エイトグ/Atog(MTG)

登録日:2014/06/03 Tue 18:19:02
更新日:2025/01/06 Mon 16:00:42
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エイトグはマジック:ザ・ギャザリングに登場する、MTGオリジナルの種族である。

概要

「丸い顔、大きい目、歯の生えそろったとても大きな口、人を食ったような笑顔にどこか愛嬌がある」という種族。知能らしいものはない。
こいつが嬉しそうにポリポリとアーティファクトを食べているのを想像すると和むかもしれない。

元々は「アンティキティー」で登場した、単なる一発ネタのカードだった。


エイトグ / Atog (1)(赤)
クリーチャー — エイトグ
アーティファクトを1つ生け贄に捧げる:エイトグは、ターン終了時まで+2/+2の修整を受ける。
1/2


コストは軽いがボディは貧弱。しかしアーティファクトを食べて一時的にサイズアップする能力を持つ。
だいたいのカードゲームでよく見る「何かをリソースに一時的なパワーアップを得る」というカードの最初期の例のひとつ。

初出はアンティキティーとかなりの古参であり、機械をモチーフにしたセットにおいて「その機械を食べてパワーアップする」という分かりやすいモチーフで登場した。
ただし当時はまだアーティファクト自体がそれほど強い時代ではなかったこともあり、さほど活躍したわけではなかった。
いちいちアーティファクトを出して、それを食べさせて、なんてことをしていたらマナはかかるしカード・アドバンテージも損をする。しかもたった1ターンの強化にしか使えない。
つまり食費ばかりかかってあんまり働いてくれないヤツだった。

後に同じくアーティファクトをテーマにしたセット「ミラディン」で再録されたが、その時期にもなると有用なアーティファクトが溢れかえっていた。
アーティファクト・土地や装備品という当時は新しかったメカニズムを持つ強カードがわんさと溢れた天国では、リミテッド、構築ともに大暴れ。
特に親和に採用され、アーティファクトを食べながら多くのプレイヤーに殴りかかった。
ミラディン版のフレーバー・テキストは、そんな《エイトグ》の性質をうまく示している。

ドミナリア*1ではゴミあさり。ミラディン*2では猛獣。

つまり食べ物の質で活躍が上下する。やる気じゃなくて実力が。食費はかかるが、その分は働いてくれるヤツである。
まったく同じカードでも、環境が違えば凡人にも猛獣にもなってしまう、これがローテーション式のTCGの魅力だろう。



弱点はいくつかあるが、まずは呪文への耐性の無さがあるだろう。
火力ならバンプアップでいくらか対処できるが、たっぷり食べて大きくなった所で「ブーメラン」や「濃霧」が飛んできたら目も当てられない。
一撃必殺パンチというロマンに惹かれるかもしれないが、即死を狙った結果としてリソースもなにもかも失うカウンターのリスクを考えるなら、
5点前後のパンチを複数放ったり、フルタップなどの隙を探しつつ殴りたい。
そもそも親和ならダメージソースは他にもいると思われるので、
「金属ガエル」なんかと一緒に殴りつつ余ったアーティファクトを食べる、というだけでも充分強い。

もう一つの弱点といえば、回避能力のなさである。
2マナのクリーチャーにそれを求めるのは酷であろうが、10、100とどれだけサイズアップしようと飛行もトランプルもないので止められやすく、
チャンプブロックされる度にアーティファクトを食べていては肝心なタイミングで火力が出せなくなる。
破壊不能の大きいヤツとかに立ちふさがれでもしたら、完全に足が止まる。
こうなってしまっては、もうエイトグにやれることは……



















大霊堂の信奉者/Disciple of the Vault (黒)
クリーチャー — 人間・クレリック
アーティファクトが1つ戦場からいずれかの墓地に置かれるたび、対戦相手1人を対象とする。
あなたは「そのプレイヤーは1点のライフを失う」ことを選んでもよい。
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エイトグと相性のいいカードといえば、やはりこいつだろうか。
対戦相手がどんな壁に隠れようと、エイトグがアーティファクトを食べるだけでライフを減らしてくれる。
信奉者が二体三体と並ぶと、 それはそれは酷いことになる。

