ティールテイル

[解説]
旧大戦よりも遥かな昔の地球上に生息した、ディノニクス、ヴェロキラプトルなどのドロマエオサウルス科恐竜の姿に酷似したその姿に違わず、肉食性であり、その攻撃性は非常に強い。
また、群れを作る習性を持っており、環境の獲物の量などに左右されるものの、通常、〝サイア〟と呼ばれるひときわ大柄な1頭の雄を中心として、数頭の雌と小柄な雄で構成される15〜30個体程度の群れを形成する。
この群れの力は大きく、後述する音声コミュニケーション能力も相まって、時には自らの3倍以上の体格の中型魔獣までも獲物とする場合があることが知られている。
なお、余談ではあるが、サイアを除けば、基本的に雄よりも雌の方が大柄である。
これは、産卵を行う雌の体格が大きいほど、多くの卵を産むことができるためである。閑話休題。
これは、産卵を行う雌の体格が大きいほど、多くの卵を産むことができるためである。閑話休題。
身体的な特徴としては、後脚に備えるシックルクロウと呼ばれる巨大な鉤爪に目が行きがちであるが、本種において最も注目すべきところは頭部に備える発達した発声器官である。
この発声器官は機兵などで用いられる拡声器に近い仕組みの魔導的な器官であり、ここから発声される〝鳴き声〟もちいて離れた仲間とも円滑に音声コミュニケーションをとり、群れというアドバンテージを最大限活かした緻密な狩りを行なっているのだ。
この発声器官は機兵などで用いられる拡声器に近い仕組みの魔導的な器官であり、ここから発声される〝鳴き声〟もちいて離れた仲間とも円滑に音声コミュニケーションをとり、群れというアドバンテージを最大限活かした緻密な狩りを行なっているのだ。
このような生態からも分かるように、ティールテイルをはじめとするテイル種は非常に知能が高い魔獣であるため、危険な試みではあるものの、幼い個体のうちから訓練を行うことで、飼い慣らすことも不可能ではない。
事実、独自に培われた調教法により、本種の近縁種であるヴァージャテイルを飼い慣らし、馬のように使用するカナド部族も存在している。
なお、この調教法はカナド部族との間で交易を行なっていた亜人の一族を通して自由都市同盟にも入ってきており、自由都市同盟の一部地域においてはティールテイルを馬として用いている。
事実、独自に培われた調教法により、本種の近縁種であるヴァージャテイルを飼い慣らし、馬のように使用するカナド部族も存在している。
なお、この調教法はカナド部族との間で交易を行なっていた亜人の一族を通して自由都市同盟にも入ってきており、自由都市同盟の一部地域においてはティールテイルを馬として用いている。
本種のティールテイルという名前は、その体色に由来しており、その名の通り、鴨羽色の美しい鱗は工芸品などにも用いられ、アクセサリーなどへと加工され市場に並ぶことも少なくない。
[最新研究]
自由都市同盟の魔獣行動学者、ジョナサン・グランドらの研究チームは聖華暦831年2月、ティールテイルが発音器官を用いて行う音声コミュニケーションに、その発音単体で意味を持つ単語と、特定の語順で発音することで意味が成り立つ文法が存在している可能性があることを発表した。
研究によると、例えば「グァークル」という鳴き声は「警戒せよ」という意味を示しているらしく、実際に録音したこの鳴き声を野生に近い形で飼育されている複数のティールテイルに聴かせたところ、いずれの個体でも準臨戦態勢に入り周囲を見回すような姿が確認された。
別の鳴き声では、その音自体には反応を示すものの、この反応は見られず、明確に鳴き声を聴き分けている可能性が示唆されたと言えるだろう。
また、別の「クククククッ」と喉を鳴らすような鳴き声は「集合せよ」を意味しているようで、これを聞かせた個体はスピーカーに近寄ってくる事が確認されている。
さらにこの2種の鳴き声を「グァークル、クククククッ」と繋げて流すことで、警戒しながら接近するという行動を引き起こすことが可能であった。
興味深いことに「クククククッ、グァークル」という語順では同様の行動は確認できず、ティールテイルが特定の語順に従って意味を把握する、文法というシステムを持っている可能性が明らかになった。
この研究結果は、今後ティールテイルの生態研究に役立つ可能性があるほか、生体、産物ともに利用される本種家畜化などテイル種の利用拡大に役に立つことが期待されている。
以下に、ごく一部ではあるが現段階で把握されているティールテイルの言語について紹介する。
グァークル:警戒せよ
クククククッ:集合せよ
ククァク:餌がある
グゥラーグ:大きな獣
グゥクク:小さな獣
グゥアー:空の獣
etc.
クククククッ:集合せよ
ククァク:餌がある
グゥラーグ:大きな獣
グゥクク:小さな獣
グゥアー:空の獣
etc.
[旧大戦以前の立ち位置]
この魔獣の先祖となる魔獣は、旧大戦よりはるか以前、旧人類達がコールドスリープに入るより以前に歩兵に代わる戦力として開発されており、その高い知能と音声コミュニケーション能力は、旧人類からの指令を受けてチームで敵対魔獣狩りを行うために持たされたものである。
このような用法が想定されていたこともあり、そのベースモデルとして、移動力と戦闘力、そして知能に長けるドロマエオサウルス科恐竜が選ばれているが、それに加えて、パラサウロロフスなどで知られる発声器官が取り入れられている。
また、様々な環境に順応し、任務をこなせるよう本種は環境に対する適応力が特に高くなるように調整されているのだが、旧人類がコールドスリープの長い眠りについて以降、野生化し各地に進出した彼らの先祖はその能力を活かして数千年という、生物進化のスパンとしては、驚くべき速度で様々な環境に適応、進化していった。
これが現在、北米大陸の各地に多様なテイル種が生息している理由である。
これが現在、北米大陸の各地に多様なテイル種が生息している理由である。