ラストバトル!(遊戯王OCG)

登録日:2024/06/06 Thu 12:23:46
更新日:2025/05/08 Thu 17:34:40
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ラストバトル!》とは、『遊戯王OCG』に存在する通常罠カードである。
初収録パックは2001年11月収録の「Mythological Age -蘇りし魂-」。


カードテキストは以下の通り。

ラストバトル!

通常罠
自分のライフポイントが1000以下の場合、相手ターンにのみ発動する事ができる。
発動後、自分フィールド上に存在するモンスター1体を選択し、そのモンスター以外のお互いの手札・フィールド上のカードを全て墓地へ送る。
その後、相手はデッキからモンスター1体を表側攻撃表示で特殊召喚し、自分が選択したモンスターと戦闘を行う。
この戦闘によって発生するお互いのプレイヤーへの戦闘ダメージは0になる。
このターンのエンドフェイズ時、どちらかのプレイヤーのみがモンスターをコントロールしていた場合、そのコントローラーはデュエルに勝利する。
それ以外の場合は引き分けになる。


概要

第2期に登場した、非常に豪快かつ特殊な処理を行う通常罠カード。
第7期を最後に再録されておらず、テキスト整備が完全に進んでいないので一見して理解が難しいカードとなっている。
順を追ってこのカードの効果処理を説明すると、以下のようになる。

  1. 発動条件は「相手ターンかつ自分のLPが1000以下」。
    ただし空撃ちを防ぐため、自分フィールドにモンスターが存在していることも事実上の必須条件となっている。
  2. 発動時に自分フィールドのモンスターを1体選ぶ
    そのモンスター以外のフィールド・手札の全てのカードをお互いが墓地に送る
  3. その後、相手はデッキから任意のモンスター1体を攻撃表示で特殊召喚する
  4. そして《ラストバトル!》の効果による特別なバトルフェイズが開始
    自分が選んだモンスターと相手が特殊召喚したモンスターを強制的に戦闘させる。
    この戦闘によるお互いへの戦闘ダメージは0になる。
  5. この特別なバトルフェイズが終了した後は、《ラストバトル!》を発動する前のフェイズに一旦戻り、そのままターンを進行する。
  6. このターンのエンドフェイズになったら、《ラストバトル!》による特殊判定が発生する。
  • お互いにモンスターをコントロールしている/していない場合、引き分けになる。
  • 片方のプレイヤーがモンスターをコントロールしている場合、そのプレイヤーの勝利となる。

以上が、このカードの処理の流れになる。
たった1枚のカードでお互いの手札とフィールドのカードを一掃してしまうのに加え、カードの効果で本来のものとは別のバトルフェイズを発生させるという他に類を見ない特殊な効果を持っている。

封印されしエクゾディア》《ウィジャ盤》に続く特殊勝利カードだが、その達成確率は低い。
相手は戦うモンスターをデッキから選べるため、基本的にはこちらが不利になる。
単純に攻撃力の高いモンスターを相手が選んでしまえば、戦闘破壊による勝ち目が無くなってしまうのだ。


このカードの最大のポイントは、特殊勝利を決めるそのシチュエーションにこそある。

ギリギリまで追い詰められた状況で自分のモンスターを1体だけ残し、相手が繰り出す最強モンスターと一騎打ちの舞台を作る。
己にとって圧倒的に不利な条件を呑み、それでもなお勝利をあきらめず天下分け目の勝負に全てを賭ける。

1枚のモンスターに勝利を託し逆転勝利を信じるその姿に、人々は決闘者の魂と矜持を見出すのであろう……。








だが実際に人々が目の当たりにしたのは、魂も矜持もへったくれもない酷い使われ方だった。




このカードの問題点

一見すると正々堂々とした勝負を持ち掛ける代わりに使う側が不利になるこのカード。
だが効果を詳しく考察してみると、正当な一騎討ちの果たし状……にしてはあまりにも多くの抜け穴が存在する。
裏工作まみれのロクでもない用途が蔓延した結果、禁止カードに指定されてしまった。
厳しい言い方にはなるがコンセプトや効果の設定に欠陥があると言わざる得ない代物となっており、単純なカードの強さ以外にも様々な問題を引き起こしてしまっている。

  • 戦闘破壊耐性
このモンスターの破壊耐性、散らせるものなら散らしてみやがれぃ!

