Emヒグルミ

登録日:2022/05/08 Sun 12:16:01
更新日:2024/12/29 Sun 14:26:41
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Emヒグルミ
ペンデュラム・効果モンスター
星4/炎属性/魔法使い族/攻1000/守1000
【Pスケール:青5/赤5】
「Emヒグルミ」のP効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分フィールドの表側表示の「Em」モンスターが
戦闘・効果で破壊された場合に発動できる。Pゾーンのこのカードを特殊召喚する。
その後、自分は500ダメージを受ける。
【モンスター効果】
(1):フィールドのこのカードが戦闘・効果で破壊された場合に発動できる。
手札・デッキから「Emヒグルミ」以外の「Em」モンスター1体を特殊召喚する。

《Emヒグルミ》とは、「ディメンション・オブ・カオス」で登場した遊戯王OCGのカードである。


概要

松明のぬいぐるみと呼ぶべき外見の、可愛らしい見た目が特徴のモンスター。

しかしこのカードは、禁止カードに指定されているほど危険で凶悪な1枚。
それだけではなく《EMモンキーボード》と並び、遊戯王最速の禁止日数記録「167日」の保有者である。


そんな恐ろしい《Emヒグルミ》の効果を見ていこう。

P効果は、破壊をトリガーとした自己特殊召喚。
相手にモンスターを破壊された時の緊急の壁、あるいは自分から破壊して展開させるコンボになる。
手札からPスケールにセットする都合、実質的な手札からの特殊召喚になりアドバンテージを稼げていない点が欠点。

悪い効果ではないのだが、実際のゲームでは殆ど使用されない効果になる。
理由は、《Emヒグルミ》の採用はモンスター効果目当てにあるため。


モンスター効果は、破壊をトリガーとしたリクルート(デッキからモンスターを特殊召喚すること)。
戦闘・効果破壊のどちらにも対応しており、タイミングを逃さないこともあってトリガーを押しやすい。

・・・だが、この効果こそが《Emヒグルミ》が環境下で他デッキを欠片1つ残さず燃やし尽くし、最速禁止記録を樹立した要因になる

この効果の恐ろしい点は以下の四つ。
  1. Pスケール上で破壊されても効果を発動できる
  2. 効果の回数制限がない
  3. 自分のカードを破壊しつつアドバンテージを稼ぐカードの増加
  4. 強力なリクルート先

1つずつ、丁寧に解説していこう。


1.Pスケール上で破壊されても効果を発動できる


PモンスターはモンスターゾーンとPゾーンで「モンスター/魔法」と種類が変わるという特徴がある。
そのため「破壊を条件にしたモンスター効果」を発動するにはモンスターゾーンで破壊しないといけない。
…と考えがちだが、実はPゾーン上で破壊されても「破壊を条件にしたモンスター効果」を発動できる
これは発動条件があくまでも「フィールドで破壊する」であり、「フィールドのどこで破壊されたかの指定がないことから来る理屈。

そのため召喚権を消費することなく破壊でき、展開する上の負担が少なくなる。


2.効果の回数制限がない


テキストを読んでいただければ分かる通り、このモンスター効果は「1ターンに1度」という回数制限が無い。
そのため2枚目・3枚目の《Emヒグルミ》を用意できれば、それらを次々に破壊してモンスターを呼び出すことができる。

そして忘れてはならないのは《Emヒグルミ》がPモンスターであること。
Pモンスターはフィールド上で破壊されると、墓地ではなくEXデッキに行く。
つまり1枚の《Emヒグルミ》を破壊し、EXデッキに行った《Emヒグルミ》をP召喚して再びフィールドに出し
再度破壊してリクルートするという、あまりにも手軽な再利用を可能にしている。

P効果はそこまで強くないのに回数制限を設けているので、しばしば「つける場所間違えてる」とツッコまれている。

「P召喚で使いまわすにしたって、破壊手段を確保できなければ意味ないじゃん」なんて声も聞こえてきそうだが…


3.自分のカードを破壊しつつアドバンテージを稼ぐカードの増加


それまでの遊戯王では「自分のカードを積極的に破壊して動く」というムーブは少数派だった。
《ベビケラサウルス》が「戦闘破壊に対応していないから使いづらい」と評されていたのがその証拠。
しかしスクラップ炎王を皮切りに「自分のカードを効果で破壊」する動きが増え始め、第9期に入ってペンデュラムがプッシュされるとその動きは更に加速。
ペンデュラムの「破壊されてもEXデッキへ行き、呼び戻す」性質を生かすような、破壊を実質的なコストにしたデザインが多く見られるようになる。
コストとはなんぞや
現に《Emヒグルミ》の禁止後も【真竜】【恐竜族】が「自らを破壊する」ことを軸にした動きを見せている。


