・レーダー誘導 |
構成 |
JTPS-P26捜索標定レーダー装置:2基(1/2tトラック搭載) 中継装置:1基(同上) 指揮統制装置:1基(3 1/2tトラック積載) 射撃管制装置:1基(同上) 誘導弾発射機(誘導弾6発/基):1~4基 弾薬運搬車(予備誘導弾6発/輛):1~4輌(7tトラック) |
性能
最大速度 |
1,150km/h(M0.9) |
射程距離 |
150km以上(推定) |
概要
12式地対艦誘導弾は防衛省技術研究本部と三菱重工により開発されたアクティブ・レーダー誘導地対艦ミサイルである。
88式地対艦誘導弾の後継として2001年から開発に着手し、2012年に採用された。開発経費は約138億円。
特徴
誘導弾本体の形状はSSM-1と余り変わっていないが、ロケットブースターに推力変更装置が追加されている。
これにより、垂直発射された誘導弾が目標に向けて90度変針すると言うイージスシステム搭載護衛艦等と同様の飛翔パターンを採れる様になり、SSM-1と比較して発射地点選択の制限が小さくなったため、生残性が向上している。
垂直発射対応のため、発射機のキャニスターがほぼ垂直に立てられる様になっている他、キャニスターが円筒型から03式地対空誘導弾と同様の角柱型に変更されているため、SSM-1の発射機との識別は容易である。
別地点から発射して同時に着弾させる事も可能であり、SSM-1最大の特徴である地形回避飛行能力も受け継がれており、より高精度化している。
地形回避能力は、デジタルマップに基づき超低空飛行で山谷を飛び抜ける機能で、敵に発射地点を発見しづらくさせると同時に、山陰を飛行する事で誘導弾の発見を遅らせることで迎撃を難しくしている。
この機能はトマホークの様な巡航ミサイルに装備されるものだが、内陸部からの敵上陸部隊の水際迎撃を主任務とする陸上自衛隊の地対艦ミサイルにおいても必須の機能となっている。
終末誘導は対地攻撃向きではないアクティブ・レーダー誘導だが、中間誘導にASM-2Bや
ハープーンBlock2と同様のGPS誘導も用いているため、原理的には対地攻撃も可能。
SSM-1と発射機や発射管制システムに共用性があり、SSM-1と混載して運用することも可能である。
基本的には、発射機や射撃管制装置、指揮統制装置は攻撃を受け難い内陸部に位置し、沿岸部に進出したJTPS-P26捜索標定レーダー装置の捜索情報を受けて攻撃を行う。
このシステムの特性上、単独では目視外の外洋を航行する敵艦隊を攻撃するのは難しいが、レーダー捜索情報が無くとも概略方位に向けて発射することは可能であるため、海自や空自の航空機から音声伝達された捜索情報に基づいて攻撃する訓練が行われている。
調達と配備
開発終了直後の2012年から調達が開始され、2014年から部隊配備が開始されている。
2015年までは教育及び教導部隊に配備されたが、中国の南西諸島進出対策として2014年に調達された1個連隊分のSSM-1(改)は、2016年3月に熊本県健軍駐屯地の第5地対艦ミサイル連隊に集中配備されている。
その後も第5地対艦ミサイル連隊への配備は続き、2019年3月に青森県の第4地対艦ミサイル連隊第4中隊から改組された第301地対艦ミサイル中隊(奄美大島)へ、2020年3月に新編された第302地対艦ミサイル中隊(宮古島)へ配備されている。
2023年3月には第303地対艦ミサイル中隊が健軍駐屯地から石垣島へ移駐、2024年3月には第304地対艦ミサイル中隊が健軍駐屯地から沖縄本島の勝連分屯地に移駐している。
南西諸島に301、302、303、304の4個地対艦ミサイル中隊が揃うと同時に第5地対艦ミサイル連隊から離れ、新編された第7地対艦ミサイル連隊に編入されている。
SSM-1(改)の調達は2022年度予算で打ち切られており、2023年度予算から後述する12式地対艦誘導弾能力向上型地発型の調達に切り替えられている。
第7地対艦ミサイル連隊の地対艦ミサイル中隊は防空任務を受け持つ03式中距離地対空誘導弾(中SAM)または03式中距離地対空誘導弾改善型(中SAM改)装備の高射中隊とセットで運用されており、奄美大島には第3高射特科群の第344高射中隊、宮古島と石垣島には第7高射特科群の第346高射中隊と第348高射中隊が配備されている。
南西方面における地対艦ミサイル部隊の増強は第7地対艦ミサイル連隊の新編で一段落となるが、日本全体で見ると地対艦ミサイル部隊の増強は続き、2025年3月には由布院駐屯地に第8地対艦ミサイル連隊が新編された他、2023年3月に1個中隊のみの編成に削除された八戸駐屯地の第4地対艦ミサイル連隊が3個中隊編成に増強されている。
後継型·派生型の開発
2013年からSSM-1(改)を原型として、SSM-1B後継の新艦対艦誘導弾の開発が開始され、2017年に「
17式艦対艦誘導弾」として採用されている。
SSM-1Bに代わって、
あたご型に続く新型イージス艦である
まや型以降の護衛艦に搭載される。
2017年からSSM-2を原型として「12式地対艦誘導弾(改)」と「哨戒機用新空対艦誘導弾」がそれぞれ開発されている。
前者については後述する12式地対艦誘導弾能力向上型の開発に切り替えられたが、後者については令和5年度予算から「23式空対艦誘導弾」の名称で調達が開始されている。
12式地対艦誘導弾能力向上型