このカードによる勝敗判定は「エンドフェイズ時に各々のフィールドにモンスターがいるか否か」で決まる。
つまり実は「戦闘の勝敗」そのものは全く関係がない。
通常であれば「戦闘で負ける=戦闘破壊でフィールドを離れる」となるが、戦闘破壊耐性持ちのモンスターを残したなら話は変わってくる。
勝利とはいかずとも最悪引き分けに持ち込めるのである。

  • 後から特殊召喚
「くっくっく……こんなこともあろうかと伏兵を用意していたのよ」

前述の通り、勝敗の判定はエンドフェイズのモンスターの有無だけで決まる。
なので仮に自分のモンスターが戦闘破壊されても、エンドフェイズまでに何らかのモンスターを特殊召喚することでもドローゲームにできる。
無論相手ターンかつ発動コストとして手札とフィールドのカードが全て墓地へ送られた後なので、中々容易ではない。
破壊された時に後続を呼べる《キラー・トマト》などのリクルーターを場に残すのが最も現実的な手法だろう。

  • 引き分けが発生しやすい
「確かにバトルには負けたがデュエルには負けた訳じゃない、今日の所は引き分けにしておいてやる!」

前述した問題点で理解していただけたと思うが、このカード勝者の決定方法に大きな穴がある。
それどころか引き分けにしてしまう効果まで持ってしまっている。
引き分けは大会などのイベントで進行に支障が出るためか公式が嫌う傾向がある。

もっとザックリ言えば「決闘、あるいは決闘を何回で勝負のそのものに制限時間を設定する方が望ましい*1」「ある程度であっても故意に決闘でわざと勝たないことができる効果・処理を持っているカードを使えるのは八百長行為防止の点で望ましくない*2」など、公式大会やKONAMI公式での決闘イベントにおいては裁定処理やその決定ではなく、運営・進行そのものに対するリスクを起こしかねない効果をこのカードは持ってしまっている。

例えば《破壊輪》がエラッタされ禁止カードから緩和された際には引き分けが発生しないように効果が調整された。また、引き分けを起こすことのみを目的としたカードである《自爆スイッチ》は世界大会の国内予選などの大型大会イベントでは追加禁止カードに指定され続けている。
このカードが出た当時ですら上記の様な状況が起きていた上に、現在では墓地効果によりモンスターを供給する手段が増え続けているため、より引き分けが発生しやすくなっている。

  • 相手の特殊召喚の阻止
「者共頭が高い。この御方は畏れ多くも昇霊術師様じゃ……!」

このカードは「相手がモンスターを特殊召喚」してバトルを行わせる。
だが逆に言えば相手の特殊召喚を封じれば相手は何も出せなくなり、自分の勝利がほぼ確定する
上記2パターンは「負けない」ための方法だが、こちらはそれらよりも圧倒的に凶悪な「勝つ」ための手段と言える。
このカードの現役時代のカードプールで特殊召喚封じをする場合の筆頭候補があの《昇霊術師 ジョウゲン》。
実際の大会でも猛威を振るっていたという*3
現在であれば《虚無魔人》《虚無の統括者》《大天使クリスティア》など選択肢も増えている。
相手が《黒魔術のカーテン》などの特殊召喚できない制約を受けている状態になっていたら儲けものである。

おまけに、古いカード故にこれらは裁定の面で不明瞭な部分が多く存在する。つまりコナミの裁定次第では実は不可能とされる可能性がある
つまり《昇霊術師 ジョウゲン》の永続効果で特殊召喚が禁止されている場合、そもそも《ラストバトル!》は発動できないのではないか?ということである。
実際、「効果処理の一部が行えない状態の場合は発動できない」というカードは少なくない。*4
《昇霊術師 ジョウゲン》とのコンボに関する裁定も二転三転しており、明確な裁定が出されないまま禁止カードに指定されてしまった。
当時の*5コナミのルール整備の甘さが禁止カード化の理由の一つとする推測もある。

  • 良くも悪くもこれ1枚でデュエルが決まる影響力
このカード最大にして根本的な問題点。

上記の通り恐らくは「起死回生の為の乾坤一擲の賭け」的な使用法を想定していたのだろう。
しかし実際にはローリスクハイリターンで勝利をもぎ取る一撃必殺コンボのメインエンジンとなってしまった。
ならば仮になんらかの理由や制約が付いた「逆転の賭けにしか使えないカード」だったなら真っ当なロマンカードになったのではないか?
……という見通しすらかなり怪しい。
そもそもの話になるが、このカードのコンセプトそのものが諸悪の根源と言えてしまうのである。

仮にこのカードが現代環境でエラッタなしで使えたとしよう。
当時と違い、現代の遊戯王では墓地からの展開や除去が蔓延している。
つまり「手札・フィールドが全て墓地へ送られる=お互いこれ以上何もできない」という前提がそもそもあまり通用しない
このカードによるバトルの処理が終わっても、そこからお互いに何かしらのリカバリーができてしまう可能性が高いのだ。

そもそもの話、現代では先攻1ターンで制圧盤面を組んで事実上勝利できるのが当たり前な環境が長く続いている
「先攻1ターン目で下準備を済ませて相手ターンで特殊勝利する」としても、(よほど安定性が高くなければ)決して「強すぎる」とは言えない。
しかし、そんな状況下でもこのカードは一度たりとも禁止指定が解除されたことはない。