それらのカードと、破壊されることで効果を発揮する《Emヒグルミ》を合わせたらどうなるか?
当然、雨後の筍の如くアドバンテージを増殖させることになる

以下に、《Emヒグルミ》と相性のいい破壊カードの一例を挙げる。


竜剣士ラスターP
ペンデュラム・チューナー・効果モンスター
星4/光属性/ドラゴン族/攻1850/守 0
【Pスケール:青5/赤5】
(1):1ターンに1度、もう片方の自分のPゾーンにカードが存在する場合に発動できる。
そのカードを破壊し、そのカードの同名カード1枚をデッキから手札に加える。
【モンスター効果】
このカードを素材として、「竜剣士」モンスター以外の融合・S・Xモンスターを特殊召喚する事はできない。

Pゾーンのカードを破壊し、その同名カードをサーチする効果。
これだけなら1:1交換だが、《Emヒグルミ》を破壊すればリクルート効果が働き1:2交換になる。
そして破壊したPモンスターはEXデッキに行くので、P召喚の頭数稼ぎにもなる。

しかも《Emヒグルミ》をサーチできるので、更なる破壊コンボの手筈が整う。

この時点でアドバンテージの暴力と化しているが、まだ序の口。


EMペンデュラム・マジシャン
ペンデュラム・効果モンスター
星4/地属性/魔法使い族/攻1500/守 800
【Pスケール:青2/赤2】
(1):自分フィールドに「EM」モンスターがP召喚された場合に発動する。
自分フィールドの「EM」モンスターの攻撃力はターン終了時まで1000アップする。
【モンスター効果】
このカード名のモンスター効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードが特殊召喚に成功した場合、自分フィールドのカードを2枚まで対象として発動できる。
そのカードを破壊し、破壊した数だけデッキから「EMペンデュラム・マジシャン」以外の
「EM」モンスターを手札に加える(同名カードは1枚まで)。

こちらも破壊した枚数だけサーチを行うので、本来なら等価交換になる。
しかし《Emヒグルミ》の破壊でボード・アドバンテージを確保、一挙両得になっているのは前述の通り。

《EMペンデュラム・マジシャン》の利点は、そのサーチ先。
同じくEMに属する《EMモンキーボード》《EMドクロバット・ジョーカー》もEMをサーチする効果を持っている。
つまりこれらのカードは互いに互いをサーチし合える関係にある。
そのため手札事故が極めて起こりづらく、展開ギミックを安定して稼働させることができた。

その他にはドロー効果で手札を稼ぐ《EMリザードロー》《EMギタートル》もサーチ先の有力候補。


揺れる眼差し
速攻魔法
(1):お互いのPゾーンのカードを全て破壊する。
その後、この効果で破壊したカードの数によって以下の効果を適用する。
●1枚以上:相手に500ダメージを与える。
●2枚以上:デッキからPモンスター1体を手札に加える事ができる。
●3枚以上:フィールドのカード1枚を選んで除外できる。
●4枚:デッキから「揺れる眼差し」1枚を手札に加える事ができる。

Pゾーンのカードを破壊し、その枚数に応じて効果が変わる。
「3枚以上」を狙うには相手依存になるが、「2枚以上」であれば自分のカードだけで事足りる。
そしてその「2枚以上」であらゆるPモンスターをサーチできるので戦況を整えやすい。
「互いにサーチし合えるEM達」もサーチできるのは勿論、
特にカテゴリーに属していない《解放のアリアドネ》もサーチできるのは大きい。


4.強力なリクルート先


いくら強力なリクルート効果があったとしても、肝心のリクルート対象モンスターが実用圏外では意味はない。

しかしお察しの通り、《Emヒグルミ》がリクルートできるEmには非常に強力なモンスターが属していた。
以下、その一例。

Emトリック・クラウン
効果モンスター
星4/光属性/魔法使い族/攻1600/守1200
このカード名の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードが墓地へ送られた場合、自分の墓地の「Em」モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターの攻撃力・守備力は0になる。
その後、自分は1000ダメージを受ける。

墓地に行った際にEmを蘇生させる道化師
《Emトリック・クラウン》自身を蘇生させることも可能で、どこから墓地に送られても発動できるなど、単体性能が非常に高い。
当然そんなモンスターをリクルートできる《Emヒグルミ》が弱いハズもなく、素材の頭数稼ぎとして大活躍。

Emダメージ・ジャグラー
効果モンスター
星4/光属性/魔法使い族/攻1500/守1000
このカード名の(3)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分にダメージを与える魔法・罠・モンスターの効果が発動した時、
このカードを手札から捨てて発動できる。
その発動を無効にし破壊する。
(2):自分・相手のバトルフェイズに、このカードを手札から捨てて発動できる。
このターン、自分が受ける戦闘ダメージは1度だけ0になる。
(3):墓地のこのカードを除外して発動できる。
デッキから「Emダメージ・ジャグラー」以外の「Em」モンスター1体を手札に加える。

