登録日:2017/06/09 Fri 22:41:40
更新日:2025/03/22 Sat 22:10:49
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変態機とは、読んで字のごとく変態な航空機である。
変態銃の項目と同じく
変態兵器・
英国面・
米国面の記事と被る部分も多いが、
この項目では航空機に限定して紹介していく。
◇何故、変態機は生まれるのか
飛行機というものは軍民問わず様々な用途に使われている。
民間向けなら旅客機や貨物機、写真撮影、救助、或いは自家用機など。
軍向けであれば戦闘機、攻撃機、爆撃機、偵察機、哨戒機、輸送機など。
だがここで少し考えて欲しい。
航空機、特に重航空機は、空気より重いアルミやチタン、カーボンファイバー材などで出来た機体を、気流で発生する揚力で「空気にぶら下げる」、或いはエンジンパワーで無理やり浮上させるなどで「重力に逆らって」浮かせているのである。
これがどれだけありえないことなのかは、飛べる動物の代表格である鳥類のことを考えればわかるだろう。彼らははっきり言って「飛ぶために運動能力を極限まで強化させ、さらに骨格なども軽量な構造に変化させ、もう一つおまけに手の器用さを投げ捨てることにより飛翔能力を手に入れている」のである。手短に言えば「他のものを全部投げ捨ててまで飛ぶことを選んだ」のである。
飛行機にだって同じことが言える、というか体重は重くても数十kgで済んでいる鳥類と違い、場合によってはトンで3桁にもなる重量の金属塊を空気にぶら下げたりエンジンのパワーで浮かせるなりして飛んでいるのだ。
しかも内燃機関を動力とする以上は「燃料」も必要になる。燃料だってれっきとした重量物だ、積めば積むほど重くなる。
つまり、「車輪や軸やキャタピラさえ耐えられれば幾らでも荷物を積める」
自動車や鉄道車両と異なり、「積載物に関する余裕」、ひいては「詰め込むことができる機能」はかなり限られるということだ。
その一方で航空工学ってのは案外デタラメな部分もあるもので、E-3セントリーの開発者が「十分な揚力とエンジンさえあれば自由の女神だって飛ばしてみせらあ!」と豪語したように、わりかしぶっ飛んだ『形状』であっても「バランス」「エンジンパワー」「揚力」さえ揃っていれば、案外飛んでしまうものである。
そして、航空機というもの自体がまだまだ発展途上の存在であるということもある。ライト兄弟から数えてもまだ100年ちょっとしか経っていないのだから。
宇宙まで進出できるようになった今でもなお、航空機は日夜進歩・変化を続けている。
そのための試行錯誤の過程においてとんでもない機体が出来上がることはままあることなのだ。
「こんなの作ったら強くね?!」というノリで、それこそ漫画や
ゲームの中にあるような発想を実現させてしまった機体も少なからず存在する。
このように、「限界ギリギリを攻める必要のある環境」と「意外と許容範囲の大きな航空工学の世界」が悪魔合体した結果、常識の範疇を蹴っ飛ばしたような航空機が生まれることも多い…というのが変態機誕生の背景なのだろう。
◇変態機の一覧
以下、世界中の変態な機体を分類ごとにABC→五十音順で列挙する。計画のみで終わった機体も含める。
個別項目が存在する機種、或いはこの他にも「我こそは変態なり!」と言えそうな機種があればぜひとも追加して欲しい。
○旅客機
「大量の乗客を輸送し、尚且つ航空会社が企業として採算がとれる機体」に仕上げるため、割とギリギリを攻める必要が多い。
すなわち変態化する可能性が存在している。
- エアバスA380- かのB747を上回る、世界最大の量産型旅客機。座席を全てエコノミークラスにすれば最大で850人近くを乗せることが可能とされている。
 
