ヒラマ5,,
ヒラマン書 第5章
ヒラマ5,*-*,ニーファイ、セゾーラムに裁判の職をゆずる。ニーファイその兄弟のリーハイと共に伝道に献身する。
驚嘆すべき示現。改心したレーマン人らが、征服されたニーファイ人の地を回復する。
ヒラマ5,1,この年ニーファイは、セゾーラムと言う人に裁判の職をゆずった。
ヒラマ5,2,これは、ニーファイ人の国法と政治とはみな人民の投票できめられたが、そのころ悪につく人の数が善に
つく人の数よりも多かったから、国法が乱れて腐敗し国民が亡びようとしていたからである。
ヒラマ5,3,これだけではない。ニーファイ人はかたくなな民であったから、国法もしくは正義の道をそのまま失効する
と亡びるほかはなかったからである。
ヒラマ5,4,それで、ニーファイは国民の罪悪にあぐんで裁判の職をゆずり、神の道を宣べ伝えることに余勢を捧げよ
うと決心をした。その兄弟のリーハイもまた同じことを決心した。
ヒラマ5,5,この2人はその父箆万我自分らに話した言葉を思い出したが、父は2人に、
ヒラマ5,6,”私の子らよ。私はお前たちが忘れずに神の命令を守りこれを民に伝えることを望む。私はエルサレムの
地からきた私らの先祖の名をお前らに与えた。このわけはお前らが自分の名前を思うたびに先祖のことも思わせ、
先祖を思うたびに先祖の行いもまた思わせ、先祖の
ヒラマ5,6-1,思うたびにその行いの善かったことが言伝えにも記録にものこっているのを知らせるためである。
ヒラマ5,7,それであるから、わが子らよ。私はお前たちに、先祖について言い伝えられ書き伝えられたと同じことが、
お前たちについても言い伝えられ書き伝えられるように善い事をしてもらいたい。
ヒラマ5,8,私の子らよ。このほかに私がお前たちに望むことがある。それはお前たちが大言を吐こうとして善い事を
するのではなくて、お前たちがいつまでもなくならない永遠の宝を自分のために天に貯えるよう、すなわちあの貴
い賜である永遠の生命を得るために善い事をするこ
ヒラマ5,8-1,私たちの先祖はすでに永遠の生命を受けているように思われる。
ヒラマ5,9,わが子らよ。ベンジャミン王がその民に話した言葉を忘れるな。この世に降臨して身代りの贖罪をなしたも
うはずのイエス・キリストによらなければ、人が依り頼んで救われる道も方法もない、またキリストは依の人々を贖うた
めに降臨したもうことを忘れるな。
ヒラマ5,10,アミュレクがアモナイハ市でゼーズロムに告げた言葉を忘れるな。その時アミュレクはゼーズロムに告げ
て、主キリストはその民を贖うために必ず降臨したもうが、民を罪のあるままには贖いたまわない。その罪から民を
贖うために降臨したもうと言った。
ヒラマ5,11,もしも人々が悔い改めるならば、主はこれをその罪から贖う権威と能力とを御父から授かりたもう。それで
あるから、主は悔改めの条件を示して教えるためにその使たちを世の人々につかわしたもうた。悔改めの条件は、
すべてこれを守る人々を贖い主の権能の及ぶ範囲
ヒラマ5,11-1,その人々に救いを得させる。
ヒラマ5,12,さてわが子らよ。お前たちは神の御子キリストである私らの贖い主の岩を基にしなくてはならないことを
忘れるな。贖い主の岩を基にするならば、悪魔がその大風を吹かせて柱のように立つつむじ風をまき起すとき、ま
た悪魔の雹と暴風雨とがお前らを打つとき、悪魔は
ヒラマ5,12-1,打ち勝って不幸の淵と永遠の悲惨にお前たちをひき落す能力はない。なぜならば、お前らの立つ岩
は堅固であって人がその上に立つと倒れることのできない基であるからである”と言った。
