カブトガニ

登録日:2020/08/01 Sat 00:54:00
更新日:2025/03/29 Sat 14:22:01
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カブトガニとは鋏角類に属する節足動物である。
学名はXiphosuraという。
ご存じ生きた化石であり、その中でも特にオウムガイやシーラカンスと並んで有名なキング・オブ・生きた化石である。


目次


概要

彼らが地球上に登場したのはおよそ4億4500万年前のオルドビス紀で、恐竜が誕生する遥か昔。
その頃からほとんど形を変えずに大絶滅を乗り越えて今日まで生き残った歴史の生き証人である。
化石によれば現在知られている形質の種類だけでなく、様々な形態のカブトガニが存在しており、
中には淡水に生息していた種もいたが現在は絶滅してしまっているようだ。
目はないように見えるがよく見ると甲羅の上の部分に1対の小さな目が存在している。

一般的にオスよりもメスの方が大きく、大きなメスの尻尾に小さいオスがしがみ付き、繁殖期にはこの状態で干潟に上陸し卵を産むという。
卵は数カ月でふ化するが卵の中でも脱皮するという他の生物にはあまり見られない生態を持っており、卵の中にいる段階では三葉虫に似た形態も存在する。
そうして孵化した幼体は小さいカブトガニの形で生まれ、脱皮を繰り返して大きくなるが、成体になるにはなんと10年以上もの長い年月がかかるのである。

ちなみに繁殖期以外でも雌雄がくっ付いて行動していることが多いのだが
実はつがいであるとは限らないようで大きなオスに小さなオスがしがみ付いているだけであったり
時にはウミガメ等の自分より大きな動物にしがみつくこともあるのだという。

このことから古くから日本の瀬戸内海の地方ではよく知られた生物だったようで上記の習性から夫婦仲がいいとされ、
縁起がいいものとして扱われていたという。
特に愛媛県では新年最初の漁でオスとメス二匹が繋がった状態で捕まえられた場合、
その年は豊漁になるという言い伝えが存在し、神棚に酒と共に供えるという風習がかつて存在していた。

しかし干拓地開発などの環境破壊や水質の悪化に弱い生物なので数を大きく減らしており、
今日においては繁殖地も含めて天然記念物に指定されている。


人間との関わり

上でも述べた通り文化的にも人間との関係が深いが現代においては様々な用途に利用されている。
ここからは用途別に紹介していく。


食用

天然記念物に指定されている日本のカブトガニはともかく、外国によってはなんと食用とする国もある。
食べた感じは…まあ、ご察しくださいレベルであるらしい。
どうやらあまり美味しくないという声が多いらしく、地元の人間もあまり好んでは食べないようだ。
しかも種類によってはあのフグ毒として知られるテトロドトキシンを持っていることもあるので中毒には注意。
現地ではまぁまぁ見かける上まともに美味かったら、とっくの昔から名産食品扱いor食い尽くされて絶滅してるものかもしれない。その点シーラカンスもマイナスの定評があり、生きた化石扱いから有名になった奴のあるあると言えるかも。
尚、日本で食べた場合、「文化財産保護法違反」となり、5年以下の懲役もしくは20万円以下の罰金が課せられる。
余談だが岡山県笠岡市名物にカブトガニ饅頭があるが、こちらは当然だが食べても毒性的にも法律上にも問題ない。*1


ペット

天然記念物に指定され(ry
後述する海外のカブトガニはなんとペットとして飼育されることもある。
そう、カニやエビ等とも違った古代のロマンを自宅でも堪能できるのである。
しかしながら寿命は非常に長く、諸説あるが大切に飼えば10年は軽く生きるので飼う場合は相応に覚悟しておかなければいけない。
餌はなんでも食べるが肉食が強く、魚の切り身などを好んで食べるようだ。

医学

カブトガニは我々人類の医学の発展においても貢献してきた生き物である。
彼らの血液は青白い色をしていることで知られているがこれが有害な菌に反応するとゼラチン質に固まるという特性がある為だ。
アメリカの研究機関はカブトガニを捕獲し、関節に針を刺すことで血液を得ている。
この方法はカブトガニの負担を最小限に抑える為の苦肉の策なのだがそれでも何割かは死んでしまうので問題視されており、
近年カブトガニの血液に代わる方法がないか模索されているという。

カブトガニの種類

現在地球上にいる種類は4種類。
大まかな形は同じだが生息地やサイズが微妙に異なる。

  • カブトガニ
最も知られた種類にしてカブトガニ科最大種。
海外では台湾や中国南部、東南アジア諸国の沿岸といった比較的温暖な海域に生息しており、
唯一日本にも生息しているが環境破壊や水質悪化が原因で岡山県山口県愛媛県佐賀県福岡県長崎県の、
それも限られた地域でしか見られない。
日本に生息している個体群はすべて天然記念物に指定されている。
この種類のオスのみ甲羅に窪みが存在している事で知られている。


  • ミナミカブトガニ
東南アジアに生息するカブトガニ。
カブトガニほど大きくならず、違いはオスで特に顕著で、カブトガニのオスにある甲羅の窪みがないことである。


  • マルオカブトガニ
東南アジアに生息しているカブトガニ科最小種で最大でも40㎝程度にしかならない。
先述したテトロドトキシンを持っていることがあるカブトガニはこの種類。

  • アメリカカブトガニ
名前の通りアメリカやメキシコに生息するカブトガニでもっとも研究が進んだ種類。
医学において血液を採取され、利用されているのはこの種類である。



カブトガニをモチーフとしたキャラクター/アイテム


余談

名前に反してカニやエビ等の甲殻類ではなく、鋏角類、即ちクモサソリに近縁の仲間である。

何度も書いているように日本に生息しているカブトガニは天然記念物であり、殺したり捕獲したりしようものなら捕まる。
なので見つけてもそっとしておき、見て楽しむだけにしておこう。

田んぼに出現するカブトエビとは名前もさることながら見た目も似てるのでよく混同されるが
両者は同じ節足動物であるもののカブトエビは甲殻類であり、完全な別種である。
一方でカブトエビもカブトガニと同じく原始的な形質を残したまま今日まで
生き残ってきた生きた化石なのでこれも両者が混同される原因かもしれない。


追記・修正は大絶滅を生き残ってからお願いします。

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最終更新:2025年03月29日 14:22

*1 ちなみにとある漫画の作者いわく「一度食べて懲りました」との事。

*2 部分的にはカニだが正式なモチーフはカブトガニ