ヒラマ6,,
ヒラマン書 第6章
ヒラマ6,*-*,レーマン人、宣教師をニーファイ人に送る。平和と自由が全地に満ちた。リーハイの地とミュレクの地、
セゾーラムとその息子が殺される。ガデアントン強盗、政府を取る。
ヒラマ6,1,判事治世の62年目の中に、すでにこれらの事はみな行われてレーマン人は多くはもはや義人となった。
かれらの信仰は堅固でその行いは確実であったから、その義はニーファイ人の義よりも勝っていた。
ヒラマ6,2,ところが見よ、多くのニーファイ人は早くもかたくなになって、悔改めをせず、甚しくよこしまになったから、
神の道を拒み、また自分らに伝わった説教も予言もことごとくこれを拒んだ。
ヒラマ6,3,しかし、教会員たちはレーマン人が改心をしたことと、レーマン人の中に神の教会がたったこととのために
一方ならず喜んだ。そしてこのレーマン人らと教会の会員たちとは愛交わって共に喜びまことに幸福であった。
ヒラマ6,4,多くのレーマン人はゼラヘムラの地へやってきて、自分らが改心して次第をニーファイ人に話し、信仰を
しなくてはならぬこと、悔改めをしなくてはならぬことをかれらに勧めたが、
ヒラマ6,5,多くのレーマン人は非常な権能と威勢とを以て説教して、多くのニーファイ人を低くへりくだらせ、神と子
羊(キリスト)との謙遜な信者とした。
ヒラマ6,6,多くのレーマン人は北方の地へ行き、ニーファイとリーハイも国民に道を宣べるために北方の地へ行っ
た。このようにして63年目は過ぎ去った。
ヒラマ6,7,見よ、全地はことごとく平和であったから、ニーファイ人はニーファイ人の所とレーマン人の所とを問わず、
どこへでも自由に自分の行きたい所へ行けた。
ヒラマ6,8,レーマン人もまた同様で、レーマン人の所とニーファイ人の所とを問わず、どこへでも自由に自分の行き
隊所へ行けた。このようにして両国民は自由に交通し合い、思う通りに売り買いして利益を得た。
ヒラマ6,9,それで、レーマン人もニーファイ人も共に非常に富んで、南の地にも北の地にも金、銀およびあらゆる貴
金属を豊かに持っていた。
ヒラマ6,10,そして南の地はこれをリーハイと名づけ、北の地はゼデキヤの子の名をとってこれをミュレクと名づけた。
これは主がミュレクを北の地へ導き、リーハイを南の地へ導きたもうたからである。
ヒラマ6,11,この両地にはあらゆる金、銀および貴い鉱物があってこのいろいろな鉱物を清れんし、これを珍らしい
形に細工をする人々もあったから、国民は富むようになった。
ヒラマ6,12,かれらは北の方でも南の方でも豊かに穀物を作り、北の地でも南の地でも一方ならず栄え、人口がふえ
て地上で非常に強いものとなり、多くの牛の群、羊の群および肥えた家畜を飼った。
ヒラマ6,13,この国の女は労働をして紡績に従事し、はだかを覆うために細いリンネルの糸であらゆる織物を造り、ま
たほかのあらゆる織物を造った。このようにして64年目はおだやかに過ぎた。
ヒラマ6,14,65年目にも大きな喜びと平和とがあり、将来起ることについて説教と予言が多く行われた。このようにし
て65年目も過ぎて行った。
ヒラマ6,15,容? 判事治世の66年目、セドーラムは裁判の席についていたとき何者かに暗殺された。また同じ年に
民がセゾーラムの後任にしたセゾーラムの息子もまた暗殺された。これで66年目は終った。
ヒラマ6,16,67年目の始め、国民はまた非常に悪くなり始めた。
ヒラマ6,17,それは国民が長い間主から浮世の富を与えられて、扇動をされて怒ったり戦ったり人を殺したりすること
はなかったから、その富に執着して互いに自分の地位を高めるために利益を貪るようになり、それがためにようやく
暗殺、強盗、掠奪をし始めたからである。
ヒラマ6,18,このような暗殺と掠奪を行った者たちは、すなわちキシクメンとガデアントンとの始めた結社であったが、
ニーファイ人の中にさえもガデアントン結社の連中が多く居て、悪い方のレーマン人の中にはもっと多く居た。そし
て、この結社はガデアントン強盗殺人団と呼ば
ヒラマ6,19,大判事セゾーラムとその息子とが裁判の席についていたとき、これを暗殺したのはこの連中であった
が、これを捕えることはできなかった。
ヒラマ6,20,レーマン人は自分の同国人の中に強盗があったことを知って非常に心を痛め、これを地上から亡ぼし
てしまおうと、できる限りのあらゆる方法を尽した。
ヒラマ6,21,しかしニーファイ人の大部分は、サタンにその心を扇動されたのでこの強盗の結社に入り、どのように困