ヒラマ5,13,以上はヒラマンがその子らに教えた言葉である。ヒラマンはこのほかにまだ書いてない多くの事も、すで
に書いてある多くの事もその子らに教えた。
ヒラマ5,14,子らは父の言葉を忘れず、神の命令に服従して、ニーファイの全国民に神の道を教えて伝えるために
出て言ったが、まずバウンテフル市へ行き、
ヒラマ5,15,つぎにギド市に行き、ギド市からミュレク市に移り、
ヒラマ5,16,この市かの市と経めぐって、ついに南の地方い居るニーファイの民の中へ行って方々を訪ね、その後ゼ
ラヘムラの地にも行ってレーマン人の間で道を伝えた。
ヒラマ5,17,かれらは偉大な能力を奮って道を説いたので、ニーファイ人から別れて去った謀叛人を多数説き破っ
た。そこでこの連中は出てきて各々その罪を告白し、すでに悔い改めたしるしとしてバプテスマを受け、これまでニ
ーファイ人に加えた害を一切つぐなうためにすぐとニ
ヒラマ5,17-1,ニーファイ人の中へ帰って行った。
ヒラマ5,18,ニーファイとリーハイは伝道に必要な権能と威勢とを与えられ、また言うべきことも示されたから、大きな
権能と威勢とを以てレーマン人に道を宣べた。
ヒラマ5,19,それでレーマン人らは大いに驚いて感化を受け、そのころゼラヘムラの地ならびにそのまわりには、す
でに悔い改めたしるしとしてバプテスマを受け、その先祖の言い伝えが悪いと認めるようになった者が8、000人あ
った。
ヒラマ5,20,ニーファイとリーハイはそこからニーファイの地へ行こうとして出発したが、
ヒラマ5,21,レーマンの1軍に捕まって牢屋へ入れられた。その牢屋と言うのは、リムハイの家来たちがアンモンとそ
の兄弟たちを入れた牢屋と同じものであった。
ヒラマ5,22,ニーファイとリーハイは食物もなしに多くの日を牢屋の中で送ったが、人々が2人を出して殺すために牢
屋の中へ入ったところ、
ヒラマ5,23,ニーファイとリーハイとが火のようなものに取り巻かれているのが見えたから、自分らの身が焼かれはせ
ぬかと思って、2人に手を触れる勇気が出なかった。ところが、ニーファイとリーハイとは火の中にいても少しもやけ
どをしなかった。
ヒラマ5,24,2人は火の柱にとりまかれていながら少しも焼けないばかりか、
ヒラマ5,25,レーマン人が思い切ってこの2人に手を触れまたは近づくことができず、また驚いてものも言えずあっけ
にとられて立っているのを見て勇気を出し、
ヒラマ5,26,立ち上がって人々に”恐れるな。見よ、この不思議を汝らにあらわしたのは神である。汝らがわれらを捕
えて殺せないのはこの不思議によっても明らかである”と言った。
ヒラマ5,27,2人がこう言うや否やたちまち地が烈しく震い、牢屋の壁が地に倒れるばかりにゆり動いたが、それでも
倒れはしなかった。牢屋の中に居た者たちは、レーマン人と謀叛人であるニーファイ人とであったが、
ヒラマ5,28,どちらも黒雲のようなもので囲まれたので容易ならぬ恐怖におそわれた。
ヒラマ5,29,その時1つの声が黒雲の上にあるかのように聞こえて”悔い改めよ、悔い改めよ。汝らに良き音ずれを伝
うるため、わが汝らにつかわしたるわが僕らを亡ぼさんとすることを止めよ”と命じて言った。
ヒラマ5,30,人々がこの声を聞くと、それは雷の劣でもなくまた大きな騒しい音でもなくて、全くやさしくささやくような
静かな声であったが、人々の心の底まで貫いた。
ヒラマ5,31,その声がやさしかったにもかかわらず、地が再び激しくふるい、牢屋の壁は地似通れるばかりにゆり動
