E型特異菌

登録日:2019/11/24 Sun 21:00:08
更新日:2025/02/12 Wed 23:16:26
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おまえも、家族だ




『E型特異菌』とは、ゲーム『バイオハザードシリーズ』に登場する真菌。
初登場は「バイオハザード7 レジデント イービル」で、本編において生物災害を引き起こした物質であり、歴代シリーズのウィルスのポジションに該当する存在である。
本編では単に『特異菌』、または俗称として「カビ」と呼称されることが多い。
他に正式名称があるようだが、本編の研究資料には「■■■■・■■■■■」とあり文字列しか確認できず、不明のままである。

生物兵器の闇市場において世界的に暗躍する犯罪組織『コネクション』が発見したとされるカビに酷似した新種の真菌。つまり自然に群生している。
そしてこのコネクションにバイオシリーズお馴染みの正体不明の組織『H.C.F』が協力し、生物兵器『E型被験体』=エヴリンが誕生することになった。
見た目は粘性を持ったドス黒いカビで、エヴリンによって自在に操られる。


■効能・性質

感染者の体組織を養分として徐々に細胞を特異菌のものへと置換していく。
適応した感染者は菌による新陳代謝によって身体能力の向上や、切断された四肢でさえ自然接合するほどの再生力を得ることが可能。
ベイカー家のように完全に人の姿を保っている場合もあれば、モールデッドのような異形の姿に変わってしまう者など大きな個人差がある。
変異の形質によってはカビ由来とは思えない特異な能力を獲得する者もいるが、その条件も分かっていない。

主人公のイーサンが基本何されても回復薬かければ平気なのはこれが理由で、彼はベイカー家に侵入した直後に特異菌に感染していた。
また、驚くべきことに精神や記憶を取り込み保存するという性質を持つ。
肉体が滅んでも精神は菌の中に残り、他の感染者に干渉することも不可能ではない擬似的な不老不死の存在となる。

しかし、感染の変異によっては知能の低下など精神的変容が起こり、次第に暴走して言動・感情が常軌を逸していく。
最終的には精神を繋げる性質により中枢となる個体(エヴリンなど)の支配下に置かれ、感染者は自我も喪失してしまう。
ただし上述の精神や記憶を保存する性質を持つ為、個体としての自我が消失しても菌内部のネットワークのような空間には生前の正気の状態が残っている。

「感染者を支配する」という点は45の『プラーガ』と共通する。
大きな違いは「人格の改変においては、上記の様に脳幹等への物理的な変調もあるものの、幻覚や幻聴を見せることによる「精神的な蝕み」の影響が大きい」という点。
その様子をイーサンの精神世界に現れたジャックは「心を完全に支配するのではなく、無理矢理心の中に入り込み、自分の感情を抑えられなくなる」と説明している。
そのため、イーサンやゾイのように感染していても支配が及ばない者もいる。

また6に登場した『ジュアヴォ』同様に感染前の知能はほぼ完全に維持されるため、一見未感染の時となんら変わりない日常生活や行動をとる事ができる。

Tウィルスと比べれば、知能を維持したまま驚異的な生命力と回復力を獲得する上にょぅι゛ょと家族になれると、良いこと尽くめ。
…というのはごく限られた一部だけで、そのほとんどは結局モールデッドになってしまっている。耐性が無ければすぐ死ぬ。
耐性があっても感染初期からエヴリンの幻覚や幻聴を発症し、またその影響で性格や言動が徐々に豹変していく。
更に通常の人間には考えられない物を平然と食したり、衛生観念も欠如していき、最終的には自我も消失してカビに喰い殺される。
挙句の果てには死んだ後も菌の中に意識が閉じ込められ永久に幽閉される可能性があり、やはり感染する側にとってはたまったものではない。

また、ベイカー家のように理性を残した特異菌感染者は「家族」という概念を盲信しているが故に、「家族」の一員であるエヴリンの思想を肯定する。
これは「同調」と呼ばれ、その一方で「家族」として存在する自身の立ち位置に執心してしまうという傾向がある。
本編ではイーサンやミア、クランシーを「家族」に取り入れようと襲ってくるジャックとマーガレットの言動から察する事ができる。
度々「父」や「母」である自分の立場が危うくなる矛盾に葛藤したり、理不尽に逆上する場面があるのはこれが原因。
イーサンが「父」に、ミアが「母」になればエヴリンの「親」としての自分たちの立場はどうなる、というわけである。
これはおそらく「自分を愛してくれる家族が欲しい」という欲望を持つエヴリンの影響で、研究員もレポート内で飼育状況が原因ではないかと踏んでいた。

