ケムール人


ピロロロ……
フォ~~フォフォフォ~フォッフォッフォッ……
ピロロロ……

+ 担当声優
二又一成
『ウルトラマングラフィティ』
関智一
『ウルトラゾーン』第23話(ケムール裁判員の声)
黒石高大
『ウルトラマンギンガ』第2話(SDの声)
根岸拓哉
『ウルトラマンギンガ』第5話(SDの声)
外島考一
『スパークドールズ劇場』、『ウルトラマンX』第9・第16話
辻本貴則
『ウルトラマンZ』第18話

円谷プロの特撮作品『ウルトラシリーズ』に登場する宇宙人。別名「誘拐怪人」。
初出は『ウルトラQ』で、怪奇性が売りの同作の中でも指折なホラー&サスペンス回として知られる第19話「2020年の挑戦」。
『ウルトラシリーズ』において、初めて登場した巨大化能力を持つ宇宙人である。

+ 詳細な原作設定
2020年の世界に存在するケムール星から地球に来襲した宇宙人。
種族全体が高齢化により滅亡の危機にあり、医学の発達で500年も生きる事が出来るようになったものの、
肉体の衰えだけはどうにもできず、地球人の若い肉体を得るためにやって来た。*1
頭に伸びる管のような部分から発射する「消去エネルギー源」というスライム状の物質を分泌し、
触れた人間を文字通り「消去」させて任意の場所に転送する能力を持ち、これを利用して不可解な誘拐事件を次々と起こした。


戦闘機消失事件の目撃証言を誰にも信じてもらえず解任された天野という元自衛隊員(演:小林昭二)と共に、調査をしていた万城目淳達は、
この事件が「神田博士」と呼ばれる人物が書いた『2020年の挑戦』という小説の内容とそっくりだという事を突き止めるが、
口封じのためか万城目が消去エネルギー源により拉致されてしまい、
辛くも難を逃れた江戸川由利子も、偶然にも謎の液体(消去エネルギー源)を写真に収めていた事で、
証拠を隠滅せんと狙われる事になり、宇田川という刑事が護衛につく事になる。

その後、別口で調査していた戸川一平により、
「『2020年の挑戦』とは神田博士が書いた小説などではなく、博士がXチャンネル光波の実験中に交わしたケムール人との交信記録である」
という予想外の事実が明かされる事になる。
電子工学の権威である神田博士はXチャンネル光波の実験中にケムール人のテレパシーをキャッチしてしまい、
ケムール人の襲来を予期して「2020年の挑戦」を執筆し警告を発したが、
親友だった宇田川刑事に狂ったと判断されて精神病院に無理矢理入れられていたのだ。
由利子が再度ケムール人に狙われた事、そしてケムール人が挑発するように姿を現した事で、
神田博士の話が真実であった事に驚く宇田川刑事だが、一瞬目を離した隙を突かれて由利子がさらわれてしまう。

一方、一平達は神田博士の研究所に向かうが、一足遅く神田博士はケムール人によって消されていた。
資料もほぼ消されていたが、博士が用意していたケムール人の弱点である「Xチャンネル光波」の源「Kミニオド」の試作品は辛くも残されていた。

その頃、由利子は夜の遊園地で目を覚ます。そこにいたのは何と消されたはずの万城目。
再会を喜ぶ由利子だったが、間一髪で宇田川刑事が大声を上げて由利子を止める。
その瞬間、目の前に現れた偽物の万城目はケムール人の姿になった
宇田川刑事と駆けつけた警察は逃げるケムール人に発砲して応戦するがケムール人には通用せず、しかも巨大化して暴れ回る有様だった。
しかし、一平達の活躍で東京タワーからXチャンネル光波が放たれて、ケムール人の頭部に命中。
ケムール人は完全に消滅し、これに連動して攫われた人達も煙と共に遊園地に再転送されたのだった。

何かと怪獣の被害に遭う事の多い東京タワーだが、逆に東京タワーによって倒された初めての怪獣である。

+ かくして一件落着かと思われたが……。
ケムール人が倒された後も、撒き散らされた消去エネルギー源の液体は未だ効力を保っていた。
一安心した宇田川刑事はふと水たまりを見つけ、もう大丈夫だろうと踏んでしまった結果、
悲鳴を上げながら消滅するという、見た目はギャグっぽいが後味の悪い終わり方をするのであった。

スーツアクターは後にウルトラマンを演じた事で知られる古谷敏氏。
俳優活動がメインだった氏は当初「顔出しせずに演じる役なんて嫌だ」と拒否したのだが、撮影間近で他に適任者を探す時間がないと食い下がられ、
俳優仲間まで古谷氏を説得する側に回ったため、渋々やらざるを得なかったとの事。
もっとも、その際に見せた演技や、小顔で手足の長い氏の特徴的な体型に惚れ込んだ成田亨氏から、
ウルトラマン』をデザインするにあたって直々にスーツアクターに指名される事になるのだが、それはまた別の話。


+ そっくりさん?

