九龍城

登録日:2014/10/07 (火曜日) 00:00:08
更新日:2019/06/29 Sat 20:58:56
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九龍城(くーろんじょう)とは、かつて香港に存在した今は亡き巨大なスラム街の集合体である。

概要

世界中の廃墟マニア、裏通りマニア、ネオンマニア、怪しい店マニアが一度は訪れたい…否、訪れたかった名所として、今もなお多くの人を魅了し続けている古今東西未曾有の傑作建造物のことである。
詳しいことは知らんがもともとは外国の侵略に備えて砲台などもすえつけた中華風の城だったらしい。

1898年、イギリスが清帝国から九龍半島を99年間の約束で租借したとき、この城砦だけは「監視を置きたい」という清の思惑もあって租借対象外となった。しかしその後、イギリスは清の役人を追い出してしまう*1。とはいえ租借対象外地域なのでイギリスはそれ以上手が出せず、九龍城は空白地帯に。
時代が下り中華民国が誕生して清帝国に取って代わっても、イギリスも中華民国も譲らず九龍城の扱いはそのまま。そして日中戦争において日本が香港一帯を占領したときに城壁が壊された。
だがこの時は上記のような魅力はなくその姿も傑作建造物とはいえないそこらの城のひとつに過ぎなかった。



九龍城が「香港の魔窟」という称号とともに全世界の注目するスポットに変貌するのは、
後に中国が内乱で過度の混乱に陥り共産党が支配力を強めてきた頃のことである。

中国でそれまでの国民党が追い落とされ共産党が台頭してきた。
だが、多くの中国人はそれを嫌い「おらこんな村嫌だ~ァ、おらこんな村嫌だ~ァ」と絶唱しながら党やそれの動かす軍から逃亡する民衆が続出する事態になった。
そこで逃亡先に民衆が選択したのが当時、中国の警察力の及んでいなかったこの九龍城である。
だがしょせんは小城の跡地、後から後から津波のように押し寄せる全ての民衆を収容することは不可能であった。

そこでそれらの人たちは違法にバラックを建てたり小屋を増築したり勝手に店を開いたりしていき、徐々に魔窟にふさわしい姿に変貌を遂げていく。
こう言っては何だが当時のこととて衛生面とはおよそ無縁の環境であった。
便器なども見た目洋風っぽいのにボットンは当たり前だとか、床が何かの茶色くてくっさい汁でヌタヌタしてて床オナできねぇよ!だったり、
それに対する返答として俺は悪くねぇっ!のこだまが聞こえたとか何とか。とにかく臭い、汚い。
しかもそういう場で普通に料理してたり居酒屋っぽい店があったりするから色々とキテいた。
そういう苛烈な環境だったからこそ香港の魔窟たりえたのであり、この汚さが僅かでも少なければ世界はこれほどに注目はしなかったであろう。

もちろん警察力が及ばないので犯罪は日常茶飯事。麻薬、売春、賭博、窃盗、強姦などありとあらゆる犯罪の温床でもあった。無免許の病院だって当然のようにあった。
だが決して住人が冷酷な犯罪者ばかりだったわけではなく、多くの人はいたって普通の民衆でありそれぞれ自分なりに日々の幸せを見つけて暮らしている人々であった。
境遇が同じゆえに殺伐としながらも団結力や仲間意識は強かったと思われる。
毒々しい色の、林立する小部屋、唐突に出現する店、その隣の歯医者など内部は完全に迷路であり、
「九龍城に入ったら二度と出られない」と言われたほどで当然ながら非常に広い。いや狭いのに広い。

内部は龍津路や龍城路と言うおおまかな通りで区切られており、そこに○○中心だとか、○○飯店、○○街といった店や施設がそれぞれ勝手自由に存在していて非常に雑多。
後述のゲーム「クーロンズゲート」ではこれらの要素も見事に再現されている。

アジアンテイストの巨大建造物で、どんな人間も一目おかざるを得ない威容を誇り、香港映画ではよくロケーションの舞台にもなった。
怪しさ、魅力、汚さ、雑さ、暗さ、ネオンだけが綺麗に輝き、奇妙な閉塞感、サイレントヒルの赤錆の裏世界のごとき禍々しさと、そんな中に暮らす住人のたまに見せる人なつっこい笑顔…。
これほどの魅力を閉じ込めた建造物は、もはやこの地球上に二度と出ることはあるまい。



