CASSHERN(映画)

登録日:2010/05/01 Sat 20:14:26
更新日:2021/06/27 Sun 22:54:25
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この地に生まれた、愛する人々に捧ぐ。



CASSHERN(キャシャーン)』とは、2004年4月20日に全国公開された映画。配給は松竹。
キャスティングと宣伝に制作費の大半をつぎ込む事で有名な紀里谷和明の商業映画初監督作品でもある。


●目次

【概要】

1973年〜1974年に放送されたテレビアニメ『新造人間キャシャーン』の実写映画化作品
監督がPVの多くを手がけた、当時妻だった宇多田ヒカルが主題歌を担当した事や、唐沢寿明など多くの豪華俳優陣を使用した事、椎名林檎が挿入歌を担当した事などで話題になった。

テーマソング
  • 宇多田ヒカル「誰かの願いが叶うころ」
挿入歌
  • 椎名林檎「茎 (STEM)」
  • MONDO GROSSO「LIKE NO ONE'S LOOKING」
  • hyde「MASQUERADE」
  • TOWA TEI「ORIGINAL HUMAN」
  • ACIDMAN「水写」
  • SS:ST(Shiro SAGISU & Satoshi TOMIIE)「Pluriel」
  • 鬼束ちひろ「BORDERLINE」
  • THE BACK HORN「レクイエム」
  • GLAY「無限のdéjà vuから〜Peaceful Session〜」


【あらすじ】

大亜細亜連邦共和国とヨーロッパ連合の両陣営による長く続いた戦争により疲弊した世界。
年老いた権力者により、対テロ戦争という大義名分の下、変わる事なく戦争が続いていた。
そんな折、東博士は新造細胞の理論を提唱する。軍部との太いパイプをもつ企業の協力を受け、研究の軍事利用を危惧しつつも、病気の妻を救うため新造細胞の研究が始められた。
全てを顧みず研究に没頭する父への反発から、東鉄也は志願して戦地に赴くが、戦争の狂気にその心は蝕まれていった……。

1年後、東博士の下に鉄也の戦死が報される。悲しみに暮れる家族が研究所に集まる中、運ばれてくる鉄也の遺体。
その時、研究所に異形の稲妻が落ち、新造細胞の研究用プールにおいて、新たな反応が起こり始めた。稲妻にプール内の死体と新造細胞が反応して、得体の知れないヒトのようなものが次々と出来上がり、活動を開始した。
予期せぬ生物の発生に恐怖した人々はそれらを虐殺するが、殲滅する事は出来なかった…。
――凄惨な虐殺の裏、狂気の東博士はある思惑の下、息子の亡骸を研究用プールへ沈める。
――東鉄也は、この憎しみ溢れる醜い世界に蘇った。
「新造人間」として――

やがて虐殺から逃げ延びた4人の新造人間は、その圧倒的な身体能力に加え、無数のロボット兵器を従えて人類の抹殺を開始する。

数多の命が蹂躙されていくのを目にした鉄也は、人類を守るために戦う事を決意する――

人間の業に傷つき苦悩しながらも鉄也は戦う。失われつつある世界の守り神『キャシャーン』の名と共に――


【登場人物】

  • 東鉄也
演:伊勢谷友介

主人公。
出兵から1年後に戦死してしまうが、父親の手によって新造人間として蘇生。
以後、肉体の崩壊を防ぐための白いボディアーマーを着用してブライキング・ボス達と戦う事となる。原作と同じデザインのヘルメットが用意されていたものの、装着前に破壊されてしまったため、最後まで使われずじまいとなった。


  • 上月ルナ
演:麻生久美子

ヒロイン。
鉄也の婚約者で裕福な家庭である模様。内藤曰く「温室育ち」。
原作のルナと違って良くも悪くも普通の人間で、MF銃を使わない。

  • 東博士
演:寺尾聰

鉄也の父親。本名は東光太郎。
遺伝子学の権威であり、妻の病気を治すために新造細胞の研究に没頭している。
下層階級出身者であり、ある意味原作とは対照的な人物と言える。

  • 東ミドリ
演:樋口可南子

鉄也の母親。
病気が原因で盲目となっている。
中盤では虐殺から逃れた4人の新造人間に救いの手を差し伸べた。

  • 上月竜三
演:小日向文世

ルナの父親。
東博士の友人であり、子供同士が婚約者となっている関係。
中盤で自身が開発したボディアーマーを鉄也に託して命を落とした。

  • ブライキング・ボス
演:唐沢寿明

新造人間のリーダー格である銀髪の男で、ある意味本作一番の被害者。
軍の虐殺から逃れて城に辿り着いた後は動きにくそうな深紅のコスチュームを着用。


  • サグレー
演:佐田真由美

新造人間の紅一点である赤毛の女性。
最初の刺客として鉄也の前に立ちはだかったが、戦闘で致命傷を負ってしまい、本拠地へと帰還した直後に息を引き取ってしまった。

ショッカーの幹部ではない。

  • バラシン
演:要潤

新造人間。
日本刀で戦う金髪の青年でサグレーに気があるらしく、彼女が死亡した後は誰よりも怒りを露わにしていた。


  • アクボーン
演:宮迫博之(雨上がり決死隊)
新造人間。
言葉は喋れないが、ロボット軍団の統括を担当している辺り、無能というわけではない。

別の宇宙では光の国で最強最悪のウルトラマンだったり、弓使いのヒーローだったりする。

  • 上条ミキオ
演:西島秀俊

上条将軍の息子である軍人。階級は中佐。
表面上は父親に対して従順としているが、内心では強く嫌っており、中盤でクーデターを起こして父親を筆頭する軍上層部を失脚させた。
以後、総帥となって大亜細亜連邦共和国を統治するのだが……。

