マタンゴ


1963年公開の東宝特撮サスペンス映画『マタンゴ』に登場する怪獣
映画そのものは海外小説『夜の声』を原案としており、名前の由来はツチグリというキノコの東北地方での呼び名。
ネーミングはこの作品独自のものだが、『遊☆戯☆王』シリーズや『ドラゴンクエスト』シリーズにもこいつが元ネタと思われる同名のモンスターが登場したり、
ライブ・ア・ライブ近未来編では所謂マジックマッシュルームをイメージした薬物として名前が使われたりしている。

霧に覆われた謎の無人島に群生する変異キノコを食べた人間の成れの果て。
元凶となったキノコは、劇中では「どこかの国が行った水爆実験の放射線によって変異したキノコ」と設定されており、
このキノコ自体は味は美味らしいが高い中毒性と幻覚性があり、一度これを口にしてしまうと食べる事を止められなくなり、
やがて冬虫夏草のように食した人間の全身に菌糸が回って身体のあちこちからコブのようなものができ、
次第に顔の輪郭も崩れて元の顔も判らない怪人へと変貌する。
最終的に至る、手足の生えた完全なキノコそのものと言うべき怪物と化した成体が「マタンゴ」である。
変身途上は人間の面影はまだ辛うじてみられる他、無施錠のドアを手指で開けたり、
背後から人間を襲って島の内陸部に拉致するなどの運動能力や知能が残っており、
実際に劇中の個体はまるで変貌する自分の姿を見たくないとでも言わんばかりに鏡を全て割っていた。
しかし、成体のマタンゴになると完全に自我は消え失せ、もはや本能でしか動かないが、
マタンゴは共通して仲間を増やそうとするかのように他生物にキノコを食わせようとする習性がある。
予告や劇場公開当時のポスターでは「吸血の魔手で人間を襲う」と紹介されているが、劇中ではそのような描写は無い。

同作は、遭難した末に辛くも生還して東京の病院に収容され村井という男の口から語られた体験談という形式になっている。
事の発端は、村井を含めた太平洋にてヨット旅行に出た7人の若者達が、突然の嵐で舞台となる謎の無人島に漂着してしまった事から始まった。
そこで彼らが発見した難破船には少数の食料や未知のキノコの標本が残っていたものの生存者はおらず、
「船員が日々消えていく」と書かれた日誌や「キノコを食べるな」という不気味な警告が発見された。
しかし、無人島にはこのキノコ以外に一切食料が無く鳥達も近付かないため、
漂着した生物は脱出しない限りはマタンゴのキノコを食すか飢え死にするかの二択を迫られる状況であった。
7人は当初こそキノコに手を出さず、理性を保って協力していたが、やがて飢えやストレスから食料と女性を奪い合って対立。
やがて、島の奥からは等身大のキノコに似た不気味な怪物「マタンゴ」が出没し始め、
あるものは自ら命を絶ち、その他の者は1人、また1人と禁断のキノコに手を出してマタンゴと化してしまった。
その後、唯一キノコに手を出さずマタンゴの魔の手からも逃れてヨットで島を脱出した村井は幸運にも救助されたが、
あまりにも荒唐無稽な話に狂人扱いされて精神病患者用の鉄格子に入れられてしまった。
しかし、医師達は村井の話を信じざるを得なくなる。
何故なら、直接口にせずとも胞子を吸った時点で手遅れとでも言うかのように、村井の顔にはマタンゴのキノコが生え始めていたのだから!
(結局食べてしまったという説もあり、村井役の俳優もそう解釈して演技した模様)

同社のヒット作「変身人間シリーズ」*1の流れを汲む怪奇サスペンスだったのだが、興行成績は『宇宙大怪獣ドゴラ』と並んで成功とは言えない結果に終わり、
これ以降の東宝のSF映画製作は『ゴジラ』シリーズなどの怪獣路線へ吸収されていった。
しかし、リアルタイムで見た人達にキノコへの強烈なトラウマを植え付けた映画としてファンの間では隠れた傑作と知られており、
前述した通り複数のゲーム作品にマタンゴをモチーフとしたモンスターやアイテムが登場する他、
『パタリロ!』や『翔んで埼玉』で知られる魔夜峰央氏も、美食家の少年が怪しげな中国人の経営するホテルで美味しいキノコを食べたら、
それが食べた者を苗床にする危険なキノコで……という本作のオマージュを感じるホラーコメディ短編『茸ホテル』を執筆しているなど、
マタンゴをオマージュした設定の出て来る作品は様々存在する。
主演の久保明氏も「子供の頃に本作品を観てキノコを食べられなくなった」という感想を多数受け取ったと語っている。
実際、『ゴジラVSスペースゴジラ』で大久保晋を演じた斎藤洋介氏も本作を見てキノコにトラウマを植え付けられた事を語っている他、
海外でも『オーシャンズ』シリーズなどで知られる映画監督のスティーヴン・ソダーバーグ氏は、
幼少期に同作を見てから大人になるまでキノコが食べられなかったことを告白している。
また、『ウルトラ』シリーズに登場するバルタン星人の「フォッフォッフォッフォ…」というあの特徴的な声は元はマタンゴのものであり、
加工したものが使われている(より正確に言えばバルタン星人より前にケムール人にも使用されている)。

2008年には角川ホラー文庫で東宝に許諾を得た『マタンゴ 最後の逆襲』という続編が発売されている。
執筆者は『温泉殺人事件シリーズ』などで知られた吉村達也氏。

余談だが、作中で食べられたキノコは米粉を蒸したもの。世田谷の東宝撮影所の近くにある成城風月堂という和菓子店に特注したという証言もある。
さらに出演者の提案で砂糖を加えた所、とても美味しいと評判で、普通に間食として楽しまれていたそうな。
某ヘルヘイムの実もこの辺は見習うべきだったんじゃなかろうか。
現に同作の二号ライダーを演じた元パティシエから「俺なら美味しく作れる」とか言われちゃったし

更なる余談として、村井達7人の設定は当時の有名人(芸能人とは限らない)がモデルなのだとか。


MUGENにおけるマタンゴ

カーベィ氏の製作したキャラが公開中。
kMIKEj氏提供のスプライトを用いて作られている。
パンチやキックなどの近接技や飛び道具の「胞子」や連発不可能だが相手を拘束する「あまいいき」などの技で戦う。
超必殺技は1ゲージ消費で強力な飛び道具である「必殺胞子」、画面上に2体までオートで動く仲間を呼ぶ「なかまをよぶ」、
低威力だが一定確率で相手をマタンゴに変える即死技(自分の残りライフが少ないほど確率上昇)となる「マタンゴ化」の3つ。
7P以降は仲間が常に2体出現し、12Pはマタンゴ化の成功率が100%になる。
AIはデフォルトで搭載されている。
参考動画

出場大会

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*1
所謂「変身ヒーロー」ではなく、「怪物に変身してしまった人間が事件を起こし、それを主人公達が解決する」という内容の作品群。
『美女と液体人間』『電送人間』『ガス人間第一号』の三作が存在し(ただし電送人間だけは電送装置を使っているだけの唯の人間)、
『透明人間』と『マタンゴ』が零作目と四作目に数えられる事もある。


最終更新:2025年04月09日 14:26