- BAe / アエロスパシアル コンコルド- 説明不要の超音速旅客機。今なお実用機ではTu-144と並び世界最速の旅客機の座に就いている。
 スピードは馬鹿みたいに速いものの、燃料費も馬鹿みたいに高く、ついでにとんでもない騒音をまき散らすことで顰蹙を買い、早々に運用が停止された。
 
- BAe 146- 究極のSTOL性と低騒音を求め、リージョナルジェット(短距離用ジェット機)ながら小型ターボファンエンジン4発という奇怪な仕様となった旅客機。
 で、ついたあだ名が「ジャンボリノ」。
 
○ビジネス機 / 自家用機
人員を輸送するという特性上、旅客機と被る部分は多いが、企業だけでなく「個人」が所有する場合もあるのでメンテナンスなどの都合から妙な仕様となることがある。
- HondaJet- ホンダが開発したビジネスジェット。
 他にはドイツの旅客機「VFW614」くらいしか例のない「主翼上にターボファンエンジンを配置する」というレイアウトを始め、独特な仕様が満載。
 
- ビーチクラフト2000 「スターシップ」- 宇宙船の名を冠する独特な仕様のビジネス機。当時最先端のカーボンファイバー製の機体やエンテ翼といった近未来的な仕様が盛りだくさんだが…
 当時はビジネス機でもジェットが主流に成りつつあった時代にターボプロップ(つまりプロペラ機)、しかも先進技術満載で機体価格が高価などの理由でさっぱり売れなかったという。
 見た目はカッコイイのにな…
 誰だ飛行機版デロリアンとか言ったやつは
 
○貨物機
これも単純に大量の貨物を搭載する必要があることや、
或いは航空機やロケットのパーツのように『軽いがサイズが馬鹿でかいもの』を積むために、特異な形状となることがある。
- An-225 ムリーヤ- デカァァァァァイ!説明不要!の世界最大の輸送機。元はと言えばAn-124「ルスラーン」の拡大版(こいつも実はA380に匹敵する巨体である)。
 ソ連版スペースシャトル「ブラン」の空輸用にAn-124を拡大設計した飛行機。背面にあるコブはその名残(ブランを固定するためのハードポイント)。しかもただデカイだけではなく、レスポンスのいいエンジンや方向舵により、パイロット曰く『戦闘機まがいの機動性を持つ』とのこと。
 「積載量」や「一定の積載重量下での最高高度・最高速度」など、実に240個ものギネス記録を持っていたが、2022年ウクライナに侵攻したロシア軍に破壊されてしまった。
 
- A300-600ST「ベルーガ」- エアバスが自社の飛行機のパーツを運ぶために生み出した魔改造A300。
 その独特の外観が北極圏に生息するシロイルカに見えることから「ベルーガ」愛称がついている。
 長年活躍したが老朽化が進んでおり後継機としてA330を元にした「ベルーガXL」を開発している。
 
- B747-400 ドリームリフター- こちらもボーイングが飛行機のパーツを運ぶために生み出した魔改造B747。
 ボーイングの関係者すら「コイツはひでぇ…」と漏らすほどの外見。
 だが操縦性は結構良好だとか…。航空工学のデタラメさ、もとい許容範囲の広さを見せつけるかのような機体。
 
- VM-T アトラーント- ソ連版スペースシャトル「ブラン」のオービター(宇宙船の部分)などを輸送するために開発された規格外貨物輸送機。
 元々M-4爆撃機を魔改造した機体なのだが、その積載方法たるや機体の上部にブランの機体や貨物コンテナ(アトラーント本体より遥かにぶっとい)を背負わせるというかっとビングな方法。
 そりゃ西側の航空評論家が「ソビエト式合理主義は、科学という名の魔法で飛行機を飛ばす」とか評したくなりますわな。
 
