『FINAL WARS』より長らくの間休眠状態にあったが、
ハリウッドによる2014年の『GODZILLA ゴジラ』がヒットした事を受けて東宝は新たな日本版ゴジラの制作を発表。
その2年後の2016年、実に12年ぶりとなる国内作品『シン・ゴジラ』が公開され、好評を博した。
以降はかつてのように毎年映画が公開される事こそなくなってはいるものの、海外版との並行しての展開の他、
日本では初となる劇場用及びTVアニメが制作されるなど、新たな試みも行われている。
映画『シン・ゴジラ』(2016年)
現実(ニッポン)対 虚構(ゴジラ)。
スタッフに『 新世紀エヴァンゲリオン』等でお馴染みの庵野秀明氏や平成『ガメラ』シリーズの樋口真嗣氏らの起用、
シルエットは似通いつつも、旧来の日本版ゴジラとはある意味掛け離れた衝撃的なビジュアル、
更に着ぐるみ等造形物を一切使用しないフルCGによる表現等、
当初はファンから不安の声も上がっていたが、いざ公開されや否や瞬く間に大ヒットを飛ばす人気作となった。
本作のゴジラは身長118.5mとそれまでを凌ぐ大きさで、ともすれば 歴代最凶とも言われる圧倒的な能力を持つ天災の如き完全生物として描かれている。
放射熱線もこのゴジラだけの特別仕様で、もちろん一度吐けばビルも兵器もひとたまりもないのはいつも通り。
耐久力に関しても自衛隊の総攻撃を歯牙にもかけず、劇中で痛撃を与えられたのは架空兵器(原型であるMOPは現実に存在するが)であるMOPIIのみ。
現実を基にした兵器でダメージが入るという点から、ファンの間では「歴代最弱では?」と侮られる事もあるが、
そもそもにしてMOPの時点で60mのコンクリートを貫くという超兵器であり、単純比較は難しいとはいえメカゴジラクラスの破壊力を有している。
そのMOPの強化型であるMOPIIでも倒せなかったという時点で、生命力の恐ろしさは推して知るべしである。
本作では東京湾に突如として出現。
当初は水蒸気爆発と思われたが巨大不明生物である事が発覚。
その巨体から上陸しても自重で潰れると想定されていたが、蒲田より上陸し、都内を蹂躙した。
徐々に体を第四形態まで進化させ、自衛隊の攻撃すら物ともしない想定外の存在に政府は対策に奔走する。
やがて米国からの情報により、水中に不法投棄された放射性物質を摂取、進化した未発見の生物である事が判明。
膨大な遺伝子情報を持ち、体内で核分裂を起こし「繁殖ではなく自己進化で環境に適応する」、地球上で最も進化した完全生物。
その出現を予期していた牧教授は、故郷である大戸島の荒ぶる神「呉爾羅」になぞらえ、その生物をゴジラと名付けた。
ちなみにシリーズとしては初めての 54年版と全く設定を共有していない作品である。
制作現場ではやはりというか 先に設定リセットに成功していたライバルが引き合いに出されていたとか。
先に言ったように、特技監督はあっちと同じ樋口さんだしね
ただし、それまでの日本版シリーズのオマージュと思われる演出などは随所に見られる。
また、本作では「円谷英二が生まれておらず、"怪獣"という概念が存在していない」設定となっており、
怪獣という単語がまったく使われておらず、ゴジラは「巨大不明生物」「 完全生物」と呼称されている。
なお、スタッフが同じ『シン・ウルトラマン』に登場するゴメスは本作のゴジラのデザインが流用されている。
2023年には後述する山崎貴監督の推薦でモノクロ編集版となる 『シン・ゴジラ:オルソ』が公開された。
「私は好きにした、君らも好きにしろ」
アニメ『GODZILLA』3部作(2017~2018年)
