THE SECOND 〜漫才トーナメント〜

登録日:2023/05/28(日)16:49:48
更新日:2023/07/08 Sat 11:02:02
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漫才師たちのセカンドチャンス

彼らは今、全盛期。



THE SECOND 〜漫才トーナメント〜とは、吉本興業・フジテレビ主催のお笑いコンテストである。

●目次

【概要】


フジテレビが創設した、結成16年以上の漫才師のみを対象にした全く新しいお笑い賞レース。
本大会の最大の目玉ともいえるこの「結成から16年以上」という応募資格は言わずもがな「結成から15年以内」の漫才師のみが出場できる『M-1グランプリ』の対になっており、確かな実力・才能を持ちつつも既にM-1の出場資格を失効し、ブレイクの兆しを失ってしまった中堅・ベテラン芸人に“セカンドチャンス”を掴んでほしいという願いを込めて設立された。
またもう一つの特殊な参加条件の一つに全国ネットの漫才賞レース(M-1グランプリ、THE MANZAI)での優勝経験があるコンビは参加できないというものがある。しかしファイナリストやKOCチャンピオンは出場可能。
また、当然ながらアマチュアや即席ユニットのエントリーも不可能となっている。

優勝賞金はM-1、KOCと同等の1000万円。さらにそれに加えて優勝トロフィーと副賞がつく。

そもそもの大会コンセプトや、力の入ったクオリティの高い煽りV等演出など、元となったM-1グランプリと似通った部分こそ多いものの審査方法や細かなルール、大会の形式等その多くの部分がM-1のそれと大きく異なる。
まず最も大きな違いとしてあげられるのがネタ時間が4分ではなく6分であること、そして極めつけは審査員がネタを見に来た一般の観客であることが挙げられる。
スタジオのセットにも相当のお金をかけたらしく、その荘厳さや力の入れようはM-1のそれと遜色はない。
但し「それまでの大会と逆にする」というコンセプトから、M-1やKOCで使用している赤と金色の反対で青と銀色をメインカラーとしている。
特に銀色については「いぶし銀」の意味もあることからテロップの文字や優勝の紙吹雪、トロフィーの色にも使用する徹底ぶり。

大御所のゲスト審査員がいないことや、ファイナリスト達が皆場慣れしたベテランということもあり、他のお笑い賞レースと比べても良い意味で緊張感が無いのもこの番組ならではの特色といえる。事実本番ではファイナリスト達がのびのびとネタやトークを行う姿も見られ、特に自身の得点の低さをファイナリスト自ら即座にネタにするなど他のお笑い賞レースではあり得ないような一幕も見られた。

登壇時の出囃子には10-FEETの「2%」、最終決戦ではOKAMOTO'Sの「BROTHER」が使用されており、他にも番組のコンセプトに非常に似合った曲選や、映画『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』をモチーフとしたハイセンスなファイナリストの紹介映像などは視聴者からも高い評価を得た。

【ルール】


前述した通り本大会では他のお笑い賞レースのように審査を担当した審査員が炎上したり叩かれたりするのを防ぐため、著名な芸人等は審査員を担当せず、予選から本戦まで全て観客が審査員を兼任するという他では見られない審査方法を採用。
100人の観客が審査員となって、それぞれ3点満点*1で審査を行い、合計点(300点満点)が高い方が勝ち上がるという仕組みとなっている。なお、同点だった場合は3点を入れた人数で勝敗を決する。

しかしこのシステムに関しては他のお笑い賞レースで一切導入されてない独自の試みであるが故に、かつてのM-1グランプリが視聴者による一般審査で大失敗したこともあって発表当時は一部からは心配の声も多く賛否が分かれた。
勿論番組側も同じ過ちを繰り返さぬ為に、例えば審査に責任感を持ってもらうために否が応でも抜き打ちで観客に採点理由を聞く審査員の嗜好が被らないよう観客は事前にアンケートを実施した上で選出するなどといった入念な対策を行い、男女・年齢・居住地に偏りが無いようにしたという。
アンケート以外では、選考会に来た観客から審査員の2割を選出している。これは選考会からわざわざお金を払ってやってきたお客さんの熱量は絶対に高いと判断したことによる。

そしてもう一つの特徴がネタ時間が6分であるということ。トーナメント戦ではネタ時間が6分30秒を超えると10点減点、更にそこから15秒超過ごとに10点減点される。これはM-1が4分、KOCでも5分であることを考えるとかなり長い持ち時間であり、これに関してアンバサダーを務めるダウンタウン松本は「ネタ時間が6分あるのがいいよね」「2分以上の素晴らしいものが生まれるのではないか」とこの新たな試みに強い関心を寄せていた。