難な場合に於ても、人殺し、掠奪、盗みをしたために罰を受けないよう、互いにかくまって守ろうと言う誓約を立て
た。
ヒラマ6,22,この強盗団には、誓いを立てた仲間を見分けるために秘密の合図と秘密の言葉とがあり、その仲間がど
のような罪悪を犯してもほかの同類すなわち誓いを立ててこの結社に属した者から危害を受けない定めであった。
ヒラマ6,23,それでその国の法律とその神の律法に叛いて暗殺、掠奪、盗み、みだらな行い、あるいはあらゆる罪悪
を容易に犯すことができた。
ヒラマ6,24,この結社に属している者は、誰であってもその結社が行う悪事と憎むべき行いとをほかに洩すときは必
ず裁判をされる定めであったが、これは国法による裁判ではなくて、ただガデアントンとキシクメンとが起したこの悪
い結社の条例による裁判であった。
ヒラマ6,25,見よ、この結社が秘密にする誓いの言葉と約定の方法こそ、これを公にしたなら国民の滅亡を招きはし
ないかと思って、世の中の人に示してはならないとアルマがその息子に言いつけたあの秘密の誓いの言葉と約定
の方法である。
ヒラマ6,26,しかし、見よ。ガデアントンとヒラマンに授けられたあの歴史の中からこの秘密の誓いの言葉と約定の方
法を学んだのではない。私たちの始祖をそそのかして禁断の実を食べさせたあの悪魔がこの考えをガデアントン
の心の中に起させたのである。
ヒラマ6,27,この同じ悪魔はカインと謀って、弟のアベルを殺してもその罪が公然とは知られないと言ってカインをい
ざなった。その時以来、悪魔はカインやその同類と計ごとを立てたのである。
ヒラマ6,28,この同じ悪魔はまた天に届くほど高い塔を建てようと言う考えを世の人の心に起させ、その塔の所からこ
の地へやって来た者たちをいざなって悪事と憎むべき行いとをこの地の全体に弘めさせ、ついにここに居た民をこ
とごとく亡ぼしてこれを永遠の地獄へひきおとした
ヒラマ6,29,この悪魔はまた、ガデアントンにもっと悪事と暗殺とをつずけて行うことを考えさせ、また人間が造られた
ときから今に至るまでこのような悪事を世の中に行わせた。
ヒラマ6,30,あらゆる罪の源はこの悪魔である。かれは世の人心を支配する力に従って代々悪事と暗殺とを行わせ、
その陰謀と誓いの言葉と約定の方法と恐ろしい悪を行う策とを代々伝えさせた。
ヒラマ6,31,見よ、そのころこの悪魔はすでによくニーファイ人の心を支配していたから、ニーファイ人は非常に悪く
なり、その大部分は義の道を離れて神の命令を足の下に踏みつけ、よこしまであって自分らの欲をほしいままに
し、自分らのために金や銀で偶像を刻んで建てた。
ヒラマ6,32,このようないろいろの罪はみなまだ多くの年が経たないうちに起ったが、その大部分はニーファイの民を
治める判事治世67年目に起ったことである。
ヒラマ6,33,68年目にもニーファイ人の罪がますますひどくなったから、義人らはこれを非常に憂い悲しんだ。
ヒラマ6,34,これによって見ると、ニーファイ人がますます信仰を失って、その罪と憎むべき行いとがいよいよひどくな
るにひきかえ、レーマン人はその神を知る知識がますます加わり、神の律法と命令とを守って神の前に誠実正直
に暮したことが明らかである。
ヒラマ6,35,それだけでなく、ニーファイ人が罪悪におちいってその心がかたくなであるにより、主の”みたま”がよう
やくかれらから離れ去り、
ヒラマ6,36,レーマン人が容易に甘んじて主の道を信ずるから、主がますますその”みたま”を授けたもうたことが明ら
かである。
ヒラマ6,37,レーマン人はガデアントン強盗団の連中を捜索して、その中のひときわ悪い者たちに神の道を宣べ伝
えたから、レーマン人の中にはこの強盗団が全くそのあとを絶った。
ヒラマ6,38,これに反してニーファイ人は、この強盗団の中でひときわ悪い者たちを始めとし団全体を助力して維持
したから、この結社はニーファイ人の全国にはびこり、義人の大部分さえも誘惑して結社のすることを賛成させ、結
社が掠め取った物を配分し、一しょに暗殺を行わせ
ヒラマ6,38-1,秘密結社に入らせた。
ヒラマ6,39,このようにしてこの強盗団は政府の支配権を全部奪いとり、貧しい者、柔和な者、神に従う謙遜な者た
ちを足の下に踏みつけ、かれらを撃ち、かれらを裂き、かれらの願いを拒んだ。
ヒラマ6,40,これによって見ても、ニーファイ人がすでに恐ろしい状態におちいり、永遠の滅亡に陥ろうとしていたこ
とが明らかである。
ヒラマ6,41,これでニーファイの民を治める判事治世68年目は終った。