北海道新幹線

登録日:2016/03/29 (水) 20:58:00
更新日:2025/04/16 Wed 22:58:59
所要時間:約 5 分で読めます




物語が始まる

北海道新幹線(ほっかいどうしんかんせん)とは新青森駅から新函館北斗駅まで結ぶ、JR北海道の高速鉄道路線である。

【概要】

JR北海道初となる新幹線で、建設計画にある新青森駅~札幌駅間のうち、2016年3月26日に新函館北斗駅まで部分開業した。
現時点では東北新幹線の延長線のような扱いのため、山陽新幹線共々独自の列車愛称が設定されていない新幹線である。

最大の特徴は青函トンネルを含む新中小国信号場~木古内駅間82.1kmが、新幹線と在来線で線路を共有する三線軌条区間となっている事である。
しかし、これだけなら秋田新幹線奥羽本線の神宮寺~峰吉川間にも存在する為、そう大した話には聞こえなく見える。
大きく異なるのは「200km/h以上の速度で運転することを想定して作られている」という事である。
その為、新幹線開業を機に架線電圧が在来線用の交流20000Vから新幹線用の交流25000Vに切り替えられた。
電圧の引き上げや運行システムの更新により、従来の在来線電車は海峡線を走行できなくなるため、新幹線開業までに在来線旅客列車は全て廃止となり*1、同様に海峡線の途中駅も新幹線工事の進行に合わせて順次廃止されたため、海峡線は新幹線開業により貨物線へと移行する形となった。

とはいえ、実際にそんな速度で走行するとトンネル内ですれ違う貨物列車のコンテナが風圧で吹き飛ばされる恐れがあるため、開業時点では在来線特急の最高速度と同じ140km/hの速度制限がかかっている。
しかし、JR貨物の都合等知った事ではないJR北海道にとっては致命的な問題である事から、1日1往復のみは貨物列車とすれ違わないようダイヤを調整し、地上と同じ260km/hでの走行が可能となる「新幹線専用枠」を設ける予定となっていたが、開業時点では安全性重視が優先されたためか導入は見送られた。
なおトンネル内での260km/h走行をJRも諦めたわけではなく、なんと2025年には廃車となったE2系*2を鉄道・運輸機構が購入し、これを使って走行試験を実施する計画が発表された。

乗り入れ先の東北新幹線区間を含めても、様々な事情で最高速度の引き上げが困難な区間も多く、開業時点では東京~新函館北斗間を3時間台で結べなくなってしまった。
その後の試験を経て、2019年3月16日のダイヤ改正から青函トンネル内の最高速度を160km/hに引上げたことにより、現在は東京~新函館北斗間最短3時間58分で結んでいる。
また、2020年度の年末年始以降、繁忙期(年末年始、GW、お盆)の一部時間帯において青函トンネル内で210km/hでの走行が行われている。ただし、三線軌条区間の地上部分は従来通りの速度での運行となっている。

テーマソングは函館市出身のバンドグループであるGLAY
『Supernova Express 2016』
開業に際して書き下ろしたナンバーである。
PRキャラクターとして水曜どうでしょうでお馴染み、ミスターこと鈴井貴之が特任車掌として起用された。一部では「サイコロで行先が決まりそう」だの「四国へ行きそう」だの「新幹線をインキーしてそう」「車内販売で赤福を食わされる」などと言われていた。

【車両】

  • H5系
開業時に導入された、JR東日本のE5系ベースとした車両。
最高速度320km/hで10両編成だが、北海道新幹線内は最高速度260km/hとなっている。
グリーン車の更に上位に位置するグランクラスを連結し、走行性能なども基本的にはE5系と同じだが、普通席には全席モバイルコンセントが設置されている。
この他にも車体中央の帯色や内装、北海道の地図をベースにしたロゴマークなどがE5系と異なる。
編成数はまだ少なく、中々見られない上に北海道新幹線以外の運用に入っていることもある。
4本が製造されたが、2022年3月の福島県沖地震でH2編成が脱線・損傷し廃車となった。
ちなみにこの編成は6両に短縮され、内装の一部改造を実施し「H296 ふくろう」の愛称が付けられ、2025年4月から社員研修用に使用されている。
*3

開業前には最高速度360km/hで運転できれば東京から札幌まで4時間を切ることも可能と予想されたことがあり、現在も「FASTECH360」や「ALFA-X」といった試験車両で走行試験を繰り返している。
特に札幌延伸の際には道南と道央の雪質の違い*4に対応しなければならないという点もあり、今後どのような展開になるかは未知数である。