『ウルトラマン』最終話に登場するゼットン星人のスーツの頭部はケムール人(後述の二代目)の流用であり、
マスクの向きを前後逆に変えただけなので、全体的なフォルムは両者は非常にそっくりである。
書籍『ウルトラマン ベストブック』では、両者は同種ではないかと推測されている。
尤も、平成になって両者再びスーツが作られ出演するようになっても、案外共演の機会はそんなに無いのだが。

その他、『ウルトラQ』のリメイク作品である『ウルトラQ dark fantasy』にはケムール人をオマージュした「電波怪人レキューム人」が登場している。
このレキューム人もスーツが現存するため、ニュージェネレーション期にモブとして何度か登場しているが、
やはりオマージュ元であるケムール人とはあまり絡んでいない。

他には『ウルトラマンティガ』における初代ウルトラマンの客演回「ウルトラの星」に登場したチャリジャのデザインもケムール人のオマージュである。
ケムール人は上記の通り古谷氏がウルトラマンになる切っ掛けを作った存在でもあり、
「ウルトラマンの始まり」を描くエピソードには相応しいモチーフと言える。

また、ボイスドラマ「ウルトラマンゼット&ゼロ」では、
宇宙警備隊の訓練校の宇宙人に関するテストで「ケムール人とゼットン星人が並べて出題」されており、
ゼットからは「似すぎでしょ! 引っかけ問題ですよね!?」と愚痴っていた。

+ 以降の作品のケムール人

第33話「禁じられた言葉」にて、メフィラス星人配下の宇宙人として東京丸の内のビル街にバルタン星人ザラブ星人と共に出現。
ちなみに出現時に科特隊の面々は「あっ!ケムール人!」と既知であるかのような反応をし、
更にムラマツキャップが「みんな科特隊が倒したはずだぞ!」と叫んでいたため、
『ウルトラQ』と『ウルトラマン』は地続きの世界観である事を考慮しても、少なくともケムール人は科特隊は倒してないだろ、とよく突っ込まれるが、
見えない所で科特隊とケムール人の戦いがあった説や、前述の天野自衛官がムラマツキャップと同一人物(役者的な意味で)説などが語られている。
1992年に発売された円谷プロ監修のPCゲーム『ウルトラ作戦 科特隊出撃せよ!』は、ウルトラマンが地球に来る前に科特隊が独力で怪獣や宇宙人と戦っていた時期を描いた前日譚であり、
第4話でケムール人がバイオ怪獣イオゴンを引き連れて科特隊と戦っており、この台詞に対するフォローになっている。
また、この時のスーツのボディは『ウルトラセブン』のキュラソ星人のボディに流用された。
これを踏まえて、初代の設定に絡めて「メフィラス星人からキュラソ星人の体をもらった」と紹介されたことがある。


バイクに乗って誰かを追い回す事に快感を覚える矢神という男がバルキー星人(SD)に利用された事でダークライブ(変身)した姿として登場。
特殊な形で人間が変身したケースだが、『ウルトラ』シリーズにおいて初めてウルトラ戦士と戦った個体である。
原典同様、等身大と巨大化を使い分けられ、素早い身のこなしとお馴染み消去エネルギー源液を武器とするが、
ヒロインである石動美鈴に股間をモップでぶっ叩かれ悶絶するなど、コミカルな一面も。

ウルトラマンギンガに倒された後は、スパークドールズを主人公である礼堂ヒカルが回収し、何度かモンスライブした。
火災現場に飛び込むため防火服代わりに使ったり、消去エネルギー源液で火事を消火しようとするも可燃性だったので逆に延焼させてしまったり、
自分自身に消去エネルギー源液をかける事で任意の場所にワープするなど、細かい所で活躍した。


第9話「われら星雲!」にてババルウ星人率いる暗黒星団チームの一員として登場。
何かと似ていると言われがちなゼットン星人とついに共演してしまった。
なお、チームメイトが普通に日本語を喋っている中で、何故か一言も台詞が無かった。無口な性格なんだろうか。
第16話「激撮!Xio密着24時」にもダダやセミ女と共に別個体らしきケムール人が登場している。
ダダ率いる犯罪組織の一員で、車からも逃げ切れるほどの健脚を披露している。
Xioに逮捕された後は黙秘を貫いていたが、神木隊長の刑事ドラマ顔負けの取り調べを受け、陥落して全てを自供した。
ちなみにこちらの個体は普通に日本語を喋る。