しかしミラディンブロックの二つ目のエキスパッション、ダークスティールが発売されるとちょっと肩身が狭くなる。
「電結の荒廃者」が登場したのが原因である。
色事故の起こりやすい親和においては色マナの必要なエイトグより、同じ2マナで無色の荒廃者の方が出しやすく、
同じようにアーティファクトを食べて大きくなるが、その強化が恒久的に続く点が違う。
結果荒廃者の方が採用されることが多くなる。

が、エイトグは死滅しなかった。
エイトグが荒廃者と違いアーティファクト除去で除去されない点や、
一瞬なら荒廃者よりも火力が出せる点を買われて要所要所で採用されることがあった。
この辺はメタゲームの部分もあるだろう。
また、ダークスティールのトップレアである荒廃者に比べれば、アンコモンのエイトグはずっと揃えやすい。
エイトグは財布にとても優しい。

また、リバイスド・エディション等でコモンで収録されたため、パウパーでも使用可能だった。親和デッキのフィニッシャーとしてミラディンブロック当時と変わらぬ活躍を見せたが、モダンホライゾン2やフォーゴトン・レルム探訪による親和の強化に伴い使用率が高くなりすぎたと判断され、2022年1月に禁止カードとなった。
これはパウパーとミラディンスタン経験者以外のプレイヤーには驚きを持って迎えられたのだった。




エイトグの仲間たち

実はエイトグは、最初は単なる一発ネタだった。
しかし時が流れ、「ミラージュ」で「森をサクることで一時的にパンプアップするカード」がデザインされた時、開発陣は

これ、森版の《エイトグ》じゃね?

と気づいた。これによってその後、「マナを使わず、タップもせずに、何かを食べて一時的にパンプアップするカード」としてエイトグがデザインされていくことになった。
食べるものの名前をもじった単語をatogの前につける、という法則で名付けられている。

緑……《森エイトグ》 ミラージュ
ぎょろっとした目と《エイトグ》以上に尖った歯、赤ちゃんの髪のように生えたトゲが何とも言えない愛嬌をかもす。
自分のコントロールする「森」を食べる。土地ではなく「森」。割と偏食。
とどめの一押しには使えるが、序盤には使いづらいのであんまり強くない。サクれる土地も森限定なのであんまり強くない。
第8版で再録されているのでモダンでも使えるが、他のエイトグ族で使えるものが《エイトグ》と《オーラトグ》のみなので、部族デッキとしてもあまり魅力がない。


青……《時エイトグ》 ビジョンズ
しもんきんに似た横長の顔、白い目、平べったい歯が特徴のエイトグ。
「次の自分のターン」という異色のものを食べる。強化値は+3/+3と大きめだが、次のターンを犠牲にするので気軽には使えない。
しかし気軽に自分のターンを飛ばせるため、パンプアップ目的ではなく、自分のターンを飛ばすことを利用したギミックに用いられる。
特に《停滞》と組んで「《停滞》の維持コストを支払いたくないのでターンを飛ばしていつまでも維持し続ける」というギミックで用いられたロックデッキ【クロノステイシス】が有名。
他にも各プレイヤーのアップキープ時に損害を与えるカード、たとえば《煙突》と組んで相手のリソースを削るデッキなどでも用いられた。
エイトグ族唯一の再録禁止カード。

時のらせんブロックで《時エイトグのトーテム像》としてリメイクされた。トーテム版と比較した場合の使い勝手は良し悪し。


黒……《ネクロエイトグ》 ウェザーライト
ガマガエルのような醜悪な見た目、ぎょろりとした赤い目。おどろおどろしさが強く、あんまりかわいくない。
食べるのはNecro(死体)、つまり「墓地の一番上にあるクリーチャー」。これだとかわいい方がおぞましいから、おどろおどろしくてよかったのかもしれない。
マナも使わずボード・アドバンテージも失わないでこのパンプ能力は期待度高めだが、実際に使ってみると3マナという重さに対してサイズが貧弱。
かつ専用のギミックがないと案外クリーチャーが墓地に落ちないのでなかなか活躍しない。

