カワカミプリンセス(競走馬)

登録日:2023/12/11 Mon 23:00:27
更新日:2024/06/25 Tue 14:59:22
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カワカミプリンセス(Kawakami Princess)とは、日本の元競走馬

メディアミックス作品『ウマ娘 プリティーダービー』にも登場しているが、そちらでの扱いは当該項目参照。
カワカミプリンセス(ウマ娘 プリティーダービー)


目次

【データ】

誕生:2003年6月5日
死亡:2023年9月11日
享年:20歳
父:キングヘイロー
母:タカノセクレタリー
調教師:西浦勝一 (栗東)
主戦騎手:本田優→武幸四郎→横山典弘
馬主:三石川上牧場
生産者:三石川上牧場
産地:三石町
セリ取引価格:-
獲得賞金:3億5,089万円 (中央)
通算成績:17戦5勝 [5-2-2-8]
主な勝鞍:06'優駿牝馬(オークス)・秋華賞

【概要】

2003年6月5日生まれの鹿毛の牝馬。父はキングヘイロー、母はタカノセクレタリー。
母方の血統を見ると、母の父は史上初の米無敗三冠馬シアトルスルー、母の母父は馬のような何かセクレタリアトという超絶良血馬である。
そこにダンシングブレーヴ×グッバイヘイロー(父ヘイロー)の超良血馬キングヘイローが合流するという、実は父以上のトンデモ級超良血馬である。ウマ娘のカワカミにそんな感じないけど

名前の由来は生まれである「三石川上牧場」から「カワカミ」、父の「キング(King)」と対になるように「プリンセス(Princess)」を合わせたものとなっている。
調教師は騎手時代にヤエノムテキ等の騎乗で知られた西浦勝一氏、騎手はゴールドシチーにも騎乗経験のある本田優や、後年には横山典弘なども務めている。
大変な気性難の暴れ馬としても有名だったとのことで、馬房には猛馬に注意*1の立て札が下げられたり、「Don't touch」の看板、壁には蹴り跡や噛み跡がたくさん刻まれていたりなんて話が担当者から写真付きで語られている。
洗い場には危うく自分が怪我をしてしまうほどの威力で施設に穴をあけている。
遠くから見ればお嬢様だが、助手によれば「前世が恐竜じゃないか、と思わせるほどキツい気性。とにかく我が強かった」というほど我が道を行く性格、近づけば噛まれる危険が隣り合わせだったため、担当者はプロテクターをつけて世話をしていた。

生涯戦績は17戦5勝[5-2-1-9]、獲得賞金は3億5089万2000円。内2勝が牝馬三冠のG1によるもので、これらの勝利は全てデビューからの5連戦の間に得たもの。

牧場では「遅生まれで、体も小さかった馬が、こんな大きな仕事をしてくれるとは思わなかった。ウチのような牧場でも、こんな馬を生産できたことで、日高の牧場に勇気を与えられたのではないかと思います」と語られている。

【戦歴】

2006年2月26日に阪神競馬場の3歳新馬戦芝1400mでデビュー。
デビュー戦で1着勝利を果たし、続く君子蘭賞、OP戦のスイートピーステークスと連戦連勝を重ねていき、その勢いのままにGI戦線へと参戦。
初戦の桜花賞には間に合わなかったものの2歳女王テイエムプリキュア・桜花賞馬キストゥヘヴンを捻じ伏せ優駿牝馬(オークス)を優勝、「無傷のオークス馬誕生!!」、47歳4ヶ月最年長優勝となった本田騎手は2001年に二冠牝馬テイエムオーシャンで逃した忘れ物を取る形となった。デビューから85日の史上2番目の早さ、レコードにコンマ1秒と世代最強に相応しい勝ち方であった。
先輩テイエムオーシャンを見習い直行で秋華賞に出走、本田騎手は落馬負傷を早々に回復させ挑んだ。1番人気はアドマイヤキッスに譲るが早仕掛け・もう一伸びと余裕を見せる走りで二冠達成、3ヶ月足らずでGI2勝を含む無傷の5連勝を果たすなど、3歳牝馬の戦国時代に終止符を打つ、怒涛の進撃を重ね絶頂期にあった。