ところでこの積載方法を見てくれ。コイツをどう思う?
- ショート スカイバン- 「飛行機の機体は円筒形でなければいけないと、誰が決めた?」と言わんばかり、四角い機体断面を持つイギリス生まれの小型輸送機。
 しかもこんな、一見すると空気抵抗を無視したような形状にもかかわらず中々の高性能…だが風切り音がものすごかったらしい。
 ちなみに日本でも海上保安庁が使用していた経歴がある。何でも「ハコフグ」とか「空飛ぶ弁当箱」とかの愛称を付けられていたそうで。
 
- スーパーグッピー- 飛行機やロケットの部品を輸送するためにメタb…とんでもない胴体に魔改造されたB-29の末裔。20世紀のノアの方舟か…
 上のベルーガ(XL)やドリームリフターは同じような用途のために同じような胴体に魔改造された。
 時代が進んでもこの形は合理的ということか。
 
○民間機(その他)
農業用や観測用などの特殊或いはニッチな需要に合わせ、奇怪な姿形となるものもある。
- M-15 ベルフェゴール- ポーランドが放った複葉式ジェット農業機。何を言ってるのかわからねーと思うが(ry 
 そのあまりにも奇怪な形状から、付けられた愛称は悪魔の一つであるベルフェゴール。
 多分こいつに西側で(奇怪さで)対抗できるのは、下記のエジレイオプティカくらいなものだろう。
 
- セスナ336 スカイマスター
- セスナ337 スーパースカイマスター- 胴体前後にエンジンを搭載した奇怪な形状の軽飛行機。
 見た目は奇怪だが片肺でもバランスを崩しにくい、臨界発動機(止まると特にヤバイことになるエンジン)の考えが不要、2つのエンジンを反転させることによりトルク相殺できる、何より双発なのでもしものときの生存性が高いなどの利点もある。
 生存性の高さから民間用以外でも軍用観測機(O-2)としても採用されている。
 創作物では映画「地獄の黙示録」にちょろっと顔出ししていたり、或いは漫画「エリア88」にも少しだけ登場している。
 
○戦闘機
「空戦して勝つ」という機能を洗練させるために変態的な形状やスペックになる場合がある。
最近では戦闘爆撃機としての機能を求められることも多く、『より多く・より強く』を実現させるためにおかしなブツとなることも。
- F-2- 日本特有の防衛事情によって生み出された変態機。ナニが変態なのかって?詳細は個別記事参照。
 
- F-14トムキャット- 変形する変態機。マクロスに登場する戦闘機「バルキリー」のモデルにもなった。個別記事参照。
 
- ノースアメリカン F-82ツインムスタング- 大傑作P-51の航続距離を伸ばすためにP-51を横に2機合体させた。
 見た目は雑で奇怪だが、性能的には問題なく運ちゃんへの負担も少ないという意外な優れもの。
 
- Me163「コメート」- 空前絶後のロケット戦闘機。ロケットエンジンによる爆発的な加速で連合軍爆撃機を恐怖に…陥れることはできなかった。
 何しろ飛行時間が非常に短く、文字通り「基地の周辺でしか」戦闘できなかったのだから。
 何より恐るべきは、使用されている燃料は人体を溶かすという恐るべき代物である点。
 実際に事故によりパイロットが燃料を全身に浴びてしまい、全身がゼリー状になって死亡するという惨事が起きている。
 特殊なロケットエンジン自体もドイツでも扱いが難しく事故を起こしている。
 日本でもドイツからの技術提供によって「秋水」を開発したが初飛行で大事故を起こしている。
 因みに本機で使われていたエンジンは日本で現在も保管されている。
 
- Tu-128- こちらもデカァァァァァイ!説明不要!の巨大ジェット戦闘機。
 どんだけ巨大なのかって、戦闘機のくせに全長だけで30mとかある。B-29に匹敵する巨体である。そのおかげで西側から爆撃機と間違えられたほど。
 もちろん趣味でこんなサイズにしたのではなく、"地上からの支援を受けずに単機で迎撃任務をこなせる全天候戦闘機"を目指したらこうなった(機内にレーダーなどの機材を詰め込むために巨大化した)。
 つまり「もう全部あいつ一人でいいんじゃないかな」を目指した結果。
 ちなみに操縦桿は操縦輪方式(旅客機などに使うようなH字型の操縦桿)を採用している。
 