一見問題なさそうに見えるが、墓地の順番を参照するため再録はされていない。


白……《オーラトグ》 テンペスト
現場猫の「よし!」みたいなポーズで歩いている、爬虫類じみた目と尖った耳と浮いた肋骨がチャームポイントのエイトグ。一般的な感性で一番かわいいのはたぶんこいつだろう、キモカワ系のポケモンじみた愛嬌がある。
オーラと書かれているがエンチャントなら何でも食べる*3。割と雑食。
非常に軽いコストで利用でき、墓地に送られるとすぐに手札に戻ってくる*4《怨恨》というカードと組み合わせたギミック【オーランカー】が有名な他、エンチャントをずらずらと並べることで恩恵を得る【エンチャントレス】のフィニッシャーとして使われることもあった。
時のらせんで再録(タイムシフト)。《怨恨》の代わりに、似たような動きのできるエンチャントを使用した「疑似オーランカー」を組むことができた他、新エンチャントレスの《メサの女魔術師》と組んだデッキなども開発され、主にカジュアル方面で人気を博した。
モダンでも使用可能で、サクり台とフィニッシャーを兼ねたカードとして主にカジュアル面で活躍した。テキスト自体はあまり強くないが、周囲の環境に恵まれたカード。


《エイトグ》から《森エイトグ》までは時間がかかったものの、そこから《オーラトグ》までは1年ちょっと。
こうして突発的に仲間が作られた《エイトグ》だったが、後に日本でMTGが盛んになったウルザズ~インベイジョンの頃にはまったく再録されなかった。



エイトグ族の子孫たち


オデッセイにおいて突如、5体のエイトグ族がアンコモンに、そしてエイトグ族の王様がレアに収録された。相変わらず人を食ったような笑顔が特徴である。
特にアンコモンの5体サイクルは、公式サイトで「単色同士のハイブリッド(混血)」と明言されており、
イラストを比較して見ると外見はカードの右側のマナ・シンボル、表情は左側のマナ・シンボルによく似ている。《ファンタトグ》《サイカトグ》あたりが分かりやすい。


それぞれ、
白……エンチャント
青……手札
黒……墓地を2枚追放(タイプ問わず)
赤……アーティファクト
緑……土地
を食べ、パンプ量は+1/+1で固定。多色になって雑食化したが、その分パンプ能力は落ちてしまったので爆発力には著しく劣るようになった。
「食べるのにマナが不要」と言ってもエンチャント、アーティファクトは展開にマナがかかり、土地は1ターンに1枚しか出すことができない。
それでありながら『爆発力には劣る』という性質のせいで、多色化の恩恵をさっぱり受けられていない。
なんかやべー組み合わせがあるけど気のせいだろ、うん。


白青……《ファンタトグ》
食べるのはエンチャントと手札。Phantomで「幻影」「幻想」、Phantasmで「幻想」「幻覚」。


青黒……サイカトグ
色は黒と青のマルチ。食べるのは手札と墓地のカード。正確には手札を食べた後のその食べカスになった墓地も食べる、
説明不要級の超強力エイトグ。サイカトグの項目も合わせてどうぞ。
「激動」や「嘘か真か」を相棒に暴れ始め、色んなデッキが作られ、
多くのプレイヤーに歓迎され、その結果として多くのプレイヤーをワンパンしたりゲームの流れを一撃でぶち壊して目の敵にされた。
今なら刹那、接死、萎縮、感染と対処方法がズラズラ浮かぶかもしれないが、以前はコイツ一体倒すだけでも一苦労だった。
というか色が色なのでそもそもそれらの呪文でさえ大抵カウンターされてしまう。
稀によく空も飛ぶ。デッキにいなくても勝てる。など固有の伝説も多い*5
その丸顔と青があることからドラえもんと呼ぶプレイヤーがいるが、
お手軽ファッティ&ワンパンをぶちかまされる身からすれば そんな可愛いものではない。