  • 上条将軍
演:大滝秀治

大亜細亜連邦共和国のトップである老人。本名は「上条又一郎」。
既に高齢で吸入器が手放せないほど体力が衰えており、新造人間の侵攻はそっちのけで自分の延命を優先する等、いかにも堕落した老害に成り果てている。
また、過去にテロリストに襲われた妻を見殺していたらしく、上記の人物像も含めて息子からは完全に失望されている。
中盤では軍上層部を見限った息子が起こしたクーデターによって失脚してしまう。

  • 内藤薫
演:及川光博

日興ハイラルの社員。
軍部とのパイプを持ち、利害の一致で東博士の新造細胞の研究を支援していた。
表向きは紳士的なイケメンであるが、実は東博士と同じく下層階級出身者で自身の身分に強いコンプレックスを抱いている。

別の世界で特命係の二代目相棒になったり歴史の闇に葬られた幻の仮面ライダーに変身したりするが、それはまた別の話。

ちなみにGLAYのTAKUROとHISASHIがエキストラ出演している。…虐殺される市民役で。

【評価】

公開前は多くのメディアが取り上げた事で注目を浴びるが、いざ公開されると多くの観客から、
  • 最初から最後まで内容がわからなかった
  • 戦闘シーンが少ない(登場人物が延々と突っ立って喋ってるだけ)
  • 台詞が説明的
  • フルCG映画
  • 宇多田のPVで140分は流石に長い
  • 酷い原作レイプ
  • 監督のオナニー全開
……などの酷評を受け、2004年の映画の評価の中で『デビルマン』に次ぐワースト2位の映画と表彰されてしまった。

しかし、実はテレビ放送時の『キャシャーン』を知らない世代からの感想は割と好評だったり、原作ファンであってもこの映画を評価する者は結構存在する。

実際、アクションシーンについては数こそ少ないものの、極めて迫力のある殺陣が繰り広げられ、アンドロ軍団を蹴散らす場面はBGMも相まってとても盛り上がる演出となっている。
また、ブライキング・ボスとの最終決戦は互いに背負ってきたものをぶつけ合う壮絶なものであり、否応なしに盛り上がっていく。
そのため、この部分については、作品自体を批判する者でも好意的に受け止めているケースが多い。
余談ではあるが、監督公認で『伝説巨神イデオン』のオマージュふんだんに練り込まれている事から『実写版イデオン』という声もある。

また、批判のポイントとして上げられる、紀里谷監督の得意とする映像表現や退廃的なストーリーについてだが、幻想的かつスチームパンクの要素が取り入れられた風景や崩壊していく町並みなどは極めて美しく、
そのストーリーについても極めてダークな展開ではあるものの、「キャシャーンは失われたもの(自分の身体、家族、殺された人々など)を取り戻す事は出来ない」という原作のテーマをきちんと踏襲しており、その戦いの果てには物悲しくも美しい結末が待っている。
また、本来はより長大な物語であったものを映画の範囲に収めるためにカットし、説明不足になってしまった点も酷評の理由となっている。
この要素についてはノベライズ版『CASSHERN THE LAST DAY ON EARTH』においてきちんと補完されているため、興味のある方はぜひ手に取って頂きたい(映画本編で全部描けという批判は当然としても)。

加えて俳優陣達の演技力は本物であり、演じてるキャラを重点的に見れば自然と映画にのめり込める者も少なくはない。
  • 様々なものを奪われながら、それでも立ち上がって戦わざるを得ない鉄也=キャシャーン
  • 新造人間として作り出された事で否応なしに過酷な宿命を背負わされ、必死に抗い続けるブライキング・ボス
  • そんな彼らの姿を目の当たりにし、悩み、苦しみ、そして方向性は違えど新造人間である鉄也、ブライキング達へ手を差し伸べようとするルナとミドリ
そして彼らに壮絶な真実が突きつけられる瞬間へと物語は収束していく。

他にも酷評された紀里谷監督に関しても、本作が切っ掛けでハリウッドからのオファーが3本きた(リーマンショックで全部ポシャるというオチはついたが)など、国外では一定の評価を受けている。
国内においても製作費6億円に対し、興行収入約15億3000万円、スポンサーには出資金を130%にして返還する事が出来たという大成功を収めており、商業映画としては間違いなくヒットした部類に入るといえる。

本作が国内でこれほどまでの酷評を受けたのは、やはり原作に対する思い入れの深さが要因の一つなのだろう。
原作のテーマをきちんと踏襲してこそいるものの、そのストーリーはほぼオリジナルといっても過言ではなく、
キャシャーンのアクションシーンには原作通りの効果音やエフェクトが用いられるなどの再現は見られるものの、ヘルメットを破壊する・フレンダーが変形しないといった改変要素も極めて多い。
また、『デビルマン』の公開とタイミングが重なってしまったせいで、本作を『デビルマン』と同列視して叩く愉快犯による風評被害が拡大してしまった事も理由の一つとして挙げられる。

『デビルマン』についての評価は当該項目を参照して頂きたいが、
「原作通りに物語が進むはずなのに酷評され、商業的に大失敗」した『デビルマン』と、「原作に大胆なアレンジを加えた事で酷評されるも、商業的に大成功」した『CASSHERN』を単純比較する事は困難であるし、
映画そのものを見ずに駄作と決め付けるのは、極めて不当な評価だと言わざるを得ない。

その商業的成功、映像作品としての高いクオリティ、原作とかけ離れた部分などを加味して判断する限り、
賛否両論・評価の分かれる問題作」というのが、恐らくは適切な評価になるかと思われる。



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最終更新:2021年06月27日 22:54