操手データ移殖カートリッジシステム
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操手データ移殖カートリッジシステムとは、文字通りある機体に乗った際に操手のデータを記録して置き、それを別の機体に乗る際に移殖できるシステムだ。基本的に機装兵は、量産型の機体であっても、どうしても1機毎に若干のクセの様な物が出てしまう。そのため、機体を失った操手が別の機体に乗り換えようとした際など、たとえそれが同一機種であったとしても、機体毎のクセに戸惑ってしまい、慣れるまで以前の実力はなかなか発揮できない物だ。
それを解決するために聖華暦700年代半ばに開発されたのが、操手側の操縦データを記録し、それを新たな機体の魔導制御回路(スフィア)に教え込む事で機体の挙動を微調整し、限りなく以前の機体に近い操縦性に修正すると言う物である。もっとも最初の頃のシステムは、高価な機体制御用のスフィアと同等の物を用い、しかもわざわざ記録用スフィアの「調教期間」を丸1日から数日取って、操手の操縦データをわざわざ教え込まねばならなかった。その高価さ、面倒くささのためにこの最初期のシステムは、まったく普及しなかったのである。
聖華暦700年代終わり頃には、記録用媒体がスフィアそのものではなく、比較的安価なカートリッジ状の物に進歩する。更に運用方法も進歩した。カートリッジを操縦槽のスロットに差し込んでおけば、そのまま普通に数日間操縦しているだけでデータ取りが完了する。また集中してデータ取りの時間を取れば、短ければ30分、長くても2時間程度でデータ取りできる様になっていた。しかしこれでもまだ、このシステムの普及には至らなかった。カートリッジそのものは比較的安価になったのだが、機装兵に搭載される本体側の価格が高くついたのだ。
これほど高価なシステムを搭載するには、専用機やカスタム機でなければ割に合わない。しかし専用機やカスタム機は、万一機体を失った際に別の機体に乗り換えるとして、あまりに機体間の差異が大きすぎてデータの互換性が無い。つまりこのシステムを搭載する意味そのものが無い。ならば大量に生産されている安価な機体ではどうか?だが今度はこのシステムを積む事で機体の値段が上がってしまい、肝心要の「数」が揃えられなくなってしまうのである。結果的に、この時点でもこのシステムは普及しなかった。
そして聖華暦833年の末、ついにこのシステムは実用レベルへと至る。自由都市同盟の冒険者組合に軍より出向しているダライアス・アームストロング技師が、自分が開発した機装兵『アーミィ・アント』へ搭載するために本システムの改良を行い、見事成功したのだ。システムの量産性が桁外れに向上し、システム本体の価格、更にはデータの記憶媒体であるカートリッジの価格も、以前が嘘の様に値下がりした。大量生産を前提としている『アーミィ・アント』へ搭載するに相応しい物へと、このシステムは生まれ変わったのである。
ちなみに834年現在の時点では、冒険者組合で70機余り量産された機装兵『アーミィ・アント』、そして冒険者組合及びそこからライセンスを受けた自由都市同盟都市同盟軍の両者が生産している機装兵『ブロッキアーラ』が、このシステムを搭載している。更にタイプDR共通戦術歩行システムを用いた新型機装兵『ブロッキアーラⅡ』、発展型のタイプDR共通戦術歩行システム改を用いて開発された機装兵『ドランゲン・スタイン』、『アーミィ・アント』より枝分かれして発展した高位量産機である機装兵『ホルニッセ』など、後続の機体にもこのシステムは搭載された。なお噂では、ホーリーアイ武器工房初の自社開発新型機にも、組み込み予定だとの話が流れている。