登録日:2023/10/28 Sat 08:17:28
更新日:2024/10/21 Mon 23:45:26
所要時間:約 7 分で読めます
乗客5000人
目的地まで120年
90年も早く
2人だけが目覚めた
理由は1つ───
『パッセンジャー』(原題:Passengers)は2016年に公開された米映画。配給はソニー・ピクチャーズ エンタテインメント。
アメリカでは2016年12月24日、
日本では2017年3月24日に公開された(3D版・2D版同時上映)。
監督は『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』のモルテン・ティルドゥム、脚本は『
プロメテウス』『DUNE/デューン 砂の惑星』のジョン・スペイツ。
主演は『
ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズのクリス・プラットと、『ハンガー・ゲーム』シリーズや『X-MEN』シリーズ(『
ファースト・ジェネレーション』以降)のジェニファー・ローレンス。
日本語吹替版テーマソングはJUJUの「Because of You」。
【概要】
惑星間航行する宇宙船を舞台としたSF映画であり、アクションやラブロマンスといった要素も含んでいる。
こう書くと王道作品に聞こえるが、
この映画は批評家からは厳しい意見が寄せられており、一般客層の反応も賛否両論となっている。
特にSFとしての設定考証の甘さ、あまりにも運行と設計に不自然な点が多い宇宙船は最初に目につく大きな問題点となっている。
第2の問題点は、「劇中の人物が行ったある重大な行動を許せるか? 正しい行為だったと思えるか?」という点である。
ここで許せない、間違っているという感想を抱く人はどうしても後味が悪くなり、作品全体に低評価を下してしまうことになると思われる。
だが一方で、「観客が劇中の人物の立場に置かれたらどうするか? 自分なら何を思うか? どの選択肢を選ぶか?」と考えさせられる作品にもなっている。
ティルドゥム監督も公開前にこの作品に対して「見終わった後に他の誰かと意見を交わして語り合ってほしい」「良い映画は議論を生むものだと思っている」と述べている。
この作品のレビューは多く投稿されており、内容も「自分だったらどうするか?」と踏み込んだものとなっている事が多く、そういった意味では監督の目論見は成功だったと言える。
しかしながらシンプルに宇宙の美しさ、宇宙船の造形美などの作り込みも凝っているので、そこを期待して視聴するのもアリかもしれない。
Blu-rayの特典映像では未公開シーンやメイキングの他、劇中に登場するホームステッド社が宣伝として使用する宇宙旅行を促すプロモーションビデオという凝った映像が収録されているので一見の価値あり。
「宇宙でひとりぼっち」という趣旨の映画は前年の『オデッセイ』と前々年の『
インターステラー』も公開されている。
それらの作品と比較すると宇宙に対するリアリティが明らかに薄いが、合わせて視聴するのも面白いかもしれない。
【あらすじ】
宇宙開発が盛んに行われている未来の世界。
宇宙船アヴァロン号は5000人の乗客を乗せて人類の移住先である遠い星に向かっていた。
到着までに費やす時間は120年。全ての人間は冷凍睡眠でその時間を過ごすはずだった。
だが、一人の人間が目覚めてしまう。到着までまだ90年もある時点で。
それはその人間が宇宙船の中で孤独に生きて、やがては死ぬことを意味していた───
【登場人物】
演:クリス・プラット / 日本語吹き替え:小松史法
最初に目覚めたエコノミークラスの乗客。
技術者ではあるものの、宇宙船についての専門的な知識と技能はない。
事態を打開するために色々と試行錯誤するも、冷凍睡眠ポッドを修理したり、乗務員が眠るエリアへのロックを開ける事は出来なかった。
船内で一人きりという孤独と絶望に耐えきれず、やがては
自殺をも考えるほどに精神的に追い込まれていくのだが……
演:ジェニファー・ローレンス / 日本語吹き替え:
水樹奈々
ジムの次に冷凍睡眠から目覚めた乗客。客等はゴールドクラス。
父親はピューリッツァー賞を獲得している著名な作家であり、裕福な育ちである。
自身も作家として大成すべく、宇宙船での体験について執筆して記事を公開するのが目的。
演:マイケル・シーン / 日本語吹き替え:村治学
バーでバーテンダーとして配置されているアンドロイド。
人間を真似て作られているのは上半身のみで、下半身は機械と車輪が剥き出しになっている(カウンター越しに接するので客が覗きこまない限りは見えない)。
話し方のプログラムは精緻で作り込まれており、ジョークや自虐ネタを言える他、ウィットに富む返答をする事も多い。
宇宙船で一人きりとなったジムにとっては唯一の話し相手である。
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ネタバレ注意。未鑑賞の方は開かないか、ネタバレ覚悟の上お読みください |
演:ローレンス・フィッシュバーン / 日本語吹き替え: 玄田哲章
3人目に冷凍睡眠から目覚めた人物。乗客ではなく乗員であり、甲板長を務める。
ポッドの故障に驚きつつも、アヴァロン号に起きている異常を調査し始める。