ただしその後はまったく話題にならなくなった。ぶっちゃけ本wikiのサイカトグの項目ができた頃には、レガシーで物好きな人が使う程度であり、
出てきたところでしょっちゅう農場送りになっていたようなイメージしかない。っていうかデルバー出た後ならデルバーでいいし

Psychoで「精神」「心理」。たとえばサイコパスは「Psychopath」。

後に《超能力蛙》としてリメイクされ、各環境で大暴れ。特にレガシーでは禁止にまでなった。やっぱサイカトグは許しちゃダメなやつだった。
日本語だとまったく原型がないが、英語だと「Psychic Frog」が「Psychatog」を思わせるようになっている。

黒赤……《サルカトグ》
食べるのは墓地とアーティファクト。Sarcoで「肉」を意味する言葉になる。

赤緑……《リサトグ》
食べるのはアーティファクトと土地。Lithicで「石の」を意味する形容詞になる。モノリスの綴りも「Monolith」。

緑白……《ソーマトグ》
食べるのは土地とエンチャント。Thaumaはギリシャ語由来の言葉で、「奇術」「不思議」など。

……《サイカトグ》以外のカードは空気どころか、たぶんサイカがサイクルなことや、サイカの両親がネクロと時だということすら知らない人さえいるだろう。
でもさぁ、ほんとに話すことないんだよ……。《リサトグ》とか《ソーマトグ》なんてどう使えってんだよ……。



五色……《アトガトグ》
この時期にはもう珍しさもなくなってきた(というか直前のインベイジョン・ブロックで何枚も出た)5色カード。
イラストは玉座に腰掛ける王冠風のトサカをつけたエイトグで、その足元にエイトグたちが記念撮影でもしているかのような笑顔を見せるというもの。
フレイバー・テキストも「It relishes old-fashioned family meals.(あいつは昔ながらの家庭の味が好きなんだよ。)」と実に牧歌的なカードである。
遊戯王と出るゲーム間違えてない?

もちろんそこはMTGなのでブラックジョークだらけ。
スペルは「Atogatog」、つまりエイトグを食べるエイトグ。そしてパンプされる値は「生贄に捧げたエイトグのパワー」。
《エイトグ》でアーティファクトを散々食べ、《時エイトグ》で次のターンを飛ばし、《サイカトグ》で手札と墓地をきれいに食べつくしてから、
この3体を《アトガトグ》で食べてしまえば、疑似的にではあるが「アーティファクトと次のターンと手札と墓地を食べるエイトグ」という挙動ができるというわけだ。
エイトグを食べてしまうのは、ブラックジョークと同時に「エイトグ族の王様なので何でも食べられる」というのをメカニズム的に示したかったのかもしれない。
また、実はクリーチャーを食べるエイトグというのはこいつしかいないという意味でもちょっと一線を超えた奴。
一応アーティファクト・クリーチャーや《ドライアドの東屋》や墓地の死体を食べたりするやつはいるが、生き物しか食べないエイトグはこいつだけ。

統率者戦でも統率者に指定できる。5色カードの中だと《クロウマト》と並んで一番悪さをしそうにないので、
「ぷるぷる、ぼくわるい5色デッキじゃないよう」という命乞いカラーマーカーとしてたまに使われる。

ちなみに「家庭の味」と訳されている「family meals」は、Google翻訳でも「家庭的な食事」と出る一般的な言葉である。
これを、山梨を「Mountain Pear」と訳すレベルで直訳すると「家族の食糧」。




