ジェームス・マーカス

登録日:2021/03/02 (火) 23:02:44
更新日:2021/03/14 Sun 21:19:43
所要時間:約 12 分で読めます






静粛に 所長のマーカスである
当養成所の指針を告げる

「忠誠」は「服従」を生み
「服従」は「規律」を生む
「規律」は力となり
その力が 全ての源となる



――アンブレラ社幹部候補生養成所玄関ホールの録音放送より




ジェームス・マーカス(James Marcus)とは『バイオハザードシリーズ』の登場人物。
初出となる『バイオハザード0』ではキーパーソンとなり、『アンブレラ・クロニクルズ』などでも姿を見せている。



プロフィール


生年月日:1917年
没年:1987年
年齢:70歳(享年)
血液型:A型
身長:180cm
体重:68.5kg
CV:糸博(『0』HDリマスター版)


人物


アークレイ山に設けられた多国籍製薬会社「アンブレラ」の幹部候補養成所の初代所長。
同時に総帥オズウェル・E・スペンサーと共にアンブレラ社を立ち上げた創設メンバーでもある。
つまりシリーズで起こった数々の悲劇、その元凶の一人。
ただし『0』開始時点では既に(一応)故人となっている。



生前は科学者として極めて優秀であり、それは事実上あの「t-ウィルス」を生み出した張本人であることからも窺えるだろう。
しかしそれと同時に、自身の研究の障害となる者に対しては全く容赦がない危険人物。
それは例え同僚や部下であっても例外ではなく、生来の酷薄さも手伝って非道な拷問や人体実験なども平然と行う、所謂マッドサイエンティストであった。


私生活においては厳格であると同時にかなりの人間不信として知られ、極一部を除いて誰にも心を開かず、生涯家庭を持つことは無かった。
人間として彼が信を置いていたのは自身を慕い長年助手を務めたブランドン・ベイリー、そして幹部候補としてその有能さを認めたシリーズ屈指の超危険人物コンビウィリアム・バーキンアルバート・ウェスカーくらい。
ブランドンに対してはかなり気を許していたようで、t-ウィルス開発の成果が上がった際には真っ先に彼へ電報を送っていた。

一方、実験に用いていたヒルに対しては異常なほど、それこそ愛情とも言えるレベルで関心を向け、ヒルのことを自身の「子ども」と称し*1、その研究・育成に並々ならぬ熱意を持っていた。
当時の手記や研究記録の中にもそれが読み取れるものもあり、度々「かわいいヒルたち」というワードが出てくる。
更に研究所内にはヒル型のオブジェを鍵にしている扉まであった程。
……正直一般人からすればドン引きものである。


上記の人柄から想像出来る通り円滑な人間関係の構築は苦手だったようで、アンブレラ立ち上げ後関係が悪化したスペンサーとの社内権力闘争にも敗れ、養成所の所長というポストに追いやられることとなった。
当人もこれは気に食わなかったようだが、自身の研究自体は続けられる環境だったので従っていた。

所長就任後は冒頭の台詞にある「忠誠」「服従」「規律」の三つの社訓を基本理念として掲げ教育にあたり、職務は全う。 
上記の通りブランドンと言う有能な人材を育成して祝辞には律義に電報を送ったり、ウィリアムとアルバート、二人の才能には舌を巻きつつも認め、時には競い合わせ能力を伸ばそうとしたりもした(もっともこの教育者としての行為は最悪の形で返されることになったのだが……)。
人体実験にしても(人道的には大いに問題はあれど)研究が立ち往生した事による苦肉の策で、対象も自分の研究を不法に調べようとした者が大半で実験体をマーカスの管轄外の研究施設に移送させて研究成果を公表させる辺り、少なくともマーカス側はそれなりにスペンサーに歩み寄る形をとっていた*2。その甲斐もあってスペンサーが立ち往生する中で「t-ウィルス」を完成させており、アンブレラに多大な貢献をしている。
人間不信にしても、共同で企業を立ち上げた後で経営者の一人が急死し、自身も助手と引き離された上に研究成果を横取りされかねない状況に置かれ続ければ疑り深くなるのも必然かもしれない。


シリーズでは『0』でメインに扱われ、レベッカたちが養成所に立ち入った際冒頭の録音が流れる他、玄関ホール正面には彼の顔を描いた古びた大きな肖像画が飾られている。
その他の作品でも時々その名前が出てくる。