「…お前、人間じゃないな!?
 半分は人間…半分は、ウルトラマン!私と同類だ!
 私はケムール人。我々の来訪は、これが二度目だ!」

現実で2020年放送の本作における第18話「2020年の再挑戦」に登場。
本編の54年前と同様、再び地球人を誘拐し、合成手術によって若さを奪うために来訪した。
しかし、本編に登場した個体は、かつて拉致したカオリという女性と合成手術を行った結果、事故で2つの精神と肉体が混じり合った状態になってしまった。
だが、カオリの姿のまま肉体を操れ、カオリの姿なら地球人にも怪しまれないという判断から、自ら地球人の誘拐担当に志願したという。
お前ら人間に変身出来るじゃんとか突っ込んではいけない
ケムール星(?)ではケムール人としての人格が完全に肉体を支配していたことから、誘拐担当として抜擢され地球に襲来した。

実験も兼ねてか様々な人達を消去エネルギー源で次々と拉致していたものの、
故郷の地球に来訪した事で地球人カオリの意識が覚醒、時折カオリが肉体の支配権を奪い返して行動していた事から失踪事件が明るみに出始める。
ナツカワ・ハルキによって正体を暴かれた後、懐かしのケムール走りで逃走。
観覧車に辿り着くと、そのカゴの一つを消去エネルギー源液の詰まった時限爆弾に変える。
いずれ爆発すれば、雨雲に混じって消去エネルギー源が東京中に降り注ぎ、多くの人間を拉致出来る仕掛けになっているのだ。
そうはさせないとハルキはウルトラマンゼット デルタライズクローに変身。
ゼットにも「ウルトラ厄介だぜ!」と称される消去エネルギー源こそ驚異ではあるものの、
(冒頭では人間達どころか、市街地に現れたパゴスをも跡形もなく消去させている)、
肉弾戦が得意というわけでもなく、最強形態のデルタライズクローには普通に押されていたが、
ゼットの側も、カオリの精神がまだ生きているため一思いに倒す事が出来ず、苦戦してしまう。
しかし、意を決したカオリの精神がまるでスーツの中の人が脱ぎ出すが如く自力で脱出。
覚悟を決めたハルキはデスシウムスラッシュでケムール人とカオリの精神を分断させ、
すかさず追撃のビームをお見舞いして残ったケムール人の本体を粉砕。
消去エネルギー源爆弾も異次元に送り込んで爆発を未然に阻止。
こうして、誘拐された人々とパゴスは無事に戻ってきたのだった。

『ウルトラマンZ』はM78バースとは別の宇宙が舞台なのだが、この世界でも54年前に『ウルトラQ』と同じような事件があったらしい。
作中にはあの『2020年の挑戦』の文庫本もカオリが所持する形で登場している。
記録によれば、かつては民間人と警察隊の協力によって撃退されたらしく、
ストレイジ隊長のジャグラス・ジャグラーヘビクラ・ショウタは、
特殊な武器もウルトラマンの助けも無く恐るべき宇宙人を倒した英雄達を「勇敢なる先人達だ」と讃えていた。
後に明かされたヘビクラの真の目的を考えても、建前抜きの心からの賛辞であった可能性は高い*2

なお、この回で声を演じた辻本氏は同回の監督も兼任。
氏は他のシリーズ作品でもキャストとして出演しており、前作『ウルトラマンタイガ』でゴロサンダーの声を演じた際も、
その回の監督とメイン怪獣の声を兼任している。

また、一応TV作品と言えなくもないが、過去にサントリー「アイスジン」のCMに大魔神などと一緒に登場した事もある。
ポケモンショック前のCMゆえ少々フラッシュ演出がきつめなので、視聴の際はご注意を。
ソーダとジンでケムールGIN♪

+ TV作品以外におけるケムール人
  • 漫画『ウルトラ忍法帖』
悪の組織「朧党」で冥府羅州烈風斎(メフィラス星人)の部下「怪夢留」として準レギュラー出演している。
初期は台詞すらない雑魚キャラだったが、回を重ねるごとに原作寄りの黒っぽいデザインからデフォルメされた顔に変わり、
何十人もいる戦闘員的ポジションから十人兄弟の「怪夢瑠十人衆」という設定に変更された。
ウル忍たちの長屋の床下に忍び込み、頭の管を伸ばして盗聴する「盗み聞きの術」といった小技も使っていた。