- XF5U フライングパンケーキ- 究極のSTOL能力を求めて試作されてしまった円盤翼機。
 どう見てもUFOです、本当にありがとうございましたな見た目のため、通報される騒ぎになったことすらある。
 双発プロペラ機としては性能は良好だったが、ジェット戦闘機の時代が来てしまった事もあって不採用になってしまった。
 
- XF-85 ゴブリン- マクダネル社の長距離爆撃機B-36ピースメーカーの護衛機として設計された、魔物の名を持つ「寄生虫戦闘機」。
 爆弾代わりに詰みこまれて空中で投下、そのまま飛行し戦闘するというSF世界のような発想のもと制作された機体。
 当時はB-36の航続距離についてこられる戦闘機が無かったことによる苦肉の策だった。
 しかし爆弾槽に収納する以上どうしたって小型になってしまい敵戦闘機に対抗できるだけの性能を持たせられない、
 敵地に着陸させないための再収用が困難という技術的な問題に加え空中給油の技術が発達したことで数機の試作機のみを残し計画倒れになってしまった。ちなみに有名なのはこいつだが、パラサイトファイター自体はこれよりもっと前からいくつかの国で研究されていたものである。
 
- キ109 特殊防空戦闘機- 第二次世界大戦中に日本陸軍が開発した防空戦闘機。
 その実態は飛龍こと四式重爆を魔改造し、機首に75mm口径の高射砲を仕込んだという代物。
 何でこんなゲテモノを作ったのかって?…B-29迎撃用ですよ?高射砲当たらないなら高射砲を飛ばしてしまえという発想ですよ?
 
- スーパーマリン ナイトホーク- イギリスが試作した飛行船迎撃用の四葉式(主翼四段重ねってこと)迎撃機。これはジブリメカですか?ってぐらいにごつい。一万フィート(3000m)上昇するのに一時間以上かかる、最高速度は97km/h、エンジンは信頼性ゼロと見た目以外にも突っ込みどころ満載。
 
- ハボックMK.1「タービンライト」- 「ドイツ軍の夜間爆撃テラウザス(´ω`#)」「じゃあ飛行機にサーチライトつけて爆撃機照らしてみるべ」
 という訳でA-20ハボックという戦闘機にサーチライトをPON☆ ……機首に。
 ちなみに武装は搭載されておらず(積めなかった)、実際の攻撃は信頼と実績のホーカーハリケーンが担当。
 昼間でもクソむずい編隊飛行、しかも異種の機体でなんてもんが夜間に出来るわきゃねえってもんで失敗している。
 い、一応一機くらいは倒しているし(震え声
 
- ボールトンポール P.100- 変態機製造会社ボールトンポールがイギリス空軍の「単発単座戦闘機が欲しい」というリクエストに応えた物。見た感じイギリス版震電。脱出時には機首から下がパカッと開いて「パイロット君ボッシュート!」
 
- STAVATTI SM-36 STALMA - アメリカのベンチャー企業がぶち上げた 第六世代ジェット戦闘機計画(発案当時は第五~四・五世代戦闘機の開発・配備が主流)。イケイケな完成予想CGといい、X字ウィングの主翼と巨大カナードといい、冷却プラズマ空洞アクティブステルスなる謎技術といい、「お前はSTAR WARSにでも出るつもりか!」とツッコミたくなるような強烈な内容となっている。
 