経歴


本編以前

時期は定かではないが、友人だったスペンサーのアフリカ某所に咲くという花の話に「生物DNAを変異させる未知の物質が含まれている可能性」を見出したマーカスはそれに強い関心を示した。
エドワード・アシュフォードも加わり、彼らは1966年頃から本格的にその「始祖花」の捜索に着手し、助手たちを連れ現地に赴いたマーカスは遂にその花を入手。
そしてマーカスはその花の中にRNAウィルスの一種が含まれていることを発見し、これを「始祖ウィルス」と名付けることとなった。


こうして念願だった始祖ウィルスの研究を始めようとした矢先、スペンサーが会社の設立を提案。
マーカス自身はそれほど乗り気ではなかったが研究には支障が無いと考え承諾。スペンサーと共にアンブレラ立ち上げの中心人物となった。
だが、程なくして幹部候補養成所の設立が決まり、スペンサーはマーカスにそこの所長になるよう要請。
内心はスペンサーに顎で使われるようで癪だったようだが、誰にも邪魔されず腰を落ち着けて始祖ウィルスの研究が出来る場所を確保したかったマーカスはこれを承諾。
初代所長としてアークレイ山の養成所と併設された研究所に勤務することになるが、マーカスが経営から距離を置いたことで社内ではスペンサーの影響力が拡大。
結果研究に関してもスペンサーが度々口出ししてくるようになったことでマーカスは不満を抱え、研究継続のため自身の発言力を高める狙いもあって養成所での勤務と実験に没頭した。

その後は所長として職務を熟しつつ、入所してきたウィリアムとアルバートの指導にもあたっていた。
また、この頃から自身の研究成果を奪われることが無いよう施設内に多くの仕掛けを施していったものと思われる。
そして出来上がるのがシリーズ恒例の日常使いに向かない奇怪なカラクリ屋敷である。


そうして始祖ウィルスに様々なウィルスのDNAを組み合わせた実験の末、マーカスは寄生や捕食、繁殖の特性を持つヒルのDNAを組み合わせることを考案。
1978年2月13日、始祖ウィルスを投与しヒルたちに変異を起こさせることに成功し、その体内で発生した変異ウィルスを始祖ウィルスの品種改良の第一号「t」と名付けた。
ちなみに当初変異ヒルたちには動物などをエサに与えていたようだが、実験に気付いた所員をエサにしようと考えていた記録があった

更に、完成の目途が立ったものの「t」のデータを得るうえでモルモットでは実験に耐えられず満足なデータを得られなかったため、マーカスは人体実験も開始
多くの者が試作段階の「t」を投与されるなどして犠牲になっていった。
この時実験素体となったのは養成所でマーカスの行っていた研究に気付いてしまった者やスペンサーらの命令で研究を盗み出そうとしていた者が中心だったようで、障害の排除と口封じを兼ねて実験に使われたその総数は20名を下らなかったという*3*4
特にスペンサーの手の者は「t」の研究以降断続的に養成所に潜り込んでおり、長年の鬱憤もあってマーカスもスペンサーへ何らかの報復を考えていたようである。

兎も角、こうして研究を守りながらデータの収集も出来たマーカスは「t」の完成を目前に見据えていた。


ところが1987年。
ある日、研究所で変異ヒルの実験をしていたマーカスは突如踏み込んで来た襲撃者らに銃撃され致命傷を負ってしまう*5
実は彼が信用し養成所で重用していたウィリアムとアルバートは知らぬ間にスペンサーに与しており、襲撃も二人の手引きによるものだった。
姿を現した二人を前にマーカスは困惑と共に彼らの名を呟くが、そのまま隣接する廃棄物処理施設にゴミのように遺棄され、独り事切れた。


マーカスは表向き失踪扱いとなり、t-ウィルスの研究はウィリアムに引き継がれていった。
自身の研究のため非道な実験を重ねた男は、自身の冷酷さを受け継いだ教え子たちによってその半生をかけた研究と命を奪われ闇へと葬られたのだった。
















私は蘇った……!