それは何故かと考察するならば、結局のところ「このカードの効果のみに依存して、そのターンのうちに勝敗が決まる」というところだろう。
それまでのデュエルの過程・攻防・駆け引きといったゲームの中核部分を丸ごと踏み倒すというところが、時代を問わない大きな問題だと考えられる。
他の特殊勝利カードが許されているのも、カード単体ではデュエルを決める程の影響力を全く持たない*6為と言える。
『遊戯王OCG』というTCGのゲーム性を完全に別物に変えてしまうカード・容易にちゃぶ台返しが可能なカードはそれ自体が危険な存在である。
環境に影響を与えるかどうかに関係なく、ゲームの体験を損なうという意味で永世禁止カードに相応しいのだろう。


アニメ版での活躍

遊戯王DMのアニオリエピソード『乃亜編』の終盤、「海馬vs乃亜戦」にて海馬が使用。
海馬は《青眼の白龍》を、乃亜は(アニメではモンスターカードの)《奇跡の方舟》を選択、戦闘の末に《奇跡の方舟》は破壊されるも自身の効果で《天界王 シナト》を特殊召喚し、その反撃で青眼を撃破し海馬は敗北した。

前のターンに海馬は戦闘破壊耐性を持つ*7《異次元竜 トワイライトゾーンドラゴン》を生け贄に《青眼の白龍》を召喚していたが、それをせずにその時点で《ラストバトル!》を発動していれば引き分けに持ち込めていた。
当然海馬もそれは承知の上であり、敢えて勝負を捨てたのは海馬兄弟の絆の象徴である《青眼の白龍》を見せ、乃亜に洗脳されていたモクバの心を取り戻すためだった。

観戦していた遊戯も決着後「遂に瀬人を超えた」と勝ち誇る乃亜にこれを指摘。
「卑劣な手段でしか人心を繋ぎ留められない乃亜は、大切な人のために自らを犠牲にできる覚悟を持つ海馬を超えてなどいない」「そんな奴が海馬に代わって社を率いるなど片腹痛い(要約)」
と言い放ち、海馬の無念を晴らすべく手札0枚、残りLP400、ライフ差7000という絶望的な状況からデュエルを引き継ぐ。
ここから遊戯と乃亜の対決に繋がって行く。

遊戯王VRAINSの禁止カードを捩ったネット掲示板のハンドルネームシリーズには、「ラストバトル?」というHNが混ざっている。


イラスト

イラストには《八俣大蛇》と《火之迦具土》が激しい争いを繰り広げている様子が描かれている。
最上級モンスター同士の戦いで迫力は満点。
しかし両方とも特殊召喚できないスピリットモンスターなため、《ラストバトル!》の効果ではこのイラストを再現できない。
あるいはこのイラストが「効果で特殊召喚できなければモンスターを立たせられない」という伏線だったのか……?

更に言えば日本神話八岐大蛇と戦ったのは実際にはスサノオノミコトである。
「夢のマッチングを発生させる」事こそこのカードの神髄、という意味では一応辻褄は合う。
もっとも上記の通りどっちにしろ対決はルール上実現不可能なのだが。


余談

  • 上述の通り遊戯王DMのアニオリエピソードで登場しているが、アニメ初出カードではないことに注意。アニメで登場したのは2002年7月放映の海馬vs乃亜戦の一連のエピソードであり、OCG登場の方が早い。
  • 「勝つにしろ負けるにしろ1枚で勝負を決めてしまう」という問題は、『デュエルマスターズ』の《無双竜機ボルバルザーク》が話題になることも多い。あちらも使うだけでゲームが確実に終了させられるという性質を持ち、プレミアム殿堂(禁止カード)という制度を導入させるほどにゲーム性に影響を与えた。「1枚のカードが勝敗を握る」ことの重大性を多くのプレイヤーに認識させた事例といえるだろう。





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最終更新:2025年05月08日 17:34

*1 会場を借りる上での指定終了時間・会場自体の門限など、遊戯王OCGとしてのルール外での制限時間も含む。というかこっちの方が強いと思われる

*2 このカードの登場よりかなり後ではあるが、OCGのオンライン版たる『マスターデュエル』では、実際に八百長を目的とした故意の捨てゲー行為・ゲーム外での利益のやり取りがKONAMI側からも指摘され・また実際に対処が取られたことがある。文字通りの世界大会などで同じことが起きてはならないのは容易に推察してもらえるだろう

*3 その他、このカードの発動条件を満たすために《デビル・フランケン》の莫大なライフコストを逆利用して《異星の最終戦士》を呼び出すなどの手段も存在した。

*4 例えば《神殿を守る者》で相手がドローできない状態では任意に発動できる《手札抹殺》などは発動できず、《メタモルポット》のような強制発動の効果は適用されるというルールがある。

*5 第9期よりカードテキストの体裁が一新されて処理の判別がしやすくなった他、公式HPのデータベースに裁定がまとめられるようになった。

*6 それこそ「理論上は初手でも【エグゾディア】は揃う」位厳しくなければ無理である。

*7 OCGでは攻撃力1900以下のモンスターとの戦闘時のみだがアニメ効果ではその制約が無い。