アルマ58,,アルマ書  第58章
アルマ58,*-*,ヒラマンの手紙(おわり)。マンタイ市の前に於けるニーファイ人の作戦。レーマン人の出撃。ギドとテ
オムネル、マンタイ市を取る。敵退く。
アルマ58,1,われらの第2の目的はマンタイ市を落すことであった。しかしわが小さな隊を以てしては、どうしても敵を
その市から誘い出すことはできなかった。われらが前に用いた策はレーマン任が憶えていたから、かれらをその堅
固なとりでから誘い出すことはできなかった。
アルマ58,2,また敵はわが軍よりもはるかに大軍であったから、われらは思い切って出て行って敵がとりでにこもって
いるままを攻めなかった。
アルマ58,3,そうするよりは、これまでに取り返した自分の地を引きつずき護るために全軍を使うことが必要であっ
た。それであるから、ゼラヘムラの地から援兵と新しく食糧の来るのを待つよりほかに仕方がなかった。
アルマ58,4,その時、われは使者をわが国の統治者のもとへつかわし、この所のわが民の事情を知らせてゼラヘム
ラの地から来る食糧と援兵とを待った。
アルマ58,5,しかし、レーマン人もまた毎日多くの援兵と食糧とを受けていたから、われらがこのようにして待っている
のは非常に不利益であった。実際、このころわれらはこのような有様であった。
アルマ58,6,レーマン人はたびたび出撃してわれらを攻め、計略によってわれらを亡ぼそうと決意していたが、敵に
は逃れる所ととりでがあったのでわれらはどうしてもこれと戦うことができなかった。
アルマ58,7,われらはこのような難儀な有様で数箇月を送り、とうとう飢死をせんばかりであったが、
アルマ58,8,ようやく、われらを助けるために2、000人の援兵が守って運んできた食糧がとどいた。われらとわが国と
を敵の手に落ちないように守って、無数の敵と戦うのを助けるために送られた食糧と援兵とは実際これだけであっ
た。
アルマ58,9,この困難の原因、すなわちもっと多くの援兵がわれらに送られなかった原因はわれらに解らなかった。
それでわれらは心配をして、何かして神の裁きがわが国に下りわれらを覆して全滅させるようになりはしないかと言
うことを恐れた。
アルマ58,10,それであるから、われらは全身全霊を傾けて神に祈り、われらを強めて敵の手から救いたまわんこと
と、われらにわが民を救って養わせるため、われらのもろもろの都市と所有する土地と持物とを護る力を与えたまわ
んこととを請いねがった。
アルマ58,11,そこでわれらの神である主はわれらを救い出すと言う保証をたまわり、われらの心を安んじ、熱い信仰
を授け、神に依って助けられると言う望みを心に起させたもうた。
アルマ58,12,これによって、われらは僅な援兵を得て勇気を出し、敵に勝ってわれらの所有する土地、持物、妻子
および自由の道を守ろうと堅く決心をし、
アルマ58,13,マンタイ市にいたレーマン人と戦うために奮い立って進軍し、マンタイ市に近い野の附近に陣を張っ
た。
アルマ58,14,翌日、レーマン人はわが軍が都市に近い野の附近の国境へきたことを知り、わが兵の数と力とを探り
知るために間者をわが軍のまわりに出したが、
アルマ58,15,数に於てわが軍が強くないのを見、出撃してわれらを殺さなかったなら食糧を運ぶ道がわが方に断ち
切られるかも知れないと思い、またその無数の兵でたやすくわが軍を亡ぼすことができると思って戦に出る用意に
とりかかった。
アルマ58,16,すなわちレーマン人が戦に出る用意にとりかかったのを知ったから、われはギドとテオムネルおに
各々僅の兵をつけて野に隠れさせた。
アルマ58,17,ギドとその兵は右に居り、テオムネルとその兵とは左に居った。こうしてかれらが隠れてから、われと残
りの兵とは最初に陣を張ったところに止まっていてレーマン人が出てくるのを待った。
アルマ58,18,するとレーマン人は大軍を以てわれに向って出てきたが、進んできて正に剣でわれらを殺そうとする
や、われは一しょに居た兵に命じて野の奥へ退かせた。
アルマ58,19,これを見るとレーマン人は、ぜひ追いついてわれらを殺したいと思い、大速力で野の奥へわれらを追
いかけてきた。われらはギドとテオムネルとの間を通りすぎたから、この2人はレーマン人に見出されなかった。
