このカードが持つ『シンクロ召喚時に相手の場・手札・墓地からカードを1枚ずつ同時に除外する』という効自体も確かに強力だが、それ以上にこのカードは多方面で優遇されいる。
まず除去効果が『破壊を伴わない除外』であるゆえに、このカードは『破壊』への耐性・対策を持つカードを無視して相手のモンスターを消し去ることが可能。
『破壊』に耐性のあるカードは数あれど、除外に耐性のあるカードはほとんどないのである。
さらに効果が手札にまで及ぶため1キル対策のお供である『バトルフェーダー』をはじめとした、手札の対抗策すらも除外されてしまう。
(カードの情報が出たときは『手札を見て1枚選んで除外』ではないかという噂もあったが、流石にそこまでは無情ではなくランダムで除外となった)
極めつけにトリシューラの効果はどういう理屈か『効果解決時に除外対象を選ぶ=発動時には対象を取らない効果』という裁定が下され *1、
『効果の対象に選ばれない』効果を持つカードでも容赦なく除外できる特権がある。
その上処理ルールの関係で
この効果に対する相手の回避行動などが全て終了した後で除外するカードを決められる。
『亜空間物質転送装置』等で本命を逃がしても、他のカードが除外されてしまうため被害量が変わらない。
またこのカード自体を破壊してもルール上効果を無効にはできないので『奈落の落とし穴』に落とそうが、最終的にはほぼ必ず3枚除外されるという鬼畜仕様。
ここまで来るとこいつを前に立っていられるのは耐性効果を初めとした複数の効果を持つ(が召喚難度が高く、スキも多い)『毒蛇神ヴェノミナーガ』や、
異次元シリーズ及び『奇跡のジュラシッグエッグ』等の除外への耐性を持つモンスター、そしてコイツの効果の発動及びシンクロ召喚そのものを無効に出来るモンスターくらいであり
どれもコイツほど様々なデッキに入るような高い汎用性を持ったカードではない。
専用のデッキ構築をしなくてもそれなりに出せるため「 素材を指定しないシンクロは強い」という事実が当初から現在まで続いており
このトリシューラも素材を指定していないのが強さの一つとなっている。
(同じ素材指定なしなのにこのカードと同じレベルなのが災いし、存在価値なしとまで断言された『A・O・J フィールド・マーシャル』なんてやつもいるが…)
攻撃力2700というのもミソで、デッキに入れられる最大枚数である3体並べてダイレクトアタックを決めれば2700×3=8100のダメージとなり、
遊戯王OCGの初期ライフ8000をちょうど削りきれる量となる。
一般的に攻撃力2700のモンスターは「戦闘破壊した相手モンスタ-を自分フィールド上に特殊召喚できる(=奪って自分のものにできる)」という
これまた狂った効果+シンクロ素材指定なしという攻撃力2800のシンクロモンスター『ゴヨウ・ガーディアン』の餌食になるか否かの
所謂『ゴヨウライン』の2800に ギリギリ届いてないことで皆評価がパッとしないのだが、
こいつの場合はゴヨウなんぞが出てくる前にはデュエルが終わっている。
ちなみにゴヨウは2011年3月の制限改訂で禁止カードになっているため、現在はこのラインは消えている。 自分がゴヨウになってどーする
登場直後の無制限時代は、デッキ内容によってはこのカードを1ターンに3枚も召喚して合計9枚のカードを除外するなどといった暴挙が出来た。
しかもさらに酷い場合だと、その後なんらかの手段でこのカードをデッキに戻しまたシンクロ召喚して効果を再発動することで、
先攻で相手の手札を5枚除外するというコンボが割と普通に見られた。
遊戯王は初期で手札が5枚なのでようするに相手の手札全滅。
相手は返しのターンで新たに引いたカード1枚だけで合計攻撃力8100のトリシューラ3体を防ぎ切らなければならないのだ。
格ゲーで言えば開幕直後に死兆星+ゲージ空まで持っていかれるようなもので、無論そんなことされればほぼ負け確定である。
設定上では『魔轟神』に対抗するために復活させられたはずなのに、その魔轟神デッキとの相性が妙に良く一気にこのカード大量召喚するといったことが多発していた。
その他にもBF、ガエル、真六武衆などの多くのシンクロ召喚を主力とするデッキで切り札となり、特にトリシューラを3枚投入した手札0枚で効果発動するカード群で構成された『インフェルニティ』は登場時の不安定さはどこへやら、
圧倒的な1キル性能で一時期環境の一、二を争う強さヘと躍り出たこともあった。
なお『インフェルニティ』の使い手・鬼柳京介の声を演じた小野友樹氏もこのデッキを使い(オリジナルで考えたトリシューラ召喚セリフを叫びながら)関係者大会で優勝を決めたという。
1ショットキルで満足するしかねぇ!
肝心のトリシューラは口上を叫んだ後、トラップカードで戻されるという痴態までも披露してしまったのだが…
(アニメにおける切り札はワンハンドレッド・アイ・ドラゴンやインフェルニティ・デス・ドラゴンというそれぞれ別のドラゴン、もしくは『地縛神Ccapac Apu(コカパク・アプ)』であり
トリシューラは一部ゲームの隠しデッキくらいでしか使っていない。ついでに補足しておくと小野氏もデスドラ等をちゃんと使用している。)
これでも往年の『カオス』に比べるとまだマシという声もあり、10年の歴史というのは実に深いものがある……かもしれない。
ちなみにこのカオスというのは『混沌帝龍 -終焉の使者-』、『カオス・ソルジャー -開闢の使者-』、『カオス・ソーサラー』の事をいい、いずれも禁止指定経験を持つ。
流石にこんなカードが野放しにされるわけもなく、高速でデッキ1枚制限送りになった。とはいえ1枚だけでも脅威としては申し分ない性能なのだけども。
(この制限送りも遊戯王の歴史の中では異常な早さだが、それでもトリシューラより短期間で禁止送りになった危険過ぎるシンクロモンスターも約1枚いたりする) *2
設定の通りデュエルで暴走した結果と言える。
ちなみに氷結界のシンクロモンスターは4枚存在するが
その内の3枚が制限されている。
カードパワー強すぎってレベルじゃねーぞ!