○爆撃機・攻撃機
そもそも爆撃機というのは「爆弾や
ミサイル」という重量物を搭載し、敵の拠点に殴り込みに行く機体である。
「搭載量」と「見つからない」または「撃ち落とされない」を両立するために変態化するのは必然と言えよう。
- A-1 スカイレイダー- ベトナム戦争で暴れまわったレシプロ攻撃機であり、(爆薬を詰めた)便器や流し台まで搭載して敵陣に投下したというエピソードで有名だが、
 それを許容するほどのどう考えても単発レシプロ機のそれじゃねえ搭載量の時点で十分変態の素質あり。
 だがもっとおかしいと思われるのは経歴、何がおかしいのって「原設計はたった一日で完成、試作機は9ヶ月で完成」という超スピード開発で誕生したという変態振り。
 開発者も変態天才だったということか…
 
- He177- ヘルマン・ゲーリングの「アメリカに絶対爆弾落とすエアプレーン」の要求により生み出された、変態機構てんこ盛りの爆撃機。個別記事参照。
 
- Hs129- ドイツが第二次世界大戦中に開発した装甲攻撃機。
 重装甲と高火力を備えた言わば「戦車絶対殺すエアプレーン」という点では結果的とは言え後のA-10に通じる飛行機であるが、
 だからと言ってガチムチ♂重装甲でただでさえ大重量の上に、最後には75mm砲まで積むようなブツをだよ?700馬力のエンジン×2で飛ばすとか無茶苦茶にも程があるよ?
 確かに「当時手に入るエンジンで最強のもの」がこれしかなかったとは言えあんまりだ。
 そしてツッコミどころはエンジンの非力さ「だけ」ではなく、装甲を分厚くし過ぎたらコクピットが死ぬほど狭くなりその御蔭で操縦桿を完全に動かせないとか、エンジン関係のメーターはエンジンナセル、つまりエンジンのケースに直付け(要するにコクピットの外)とか…。
 
- Ju87G- 第二次世界大戦中にドイツ空軍で使用された急降下爆撃機の改修型の一つ。1943年当時には既に性能としては陳腐化しており、連合軍からはカモ扱いされていた機体であった。
 それでありながら更にムリヤリ37mm対戦車機銃を外付けしたため、機動性やバランスはさらに低下するという改造を施されていた。
 それでなお多大な戦果を挙げ終戦まで生き残ったのはそれを乗りこなすパイロットも変態だったのだろう。
 
- Tu-95- 低速回転型二重反転プロペラと大出力ターボプロップエンジンにより、プロペラ機の限界と言われた750km/hを悠々突破しターボファン搭載機に迫る950km/hという速度を叩き出す変態プロペラ機。
 「世界最速のプロペラ機」としてギネス記録を持っている。
 個別記事参照。
 
- フェアリー ソードフィッシュ- 第二次世界大戦中イギリスで開発されたカーチャンの買い物籠三座複葉雷撃機。あらゆる面で時代遅れ過ぎて逆に敵が撃墜し辛かったという笑劇の戦果を誇る。個別記事参照。
 
- 四式重爆撃機飛龍- 旧日本陸軍の重爆にして、日本製爆撃機の決定版。
 大型機のくせに爆弾積まなけりゃ曲芸飛行もできるほどの運動性、さらには急降下爆撃にも対応。
 もひとつオマケに航続距離は3800kmの長距離仕様。
 その優秀さから海軍の指揮下に入り雷撃機としても運用され「靖国」と呼ばれていた。
 「銀河」と共に雷撃部隊に編入されるも何かと故障率の多かった銀河を尻目に、飛龍だけが出撃するケースも少なくなかったという。
 
- A-10 サンダーボルトⅡ- 皆さんご存知A-10神。開発にあのルーデルが関わった機体。何よりもルーデルの出した無茶ぶりともいえる要求を全て叶えた機体である。
 詳しくは個別記事参照。ちなみに、初めてこの機体を破損させたのもルーデルである。
 この機体の変態性を語るうえでは外せない話が湾岸戦争でのことであろう。当時この機体には夜間用の赤外線カメラが装備されておらず夜間の運用は不可能であるはずであった。
 しかし、マーベリックミサイルの赤外線カメラを代用にするというアイディアで夜戦を可能にしたのである。
 