  • E5系
東北新幹線用の車両で最高速度320km/hで10両編成だが、H5系同様北海道新幹線内は最高速度260km/hとなっている。
上述のH5系のベース車両だけにほぼ同じ車両だが、一部編成を除き普通席は窓側のみモバイルコンセントが設置されている。

  • EH800形
JR貨物所属の交流用電気機関車で、青函トンネルを走行する貨物列車全てを牽引する。
在来線用の20000Vと新幹線用の25000V双方を走行できるように設計されている。
新幹線供用区間を含む東青森駅~函館貨物駅(五稜郭駅に併設)間で使用。
EF210形以降に落成したJR貨物の新形式電気機関車は公募の車両愛称が設定されているが、本形式にはそれが無い。

【列車愛称】

  • はやぶさ
最速種別。東京~新函館北斗間を最速3時間58分で結ぶ。
全て東北新幹線に直通し、東京発着が10往復、仙台発着が1往復設定されている。

  • はやて
最高速度320km/hで運行しない区間列車で各駅に止まり、新青森・盛岡発着がそれぞれ1往復ずつ設定されている。

【駅一覧】

奥羽本線乗り換え。東北新幹線との境界駅で起点駅。
青森市の中心である青森駅はお隣。

  • 奥津軽いまべつ
津軽線乗り換え(津軽二股駅)だが、新幹線開通前は完全な別駅扱いであった。
元々は海峡線の津軽今別駅として開業したが、新幹線駅にリニューアルする形で再開業した。
なお、仮称は奥津軽駅だった。青春18きっぷオプション券を使用して北海道に抜ける場合はここから乗るという規定になっている(逆も然り)。
竜飛海底駅が廃止された現在は、「JR北海道では唯一本州にある駅」と言える。
海峡線とは当駅の青森方で合流し、当駅を囲うように在来線用の待避線が設けられている。
ここから青函トンネルに入るため、新幹線は下りのみ待避可能。
駅周辺の秘境度は北陸新幹線安中榛名駅と同じくらい。利用者数も開業前まで新幹線駅のワースト1位だったいわて沼宮内駅を下回っている。しかし一応、道の駅が併設されてはいる。
津軽鉄道線の津軽中里駅とを結ぶバスが発着する。

  • 木古内
道南いさりび鉄道線乗り換え。
かつては松前線、江差線(江差方面)とも接続していた。
奥津軽いまべつ駅と同じ理由で、こちらは上りのみ待避可能。

  • 新函館北斗
函館本線乗り換え。
函館駅からは5駅離れた北斗市内の駅の為、在来線との乗り継ぎが必要となる。
新幹線11番ホームと在来線1・2番ホームは対面乗り換え可能。
現在は2面2線だが、札幌延伸時にもう1線追加予定。
旧駅名は「渡島大野」という名前で、新駅名については函館市が「新函館」、北斗市が「北斗函館」などを主張して対立しJRが折衷案として現駅名を採用した、いわゆる合成駅名というやつ。
2023年8月現在、駅の周辺はホテルが2軒とレンタカーの事務所、そしてコンビニ「ハマナスクラブ」くらいしか無いという地味にほぼ何もない状況。
最寄りのセイコーマートすら車で5分という状況である。道内でセコマすら徒歩圏に無いって地味にやばくね?
厄介なのがハマナスクラブの営業時間、20時に店を閉めてしまう。
最終の新幹線で来る場合、乗車前や車内販売で買い物をしておくのが無難だろう。

今後開業予定の駅

新函館北斗 - 札幌間は当初2030年度末に完成予定としていたが、2030年冬季五輪招致が断念され2031年以降となる見込み。
駅名は既存駅以外仮称である。

・新八雲
函館本線の八雲駅から西に3kmほど離れた新駅になる予定。
完成すると北海道最西端の駅になる予定。

・長万部
函館本線・室蘭本線乗り換え。
かつて車両基地があった為、新幹線が開通してもまだ余る位の側線がある。
長万部温泉や南部藩ヲシャマンベ陣屋跡の最寄駅。

・倶知安
函館本線に並行して設置されるが、新幹線開業時に函館本線は廃止予定。
後志総合振興局(旧後志支庁)の所在地であるが、町としては小樽の方が発展している。
読み方は「くっちゃん」と地味に難読駅。
日本有数のスキーリゾートであるニセコへのアクセス駅として期待される。