上記のような過去の前例がない画期的な取り組みに関しては当初こそ不安の声も多々あったものの、番組側の入念な対策もあって実際に蓋を開けてみれば特に荒れる事も無く寧ろファイナリストの選出、決勝での採点、ネタ時間の長さ共に視聴者からも好評であった。
当の総合演出も後日インタビューで「炎上していないことが理想だった」と語っているほど。

【大会の流れ】


選考会

2月に東京・大阪の2会場で選考会が実施され放送作家、ディレクター、AD2名がVTR審査を担当。エントリーを表明した総勢133組の中から続くノックアウトステージに進出する32組を決定する。

ノックアウトステージ

選考会を勝ち抜いた32組が4組ずつ8ブロックに分けられ、各ブロックのトーナメントを制した計8組が、続くグランプリファイナルに進出する。ここから審査方法も観客が審査員を行うシステムに移行。
32組から16組に絞られる「開幕戦ノックアウトステージ32→16」は3月下旬に、8組に絞られる「ノックアウトステージ16→8」は4月下旬に実施され、それぞれフジテレビオンデマンドで生配信された。

開幕戦ノックアウトステージ32→16
選考会を勝ち抜いた32組を更に16組まで絞るトーナメント戦。選考会の上位8組は「ポットA」として、トーナメントの後攻に自動的に配置されるシステムが採用された。

ノックアウトステージ16→8
ノックアウトステージ32→16を勝ち抜いた16組からグランプリファイナル(本戦)へ進出する8組を決める最後の予選。
ここを勝ち上がればグランプリファイナルへの切符をつかみ取ることができる。
しかしながらトーナメント形式の宿命からか、先攻が勝利したのはFブロック(マシンガンズ)のみで、他のブロックはいずれも後攻が勝利する事態となりこれに関しては一部の出場者から疑問の声も上がる結果に。*2

グランプリファイナル


2023年5月20日19:00 - 23:10に、フジテレビ開局65周年×吉本興業110周年特別番組『THE SECOND~漫才トーナメント~』として、フジテレビ系列で生放送された。ノックアウトステージを勝ち抜けてきた8組によるトーナメントを制した漫才師が優勝となる。

ノックアウトステージと同様、観客100人による3点満点の採点の合計点を競う。ただし、ノックアウトステージでは演者の漫才の終了毎に採点を行っていたのに対し、グランプリファイナルでは先攻後攻の両演者の漫才が終了してから、先攻後攻それぞれの採点を行い、各審査員の得点が席ごとに表示される。

グランプリファイナルのトーナメントの組み合わせ、および一回戦の先攻後攻は、ノックアウトステージのブロックとは無関係に5月9日の抽選会で改めて決定された。準決勝以降の先攻後攻は、1つ前の対戦の得点の高かった組が選択できる。*3


【出演者】

番組を盛り上げる出演者達。本大会にはゲスト審査員等の席は設けられていない。

  • 東野幸治
司会進行担当。皆さんご存知人の心を持たないサイコパスモンスター。なおWコウジの片割れでもある今田耕司はM-1グランプリの司会を務めている。
大会アンバサダーの松本とは長らく同局の「ワイドナショー」で共演していたこともありその掛け合いは見事なもの。隣の松本やネタを終えたファイナリストのみならず審査を行う観客や、鼻うがいのCMに出演している今田耕司をもネタにし、イジり倒すその手腕はまさに彼だからこそできる芸当といえるだろう。

  • 松本人志
本大会のアンバサダー兼マスコットキャラクター。ダウンタウンのボケ担当にしてM-1やKOCでは審査員を務めている言わずと知れた笑いのカリスマだが、本大会ではあくまでも審査員ではなくその立ち位置はどちらかというと司会に近い。
審査員を担当しているM-1やKOCの時とは違って、本大会ではその重荷がないためかと普段と比べてものびのびと気軽にボケる彼の姿を拝むことができる。

【大会結果】

順位 コンビ名 所属 1回戦ネタ順(得点) 準決勝ネタ順(得点) 決勝ネタ順(得点)
優勝 ギャロップ 吉本興業 大阪 第3試合先攻(277) 第2試合後攻(284) 後攻(276)
準優勝 マシンガンズ 太田プロダクション 第1試合後攻(271) 第2試合先攻(284) 先攻(246)
準決勝敗退 囲碁将棋 吉本興業 東京 第4試合後攻(276) 第2試合先攻(284) -
準決勝敗退 三四郎 マセキ芸能社 第2試合後攻(278) 第1試合後攻(256) -
一回戦敗退 テンダラー 吉本興業 大阪 第3試合後攻(272) - -
一回戦敗退 金属バット 吉本興業 大阪 第1試合先攻(269) - -
一回戦敗退 スピードワゴン ホリプロコム 第2試合先攻(257) - -
一回戦敗退 超新塾 ワタナベエンターテイメント 第4試合先攻(255) - -