○哨戒機
これも爆撃機と被る部分が多いが、それに加えて『低速で低空飛行をして敵艦船を捜索する』という、航空機としてはかなり過酷な条件が要求されるため、奇妙な仕様となる場合がある。
- P-1- またもや川崎重工作の哨戒機。コイツ自体も変態機に片足突っ込んでるが川崎重工の競合相手達が出した設計案が……
 
- ショート スタージュン- 標的曳航機→雷撃機兼哨戒機と大変身を遂げた対潜哨戒機。ただし、大幅な設計変更により、機首がバクの鼻みたいな気色悪い外見に。
 
○偵察機
こちらも「敵の本拠地に殴り込んで情報を得る」という過酷な任務に就く、その情報を得るために広い視界を要求されるなどの点から、変な機体に仕上がる場合あり。
- Bv141- 「視界良好な三人乗りの単発偵察機を作ってくれ」というドイツ航空省の要求にあのブローム・ウント・フォスが応えてしまった結果爆誕した、前代未聞の左右非対称飛行機。個別記事参照。
 
- SR-71- ご存知マッハ3の世界最速のハブ、或いは世界最速の戦場カメラマン。個別記事参照。
 
○軍用輸送機
何かを輸送するという目的は旅客機や民間用貨物機と同様だが、重量物も多い軍需物資を搭載するという目的や、或いは不整地に離着陸するということもあることから変態な仕様になることがある。
- C-1- 川崎重工製の中型戦術輸送機。
 当時の事情により航続距離は控えめにされてしまったが、輸送機それもレシプロと比べてレスポンスに劣ることの多いジェット機にもかかわらず戦闘機並の機動性を有する。
 その機動性により嘘か本当かは知らないが、アメリカの特殊部隊が欲しがったとの噂も…。
 
- Do31- 冷戦期にドイツで開発されたVTOL輸送機。多分ドイツの技術とロールス・ロイス製エンジンが悪魔合体した結果の産物。
 VTOL輸送機という時点でかっ飛んだ代物だが、その実態はメインエンジンにハリアーでおなじみの「R.R.ペガサス」を2台、序にリフトエンジンとして「R.R.RB162」を合計8台搭載。つまりジェットエンジン合計10台。で、肝心の積載量は…驚きの4.5t。これでは割に合わないと白紙撤回された、が、機体そのものは実際に作られ飛行にも成功している。
 余談であるがリフトエンジンに使われているRB162、こいつも実はかなりの変態エンジンである。どこが変態なのかって…驚くなかれ、コンプレッサー部はプラスチック製。
 
- エクラノプラン- 飛行機か船か微妙なブツではあるが一応は「浮いて動く」ものなので追加する(ちなみに工学上では"浮き上がって動くもの"は『航空機』として扱うようだ)。
 地面効果により海上スレスレを超スピードで爆走する「地面効果翼機」。人呼んで『カスピ海の怪物』。
 当時の旧ソ連ではかなり真面目に研究されていたようで、上記Tu-95と同系列のエンジン(クズネツォフNK-12MV)を搭載したターボプロップ版や、更にはVTOL機としての能力を持つものまで試作されていたようだ。
 
固定翼機と違い速度を出さなくても浮いていられる反面、搭載物に対する制約などが大きくなるために奇怪な機体となることがある。
- Mi-12- 旧ソ連が放った史上最大のヘリコプター。
 最大搭載量は実に44t、これはC-2(36t)などの下手な固定翼の輸送機をも上回る。
 おまえのようなヘリコプターがいるか!
 