また、『シン・ゴジラ』で盛り上がる2016年8月には 日本では初となる本格的なアニメーション作品が発表された。
3部作構成のシリーズであり、2017年に第1部『GODZILLA 怪獣惑星』、2018年に第2部『決戦機動増殖都市』と第3部『星を喰う者』が公開。
原案や脚本に『 魔法少女まどか☆マギカ』などで知られる虚淵玄を起用した事も大きな反響を呼んだ。
詳細は ゴジラ・アースの項目を参照。
本作のゴジラはシルエットこそ従来のものを踏襲しているが、その起源は「植物」とされており、
成長過程で多量の金属元素を取り込む事で突然変異した存在。体表は植物の根や樹皮、背鰭は柊の葉を思わせる形状をしている。
2030年の出現以来、作中の他怪獣達を遥かに上回る規模の被害を出しており、
死者にして数億人以上(他の怪獣達は数百万~一千万程度)、世界6大陸の内3つが壊滅状態の被害を出した。
大気圏内においても最大射程30kmを誇る「高加速荷電粒子ビーム」…即ち熱線と、
自身から形成される高周波電磁パルスによる「非対称性透過シールド」と驚異的な再生能力により、
40Mtの核出力でさえも仕留め得ぬ程の防御性能を武器とするが、
映画の前史小説『GODZILLA 怪獣黙示録』において
その最大の脅威は米空母の集団の「ど真ん中を真下から」穿った事からも窺える、その隠密性とも言われている。
肝心の映画の内容に関しては、良くも悪くも怪獣モノというよりSF且つ哲学的要素の強い作風であり人を選ぶものとなっているが、
これもまた新たなるゴジラ及び怪獣像に踏み込んだものである事には間違いないだろう。
TVアニメ『ゴジラS.P<シンギュラポイント>』(2021年)
抗えない未来《ゴジラ》を、覆せ。
令和では初めてとなるゴジラ作品にして、国内では初のTVアニメとして放送された。
ちなみに、シリーズでは初めてゴジラと核に関連性が持たされていない。
古びた洋館から発せられる謎の信号、そして電波怪獣ラドンを皮切りに次々と正体不明の生物…"怪獣"達が出現。
世界は"紅塵"によって赤く染まり始め、やがて最強怪獣・ゴジラがその姿を現し、驚異的な速度で進化を遂げてゆく。
とある孤高の科学者が残していった謎を解明し、今まさに訪れようとしている「破局」を止めるため、
天才的な頭脳を持つ「有川ユン」と「神野銘」、2人の主人公達が奔走する様を描いている。
脚本はSF作家の円城塔氏が担当。氏の作品の多くが難解な作風である事や劇場アニメ版の存在から放送前は不安視されていたが、
人間ドラマや謎解きが中心の作風となっており、各々で考察と議論を交わすファンの姿も見られた。
また、まさかの復活を遂げた ジェットジャガーも話題となり、劇中での活躍ぶりから新たなファン層を獲得している。
映画『ゴジラ-1.0』(2023年)
生きて、抗え。
国産実写映画としては『シン・ゴジラ』以来7年ぶりにして 令和時代初の作品。
「-1.0」は「マイナスワン」と読む。
初代より前の時代である戦後間もない日本(1945~1947年)を舞台にしている。このため、『シン・ゴジラ』同様に初代との繋がりは一切無い。
監督・脚本は「西武園ゆうえんち」のアトラクション『ゴジラ・ザ・ライド』と、
上述のようにゴジラが客演した『ALWAYS 三丁目の夕日』を手掛けた山崎貴氏。
山崎監督作品には 賛否両論が激しい物があったり、上記した『シン・ゴジラ』の高評価からの次回作のハードルが上がっていたりと
(山崎監督本人も自虐ネタとして述べるほど)、
懸念の声も多くあったが、それらを覆すかの様に興行収入・評価共に高い記録を挙げており、
翌24年3月には 第96回米アカデミー賞にて邦画初となる視覚効果賞を受賞する快挙を成し遂げた。 余計に次回作のハードルを上げちゃった