しかし、続くGI戦であるエリザベス女王杯、これまでの功績から前年覇者であるスイープトウショウを上回る1番人気での参戦となるも、直線コースにおいて同時出走していたヤマニンシュクル*2との接触による進路妨害を行ったとされ、1着からヤマニンシュクル(11着)の後ろ12着へと降着となってしまう。
GIでの1位入線馬の降着は1991年の天皇賞秋・メジロマックイーン以来の15年ぶり2頭目という出来事であり、裁決委員に対して本田優騎手*3が「すべて自分の責任、いくら罰金を被ってもいいが馬だけは勘弁してくれ」と嘆願するも降着処分が決定。
【降着】カワカミプリンセス号は、1位(タイム2分11秒4、2位との着差1馬身)に入線したが,最後の直線コースで急に内側に斜行して「ヤマニンシュクル」号の走行を妨害したため12着に降着。
【制裁】カワカミプリンセス号の騎手本田優は、最後の直線コースで急に内側に斜行したことについて平成18年11月18日から平成18年11月26日まで騎乗停止。
日本中央競馬会
しかもこの斜行の被害馬ヤマニンシュクルはこの時の怪我が原因で、競争能力を喪失しそのまま引退、志半ばでの繁殖入りに。
そして2着だったフサイチパンドラ*4が繰り上げで優勝になるが、この馬にとって初(そして結果的に生涯唯一)のGI勝利が繰り上げ優勝という何とも喜べない事態に。
競馬場には抗議の電話が70件も殺到し混乱状態…。
結局全方位に対して非常に後味の悪い事件となってしまったのである。
カワカミプリンセスは外傷を考慮し3歳シーズンを終えた。JRA賞最優秀3歳牝馬・最優秀父内国産馬を受賞した。

本田騎手は調教師転向のため引退、手綱は気性難を乗りこなせると期待された武幸四郎に譲られた。

この苦い敗北がきっかけとなったのか、カワカミプリンセスも以降は調子を大きく崩してしまい、直行でヴィクトリアマイルに挑むも出遅れて10着、勝ったのはオークスで競走中止したコイウタだった。宝塚記念は先行失速で6着という、今までの勢いからは考えられない結果に。西浦調教師が自信を持って送り出すも、彼女には精神的な部分にダメージがあったのかもしれない。
札幌記念調教中に全治1年の骨折をし長期離脱、その札幌記念をフサイチパンドラが優勝した。アドマイヤキッスの予後不良、アサヒライジング悲願の重賞初勝利が話題になる中、カワカミプリンセスは5歳になっていった。5歳4月の金鯱賞で復帰し3着に入った。宝塚記念に向けて調整される中…筋肉痛により無念の回避。
府中牝馬Sで武幸四郎に秋華賞での騎乗があったため横山典弘に乗り替わる。この後マイルCSを優勝するブルーメンブラットに半馬身差2着と復調だった。実に2年ぶりとなるエリザベス女王杯へのリベンジに臨むも、武幸四郎からC.ルメールに乗り変わったリトルアマポーラに「ハーツクライディープインパクトを破った有馬記念を髣髴とさせるファインプレー」と形容される名騎乗に敗れ惜しくも2着となった。有馬記念はダイワスカーレットに2番目追走も失速し7着だった。

その後も体調不良や骨折に悩まされながらも重賞戦線に挑み続けた。京都記念4着大阪杯3着と牡馬相手にしがみついたが、ヴィクトリアマイルはウオッカから1.5秒差の8着、完全に世代交代だった。
6つ目の勝利を得ることは叶わず、府中牝馬S6着後、三度目の挑戦となる2009年のエリザベス女王杯で横山典弘の好騎乗が目立つも9着を最後に引退となった。奇しくも同期の2歳女王テイエムプリキュアが大逃げを打ち2着という内容だった。

引退翌年の2010年、インターネット投票で人気の過去のオークス優勝馬の名前を、JRAプレミアムレースの副名称に使用する催しがあった際、投票の24%を獲得し1位に輝いた。なお優勝馬は後の安田記念馬ストロングリターンだった。

【引退後】

引退後は故郷の三石川上牧場で繫殖入り。
目立った活躍馬は出せていないものの4頭が繫殖入りしてその牝系を繋いでいる。「幻に終わった母のエリザベス女王杯制覇を産駒が叶えてほしい」と期待されたがGⅠ出走すらできずに終わった。

