タコピーの原罪

登録日:2022/01/03 Mon 22:52:00
更新日:2024/12/10 Tue 21:29:03
所要時間:約 12 分で読めるっピ





これは、ぼくときみの最高にハッピーな物語───


『タコピーの原罪』とは、少年ジャンプ+で短期連載された漫画である。コミックスは全2巻。
作者はタイザン5。



【概要】

宇宙にハッピーを広めるため地球に降り立った宇宙人・タコピー。
着陸初日から捕獲されそうになるわ食べ物もないわで苦労していたところ、
小学生の女の子・しずかちゃんと出会い助けられた。
助けてくれたお礼にタコピーはしずかちゃんの役に立とうとする、ハートフルなヒューマンドラマ───





















※警告※



ここから先はかなりの鬱展開と胸糞展開が待ち受けています。



耐性の無い方は閲覧を中止し直ぐにプラウザバックして下さい。



それでも閲覧するのであれば、自己責任でお願いいたします。






















決して異星人に道具を委ねてはならぬ



ボロボロのランドセルを背負って笑わないしずかちゃんを笑わせようと、掟を破り道具を委ねたタコピー。
キズだらけの姿で「友達とケンカした」と言うしずかちゃんのために、お互いの小指を結ぶと仲直りできる不思議な力を持つハッピー道具「仲直りリボン」を与える。


───そして夕方、タコピーが様子を見に行くと、


彼女は仲直りリボンで首を吊って死んでいた。


地球人の文明や文化を知らない無垢な宇宙人のタコピー。
彼はそれでもしずかちゃんに笑って貰うべく、あまねく宇宙において覆らぬ
ハッピー道具「ハッピーカメラ」の機能で過去に戻ることでやりなおそうとする。

果たしてタコピーはしずかちゃんを笑わせることができるのか?
そして、タコピーの「原罪」とは……?


【登場人物】

タコピー


CV:間宮くるみ (上巻発売記念スペシャルPV)

ハッピー星から宇宙にハッピーを広めるためにやってきたハッピー星人。
デフォルメされた(・ε・)こんな顔の小さなタコっぽい姿をしている。
「ハッピー道具」というひみつ道具さながらの不思議な力を持つ道具をいくつも所有している。
本来の名前は「んうえいぬkf」と地球の言語に訳せず通じなかったため、しずかちゃんにタコピーという呼び名をつけて貰った。
語尾に「ピ」を付ける癖があるっピ。「ピ」じゃないっピよ。

お腹をすかせて困っていた所を助けてくれたしずかちゃんを笑わせようと奮闘するが、
宇宙人ゆえの文化の違いのためか「自殺」「他殺」「イジメ」といった負の概念の殆どを知らなかった。
それどころか(しずかちゃんに変身して)まりなちゃんに頬を叩かれた時には痛みと恐怖で動けなくなるほどハッピー星は暴力とは無縁らしい。*1
このために本当に善意ゆえであるのにもかかわらず彼の行動はどこかズレたものとなっており……

  • ハッピー道具
ハッピー星人が持つ不思議な道具。いわゆるところのひみつ道具。
タコピーのママから教えられた掟では「必ずハッピー星人の目の届くところで使う」「異星人に道具を委ねてはならない」と定められている。
しかしタコピーはしずかちゃんのためにこの掟を破ってしまう。



しずかちゃん


CV:上田麗奈 (上巻発売記念スペシャルPV)


フルネームは久世(くぜ)しずか。タコピーが出会った地球人。小学四年生の女の子。
大人しい、というよりどこか厭世的な雰囲気を纏っておりタコピーの不思議な力の数々にもさほど興味を示さない。
タコピーに給食の残りを分けてあげる気遣いはあるも、どこかそっけない態度で全く笑わない。

ランドセルは傷だらけ、外にも中にもたくさん悪口が刻まれていることから分かるように常日頃からイジメられている
すなわちタコピーが毒舌でない青狸無垢なドラえもんとすれば彼女は洒落にならない境遇ののび太なのだ。名前はしずかちゃんだけど
イジメられていることをタコピーに話そうとするつもりはなく、彼が的外れに「ケンカして仲直りしたい」等と勘違いしても適当に肯定している。
親子仲が冷え切っている事やイジメの事もあって、愛犬のチャッピーだけを頼りに生きており、常に諦観に支配されているようだったが、
まりなちゃんの策略でチャッピーが保健所送りになった事や、その話をネタにまりなちゃんに散々に暴行されながら罵られた事で自殺に踏み切ってしまう。



チャッピー

しずかちゃんが家で飼っている大きな
彼女のパパが置いていった犬で、彼といる時だけしずかちゃんは笑顔を見せる。
「チャッピーがいれば他に何もいらない、どんな辛いことも耐えられる」と語るほど大事にしている。
ただし彼女の母親には「勝手に置いてった」と快くは思われていない模様。
とても主人思いなのだが、それをまりなちゃんに利用される形で目の前で暴力を振るわれるしずかちゃんを助けようと噛み付いてしまい、更に騒ぎ立てられた事で保健所に送られてしまった
しずかちゃんが仲直りリボンで自殺したのも彼という支えを失ってしまったからである。

タコピーも最初こそ自殺の原因を的外れに解釈していたが、ハッピーカメラによるループを何度か繰り返す内に、前日までいたチャッピーの姿が自殺当日にいなくなっていた事に気づき本当の原因を理解した。
そこで、チャッピーの散歩中にまりなちゃんに見つからないようハッピーカメラで散歩の時間帯を変える事を101度に渡ってやり直すが、そのいずれでもまりなちゃんが現れて失敗してしまう。*3