演じたローレンス・フィッシュバーンは『 マトリックス』シリーズにてモーフィアスを演じていたが、本作における立ち位置も少し似ており、ある意味では オマージュかもしれない。
未公開シーンでは「金星、 木星への渡航歴がある」と語っており、またアーサーにも「いつもの」と言ってグラスを用意してもらえる常連客であった。
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【用語集】
人類の移住プロジェクトを行う大企業。
アヴァロン号の目的地であり、人類の移住先となる星。
到着までかかる時間は120年を予定している。
紹介映像を見る限り、草原や森などの自然が存在する模様。
ホームステッド社が運行する、惑星間航行用の宇宙船。全長1000メートル。
動力はイオンエンジンであり、核融合炉が全てのエネルギーを供給する心臓部と言える。
大まかに分けて4つのブロックで構成されており、動力ユニットの周りに3つのブロックが配置されている。
一つは5000人の乗員が眠る冷凍睡眠エリア、もう一つは貨物エリア、最後は居住、娯楽エリアであるグランドコンコースである。
持っているIDによって開けられる扉が決められており、一般の乗客では乗員室やコントロールルーム、動力室などの重要なエリアに入る事は出来ない。
また、船の先端にはデブリを弾き飛ばすシールドが配置されていている。
冷凍睡眠ポッドが並び、5000人の乗客が眠るエリア。
このエリアにいるのは乗客だけであり、船長を含めた乗員は別のエリアで眠っている。
後述する船外活動体験はこのエリアのエアロックから出発する。
コンテナが並ぶエリア。その広さ故に移動と運搬にはカーゴトラックが使われている。
グランドコンコース。飲食店の他にアミューズメント施設も多数存在し、豪華客船を思わせる充実さである。
アーサーがバーテンダーとして働くバー。
カウンター席とテーブル席に分かれているが、劇中では利用する人が数人しかいなかったのでカウンターしか使われていない。
三角形で少し狭い。ゴールは一つだけ。
窓付き。宇宙を眺めながら泳ぐ事も可能。
劇中である事故を起こすが、人によってはかなりの恐怖映像となるかもしれない。宇宙恐怖症と海洋恐怖症の複合攻撃である。
3D映像のお手本通りに踊れるかを競う体感型リズムゲームが遊べる。
日本のゲームセンターでも『DANCE aROUND』など、これに近いゲームが存在する。
ラインナップは100万本以上で見放題。
仮に映画の長さを2時間だと仮定すると、合計再生時間は200万時間。
航行時間の120年は105万時間なので、文字通り見尽くせない量である。
本編では使用されず、未公開シーンにのみ登場。
観光地によくある顔ハメ看板の要領で背景を自由に選ぶ事が可能で、その場で印刷可能。
デジタル画像ではなく紙の写真で印刷されるというのも、未来の世界では大きな付加価値なのかもしれない。
宇宙服を着ての船外活動。
磁力によって脚部を固定する事で宇宙船の壁面を歩ける他、テザーでつながれた状態で泳ぐ事も可能。
「スリリングな体験」と説明されているので、バンジージャンプやスカイダイビングのようなアトラクション扱いとなっている模様。
宇宙服を未着用の状態でエアロックを開けて宇宙に出ることもシステム上は可能。説明するまでもなく、完全な自殺行為となるのだが……
酒と料理を楽しめる。
ウエイターもいるが、アーサーのようなアンドロイドタイプではなく、日本のファミレスにもいるようなロボットタイプとなっている。
劇中ではエビ料理が注文された。献立には寿司のイラストが描かれている。
壁や衝立には「幸せ遠征、起死回生、安全な旅、良い航海」と四文字の語が並んでいる。
「『心機一転』『一路順風』などもっと適した語があるだろ」と日本人なら突っ込まずにはいられないデザインとなっている。
上位の等級ではロフト付き窓付きで開放感のある部屋となっている。
エコノミークラスであるジムに対してもかなり狭いが、1人用の個室が用意されている。
本編では使用されなかったが、未公開シーンでは客室間でテレビ電話で通話できる。
IDをかざすと機械から提供される。
クラスによって質が差別化されており、エコノミークラスはコーンフレークやブロック状の合成食、
レギュラーコーヒーしか提供されないが、
ゴールドクラスは
パンケーキにベーコンソテー、カットフルーツなどイギリス風の朝食が楽しめる。
地球から36.8光年の距離に位置する恒星。
アヴァロン号はこの恒星の引力を利用して加速している。
窓があるエリアからは間近で燃えさかる大迫力の絶景を楽しめる。接近するタイミングで起きていればの話だが。
追記・修正はグラスを布で磨いてからお願いします。
- てっきりアン・ハサウェイが出たミステリーのほうかと思ったぞ -- 名無しさん (2023-10-28 19:19:42)
- ↑そっちは『パッセンジャーズ』ですね(原題だとどっちも同じタイトル〈Passengers〉ですが、こっちは邦題が単数形) -- 名無しさん (2023-10-28 19:34:09)
- 友人と一緒に映画館で観た後、食事しながら意見交換してたわ。見事に監督の目論見通りだったわけね。こういう映画も僕は好き。 -- 名無しさん (2023-10-30 06:31:29)
最終更新:2024年10月21日 23:45