私はアンブレラに復讐を誓ったのだ



謎の美青年


CV:ライオン・スミス(『0』)、平川大輔(『0』HDリマスター版吹き替え)

『0』本編序盤から度々登場する、奇妙な衣装をまとい歌声などで大量の変異ヒルを操っているらしき美男子。
その正体は、変異ヒルを統括する個体「女王ヒル」がマーカスに擬態したモノである。


上記の襲撃時、偶然瀕死のマーカスの体内に実験中だった女王ヒルが入り込んでおり、彼の遺体と共に処理施設の水中に沈んでいた。
そしてこの女王ヒルが遺体の中でマーカスのDNAを取り込み、約10年の歳月をかけて変異し誕生したのがこの女王ヒルの擬態マーカスである。
人間のように見えるその肉体は変異ヒルが精巧に擬態した代物で、纏っている服も全て変異ヒルの擬態であり、いわば体の一部である。

マーカスの存命中にも群体となった変異ヒルたちが寄り集まり、世話をするマーカスの姿に擬態するという現象が起きていた*6。(本編中レベッカたちの前に何度も現れ襲ってくる擬態マーカス(人型ヒル)もこれにあたる)
しかしこの女王ヒルが擬態した個体はマーカス自身の遺体を取り込んだことで、彼の記憶や人格・思考までも取り込んでおり、本編中も会話は勿論のこと生前のマーカスしか知りえない情報を口にし、パソコンなどの設備を使用するなど、人間として振舞っている。
そのため肉体こそヒルであるものの、実質マーカスの全てを受け継いだ生まれ変わりのような存在である。
この現象は当人も予想外だったようで「奇跡」と評しており、事情を知ったウィリアムも信じられず「あり得ない」と漏らしていた。


擬態時の外見は若い頃のマーカス自身を模したモノ。
古びていたため判りにくいが養成所の肖像画にも面影があり、研究所の一室で発見される大学卒業時の写真(22歳時・1939年)にはそっくりな姿が映っている。そのためビリーも一時は彼がマーカスの子どもか孫なのではないかと考えていた。
ちなみに若い姿なのは当時の美しい自分でいたいというマーカス自身の願望に起因している。


10年前自身を裏切り葬った教え子たちとその背後にいたスペンサーを深く恨み復讐を望んでいるが、その憎悪は肥大化し彼らのいるアンブレラだけでなく世界中の人々を地獄に落とすという、最早八つ当たりレベルの野望を抱いている。

そのために復活後、アークレイ山周辺にt-ウィルスをばら撒き、アンブレラ関連施設をはじめ一帯で、人間を含む動植物のゾンビ化などのバイオハザードを引き起こした。
つまり『0』だけでなく一作目の「洋館事件」などの直接原因。
その後も事件を受けて閉鎖された養成所を訪れた調査隊を襲うなど被害を拡大させており、『0』冒頭での列車襲撃事件もその一部だった。
ちなみに唯一マーカスを裏切らなかったブランドンはアフリカ研究所で(今まで不可能とされた)始祖ウィルスの培養に成功させるという功績を残していたが、マーカスが暗殺される以前から機密保持という形で30年近くも幽閉生活を強いられた事がのちのシリーズで明かされている。*7


『0』本編ではバイオハザードの件を調査するウィリアムとアルバートと通話したりしながら、列車襲撃を経て養成所へと踏み込んできたレベッカとビリーを監視。
時折変異ヒルや施設内のB.O.Wたちをけしかけてくる。

そしてクライマックスでは施設から脱出寸前のレベッカたちの前に登場。
自身の正体と目的を明かし、それを止めようとする彼女たちを嘲笑う。


ところが


ここで突如女王ヒルがマーカスの意識を押しのけ暴走。
本性を現した女王ヒルはレベッカたちに襲い掛かる。



女王ヒル


第一形態

マーカスへの擬態を解いた姿。
マーカスの意識は消え失せており、女王ヒル自身の本能によって動き回る怪物。
基本はそれまで出現した人型ヒルと同じくヒルの集合体が人型を模したものだが、ややサイズアップし全身から触手のようなパーツも伸びているなどよりおぞましい姿になっている。
攻撃手段も多いため近付くのは躊躇われるが、側面に回ると回避しやすい。

早く倒したい場合は二人掛かりでグレネードランチャー(焼夷弾)やマグナムをぶち込めば手早く片付く。
温存したい場合は単独行動しつつハンドガンで遠距離から攻めるなどする。


撃破するとその場にぶっ倒れて動かなくなるがまだ死んでおらず、レベッカたちがその場を離れた後活動を再開。
リフトで地上へ移動中の二人の前に再び姿を現し巨大化しながら追いかけ終着地点での戦闘となる。


第二形態

一戦目で敗北した女王ヒルが回復のため周囲にいた変異ヒルたちを取り込み、同時に肉体の構造を大幅に組み替えて更に変貌した姿。
人型ではなくなり、全身から無数の触手が伸び各部に牙が並んだ口を備え、地上を這いずる体長5mほどの醜い化け物になっている。