墓地から除外することでEmモンスターカードを手札に加える曲芸師。
この手の効果にしては珍しく、墓地に行ったそのターンから効果を使える点が長所。
そのため《Emヒグルミ》で特殊召喚し、素材として消費したのちにサーチ効果を使うことが可能。
更なる破壊のための《Emヒグルミ》か、自己特殊召喚条件が緩い《Emハットトリッカー》がサーチ先の有力候補。

効果ダメージケアはあまり出番はないものの、相手の《揺れる眼差し》にカウンターできるという地味な利点が存在する。



環境での評価


以上のように高いアドバンテージ生成能力を持った《Emヒグルミ》。
そして《Emヒグルミ》と共に、ここまで例に挙げたカードたちで構成された【EMEm】が誕生するに至る。
破壊とP召喚にてレベル4モンスターを大量に用意し、物量にモノを言わせ
《No.16 色の支配者ショック・ルーラー》《フレシアの蟲惑魔》《星守の騎士 プトレマイオス》を連打し封殺する筋書きを当たり前に行う。

その圧倒的な物量と安定感、制圧能力で並みいる敵をなぎ倒し、数々の大舞台で派手に勝利を決めてきた【EMEm】。
並大抵の抵抗をものともせず、抵抗するには《No.16 色の支配者ショック・ルーラー》《フレシアの蟲惑魔》《星守の騎士 プトレマイオス》経由で出せる《セイクリッド・プレアデス》等の強力なモンスターを大量に並べないといけない。
そしてそれができるデッキを使わないとまともに勝てない…つまり【EMEm】でないと【EMEm】に太刀打ちできない
こうした【EMEm】一強時代という新たな未来を切り開いてしまうのだった。
数々の世紀末環境を見せてきた遊戯王シリーズだが、ここまで酷い一強環境は類を見ない。

流石に野放しにしておくのはまずいと判断されたのか、《Emダメージ・ジャグラー》と共に2016年1月をもって禁止カードに指定。
『1ターンに1度』をつける場所が間違っている
緩すぎる発動条件が間違っている
存在自体が間違っている
等々のダメ出しとともに、数多くのデュエリストから石もて追われる末路を迎えた。

この改定はEmには厳しい規制となったがEMには特に規制がなかった。
そのため【EM竜剣士】に姿を変え、性懲りもなく環境を牛耳っていたのは別の話。


禁止後の動向

禁止緩和については、数多くのデュエリストから「エラッタ無しではありえない」と断言されている。
P召喚周りのルールは《Emヒグルミ》現役時から厳しいものになっているが、その影響をあまり受けていないことが理由。
「EXデッキからのP召喚に制約がついた」部分は無視できない変更点だが、
リクルート効果に「回数制限がない」のと「Pゾーン上で破壊されても発動できる」のはルール改正でも変わらずに禁止化当時そのままなのである。

そしてANIMATION CHRONICLE 2024にてEmの新規が出るのに合わせてエラッタが実施される。

ペンデュラム・効果モンスター
星4/炎属性/魔法使い族/攻1000/守1000
【Pスケール:青5/赤5】
このカード名のP効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分フィールドの表側表示の「Em」モンスターが戦闘・効果で破壊された場合に発動できる。
このカードを特殊召喚する。
その後、自分は500ダメージを受ける。
【モンスター効果】
このカード名のモンスター効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):フィールドのこのカードが戦闘・効果で破壊された場合に発動できる。
手札・デッキから「Emヒグルミ」以外の「Em」モンスター1体を特殊召喚する。

大方の予想通りにリクルート効果に同名ターン1が付く形に。それ以外には条件もデメリットも付かなかったため、むしろ本来あるべき姿になったと言っても過言ではない形に。
そしてエラッタに合わせる形で2024/7/1の改訂にて制限カードへと復帰した。


余談

このカードはアニメ「遊戯王ARC-V」にて、デニス・マックフィールドが使用。

その際のモンスター効果は「破壊された時、手札からレベル4以下のEmを特殊召喚」であった。
同名カードを特殊召喚できるものの、手札からしか選べない不自由な効果になっていた。
OCG化に際して圧倒的に強化されたものの、そのせいで禁止日数レコードタイムを記録したのは皮肉。


同じ最速禁止記録を持つ《EMモンキーボード》だが、以下の通り様々な点で対照的な要素が見受けられる。
ヒグルミ モンキーボード
特に注目されたのは モンスター効果 P効果
その効果を使える回数は 無制限 同名カード含めての1ターンに一度制限あり
アニメで登場してからOCG化される際に 大幅に強化 曲がりなりにも弱体化
制限緩和の可能性についての意見 エラッタ無しではありえない 制限までならアリかもしれない
(2023年7月付で制限カードへ緩和されている)
実際の緩和状況 エラッタが実施されて緩和 エラッタなしで緩和



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最終更新:2024年12月29日 14:26