いずれにせよ感染初期の自我が保たれている段階でも感染した時点で生殺与奪をエヴリンに握られており、エヴリンの気分次第で生き死にが決まる。
感染者は基本的にエヴリンに逆らう事が出来ないのだが、ルーカスの感染している演技に気付かないなど、支配自体は完璧とは言えない面もある。
これについては「エヴリンがよくも悪くもまだ純粋で幼い」というのもあると思われる。

「統制力や連携性といった制御面が不安定」というのは、兵器としては問題点と言えるだろう。


だが、ベイカー家の悲劇を引き起こした元凶とは言え、彼女の本質は「親の愛を求める幼い子供」である。
彼女は最終的に毒を打たれ「どうしてみんな私を嫌うの?」「苦しい」と連呼し、血の涙を流し苦しみながら訴え崩壊していく…
普通に生を受けていたならば、彼女も親に愛されるただの子供だったはず…そのエヴリンの姿には、痛々しさと物悲しさを感じずにはいられない。



■関連語句

□被験体

エヴリン他、生物兵器として開発されていた者達。特異菌のゲノムをステージ4以降のヒト胚に組み込み、38~40週の培養によって開発された。
開発途上で性能不良が発見されたものはA~Dのナンバリングがされ、全ての課題をクリアしたエヴリンのみE型被験体と呼ばれていた。
共通点として10歳前後の少女の外見をしており、これは初期のタイラントのコンセプトと同様に「都市や難民などの社会集団に紛れ込ませるのが容易であるから」とされる。
なお、組織は被験体エヴリンの護送の際には父親役アラン、母親役ミアの2名の同伴を推奨している。
これは周囲に一般的な「家族」であると偽装させるとともに、親という立ち位置を設けることで被験体にある程度の服従心を擦り込ませる意図があるとされる。
しかし結果は知っての通り。「幼い子供」に「残酷な兵器」と「普通の人間」が両立できるわけがなかった。


□保全用化学物質/安定化化合物

エヴリンに定期的(最長でも六ヶ月以内)に注入しなければいけないモノ。
これがなければ彼女は通常の25倍の早さで老化し、精神に異常を来すとされる。他の被験体もそうだったのかは不明。
組織の手から離れ、ベイカー家に拾われた結果、エヴリンは僅か3年で骨と皮だけのような姿の老婆となってしまった。
ちなみにこれはE型特異菌による作用ではなく、エヴリンの染色体自体に先天的欠陥があったため。
そのせいで急速に細胞が老化してしまう事が続編のDLC「トラウマパック」で明らかになった。


□血清

特異菌の新陳代謝を停止させ石灰化させる血清。
感染者に投与することで体内の特異菌を排除しエヴリンの精神支配からも脱することが可能だが、感染が全身に及んでいた場合は感染者自身も死亡してしまう。
精製には他の被験体の脳神経と末梢神経が必要で、作中ではミイラ化したD型被験体の頭部と腕が使用された。
本編では二つ作られたが、一つはジャックを倒すために使用してしまい、イーサンはミアとゾイ、どちらかを選ばなければならない状況に陥ってしまう。


□E-ネクロトキシン

エヴリンを殺処分するために開発された壊死毒。エヴリンの体組織に他の被験体の体組織と血清を組み込むことで精製することができる。
即効性で被験体に打ち込むとすぐさま嘔吐し、短時間で死亡する様子が本編の資料写真で記録されている。
組織と内通していたルーカスが万が一の手段として用意していたもの。移送中にもすでに用意されていたはずだが、恐らく座礁で失われている。
本編ではイーサンはもぬけの殻と化した彼の隠れ家に安置されていた生成装置を、コデックスで起動させることで作り出した。
これを老婆の肉体に注入されたことでエヴリンは暴走状態と化し、やがて息絶えることになる。


□モールデッド

特異菌によって生み出された「カビ人間(Mol + ded)」。その正体はベイカー家に拉致された失踪者達。
人が特異菌に感染した場合、菌に耐性がない場合は真っ黒のカビになって風化するが、少しでも耐性がある場合はこのクリーチャーになる。
よって元は人間なわけだが、菌糸を操れる者がいれば元になる人間がいなくても菌糸を集めて生成する事も可能。
また死体を菌床にして特異菌に食わせる事でも生み出す事ができる。
見た目は人型だが人間とは全く別物で、眼球があるべき場所は穴が開き、全身はツルとカビがごっちゃになったようなもので構成されている。
口には異常なほど鋭い牙があり、手の指が爪のように尖っていて、大型肉食獣に匹敵する戦闘力を持つとされる。
ただし知能は低くドアや梯子は使えない。また一定時間経つと崩れ落ちるように消えてしまう。
更に特異菌の集合体であるため、人間がモールデッドに少しでも傷をつけられると特異菌に感染してしまう。