- OH-1- 川崎重工が開発した観測用ヘリコプター、いわゆる偵察ヘリ。高出力ガスタービンエンジンと無関節ローターハブにより、90度近い角度での上昇・降下、宙返りやバレルロールなどを披露できる変態機動ヘリ。
 談合で派生機開発がぽしゃったり、不具合で何年も飛行停止になったり、いつのまにか偵察ヘリというジャンルそのものが斜陽になってたりと迷要素も完備
 
- シエルバ・オートジャイロ W.9- イギリス作空飛ぶネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲。完成度たけーな、おい
 
- パーシヴァル P.74- こちらもイギリスが放った仕様の試作ヘリコプター。
 いわば「英国紳士が英国紳士たる理由がヘリコプターの形に具現化した」トンデモヘリ。
 個別記事参照。
 
○実験機
可能性を試すために常識にとらわれない発想や仕様となる、航空機界のメイドインワリオシリーズとも言える分野。
正直この分野で変ではない機体なんぞ無い。
- C450「コレオプテール」- おフランスが試作したテイルシッター式(機体を立てて置く)のジェットVTOL機。形状的には空飛ぶ樽。
 
- VJ 101- ドイツで開発された…もといVTOL機研究のために魔改造されたF-104。
 マルヨンことF-104の主翼の端に角度を変えられるジェットエンジンを取り付けた恐るべきブツ、わかりやすくいうと「ジェットエンジンでオスプレイと同じことをやっていた」。
 しかも研究の結果は「満足の行くものだった」らしい。
 もひとつおまけにこいつは実は上記のDo31の元ネタである。
 
- X-32- JSF計画に対してボーイングが提出した、X-35(F-35)に対しての競合案。
 無尾翼デルタで尚且つ巨大なエアインテークという奇怪な見た目をしている。
 
搭乗員を乗せる必要がなくなるため、こちらも常識にとらわれないような外見となることがある。
- CL-227 センチネル- カナディア(現ボンバルディア)が開発した、謎のフライングTENGA…もとい、VTOL型UAV。
 見た目も然ることながら、エンジンの排気口は(赤外線探知されることを防ぐため)機体の頭頂部に設けられているなど(主にデザイン面で)ツッコミどころ満載。
 実機は攻撃能力を一切持たない観測・偵察用であるが、小説「ネットの中の島々」で、暗殺用に改修された機体が登場している。TENGAに殺されるなんて嫌すぎるんですが、それは…
 
- IAI ハーピー- 中東の英国面ことイスラエルが開発した徘徊型弾薬というジャンルのUAV。この手の兵器の草分け的存在。
 コイツのナニが変態なのかって、敵を自力で見つけて突っ込んで粉砕!玉砕!大喝采!する自爆兵器であること。
 ハーピーの場合は敵のレーダー波を検知して自動攻撃するタイプであり、敵が攻撃に気付いてレーダー波を止めるなりして失探すると攻撃を中止して徘徊飛行に戻る。
 ちなみに発射したらそれっきりの使い捨て兵器である。無人機は無人機でもミサイルに近い存在かもしれない。
 なお、日本と米国の潜在敵国である中国に売っちゃって問題になったことがある。
 
◇関連項目
- 変態兵器:航空機に限らず、変態な「兵器」達。
- 英国面:やはりと言うかなんというか、アレな飛行機は英国からも幾つか輩出されている。だが、そんな英国製メカがみんな大好きです。
- 米国面:よくよく考えてみれば(少なくとも公式の記録がある限りでは)世界で初めて動力付きの重航空機を飛ばしたのはアメリカなのだ。飛行機の老舗であれば失敗例もぶっ飛んだ代物も星の数ほど出て来るのだ。
- 変態銃:変態機が「飛ぶ方の変態達」なら、こちらは「撃つ方の変態達」。試行錯誤の末に今があるというのはどちらも共通している。
この他にも変態な飛行機を知っている方がいれば、ぜひとも追加して欲しい。
    
    
        