他の2枚は、手札の続く限り対応の難しい「手札に戻す」で容易に場を殲滅(特にシンクロモンスターは手札に戻れずエクストラデッキに戻るため事実上完全な除去になる)、遊戯王のパワーバランスを勢い良くひっくり返したブリューナク。
他のカードを絡める事によって1ターンキルが可能な上、トリシューラを絡める事によってタイムオーバーデス(時間切れによる勝利を狙う戦法。現在はルール改訂により不可能だがそれ紛いの事が可能)紛いな行為が可能なドゥローレン。
唯一規制のかかっていないグングニールはシンクロ素材の制限がありデッキを選ぶだけで、ポテンシャルは高い良カードである。
なお、氷結界自体は足止め用のロックパーツをメインとしたデッキであり、下級モンスターを複数並べ場を硬直、隙を見て圧倒的パワーのシンクロを召喚し攻撃に転ずるというスタンスのデッキとなっている。
しかし各種氷結界のシンクロは素材の制限がほぼ無かったため、現実は汎用性の高いシンクロモンスターだけ幅広く愛用、アクの強いその他はマイナーに。
「氷結界のエースカードはデッキを選ばない」というのは1デッキカテゴリとしてどうなんだと言う意見も見受けられたが
氷結界の設定が明らかとなり、シンクロ以外のエースカードも獲得した現在ではさほど違和感は感じさせない形に収まっていない事もない。
デュエルターミナルの新規テーマの中でも「効果がバラバラで統一する意味が無い上に弱い」と言う酷い扱いを受けているが
2011年3月に一部ルールが改定され、多くの効果モンスター(上記のブリューナクを含む)が実質弱体化するのだが、このトリシューラには
全く影響がなく
時代がシンクロ召喚から『エクシーズ召喚』に移った後も、変わらず猛威をふるった。
それどころか、とあるエクシーズモンスターとブリューナクとインフェルニティを交える事で
トリシューラを無限ループさせるコンボが発見された。
制限によって勢いが収まったかと思ったら次は別世界のカードと協力して世界を破壊するつもりのようである。
上記の通り鬼柳が使用したインフェルニティとのコンボというあたり妙な縁である。
だが
2012年3月の制限改訂により、ついに禁止カードに指定された。
氷結界の鏡「はぁ、はぁ、やっと…封印できたか・・・」
先述の通り既にヴェルズ・ウロボロスという後継者が生み出されているため、シナリオ通りの展開とも言える。
ヴェルズ化した方はというと、元となったこのカードに比べて効果が「1ターンに3つの内どれか1つ」とコンパクトになっており概ね弱体化と見ていいレベルに収まっていた。よくやったヴェルズ
…とはいえ汎用性の非常に高いカードであるため油断は禁物である。
とか言ってたら今度はよりにもよって
ウロボロスの方をその名の通り無限ループさせるコンボが発見。
文字通り
始まりも終わりも無い、死と再生の狂宴の幕が開いてしまった…
(シンクロエクシーズ蘇生ループ的な意味で)
トリシューラが禁止なら、ウロボロスで満足するしかないじゃないか…
しかし、
2013年9月の制限改訂より制限カード復帰が確定。
環境がエクシーズ召喚メインに移行している上、今回は更なる壊れカードが
5枚一度に最短禁止記録を塗り替え
無制限から直接禁止入りしており、
それらと唯一の入れ替えであることを考えると代償としては充分…なのか?
さらに制限改訂の周期が早まることが決まり、環境変化に振り回される状況はまだ続きそうである。
意外なことに魔法・罠カードのイラストでは不遇な扱いを受けていることが多い。
この超性能、そして1プレイ100円で入手できるカードは50数種類中1枚(≒1枚あたりの単価が
通常パックの3倍
)というDTの仕様の関係で、
シングル売り(メーカー公式のパック等ではなくカード専門店による中古品のバラ売り)の値段は高騰。
1枚で8000円やら9000円やらの値段が平気で付けられて、よりレア度の高いシークレットレアの場合は1万円を普通に超えていた。
現在は再録され値段は落ち着いた感はある(2700円前後)が、再録でも封入率は低く、依然として入手は大変。
更に米版のゴールドレアとウルトラレアは再録された後にもかかわらずこれの何倍も高く、約2万円で取引されていた。
通常こういったバランスブレイカーなカードは嫌われる傾向があるが、トリシューラの場合OCG世界と現実の環境での強さが見事にシンクロし(シンクロ召喚なだけに)妙な人気を誇り
禁止になったあともしばらくは高止まりしたがしばらくするとシークレットを除くバージョンは1000円をきるようになった。
だが今回の復帰により、再びの高騰が予想される。
ちなみに「トリシューラ(Trishula/Trisula)」とは、ヒンドゥー教の神、シヴァ神が持つ三つ叉の槍の事である。
シヴァ神はこの槍で3つの悪魔の都市、「金で出来た都市」「銀で出来た都市」「鉄で出来た都市」を焼き尽くした。
三つ首のイラストや、手札・フィールド・墓地の3ヶ所に及ぶ効果はこれが元ネタと思われる。
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