ミーム・ミドガルド

登録日:2024/10/06 Sun 07:23:01
更新日:2025/02/22 Sat 21:01:58
所要時間:約 7 分で読めます





そうだった……ヒゲのモビルスーツは∀……
黒歴史の象徴のマシンなのだ、文明を滅ぼした……

わ、私は……私はとんでもない事をしている!
私は黒歴史のマシンを目覚めさせてしまったのだ!
私は何をしようとして……!!


ミーム・ミドガルドは『∀ガンダム』の登場人物の一人。
(CV:水野龍司)

阪神王子から「もしディアナ様を一瞬たりとも痛め、泣かせるような事があったら、我、魂魄百万回生まれ変わっても怨み晴らすからなァァァァアア!!」という呪詛を吐かれたことで有名な、作品中盤から登場・暗躍したディアナ・カウンターではない(●●●●)ムーンレィスの工作員。
数々の悲劇を生んだ悪党ではあるが、その末路は哀れなものであった。

【人物】

ディアナ・ソレルが進める地球帰還作戦がムーンレィスの未来を閉ざすと考え、ディアナ不在の隙を突いて自身を頂点とする新たなる支配体系の構築を進め、同時にディアナの抹殺も含む策謀を巡らせていた摂政アグリッパ・メンテナーの命を受けて地上に降りていた特殊潜入工作員。
その通称は“御庭番”……つまりは、リアルな意味での忍者である。

NINJAではないので変態的な身体能力やユニーク・ジツはないが、固有技能と呼べるのが神業級の射撃の腕前
利用していたテテス・ハレが用済みになったと判断した際、テテスがロラン・セアックに一本背負いで投げられた一瞬の隙にテテスの額を誰にも気付かれず撃ち抜いている。
(隙を突いたとはいえ、そのミドガルドの銃を正確に撃ち落とした(後述)リリ様って一体……)

一応は軍属であるらしく、大尉の階級を持つ。
なので、実は月の正規の軍属=ギンガナム艦隊の一員(予備役)だったりする。

ということで、ディアナ親衛隊長のハリーは勿論のこと、ギンガナム艦隊の総大将であるギム・ギンガナムからも存在を認識されてはいる……のだが、潜入工作員=スパイなんぞをやっているせいで元から疎まれたり怪しまれたりしていたところに、本編での一連の行動から本気で恨まれたり蔑まれるようになる。

どうしてそんな仕事に就いたのかといえば「ミドガルドなりに立身出世を目指して」とのこと。
本編で(馬鹿なくせに家名だけで結構な役職に就いている)スエッソン・ステロに毒づいていた場面に、元の生まれの相当な立場の低さが透けて見える。
実はハリーもなのだが、ムーンレィス社会において下層民がそれなりの地位に就くには軍属しか道が無い。この辺りに、代替えもないまま長らく平和のみが続いた月の支配体系の限界が窺える。

媒体によっては「アグリッパの腹心格」なんて紹介をされている場合もあるが、実際にはそこまで大それた立場ではない。
アグリッパにとっては「ちょっと有能なスパイ」に過ぎないだろうし、ミドガルドにとっても「手軽に出世するための伝手」でしかない。

ただ、自身も内心では頑張っても報われないと薄々解っていながら汚れ仕事をすることへの後ろめたさや不安はあるようで、弱音を吐く場面もあった。

容姿は、長身痩躯でM字の坊主頭。
極めて顔色が悪く目の周りに黒い縁取りがあるのだが、これが隈にしか見えずに異常に疲れて見える……。
一応、顔色の悪さと目の周りの縁は人種差別的なメタファーを示す記号と分析*1されている。


【劇中での活躍】

キース・レジェが再建と共に事業拡大を図って開いたパン工場の工場長として登場。こんな怪しいオッサンよう雇ったなキース。

まず、地球出身の先祖を持つことから下層民として生きることを強いられた鬱憤を持て余していたテテス・ハレを名誉市民への昇格を餌に利用して、ディアナ(と入れ替わっていたキエル・ハイム)およびその護衛を担当するロランの抹殺、ミリシャの白ヒゲの奪取を試させるも失敗。
最終的には自らの手でテテスを始末し、視聴者のヘイトを買う

ここで、方針が変わったのか(恐らくは入れ替わっていたキエルが予想以上にディアナとなってしまったことで本物を暗殺すれば収まる話ではなくなった)、予てより連絡を取り合っていたミランやギンガナムと共謀してディアナを拉致し、強引に地球から連れ出す作戦を実行。
阻止しようとしたハリーを振り切り、例の呪詛を浴びせられつつもジャンダルムで宇宙へ脱出する。

その後、ギンガナム艦隊と接触してディアナを引き渡そうとしていたものの、ジャンダルムにレット隊*2のキャンサーとムロンが乗っていたのが運の尽き。
崇拝するディアナが暗殺される可能性があるとなれば居てもたっても居られないと奮起した彼らによりディアナが連れ出される。
それからはディアナの引き渡し先だったギンガナム艦隊や、タイミング良く(悪く)地球から上がってきたミリシャの面々を巻き込み、近いはずの月までの道程の中での大混乱に悩まされる事に。