・新小樽
単独駅で、小樽駅は北に4kmほど離れている。
開業後は日本最北端の新幹線駅になる予定。

・札幌
函館本線・千歳線学園都市線、札幌市営地下鉄南北線・東豊線(さっぽろ駅)乗り換え。
北海道最大かつ全国第4位の人口を持つ札幌市の中心駅で、日本最北の政令指定都市。
元々は地上駅の跡地に新幹線ホームを作る予定だったが、高架化が完了した1990年代当時は新幹線が来るまで何十年かかるか、そもそも本当に来るかどうかさえ不透明な状況であり、それまで待ちきれなかったJR北海道は跡地に大規模な駅ビルを建設してしまった。本業が万年赤字のJR北にとって駅ビルのテナント料は貴重な収入源となったことだろうが、いざ札幌延伸が具体化すると当然のことながら新幹線ホームをどこに作るかが問題となる。在来線の1・2番ホームを改修する案、駅ビルを大規模改修する案、現駅の西側や地下に設ける案などが検討されたが、現駅から200~300mほど東の創成川上に2面2線のホームを作ることで決着した。それにあわせて新幹線出入り口も設けられる。
在来線は現在5面10線だが、新幹線を通すために1番ホームが廃止される代替として11番ホームを建設中。新在乗り継ぎは新たに建設する連絡通路・跨線橋での乗り換えになる。動く歩道やエスカレーターの設置に関しては厳しいとのこと。
地下鉄東豊線は比較的乗り換え易くなるが、南北線とは少し距離が離れることになった。

【その他のルート】

札幌より先の区間

北海道新幹線の基本計画は札幌より先の旭川までだが、特に進展は無い。
また、北海道南回り新幹線として長万部~室蘭~札幌も基本計画区間に含まれているが、こちらも特に建設に向けた動きは見られない。

計画段階で考えられていた別ルート

  • 南回りルート
現在の室蘭本線、千歳線に沿って線路を敷くルート。こちらの方が沿線人口も多く、雪の量も少ないのだが
「有珠山が噴火したらアウトだぞ!」
という指摘があり、没に。先述の北海道南回り新幹線とはこの南回りルートの変形。
  • 内浦湾海底トンネル
内浦湾の海底を掘削し、地上で建造したトンネル構造体を沈めて埋める沈埋工法で海底トンネルを建設。室蘭からは南回りルート同様に進むルート。こちらは
「駒ケ岳の噴火時の対応が難しいのと沈埋トンネル作るのに金がかかりすぎる」
という事が判明して没に。もし実現していれば日本で唯一2回海底トンネルをくぐる新幹線になっていた。
  • 中山峠・定山渓ルート
中山峠を超え、定山渓温泉付近を通って札幌までを結ぶ。距離は短いのだが
「あの辺は温泉が出る。イコール地質がややこしい場所である」
ということが判明して没に…。
  • 函館駅立ち寄りルート
木古内駅から函館駅へ直行するルートと新函館北斗駅でスイッチバックして函館駅に入るルートの2案が立てられたが
木古内駅から函館駅直行案は
「札幌まで伸ばす時に大回りになる」
新函館北斗駅スイッチバック案は
「建設費1000億円全額を函館市が負担するのは難しい」
という理由でそれぞれ没になった。
その後、2023年4月に就任した大泉潤*5函館市長が「新幹線の函館駅乗り入れ」を公約として挙げており、6月15日に補正予算案として調査費3773万円を計上した。
8月下旬に公募で委託事業者を選定し、9月頃から調査を開始する予定。
一度は消えた案が本格的に動き出すことになり、今後の展開が注目される。




見送りのあの人の口癖は
「漂うのも悪くないさ」
追記、修正、そう果てなき旅

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • JR
  • JR北海道
  • 鉄道
  • アニヲタwiki北海道ツアー
  • 新幹線
  • 青函トンネル
  • 路線
  • 北海道
  • 青森県
  • 函館本線
  • 新函館北斗
  • H5系
  • 北海道新幹線
  • GLAY
  • 標準軌
  • 三線軌条
  • 鈴井貴之
  • 新幹線
  • 新青森駅
  • 奥津軽いまべつ駅
  • 木古内駅
  • 新函館北斗駅
  • 整備新幹線
  • 路線シリーズ
最終更新:2025年04月16日 22:58

*1 臨時列車では「TRAIN SUITE 四季島」がこの区間に乗り入れる。

*2 購入したのは200系をイメージしたカラーリングとなったJ66編成である。

*3 出典:Wikipedia URL: https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/c/cc/H5%E7%B3%BB_H2%E7%B7%A8%E6%88%90_%E7%9B%9B%E5%B2%A1%E9%A7%85%E5%85%A5%E7%B7%9A.JPG 日時:2016/03/29 出典者 Sukhoi37

*4 かつて特急電車の485系が函館本線札幌~旭川間に導入されたことがあるが、道央地区の雪質に対応できず故障が頻発し、道内向けに開発された781系登場に合わせて撤退している。

*5 北海道のスター・大泉洋の兄である。