時代設定もあってか、 旧大日本帝国海軍で活躍した艦船や陸軍の新型戦車とゴジラの対決が堪能できる何気に珍しい映画でもある上に、
中には 初の実写映像化を果たした兵器も存在している。
また、2024年1月にモノクロ映像編集版 『ゴジラ-1.0/C(マイナスワン/マイナスカラー)』も公開された。
全体的に不気味で非人間的、非生物的、人智を凌駕した存在として描かれていた『シン・ゴジラ』等とは異なり、
縄張りを侵した人間や、攻撃を加えて来た兵器に対峙する際、視線や咆哮で明確な敵意が感じられたり、
標的とした人間を咥えて投げ捨てたり、顔の周囲を飛ぶ戦闘機に飛びかかろうとするなど、生物味溢れる行動が見られる。
また当初は恐竜然とした姿だったが、1946年にビキニ環礁で行われた原爆実験「クロスロード作戦」にて、
大量の放射能を浴びた事で現在の姿へ変貌した過程が明確に描かれている。
第二次世界大戦末期、故障した特攻隊戦闘機の緊急着陸場であった大戸島において伝説の竜「呉爾羅(ごじら)」として存在が語られており、
日本軍の大戸島防衛隊を壊滅せしめ、主人公である特攻隊員の敷島、整備兵の橘に多大な衝撃と恐怖、トラウマを刻み付ける。
そして敷島がどうにか機雷掃討艇員として戦後を生きて新たな人生を歩み始めた頃、異様に巨大化したゴジラが再出現。
米ソの冷戦が始まりつつある時代、米軍は軍事介入を断念し、防衛戦力を持たない日本政府は何ら対策を打つことができず、
やむなく解体・連合国への引き渡し待ちであった重巡高雄、駆逐艦雪風、響、夕風、欅に数隻の駆潜艇、忘れ去られていた局地戦闘機震電、
そして敷島ら、戦争を生き延びてしまった民間の復員軍人達がゴジラに立ち向かう事になる。
しかし物資戦力に乏しく、圧倒的な防御力と再生力を持つゴジラに対しては現状の戦力で撃破することは不可能。
そこで彼らはゴジラに大量のフロンガスボンベを巻き付けて水没させ、水圧で仕留める「海神(わだつみ)作戦」を実行するのだが……。
なお、山崎監督は『ゴジラ モスラ キングギドラ 大怪獣総攻撃』の影響を受けていると公言しており、実際に描写のいくつかが似通っている。
一例としては放射熱線の描写であり、本作のゴジラは尻尾の先から段階的にエネルギーをチャージした後、
口から細い熱線を発射、着弾した箇所に大爆発を発生させ、キノコ雲が立ち上る……といった風になっている他、
また焼け爛れた皮膚が一瞬で治癒するなどゴジラの異様な生命力、再生力についても明確に描写されている。
そして本作においてそもそも「呉爾羅」は何なのかついては一切不明のまま、動物なのか竜神なのか曖昧な存在となっている。
これらの描写や設定はGMK版のゴジラに対するオマージュだと言えよう。
ちなみに『ゴジラvsキングギドラ』でもラゴス島の恐竜「ゴジラザウルス」がゴジラの変異元として登場しており、
此方では逆に縄張りに侵入した米軍を蹴散らして、島に上陸していた日本軍守備隊を結果的に救っているのだが、
これはあくまでも「後にVSシリーズのゴジラに変異した恐竜」に過ぎず、大戸島の竜神「呉爾羅」ではないため、
ゴジラに変異する前の「呉爾羅」の映像作品への登場と、そして水爆ではなく原爆で変異したゴジラはシリーズ初である。
余談ながら本作公開とほぼ同時期に『 鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』『窓ぎわのトットちゃん』と、
第2次世界大戦~戦後間もない頃を描いた映画が立て続けに公開され、そのどれもが高評価を得ており、ニュースサイトでも取り上げられる状況になった。
|