■ブレード・モールデッド

片腕が銃弾すら弾き返すほど硬質化した刃状になった強化個体。人体を簡単に切断する。
作中で最初に遭遇した個体は、先にベイカー家に拉致されメモを残していたトラヴィスという男性。
DLCには両腕と頭まで刃になったダブル・ブレード・モールデッドが登場する。

■クイック・モールデッド

壁や床を四つん這いで歩き回るリッカーのような強化個体。
素早く攻撃力が高いが、攻撃時の隙が大きく耐久力も低い。

■ファット・モールデッド

太ったモールデッド。猛毒の強酸ゲロを飛ばして攻撃してくる。
耐久力も高い上に突進力があり、しかも倒されると自爆するという最悪な相手。
実験場での初登場以降、各所で中ボス的な感じで出てくる。

■ヘッドレス・ファット・モールデッド

名前の通り頭のないファット。両腕もない。DLC『Not A Hero』にのみ登場する。
走り寄ってきて自爆するだけの存在。

■フューマー

DLC『Not A Hero』に登場する白いモールデッド。通常のモールデッドより大型。
研究所エリアで発見出来る写真によると識別コードは「WM-002」、蒸気なのか白い煙を纏っている。
普通の攻撃では瞬時に再生してしまうため倒すことができず、特殊な弾丸が必要になる。

■ママ・モールド

DLC『Not A Hero』に登場する、上のフューマーのファット版。めちゃくちゃデカい。
こちらもフューマーと同じくダメージを与えても瞬時に再生する。識別コードは「WM-001」。
ゲロ、体当たり、自爆に加えリトル・クロウラーという小さな攻撃生物を生み出す。

■リトル・クロウラー

『0』に登場した変異ヒルのような小さなモールデッド。識別コードは「WM-001α」。
上記のママから大量に生み出され、体当たりからの自爆攻撃を仕掛けてくる。
こいつらは再生もしないしハンドガン一発でも死ぬし、何なら踏んでも死ぬ。


バイオハザード ヴィレッジ

原種が登場。
舞台となる村に自生しており、100年近く前にマザー・ミランダが中枢部「菌根」と偶然接触。
埋葬された死者の記憶を保存していることに気付き、スペイン風邪で亡くなった一人娘のエヴァを蘇生させるために研究を続けていた。
その過程で線虫と組み合わせた寄生体カドゥが造り出され、より効率的な感染と変異が行われている。
カドゥの影響か、ライカンなど感染者は人の姿を留めている。

コネクションもミランダから菌を提供されており、エヴリンは特異菌とエヴァの胚を元に作られたことが判明した。
またアンブレラ創始者であるあのオズウェル・E・スペンサーも、学生時代にミランダのもとで特異菌の研究に関わっていた。
人体を感染によって変異させる発想を得て野心を抱き、ある意味でバイオハザードシリーズ全ての元凶となってしまったと言える。


■余談

  • 人間の体にカビが生えるという事例は現実に存在し、有名どころではあの水虫がこれにあたる。
    しかもカビは人間と同じ真核生物であり、カビに効く薬は人間の細胞にも影響を及ぼしてしまうので、ある程度全身に回ってしまうと手の施しようが無く死に至るという。
    もちろん健康体であればそんなことはまず起きない。善玉菌様々である。

  • NHKのアニメ「ぜんまいざむらい」のエピソード「必笑七色だんご剣」にて、E型特異菌とほぼ同じ効能を持つカビの宇宙人が登場する。
    一時的にではあるが、本編の舞台であるからくり大江戸の住人や食べ物に寄生して繁殖、やがてそこをぜんまいざむらいを除き完全に乗っとるという本編中のエヴリンを遥かに上回る規模の生物災害を引き起こした。
    もしエヴリンが完全に野に放たれていたら似たようなことが起きていたのかと思うとゾッとする。
    ちなみに放送されたのはバイオ7が発売されるおよそ9年も前である。まさか元ネタじゃなかろうか。

  • また、これ以前にもNHKはアニメ「やさいのようせい N.Y.SALAD」にて触るだけで死ぬというシンプルにヤバいカビおばけ、モルドレイスを登場させている。
    こちらは特にE型特異菌およびエヴリンとの共通点は無い。(モルドレイスには謎の部分が多く、正確には「比較したくてもできない」。)



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最終更新:2025年02月12日 23:16