結局、別々のタイミングで月の宮殿に集った面々に追い詰められたアグリッパは逃げるが捕らえられ、一同を冬の宮殿に招いたディアナによって、秘匿されてきた黒歴史が地球人と月の民に開示される。
くり返されてきた人類の最終戦争の記録を前に、なお種としての進歩を認めず現状維持を図るアグリッパと、自らを頂点とする支配体系を破壊してでも月の民を地球へ送り自然な生活サイクルに戻そうとするディアナ、双方の意見に賛同できなかったミドガルドは、地球人を排除して全てを無かったことにしようとするアグリッパをディアナとキエルが粛清しようとする前に射殺。
「最後の忠誠」と称してディアナをも殺そうとするが、一瞬の隙を見逃さなかったリリに阻止されてしまう。

そのまま拘束されかけたが、真実を知った市民が暴動を起こして冬の宮殿に迫っているとの報告を受けて走った動揺に乗じて脱出。
いっそのことジャンダルムからの攻撃で冬の宮殿もろとも関係者を全滅させようとしたのだが……

ここで月面でギンガナム艦隊と戦っていたはずの∀が突如として出現
∀がジャンダルムと正面から組み合い、あまつさえ押し返し始めたことに焦り攻撃を仕掛けるも、背面から放出される虹色の奔流に飲み込まれて無力化。

この事態に、ようやく自分がとてつもなく危険な存在と相対していると確信したミドガルドは錯乱しながらブリッジから逃走。
冒頭の台詞はこの時の我を失ったミドガルドの叫びである。

「ディアナ・ソレル様!ディアナ!!船を港につけろォォ!!」
「∀が見えない!∀はどこだ!?」
「…………ひゃああああっ!!」

外への道を求めて側面のハッチから顔を出したのだが、そこに現れたのはスエッソン部隊を始末したのち、混乱を見て駆け付けたハリーのスモーだった

「スモー……!ハリー大尉は、親衛隊……!」

「うん、知ってるよ」と言いたくなる最後の台詞だが、よっぽど混乱していたのだろう。
この、ネタにされがちだが「現実ってそんなもんかもな」と思わせる絶妙な匙加減が富野節である。

ハリー「ディアナの法の裁きは、受けていただく!」

そうして、冬の宮殿に攻撃を加えた(他いくつかの余罪含む)罰として、その場でスモーの手刀にひねり潰された
中盤から続いたムーンレィス内部のゴタゴタはこれにて決着を見、物語はいよいよ最終局面へと移っていくことになる。

ボンボン版

冬の宮殿でディアナ抹殺に失敗後、ギンガナムに取り入ろうとしたが、「卑しいスパイに用はない」と一蹴され、粛清された。

マガジンZ版

ギンガナム艦隊に合流し地球へ降下。その最中にロランとハリーの奇襲を受け、∀を破壊しようとしたが、ハリーとの戦闘で瀕死の重傷を負っていたグエン・サード・ラインフォードの攻撃を受け死亡する。

【余談】

  • 初登場時の工場長スタイルの時に、何故かエプロンの下に象がプリントされたTシャツを着ていることをネタにされる。
    • これは、「月では(重力の影響で上手く飼育できなかったのか)象が伝説的な動物になっていて、一種の憧れが市民の中にある」という設定のため。……可愛いところあるじゃねーか。
  • スーパーロボット大戦シリーズにも登場している。もちろん悪役ではあるが周りの状況が状況のためか原作以上に企みが上手くいかず、ある意味では彼の代名詞であるテテス・ハレ殺害も別のキャラに取って代わられる始末。
    • それでも『スーパーロボット大戦Z』では最終的に自らの命を以てディアナを救うという謎の厚遇を受けた。
    • 一方、∀が初参戦となった『スーパーロボット大戦α外伝』ではマウンテンサイクルから発掘されたガンダム試作2号機を掻っ攫ってそれに搭乗してきた。このため、ミドガルドの搭乗機といえばサイサリスというイメージを持つ人はそれなりに多いのではなかろうか。
    • ちなみにZでは非戦闘員だったため、新録ボイスが無く、2022年に演者である水野氏が鬼籍に入られたため、氏にとってα外伝が最初で最後のスパロボ出演になった。今後∀が参戦し、ミドガルドがパイロットとして登場してもボイスはα外伝のものが流用されるものだと見込まれる。
  • ちなみにハリーに一緒に呪詛を吐かれているミラン・レックスも割とあくどい男だったが、なんかディアナと和解して生き残った
    • 野望が潰えた時点で十分な罰となった事と、同志であったフィル・アッカマンがポゥ・エイジ絡みでロマンスをし最終的に生き残った絡みもあるだろうか。


追記修正は…Wiki籠り…!

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最終更新:2025年02月22日 21:01

*1 主人公ロランの褐色肌に白髪が遺伝子的な欠陥の記号であるように、この『∀ガンダム』では恐らくは富野の指示によるのだろう、リアル世界での人種の特徴には当てはまらないが、何かしらの身体的特徴が階級差別や生物としての欠損を示す符丁・記号としてデザインに盛り込まれているようである。

*2 かつてディアナと共に地球に降り、ディアナが強制的に月に戻された後も帰れずに地球に居着いたムーンレィスの末裔により結成された傭兵部隊。