しずかちゃんの母親

しずかちゃんの母親だが、娘との仲は良好とは言いづらい。父親とは既に離婚している。
娘をイジメてたりはしないものの、ランドセルがボロボロでも無関心で気遣う様子もなく殆ど放任状態。まりなちゃんによれば給食費すら払っていない。
チャッピーが保健所に送られた時は「お父さんの所に行った」と慰めの作り話をしていたものの、
直後に愚痴が出たり「面倒事」と言い切るなど、親心というより面倒臭がったからの可能性が高い。
明言はされていないが、夜の仕事である事やしずかの「同伴」発言から、おそらく職業は水商売。


まりなちゃん


CV:黒木ほの香(ボイコミ)

フルネームは雲母坂(きららざか)まりな。
しずかちゃんをイジメているグループのリーダーの女の子で、しずかちゃんを自殺に追い込んだ全ての元凶。
しずかちゃんは放課後は彼女に出くわさないようにしている。
とても小学四年生のボキャブラリーとは思えない悪口や暴力、物を盗む・壊すなどは当たり前、かつその程度に関しても度を越しており、激昂するとシャーペンで突き刺そうとまでする。
しずかちゃんを人間のクズとまで言い捨て、ただの遊びや嗜虐心で収まらないほど激しく憎んでいる。
挙げ句の果てにはわざわざ夜にチャッピーと散歩をしている所を探し、しずかちゃんを暴行する事でわざと噛みつかせて殺処分させ、完全に心の拠り所を失わせるという暴挙に出ている。
しずかをのび太の「if」とするなら、彼女は「理性というブレーキを失ったジャイアン」とも言える。

実は彼女も家庭環境が劣悪で、父親がしずかちゃんの母親に入れ込んでいる模様。更に夫婦喧嘩はおろかDVの気配すら垣間見える。
そのせいでまりなちゃんの母親は情緒不安定になっており、彼女がしずかちゃんを憎悪しているのもこれが原因である。なのでまだ同情できる点があるため、哀しき悪役のような人物であるとも言える。むしろ家庭環境が劣悪でなく、単に理由もなくはないものの、基本的に理由なくいじめているジャイアンの方がひどいかもしれない。


(あずま)くん

眼鏡をかけた少年。のび太ではない。
しずかちゃんのイジメには関わっておらず、彼女が暴行を受けたと知った時は学級会にかける事や、違う先生に相談する事を提案したりと事あるごとにしずかちゃんを気遣っているが殆ど相手にされていない。
「いじめられている女子に気を遣う男子」に似た前例があるため、「いつかとんでもない本性を現すのでは……」と読者から邪推されていたが、実際は母親から苛烈な教育虐待を受けている子ども。
なんでもできる兄への劣等感と教育虐待の影響で精神的な余裕がほとんどなく、なし崩し的にしずかちゃんと共犯関係に近い状態に陥ってしまう。


東潤也

東くんの兄。
今時の爽やか系のイケメンであり、闇を抱えすぎてる今作の登場人物の中では出る作品を明らかに間違えてそうな陽キャラの完璧超人。
常に成績もトップでその明るさからクラスの中心におり、弟の東くんにも気遣える優しい性格の人物。スペックを身も蓋もなく言えば東くんの完全上位互換。兄より優れた弟など存在しねえ!!


【余談】

  • 「不思議な力を持つ道具」「しずかちゃん」「積み重ねられた土管」など『ドラえもん』へのオマージュ要素が多い。
    作者はジャンプルーキー編集部ブログのインタビューで担当編集のF田さんから「好きな題材で描いてみては?」という提案を受けた際に「『ドラえもん』が好きなので陰湿なドラえもんをやりたい」と最初に思いつき、そこにタイムリープ要素を加えて本作品が生まれたとのこと。

  • 2022年3月4日に単行本上巻が発売されたが、発売前から重版がかかっていた。
    YouTubeでは発売を記念した公式PVが公開され、上述のようにタコピーを間宮くるみ氏、しずかちゃんを上田麗奈氏がそれぞれCVをつとめ、BGMの不協和音のような「きらきら星」と共に愛らしく演じている。
    また、1時間43分という長時間かけて101回に渡るタイムリープを繰り返したタコピーを眺めて癒される事などできない、地獄のような追体験ができる動画「タコピーといっしょ」も同時公開されてしまった


  • 4話のコメント欄に「タコピー鬼つええ! このまま逆らうやつら全員ブッ○していこうぜ!」(一部修正)というコメントが書き込まれ、『チェンソーマン』のデンジのようだとブームになった。


  • 先述の『ハイパーインフレーション』(少年ジャンプ+)、『いじめるヤバイ奴』(マガジンポケット)、『淫獄団地』(ドラドラしゃーぷ#)の碌でもない3作品で構成されていた「金曜日の金!暴力!SEX!」においていじめの概念が行方不明になっていた『いじめるヤバい奴』から暴力の座を勝ち取ったという意見も見られる。それは名誉なのか……?
    また『タコピー』によって受けた心のキズを他の二作品で癒そうと言う人もいる模様。とはいえ、毎週更新の本作に対して、同じ「暴力」の『いじめるヤバい奴』以外は隔週更新というのがネックではあるが。




追記・修正はハッピーな笑顔と共にお願いします。

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最終更新:2024年12月10日 21:29

*1 叩かれたことをタコピーは「強く触る」と表現していた

*2 ハッピー紙自体が特殊な機能を持つのかは不明。タコピーによれば、ケンカしたハッピー星人は相手のハッピー紙を隠す事で気を引いて仲直りの切っ掛けとするので、ハッピー星人それぞれが個人ごとに普段から持っているものらしい。

*3 まりなちゃんはチャッピーを陥れるためわざわざしずかちゃん達を探していたため、場所や時間帯を変えても意味がなかった