アルマ58,20,レーマン人の軍が通りすぎてしまうと、ギドとテオムネルとは隠れていた所から出てきて、レーマン人の
間者たちがマンタイ市へ帰れぬようにまずその道を断ち切り、
アルマ58,21,次にマンタイ市へ走って行ってその市を守るために残っていた番兵におそいかかりこれを殺して市を
占領した。
アルマ58,22,これはレーマン人が僅の番兵だけをのこして全軍こぞって野へ誘い出された失錯によるのである。
アルマ58,23,ギドとテオムネルとはこの機に乗じて敵のとりでを占領した。わが兵は暫くの間野を逃げて歩いてから
ゼラヘムラの地方を指して進んだ。
アルマ58,24,この時レーマン人はわれらがゼラヘムラの地方へ向って進のを知って、これは自分らを滅亡に誘う策
があるのではないかと非常に恐しがり、われらを追いかけてきた道を通って野へ引き返した。
アルマ58,25,夜になってレーマン人の大士官らは、ニーファイ人は退却のためにもはや疲れたのであろうと思い、
またすでにニーファイ人の全軍を追いはらってしまったと思って天幕を張り、マンタイ市のことは少しも心にかけな
かった。
アルマ58,26,しかしこの夜われはわが兵らを眠らせず、別の道からマンタイの地へ進軍させた。
アルマ58,27,このように夜道を急いだから、われは翌日までにもうレーマン人の先になってかれらより早くマンタイ市
へ着いた。
アルマ58,28,この計略でわが軍には何らの支障もなくマンタイ市を占領することができた。
アルマ58,29,さてレーマン人の軍が都市の近くへきて見ると、われらが先にそこに居て戦の備えをしているのを見て
非常に驚きうろたえて野へ逃げて行った。
アルマ58,30,それからレーマン人の諸軍は全く国のこの地方から引き上げたが、見よ、かれらはわが国から多くの
女子供をとりこにしてつれ去った。
アルマ58,31,レーマン人が前に占領していた都市は、われらがみな取り返して所有している。とりこになってレーマ
ン人のために他国へつれて行かれた者のほかは、われらの親や女子供たちは今それぞれの家路についている。
アルマ58,32,しかし、見よ、かほどに多くの都市と広い土地と持物とを固めて守るためにはわが軍は小さすぎる。
アルマ58,33,しかしわれらは、われらにこの勝利を得させ、さきにわれらが持っていた都市と土地とを取り返させたも
うたわれらの神に頼っている。
アルマ58,34,政府は何故にもっと大きな援助をわれらに送ってこないのか、われらもまたわれらの所へきた援兵もそ
のわけを知らない。
アルマ58,35,われが思うに政府は事に失敗し、兵を国内に出したのかも知れぬと。はたしてそうならばわれらは不
平を言うまい。
アルマ58,36,もしそうでなければ、おそらく政府に或る徒党が起ってそれがためにかれらは援兵を送ってこないで
あろうと思う。なぜならば、政府がすでにこちらへ送った者のほかに援兵となる者が多くあることを知っているからで
ある。
アルマ58,37,たとえどうでも、わが軍隊が弱力であるにもかかわらず、われらは神がわれらを助けて敵の手から救い
たもうことを信ずる。
アルマ58,38,今は29年目の暮れであって、われらは所有の地をとり返し、レーマン人はもはやニーファイの地へ退
いた。
アルマ58,39,そしてわれが先にほめたたえたアンモンの民の息子らは、今われと一しょにマンタイ市に居る。主がこ
れを助けて剣に倒れないように守りたもうから、その中の1人も殺された者はない。
アルマ58,40,かれらは多くの傷を負ったけれども、神がかれらを自由な者になしたもうたその自由の道を堅く守り、
毎日必ず自分の神である主を思い、慎んでたえず神の律法と裁決と命令とに服従し、将来にかかわる予言を固く
信じている。
アルマ58,41,さてわが愛する兄弟モロナイよ、ねがわくはわれらを贖って自由になしたもうたわれらの神である主
が、常に汝を御前に居らせたまわんことを。またねがわくは主がこの民を恵みたまい、レーマン人がわれらから奪い
取った生活に必要な品をことごとく汝に取り返させた
アルマ58,41-1,ことを。われはこれでこの手紙の結びとする。われはアルマの子、ヒラマンである。
最終更新:2008年07月04日 22:58