総エントリー数は133組。
選考会、ノックアウトステージの戦績は以下の通り

+ ノックアウトステージ32→16出場コンビ
太字は16→8へ進んだコンビ
囲碁将棋、インポッシブル、COWCOWかもめんたる、ガクテンソク、金属バットギャロップ三四郎、シャンプーハット、ジャルジャル、スーパーマラドーナ、スピードワゴン、スリムクラブ、タイムマシーン3号、タモンズ、超新塾、ツーナッカン、テンダラー、東京ダイナマイト(棄権)、Dr.ハインリッヒ、流れ星☆、なすなかにし、2丁拳銃、Hi-Hi、フルーツポンチ、プラス・マイナス、マシンガンズ三日月マンハッタン、モダンタイムス、モンスターエンジン、ラフ次元ランジャタイ

+ ノックアウトステージ16→8出場コンビ
太字はグランプリファイナル進出を決めたコンビ
2丁拳銃、スピードワゴン、流れ星☆、三四郎、COWCOW、超新塾、ラフ次元、ギャロップ、三日月マンハッタン、テンダラーマシンガンズ、ランジャタイ、かもめんたる、囲碁将棋、タイムマシーン3号、金属バット

記念すべき第一回目となる大会で、フジテレビ開局65周年×吉本興業110周年特別番組として生放送された。放送時間は脅威の4時間越えとなる。
その今までに前例のない大会コンセプトもあって開催前から大きな反響こそ呼んだものの、初回であることと同局が賞レース版「THE MANZAI」を開催した際にイマイチ盛り上がらなかったもあってか、エントリー数は133組と控えめに。
滑り出しこそイマイチだったが実際に予選が始まると、選考会の段階でかねてより優勝候補と目されたトータルテンボスや三拍子などのビッグネームが敗退したり、ノックアウトステージではジャルジャルやプラス・マイナスといった多くの優勝候補がまさかのダークホースの前に散る等、まだ初回の大会であるにもかかわらず高い注目を集めた。

グランプリファイナルでもこれまで同様トーナメント戦を採用。先攻、後攻のコンビがネタを披露した後に採点を行う。そして一回戦、準決勝そして決勝の三連戦を勝ち抜いたコンビが優勝となる。
ネタに関する細かなルールは時間制限以外に特になく、基本的にM-1グランプリでは御法度とされる小道具の持ち込みや下ネタも観客にウケるのであれば問題はない。

そして本番でもファイナリスト達のレベルの高さ、一般審査員の公平さ等が非常に高く評価され、初回放送ながら大成功に終わるという快挙を成し遂げた。*4


【余談】

実は本大会の発起人はお笑い芸人・おいでやす小田であると本人が証言している。同氏曰く吉本の上層部との食事会があった際に直談判したとのこと。
小田は上層部からリニューアルして芸歴制限制度がかかったR-1グランプリの失敗を受け、「年齢制限を撤廃するべきか否か」を尋ねられたと言い、小田はそれは撤廃しない方が良いと助言した上で「芸歴10年以上の新しい賞レースを作ってください」とTHE SECONDの原案となる大会の開催を提案。
元々小田本人は「ピン芸人と漫才とコント、全部合わせた異種格闘技で芸歴10年以上の大会」を提案し、上層部もそれに食いついたもののその後紆余曲折を経て結果として漫才のみに絞ったTHE SECOND開催につながったとのこと。ここでもチャンスを失ったピン芸人が不憫でならない




追記修正はセカンドチャンスをつかんでからお願いします。

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最終更新:2023年07月08日 11:02

*1 選択肢は「とても面白かった:3点」、「面白かった:2点」、「面白くなかった:1点」の3通りで、両組に同じ点数をつけてもよい。

*2 特に敗退後自身のTwitterにて一般審査員に不満を爆発させた流れ星☆のたきうえは結果大炎上。後にダウンタウン松本や、この時の対戦相手であり間接的に批判の対象となった三四郎小宮にも散々ネタにされることに。

*3 同点の場合は、最高評点である3点を入れた観客の人数が多いほうが選択できる。

*4 R-1やTHE Wは言わずもがな、M-1やKOCでさえ第一回大会ではそれなりの課題点が残っていることもあって初回から大成功に終わるというのは非常にレアなケースである。

*5 なお、超新塾のオリジナルメンバーは全員が大阪吉本で芸人デビューをしており、元メンバーのDRAGONタカヤマ(現・コウカズヤ)はザ・プラン9の浅越ゴエと「デモしかし」というコンビを組んでいた。

*6 元々現在の5人に今は筋肉系Youtuberとして活動中のコアラ小嵐が在籍していたのだが、元よりピンでの活動が主になりスケジュールが合わなくなったことなどを理由に脱退。イーグル曰く5人組となった直後の初めての舞台がTHE SECONDの予選だったとのこと。

*7 尤も、コンビは2017年以降「東京センターマイク」という漫才ライブを毎年主催している。