  • 漫画『ウルトラマン超闘士激伝』
メフィラス大魔王の配下「鋼魔四天王」の一員として登場。メンバー中最も大柄で性格も粗暴
パンチで地割れを起こしたり、数百メートルはあろうかという塔を一撃で粉砕する程のパワーに加え、
光線技を弾く重装甲型の装鉄鋼(メタルブレスト)をまとう事でウルトラ戦士達を苦しめた。
最後は必殺技の最中に割り込んできたタロウを握り潰そうとするが、
すんでの所でキング星から帰還したウルトラマンに殴り飛ばされ、母艦の壁にぶつかってからダウンした。
その後はメフィラスの頼みを受け、コダラー&シラリーからウルトラマン達を守るべく助っ人として加勢。
粗暴だった性格も嘘みたいに丸くなっていた。
ちなみに漫画では「ザラブと引き分けた」と一コマで済まされた(後に四天王同士の八百長と判明する)
銀河最強武闘会での様子はカードダスで描かれ、原作通りダッシュも得意なようだ。

  • 『大怪獣バトル』
第四期『大怪獣バトルRR』の第三弾から登場。
必殺技は、相手を連続で殴りつけ頭突きを食らわしたのちに観覧車を投げつける「ミスティックシュート」。
ダッシュして敵に体当たりする「ケムールアタック」、消去エネルギー源を発射して相手を消す「誘拐光線」。

  • 『ウルトラ怪獣擬人化計画feat.POP Comic code』
『ウルトラQ』の個体が擬人化した少女として登場。
何故か腐女子キャラであり、学園内の百合カップリングを覗き見して百合小説を書いている変態。
物語終盤では故郷への帰還を望むジャミラと共に地球旅行へ向かったが、ジャミラの不運に巻き込まれて無人の惑星に遭難してしまう。
しかし、(連載当時の)現在が2020年であること、そして消去エネルギー源を浴びればケムール星へ転送される事に気づき、
ケムール星で円盤を借りてジャミラを地球へ送り届けることに成功するが、誤ってキングジョーの攻撃で滅亡した2021年の地球に辿り着く。
その後、円盤のタイムワープ機能で2020年に戻った二人は他の擬人化少女たちと協力してキングジョーを倒した。
ケムール星には「地球は2020年で滅んだ」と時間改変前のデータを報告する事で侵略を諦めさせ、ジャミラの故郷を守ってもいる。

  • 『ウルトラ怪獣バトルブリーダーズ』
2020年の新年イベントクエスト限定入手のキャラとして実装。属性は「速」。
ステータスは回避と運(クリティカル率)が高い。射程2で移動力も高いのでアタッカー向きだが、攻撃力が低いのが難点。
固有スキルの「消去エネルギー源」は「攻撃対象を最もHPの少ない味方の側に移動」させる能力。
必殺技「溶解液噴射」は「攻撃対象を1ターン気絶させる代わりに、(最後の一体で無い限り)その対象を攻撃対象から外す」というもの。


MUGENにおけるケムール人

カーベィ氏の製作したキャラが公開中。
『Q』と『ギンガ』をミックスしたような技構成をしており。
設置技「消去エネルギー源」などによるテクニカルな攻め方が持ち味となっている。
有名なケムール走りも必殺技として扱われている。
超必殺技はいずれも1ゲージ消費で「ミスティックシュート」、「ケムールアタック」、
基本は100ダメージだが一定確率で相手を消去する即死技になる(自分の残りライフが少ないほど確率は上がる)「2020年の挑戦」の3つ。
特に「2020年の挑戦」はギャンブル性が強いが、うまく行けば窮地からでも逆転を狙える。
AIもデフォルトで搭載されている他、12Pでは消去液系の技が全て即死技になる。
紹介動画

また、同梱されているdefファイルを登録することで『マン』に登場した二代目も使用可能になる。
性能は変わらないが、その外見や一部の動きが変更される。

出場大会

出演ストーリー



*1
なお、ラジオドラマ「ウルトラQ倶楽部」などの一部媒体で「未来の地球人の成れの果て」と語られる事もあるが、
その場合「2020年から来た」「500年の寿命を持つ」のどちらかが嘘になってしまうため、
現在、公式ではこの設定は無かった事になっていると思われる。

*2
同回の監督である辻本氏とヘビクラを演じた青柳尊哉氏は、脚本を担当した継田淳氏に確認は取っていないものの、
作劇的な先達者への称えだけでなく、「『ウルトラ』シリーズの礎を創った偉人達に贈られた言葉でもある」という解釈でこのシーンを撮ったという。


最終更新:2023年12月01日 18:15