2020年12月7日、12式地対艦誘導弾(改)に「スタンド・オフ能力」を持たせた新型ミサイルを2025年までに開発すると報道され、2021年度予算に長射程化とプラットフォームの多様化を図ったスタンド・オフ・ミサイル「12式地対艦誘導弾能力向上型」の開発費として、同年度概算要求で計上されていた12式地対艦誘導弾(改)開発費の12倍以上にあたる335億円が計上されている。開発は引き続き技術研究本部と三菱重工が行う。
総開発費394億円、2025年度開発完了の予定だが、令和5年度概算要求において開発完了を待たず、後述する地発型の量産を開始することが明らかになった。
12式地対艦誘導弾能力向上型は、2018年から「島嶼防衛用新対艦誘導弾の要素技術の研究」の名称で技術研究本部と川崎重工が開発に取り組んでいる①長距離飛翔技術、②高機動化技術、③ステルス化技術、④陸海空のいずれからでも運用可能とするファミリー化技術、の中から実用化に目処の立った①、③、④の成果を12式地対艦誘導弾(改)に取り入れる事で早期実用化を目指している。
長射程化により発射から着弾までの時間が長期化するため、システム連結した海自や空自の航空機の得た捜索情報を発射後も衛星を介して誘導弾本体に送信して中間誘導を行う機能が追加される。
射程距離について公式には言及されていないが、2020年12月29日に12式地対艦誘導弾能力向上型は当面900km、最終的には1,500kmに延伸し、新対艦誘導弾は2,000kmを目指す計画と報道されている。
伸展型大型主翼やステルス弾体等の導入予定技術や予想性能、風洞実験模型から、12式地対艦誘導弾能力向上型は外形と性能の両方でSSM-1(改)とは似ても似つかない和製LRASMと言えるミサイルになると予想される。
2021年6月5日には2022年度から12式地対艦誘導弾能力向上型の艦艇搭載型と戦闘機搭載型の開発に着手すると報道され、実際に令和4年度予算において地上発射型(地発型)に加えて艦艇発射型(艦発型)と航空機発射型(空発型)の開発費393億円が計上されている。
島嶼防衛用新対艦誘導弾
先述した様に12式地対艦誘導弾能力向上型の開発開始時に要素技術の提供元になった。
2018年度から新対艦誘導弾に必要な要素技術の開発に取り組んでおり、12式地対艦誘導弾能力向上型に実用化に目処の立っていた要素技術を提供した後も開発が続けられている。
2022年11月には新型ターボファンエンジンXKJ300-1Aの試作型が納入されて各種試験を開始しており、2024年3月には改良型のXKJ301が誘導弾搭載状態での飛行試験に供される予定であると報じられている。
要素技術の開発が2022年度に終了した事から、2023年度から本格開発に移行、令和5年度予算では開発予算として342億円が計上されている。開発は引き続き技術研究本部と川崎重工が行う。
本誘導弾には、12式地対艦誘導弾能力向上型には間に合わなかった高機動化技術やモジュール化による多機能化技術が実装される予定。
ちなみに2023年に投稿された防衛装備庁の研究開発事業紹介動画では本誘導弾のイメージの場面があるのだが、そこでは敵対空ミサイルを高機動で回避した上、終末航程では迎撃するCIWSをバレルロールで回避して敵艦に命中するというトンデモっぷりを見ることができる。ちなみにその敵艦のシルエットが明らかに中国海軍の052D型ミサイル駆逐艦なのは内緒。
潜水艦発射型誘導弾
2021年12月30日に将来的な敵基地攻撃への活用を前提とし、2020年代後半の実用化を目標に潜水艦発射型を開発する検討を行っているとの報道があり、2022年12月16日制定の「防衛力整備計画」においてスタンド·オフ·ミサイルを搭載可能なVLS搭載型潜水艦の取得を進めるとされた。
その後、2023年度から潜水艦発射型誘導弾の名称で開発が開始されている。
この誘導弾は魚雷発射管を用いた水平発射型であるが、将来的に垂直発射型の開発も見込まれている。
原型になる誘導弾についてははっきりしておらず、12式地対艦誘導弾能力向上型、島嶼防衛用新対艦誘導弾、島嶼防衛用高速滑空弾の何れかと思われる。
2027年度開発完了、総開発費約793億円の予定。開発は技術研究本部と三菱重工が行う。
目標観測弾
令和5年度予算で開発が明らかになった強行偵察用機材。
長射程SAM搭載艦艇で構成された艦隊を始めとする200〜300km/h程度の低速滞空型UAVでは接近困難な目標の索敵を目的としており、12式地対艦誘導弾能力向上型の最大射程付近での索敵を可能とする滞空性能と同誘導弾と同程度の速度の付与を目指している。
令和4年度事前の事業評価によると、12式地対艦誘導弾能力向上型ベース案と島嶼防衛用新対艦誘導弾の要素技術ベース案の2つを検討中となっているが、何方が採用されても長射程誘導弾をベースとするステルス性能を持つ亜音速UAVになる。
SSM用と類似した車載型発射機(またはSSM発射機そのもの)に搭載して運用される計画であり、SSMと同水準の高い機動性と生残性を有すると思われる。
対艦誘導弾とのファミリー化によって調達価格を低下させて大量配備し、有事における使い捨て運用を可能にすることで喪失を恐れて投入を躊躇うといった事態を避けられると考えられる。
開発期間は2023〜2026年度で、総開発費は222億円の予定。開発は技術研究本部と三菱重工が行う。
2023年1月17日には目標観測弾の弾頭を交換型として、電子妨害型も開発する計画であると報道されている。
作中での活躍
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〔最終更新日:2025年04月05日〕
最終更新:2025年04月05日 00:11