き、かれらを囲む黒雲はかれらの上を去らなかった。
ヒラマ5,32,すると見よ、再び同じ声で”天国は近きにあれば悔い改めよ、悔い改めよ。わが僕らを亡ぼさんとするこ
とを止めよ”と命ずるのが聞えたが、またまた地が震い、壁がゆれ動いた。
ヒラマ5,33,それから3度目にまた同じ声がして人間の出せない不思議な言葉が聞こえたが、壁がまたまたゆり動
き、地は割れるばかりに振動した。
ヒラマ5,34,レーマン人は黒雲に囲まれていたので逃げることができず、また恐怖のために動くこともできなかった。
ヒラマ5,35,このレーマン人の中にニーファイ人の血筋のものが1人あった。この者は前に神の教会に属していた
が、今はもはや教会から離れていた。
ヒラマ5,36,かれがふりかえって黒雲をすかして見るとニーファイとリーハイとの顔が見え、どちらも天使の顔のように
非常に光り輝いて、2人の目に見える何者かと天を仰いで話し合っている様子であった。
ヒラマ5,37,かれが群がっている人々もまたふりかえって見よとよばわったので、群衆は力づいてふりかえって見ると
ニーファイとリーハイとの顔が見えた。
ヒラマ5,38,そこでかの者に”これは一体何のことか。この2人は誰と話し合っているのか”と問うと、
ヒラマ5,39,かれはその名をアミナダブと言ったが、アミナダブはこの時群衆に”2人は神の使と語り合っているのだ”
と答えた。
ヒラマ5,40,それで、レーマン人がアミナダブに”私らがどうするとこの黒雲が私らの上を離れて去るだろうか”と聞く
と、
ヒラマ5,41,アミナダブはこれに答えて”悔い改めて、アルマ、アミュレク、ゼーズロムが教えたキリストを信ずることが
できるまで先刻聞えたあの声に祈らなくてはならぬ。そうすればこの黒雲はまわりから離れ去る”と言った。
ヒラマ5,42,そこでレーマン人らはみな地をふるわせたあの声を出した御方に祈りはじめ、黒雲が離れ去るまで祈り
つずけた。
ヒラマ5,43,やがて身のまわりを見まわすと、黒雲はもはや離れ去って自分らを囲んでいなかったが、見よ、このたび
は1同のこらず火の柱にとりまかれていることを覚った。
ヒラマ5,44,ニーファイとリーハイもこの群衆の中に居た。かれらはみなとりかこまれてあたかも焔をあげる火の中に
居るようであったが、火は少しもかれらを焼かずまた牢屋の壁に燃えつくこともなかったので、1同はみな栄光の溢
れる、口に言い表せない喜びに満たされた。
ヒラマ5,45,見よ、神の聖い”みたま”が天をくだって群衆の心に入ったから、かれらは皆胸に火が満ちて暖まる心持
ちがして不可思議な言葉を語り出すことができた。
ヒラマ5,46,するとまたささやくような優しい声がして、
ヒラマ5,47,”心を安んぜよ。汝らは創世の前ゆおり在りわが深く愛する子を信ずる故、心を安んぜよ”と仰せになる
のが聞えた。
ヒラマ5,48,群衆はこれを聞いて声がどこから来るかと仰いで見ると、天の開くのが見え、天使らが天くだってかれら
に恵を施した。
ヒラマ5,49,これらのことを見たり聞いたりした者が約300人あった。この者たちは怪しまず疑わずに巡って行ってこ
れを伝えて弘めようと命ぜられた。
ヒラマ5,50,よって、かれらは出て行って民に教えを伝え、その見聞した一切のことをまわりの各所に宣べ弘めたか
ら、この証拠が偉大で確実であるためにレーマン人の大半はこの事を信ずるようになった。
ヒラマ5,51-52,そしてこれを信じた者たちは皆その武器をなげ捨て、その怨みを棄て、その先祖の言伝えをすて
て、かれらが占領した土地をニーファイ人に返した。