《メガエイトグ》
ミラディンで登場した最新のエイトグ。色は赤で、食べるのはアーティファクト。
エイトグよりも重いがサイズが大きくなり、アーティファクトを食べたときの修正値が+3/+3に向上し、トランプルも得るようになっている。
初期型の親和に入っていたりもする。
英語名は「Megatog」。直訳すれば「メガトグ」なのだが、「メガエイトグ」。
メガエイトグ、お前もか。というか時エイトグとか森エイトグも(ry
イラストは可愛いとかの前に デカい。


エイトグ族は以上12枚。十二支とか1ダースとかでキリもよくてぴったりだ。



亜種

《時エイトグのトーテム像》
3マナのマナ・アーティファクト。タップだけで青マナを生み出せ、さらに(1)(青)でターン終了時まで《時エイトグ》と同等のクリーチャーになる。
本家《時エイトグ》が青なのでピッチコストとして優秀かついつでも自由にターンを飛ばせる代わりに、クリーチャー除去に常に狙われるのに対し、
こちらは無色なのでピッチコストとして使いづらく2マナの投資が必要だが、除去されにくく青マナの供給源にもなるという性質を持つ。
当時のスタンダードでは青マナの供給源として使われ、《ファイレクシアのトーテム像》とともにトーテム像サイクルの中で存在感を発揮した。
だいたいターンを飛ばされるのは「トドメの一押し」のためなので、本家よりも素直にパンプアップ能力を使っているかもしれない。

もちろん「普段は青マナの供給源、たまにターンを飛ばして相手にだけ損害を与える」という仕事もできる。
この1枚だけで結構いろんな使い方ができるナイスカードで、レガシーのマニアックなデッキにたまに入っては相手に大損害を与えていた。

ちなみにこの「トーテム像」のサイクルはいずれも「再録禁止カードになるマナ・アーティファクト」としてデザインされている。


《貪欲な侵入者》
カラデシュで登場した《エイトグ》の同型再販。
カラデシュのグレムリンは、カラデシュのアーティファクトの原動力である「霊気」を食べるために機械を食べてしまう害獣という設定がある。
違いはパイオニア・ヒストリックで使えること、コモンのカードで存在しないのでパウパーで使えないこと、エイトグじゃないのでアトガトグに食べられないこと、あとあんまりかわいくないこと*6
ガラスのケースに張り付いて中の機械(Kaladesh Inventions版《太陽の指輪》)を食べようと狙っているイラストと、《エイトグ》のメカニズムを考えると、フレーバー・テキストは実にいたたまれない。
「近ごろ素晴らしい品を買い入れたのだ。あれに見合うよう防犯機構を一新しようと思っている。明日、専門家に来てもらう予定だ。」
――月光会、クルナ・マジャーン


  • 余談
エイトグ(Atog)というのはGOAT(ヤギ)のアナグラムである。カード──MTGのカードは当然全て紙──を食べさせるという洒落。
カードをバラバラにして起動するなんてカードがあるのだから、この先、自身がオーナーであるカードをヤギに食べさせて大きくなるヤギエイトグ……なんてクリーチャーが生まれてくるのかもしれない。もちろん銀枠で。


これから先、新たなエイトグ一族が生まれるかはウィザーズ社次第なのだが、実はMTGの開発方針として「オリジナルの種族は新規参入の際に負担となる*7」ということで、
「スリヴァー」のように人気が出たもの以外はあんまり出したくないというのが本音らしい。
そもそも元祖のうち1匹は再録禁止、1匹は過去のメカニズム問題で再録不可というのも収まりが悪い。
それを裏付けるように最後にスタンダードで使えるエイトグ《オーラトグ》は、「時のらせんタイムシフト」という昔のカードのリバイバル扱いとして再録されているし、
《超能力蛙》も《サイカトグ》のリメイクかつイラストもレギオン以前の味わいの濃いものだが、クリーチャー・タイプはエイトグではない。

