ついに
産屋敷の屋敷に侵入した無惨。
しかし、それを読んでいた
産屋敷輝哉達による決死の
自爆。
混乱したままの無惨だが、着実に再生していく。
だがそれは、鬼狩り達の、人間の、猛攻の始まりに過ぎなかった。
再生を終えた無惨の目に飛び込んできたのは肉の種子。そして瞬く間に彼は無数の棘に貫かれる。
誰の血鬼術か判らないまま、無惨は吸収して拘束を無効化しようとするがそこに珠世が乱入し、人間戻りの薬を含む対無惨用の薬を投与することに成功。
鬼狩りと鬼の、雌雄を決する死闘の幕がここに上がり、そして同時に、最終的にここで無惨に打ち込まれた薬が勝敗を決する最大の切り札となった。
この際、珠世により「先ほどの血鬼術は浅草の人が放ったもの」であることが明かされている。つまり無惨が覚えてもいないような鬼が、彼の知らぬところで牙を研ぎ、逆襲しに来たのである。
直前に輝哉も無惨に対して、「何度も何度も虎の尾を踏み龍の逆鱗に触れている。本来ならば一生眠っていたはずの虎や龍を君は起こした」と突きつけているが、これもまたその実例の一つである。
他人の幸せを不用意に壊したことで、牙を向ける筈のなかった龍が無惨に襲い掛かってきたのだ。
彼個人のみならず、彼を鬼に変えた行為が炭治郎と珠世の、そして珠世と鬼殺隊との繋がりを作り、全ての因果が鎖のようになって無惨に絡みついた瞬間とも言える。
この展開には驚いた読者が多く、「まさかモブキャラが大事な局面に活躍するとは思わなかった」と評判に。
何より下に記す血鬼術から滲み出る殺意に恐怖を覚える読者もいたとか……。
肉で出来た種のような小さな球体を無数に具現化させる。
その種子からは黒く大きな無数の棘が発生し、標的を全方位から刺し貫く。突き刺さった棘は標的の体内で一瞬で細かく枝分かれして伸びていき、相手の肉体を完全に固定化する。
この棘は無惨ですら力ずくでは振りほどけず、分解吸収することでしか対処できなかった。
いくら再生中とはいえ、作中最強である無惨が見てから回避・防御できない程に棘の発生スピードが凄まじく速く、刺した後も全く抜けない仕組みとなっている。
後に、逃げようとする無惨(弱体化中)を、満身創痍ではあったが最上位の剣士である
柱の他、モブ隊士らも、加えて非戦闘員である隠達までも、その誰もが一歩間違えれば死の危険に身をさらしながら必死に足止めしようとしていたことを考えると、不意打ちかつ再生中だったとは言え、
完全体の無惨を一切逃がさなかったこの術の拘束能力の高さは凄まじいレベルである。
しかも無限城に逃げるまで、無惨の体には棘が刺さりっぱなし。弱い鬼に使えば朝まで拘束できそうなくらいのスペックがある。
何より、
人を喰わず、僅かな血だけでこの血鬼術を発現していることを忘れてはならない。浅草の人が鬼として順調に成長し鬼狩りと敵対していた場合など、最早想像したくもないだろう。
というか相手が鬼の無惨だからこそ拘束技で済んでいただけで、
人間が喰らったらほぼ即死・良くて再起不能の普通に必殺技である。まかり間違って
十二鬼月などになっていた日にはきっと詰んでいただろう。本当に味方でよかった……。
逆に言うと適当に鬼にした人物が、
このような凄まじい鬼の才能の持ち主だったというのは無惨の不運とも言える…が、結局のところは輝哉の言う通り「一生眠っている敵」を叩き起こし、いつかは龍という当たりを引いてしまうのは必然だったのだろう。
なお、この決戦以降の動向は明らかにされていないが、珠世が作成した「鬼を人間に戻す薬」で人間に戻れた模様。
実際に、人間戻りの薬は
胡蝶しのぶが作った予備の薬を除いて珠世が三つ作っていたことが言及されており、その内の一つは嬭豆子に一つは無惨に使われ、言及がない最後の一つを浅草の人が使ったと思われる。
思わぬ悲劇に見舞われたが、残りの人生はせめて安らかに全うできていればと願いたい。