2021年をもって繫殖牝馬も引退。気性難が不安視されたが子育てでは子煩悩という母親の姿があった。
引退した後も引き続き三石川上牧場で功労馬として繋養されていたが、2023年9月11日に起立不能となり死去したことがJRAより発表された。20歳没。

「現役時代には夢を見させてくれた馬でした。降着になったのは残念でしたが、どこまで強くなるのかと思わせてくれました。古馬になって骨折があり、思うような結果を残すことができませんでしたが、それでもよく走ってくれた。牝馬でもとても気が強かった馬でしたね。」
────西浦勝一
「デビュー前はゲートも遅いし、反応も悪い。でも、気がきつくてうるさい。デビュー戦も人気になる要素がなかったし、こちらも大丈夫かな? と挑んだんだけど。あのレースはポンとゲートを出たんだ。そのあとはフラフラと物見したりしていたけど、そのまま逃げ切り勝ち。2戦目はゲートは出遅れて後ろからの競馬になって、3コーナーでの手ごたえも悪くて、『大丈夫かな?』って思ったけど追ったら伸びた。でも、手ごたえはないんだよ。それでも追えば伸びるんだよね」

「手ごたえがないのに追えばあんなに伸びる馬はいない。どの馬にも当てはまらない。3コーナーあたりで『勝った』と思ったレースは早めに上がっていったオークスくらい。エリザベス女王杯では3コーナーでは『ダメだ』『負けたな』としか思えなかった。それでも、手ごたえなくても追えば伸びるからジョッキーとしては追うしかないんだ。それから、秋華賞で4コーナーで内からぶつけられて外にふられたけど怯まなかったように、根性というか、気の強さもホント凄かったよ」

「『何で走るのかな?』という馬でした。(今思えば)根性で走っていた馬だったと思う」「いろいろあったあとの競馬でしたからね。負けてもおかしくない状態で使っていた」「力はあの世代では抜けていたし、俺が乗った牝馬の中ではテイエムオーシャンよりも強かったからね。一番よく走ってくれた」

「カワカミプリンセスは、間違いなく自分が乗った馬の中で一番強い馬です。」
────本田優

【創作作品での登場】

白馬の王子様を夢見てお姫様を目指している……が実際のところは、バーベル150kgは持ち上げる、暴漢を投げ飛ばす、Gを全く恐れないなど無闇矢鱈にパワフル。
ダンスのステップ練習がそのままシームレスでシャドーボクシングへと変化する、お嬢様を通り越して女の子としてどうなんだと言わざるを得ない絶叫を上げる等やはりパワフル。
モチーフ馬が他の馬をふっ飛ばして降着になってしまったことや、人が近寄っただけで噛みつこうとしてくるなど、
とにかく気性が荒いかった事を反映されていると思われ、馬房には「馬注意」と表示されていたという。
ちなみにふっ飛ばされたのはトウカイテイオーの娘だったりする。

イベント「花咲く乙女のJune Pride」に登場し、サポートカードとしても同時実装。
各ストーリーでは改めて強烈な印象をトレーナー達に与え、「女子力(物理)」だの「パワー系お嬢様」だのと呼ばれるように。
ちなみにルームメイトは世界レベル・シーキングザパールだから濃いって

2021年10月に育成キャラクターとして実装。
父親のキングヘイローもウマ娘として実装済みであり、彼女の育成シナリオにもお嬢様友達の一人として登場している。
それまで入念に濃いキャラクター性が強調されて、本編もそんなノリなのかと思いきや…
序盤こそパワー!なノリだったが、例の降着沙汰を境に一転して厳しいバッシングとスランプの苦悩に苛まれるというまさかの鬱系ドシリアス展開で多くのプレイヤーに戦慄を与えた(通称カワカミショック)。それでも、一連の騒動をぼかさずにひとつのスポ根ものとして描き切ったことは高い評価を得ている。

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最終更新:2024年06月25日 14:59

*1 元は「猛犬に注意」。「犬」の部分を塗りつぶした横に「馬」と書き足している。

*2 トウカイテイオー産駒。

*3 実はマックイーンの斜行で落馬しかけ、最も危なかった被害馬プレジデントシチー号の鞍上でもある。歴史の因果を感じる出来事でもあった。

*4 後に別の話として、父ロードカナロアの第7仔が「九冠馬」アーモンドアイになる馬。