ミラディンで登場した猫人「レオニン*8」や、タルキールで登場した犬人「アイノク」は最初から猫・犬(当時は猟犬)だったし、最近はオリジナル種族だった「ヴィーアシーノ」「セファリッド」もエラッタによって「トカゲ」「タコ」に改められており、神河の人型種族「大蛇人(おろちびと)」も足を失ってナーガに近い外見になった。
物語としての多様化はどうしてもわかりづらさにつながる。ここはMTGに限らず結構な悩みどころのようである。


また、エイトグ系のカードは《サイカトグ》に限らず、環境次第で猛獣になりかねない。
パウパーの《エイトグ》、レガシーの《超能力蛙》、他にもちょっと強引だがライフを食べるという意味で《憎悪》などは環境内で存在感を発揮し、
愛好家(とそれを養分にできる人)にはこの上なく愛されたが、負ける相手には蛇蝎のごとく嫌われた。
これは「マナを使わずに別のものをコストにする」という性質が、MTGというゲームでは極めてバランス調整が難しいことに由来する。
特に最近はクリーチャー以外のタイプを持つトークンの生成が気軽に行えるようになっており、パウパーの《エイトグ》禁止の一因にもなっている。
つまり、かつては「爆発力はあるが食費がかかる」というデザインなので問題がなかったのが、今は食糧問題を解決するカードがたくさんあるせいで暴れかねないということなのだ。

しかしこの能力なしでエイトグを名乗られても興が削がれるのもまた確かである*9。挙動は単純にして爆発力がある侮れない猛獣、それがエイトグの魅力なのだから。

残念ながら、エイトグ族の再録までの道筋は遠そうだ。



追記・修正するのは五百年、差し戻すのはわずか一分。



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最終更新:2025年01月06日 16:00

*1 背景世界におけるメイン次元であり、当時のストーリーのほとんどがドミナリアとその関係次元で展開された。アーティファクト技術は「一部の傑出した天才がいるが、平均的な技術は並」といったところ。

*2 あらゆるものが金属、つまりアーティファクトでできている次元。メタ的な視点でいうと、初めての「脱ドミナリア」を図ったもの。「装備品」もここが初出。

*3 オーラがルール的に定義されたのは第9版、神河物語後半あたりである。それ以前はエンチャントのことをカード名で「オーラ」と呼ぶことが多く、中には「カード名が《オーラ泥棒》なのに、普通のエンチャントは盗めてもオーラは盗めない」なんてものもある。長寿ゲーあるあるの設定の矛盾。

*4 「エターナルエンチャント」という俗称がある。おそらく遊戯王の《蝶の探検エルマ》の元ネタで、【オーランカー】はさながらギア・フリードと組み合わせた時のような動きをする。

*5 ただし「サイカレス」などのMTG wiki由来の伝説は、あの時期のwikiの方針によるところが大きい。最近の編集方針なら間違いなく重鎮ユーザーが削除しているだろう。

*6 《森エイトグ》が出た理由は、《エイトグ》の独特の愛嬌も手伝っている。この「かわいらしさ」というのはあながち無関係とも言えないのだ。グレムリンもかわいいだろっていうのは……そうだね。

*7 日本のオタクサブカルの歴史でも似たようなことは起きている。FF13の頃に話題になった言い回しに「ファルシのルシがコクーンでパージ」というものがあった。固有名詞が多すぎて全く頭に入ってこないことを揶揄したものであり、これと「ノムリッシュマリオ」によって造語を多用する世界観に激しくネガティブなイメージがついたため、以降のファンタジー作品は固有名詞の濫用を極力控えるようになった。これらはどちらかというとシナリオ作りに際した基本的なテクである。

*8 ソシャゲーでしれっと猫型人間として使われていることがある単語だが、MTGが初出の種族である。

*9 実際に戦乱のゼンディカーの「同盟者」が、結集という能力語でバランス調整を図ろうとしたが、結果は「同盟者とそうじゃないカードの区別がつきにくく、リミテッドにおいて負担になる」「同盟者の魅力が大きく損なわれた、スリヴァーがあんなにわかりやすいのになぜこうなったのだ」と散々なものだった。