施設の自爆装置が作動している状況での戦闘となるため、開始から5分間という時間制限が発生。
そのうえ戦闘自体も工程が前半戦と後半戦に分かれている。
なので前半戦では襲い掛かっている女王ヒルを避けつつ手早くダメージを重ねて撃破する必要がある。
後半戦では「日光に弱い」という弱点が露呈しそこを攻めるためレベッカが施設内のハンドルを回して天井を開かせる。
プレイヤーはビリーを操作し女王ヒルの注意を自分に向けさせるよう立ち回らねばならない。


最後は全開になった天井から射し込む日光の紫外線によって全身の細胞を焼かれて弱体化。
そして全身の細胞が脆くなった隙にビリーがレベッカから受け取ったマグナムリボルバーの一撃を受けバラバラになり、そのままリフトの穴に落下した直後作動した自爆装置の爆炎に呑み込まれ焼却。
こうしてマーカスは女王ヒルごと、今度こそ死亡した。




人間を信じず何より愛情を注いだヒルによって身も心も乗っ取られ怪物と化した末消滅するという、ある意味哀れな末路を辿ったマーカス。
しかし人間だった頃から彼が行ってきた凄惨な所業の数々は後に巨大な災禍の火種となっており、やはり元凶の一人であることは間違いない。

そして後に、彼を裏切った教え子の片割れ自身と同じように自分の研究によって理性無き怪物へと成り果て、更にはもう一方の教え子によってスペンサーとアンブレラへの復讐が果たされるのもまた何よりの皮肉であろう。


なお『アンブレラ・クロニクルズ』では、マーカスに擬態してはいるものの青年時ではなく70歳時の姿がベースとなっており、決戦で擬態が解ける際も自らの意思で女王ヒルの姿に変化するなど「女王ヒル」と「マーカス」の意識の関係もやや違っている。


ちなみに、所長時代の日誌には研究に文句を付けてくるスペンサーに対して
「『始祖』を単なる利を生むための道具としか考えられんとは、愚か者の極みだ」
と記しており、後々明かされるスペンサーの野望は知らなかったようである。
まあ知っていても愚か者呼ばわりしたかもしれない内容だったが……



実写映画版


バイオハザード: ザ・ファイナル

演:マーク・シンプソン

実写映画第一シリーズの最終作で登場。
ただしこちらは「ジェーム・マーカス」となっており、微妙に名前が違う。

原作ゲーム同様アンブレラ社創設メンバーの一人であり、優れた科学者でT-ウイルスの開発者。プロフィールでのみだが養成所所長、アークレイ研究所主任等の設定も存在する。
しかし今作では原作のような人間不信の危険人物ではなく、難病に冒された娘アリシアを治療するために研究を行う家族を愛する父親として描かれている。
T-ウイルスを完成させアリシアの病状も一時は回復させられたが、その後同じ創設メンバーだったアイザックスに裏切られ、やはりウェスカーによって殺害される。



余談


アウトブレイク』では「リーチ」というヒル型クリーチャーが登場。
生態が異なり女王ヒル系統とは別種のようだが、劇中ではマーカスのヒルとの類似を指摘する資料もある。





追記・修正は三つの社訓を守りながらお願いします。

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最終更新:2021年03月14日 21:19

*1 周囲の人間の中には「子ども=ヒル」という図式が解らず困惑していた者もいたようである

*2 t-ウィルス完成を急いだのも「アンブレラ内」での発言力を強める為である。つまりマーカスは研究を邪魔されなければスペンサーと対峙する事は考えていなかった事が伺える。

*3 養成所地下の更生施設という名の拷問部屋には多数の拷問器具の他、人名と共に廃棄処分や標本化などの文字が並んだ名簿が残されていた。また、その中の一部はアークレイ研究所(洋館)へと移送されていたと記されている。

*4 スパイの炙り出しと確保は、数少ない信用に足る者としてウィリアムとアルバートに命じていたようである

*5 この時マーカスは咄嗟にヒルを庇おうとしていた

*6 マーカス自身はこれを「ヒルたちが自分を親だと認識している」と感じ痛く感動していた

*7 マーカスの手助けとなる研究を続けられる環境だったために当初はアフリカ研究所での生活を受け入れていたが、風の便りでマーカスの訃報を知った後は心が死んだように無気力となり、(ラクーン事件の後に)研究所が閉鎖されるまで機械的に研究をこなす生活を送っていた。