-  X-32は格好悪いと言うか愛嬌があると言うか、とにかく独特な形の戦闘機だが、こいつの恐ろしいところは下手したらF-35の代わりに全世界で採用されていたかもしれないことだな  -- 名無しさん  (2017-06-10 09:22:40)
-  ムリーヤはもう世界最大ではないのでは…  -- 名無しさん  (2017-06-10 10:07:15)
-  戦闘機といい銃といい兵器といい、こんな珍物まで作られてたのか。よくそんなん思いついて、作ってみれたもんだな。   -- 名無しさん  (2017-06-10 10:13:01)
-  ↑2 何それ初耳。An-225を更に超える巨大機が登場したの?  -- 名無しさん  (2017-06-10 12:09:05)
-  横から失礼だが、マイクロソフト創業者で戦艦武蔵を発見したりした、ポール・アレン氏が双胴型で世界最大の飛行機をつい最近造ったってニュースになっていたよ  -- 名無しさん  (2017-06-10 19:04:38)
-  ↑ロケット空中発射用の「ストラトローンチ」って言うらしい。見た目的には主翼の剛性がすごい心配になる形してる。  -- 名無しさん  (2017-06-10 19:41:34)
-  ツインマスタング、フライングパンケーキ、FRファイアボールとかも印象的、あと主翼が斜めになる飛行機作ったのはアメリカだっけ?  -- 名無しさん  (2017-06-10 21:08:53)
-  モビルスーツとかではないのね グレイズアインとかの話かと  -- 名無しさん  (2017-06-10 23:02:34)
-  ↑「MSのように見えますが法的には飛行機です」というインパルスならいけるんじゃね?  -- 名無しさん  (2017-06-10 23:15:16)
-  スーパーグッピー、ベルーガ、ドリームリフターは外せないと思ふ  -- 名無しさん  (2017-06-11 05:26:40)
-  この手の機体は米英独(独はWW2あたり)勢で6~7割を占めているイメージ、次点にソ連が続く感じで  -- 名無しさん  (2017-06-11 07:29:57)
-  特三号戦車やアントノフA-40は飛行機に含まれますか?それとも「こんなの飛行機じゃないわ!羽の付いた戦車よ!」ですか?  -- 名無しさん  (2017-06-11 08:31:14)
-  この手の記事は画像が欲しくなる  -- 名無しさん  (2017-06-16 15:38:52)
-  Me323ギガントも(元になったグライダーも含めて)色々と凄い輸送機、グライダーにエンジン付けて輸送機にしたのも興味深い  -- 名無しさん  (2017-06-17 00:15:53)
-  ↑×2同じく。こういう風にやれば話が分かりやすくなると思う。  -- 名無しさん  (2017-06-22 16:52:02)
-  P-75とか見た目もだが設計は傑作機の全部乗せをコンセプトにした流用機体というもあるけど?  -- 名無しさん  (2017-07-18 13:08:25)
-   ベルフェゴールは唯一複葉機で最遅のジェットという航空機としては完全にゴミ  -- 名無しさん  (2017-12-15 10:57:51)
-  画像追加されましたか。結構分かりやすくて読み応えが増してる。  -- 名無しさん  (2017-12-15 18:09:30)
-  IAI ハーピーはナゴルノ・カラバフ戦争でアゼルバイジャンがガンガン使ってるよね  -- 名無しさん  (2020-10-25 03:01:57)
-  4式重爆は急降下爆撃用の装備がないから急降下爆撃できないぞ(やれるだけの運動性はある)  -- 名無しさん  (2024-10-24 20:15:46)
-  X-32はあんなにカワイイのに、みんなはカッコワルイと言う・・・  -- 名無しさん  (2024-11-17 23:03:18)
-  XFV-12を誰か追加してー。コイツが成功していれは、今も世界の空を同様のカッコイイVTOL機が飛んでいたろうに・・・。現代の技術でなんとかならんかねえ。あ、X-32にオーギュメント翼をのっければ(ry  -- 名無しさん  (2024-11-17 23:10:55)
-  F-47はどんな戦闘機になるのやら…まあ本格的に配備されるのはあと20年くらい先だとは思うが  -- 名無しさん  (2025-03-22 22:10:49)
 
 
最終更新:2025年03月22日 22:10