伝説の数々

  • 中国の役人には「ここはイギリス領なんで」と言い張る
  • イギリスの役人には「俺たちは中国人だから」と言(ry
  • 基本的に生活基盤(住居、水道管、電気配線など)は勝手に作って勝手に使う
  • 電力は外から勝手に引き込んで使っていた
  • どう見ても廃棄され、埃をかぶってグシャグシャの電線の束にしか見えない電気配線。もちろん通電中
  • 後に香港政庁が正式に電気や上下水道の供給、ごみ収集などを始めた(周辺への影響を抑えるため)
  • 近くに飛行場があるのに高層化の一途を辿り、屋上スレスレを飛行機が通過する
  • 内部に食品工場があり、衛生法を無視して作られた食品が香港にも出回っていた
  • 幼稚園・小学校・中学校に老人ホームまで設置されていた
  • なぜか歯医者が多い
  • 無法地帯だが、「香港の他の地域より安全だった」という証言がある
  • いたるところで雨漏りよろしく不潔な水が滴り落ちている
  • なのでヨソ者が立ち入る際、まず麦わら帽子を渡される



関連作品


映画だけでなく、ゲームなどでもたびたび取り上げられる。いかに多くの人が影響を受けていたか分かる。

日本で代表的な作品は何といってもプレイステーションのクーロンズゲートであろう。
九龍城の持つ雰囲気を当時の技術で見事に再現してみせた怪しさ全開だが一度やったら忘れられないタイトルである。
ほかにドリームキャストの「シェンムーⅡ」にも九龍城は登場し、内部もかなり再現度が高いと評判である。
PS2の「シャドウハーツ」にも隠しダンジョンとして登場するし、近年ではFPSの「コール・オブ・デューティ ブラックオプス」にも出たようだ。
というか、それより何より九龍城という、名前がそのまんまの麻雀ゲームもある。
コメ欄の情報によると「secondlife」というオンラインゲームに九龍城が再現されたステージがあるそうだ。マニアは要チェックだろう。

『GetBackers-奪還屋-』の主要な舞台、「無限城」のモデルになったのも有名。
原作のそれはバブル崩壊で打ち捨てられた高層ビルを中心に違法建築のビルやバラックが折り重なり、それが怪しい地下街に接続され独自の社会が築かれているといういかにもそれっぽいものだった。
しかも中の様子は日本国内であるにもかかわらず中国風である。
あまり評判のよくないアニメ版では単なる廃ビルになっている。

富士見ファンタジア文庫のライトノベルBLACK BLOOD BROTHERS」には「九龍の血統(クーロン・チャイルド)」と呼ばれる吸血鬼たちが登場する。
この作品内では、九龍半島で「香港聖戦」という戦い、そしてそれを引き金にして「九龍ショック」という虐殺事件が、あの1997年に起きている。
それらの事件を引き起こしたのが上記の吸血鬼たちであり、「九龍の血統」という名称の由来はそこから来ている。
だが生憎、上記の事件は物語が始まる10年前の出来事であり、1巻で既に九龍城はもちろん香港自体が廃墟と化している。
物語の終盤、ある吸血鬼の回想という形で、九龍城が登場する。


類似する施設

また日本にも「日本の九龍城」と称される類似性のある場所が存在する。
類似性があるというだけだが中野ブロードウェイ「沢田マンション」などがそう呼ばれている。
何と九龍城の中身も汚さ怪しさまで完璧に近いように作りこんで再現されたゲームセンター「電脳九龍城 ウェアハウス川崎店」という建造物まである。
もはや職人技で涙なしには訪れられない、九龍城を感じることができるのは日本ではこれらの場所くらいかもしれない。
ちなみに中は18歳未満入場禁止である。トイレや両替機も一見汚く見えるが、単なる塗装なので実際は清潔である。



九龍城、その後

1997年、香港一帯が返還。そして多くの人に惜しまれながら、1993年に取り壊しが決まり地上から姿を消した。現在その跡地は地域の憩いの場、九龍寨城公園になっている。
確かに小奇麗にはなったが、香港いや中国の魅力は大きく削がれたと断言してよいだろう。
九龍城なき香港は気の抜けたビールのようだぜ。
だが我々は忘れない、忘れまい。かの姿を、かの威容を。





っつーか、誰か九龍城を完全再現したゲーム出してくれ!!
完全に自由に歩き回れ、視点も一人称と三人称切り替え可能で住人がそれぞれAIで暮らしてるみたいなやつ!
できれば初回限定版では緻密な九龍城の完成フィギュアつけてくれえぇぇ~~~!!





追記・修正は九龍城で迷わなくなってからお願いします。


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