リリ・ボルジャーノ

登録日:2024/10/01 Tue 11:30:39
更新日:2025/04/06 Sun 18:42:17
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ごきげんよう〜、
アメリアは私がスカートのまま治めますわ〜!!


リリ・ボルジャーノは『∀ガンダム』の登場人物。
外部に紹介される場合には後述の事情もあってか外されてしまうこともあるものの歴とした本作のメインキャラクターの一人であり、富野作品お馴染みの女傑の一人。
CV:小林愛

【御姿】

髪色は黒。瞳の色は紫。
髪の毛は、実は癖っ毛であらせられたのかソバージュがかかったようになっている。
基本的には後ろに流す形で纏めているだけの髪型なのだが、頭の上にて猫耳のように2つの編み込みを作っているのがあざとい
赤色が好きなのか、赤と白の傘みたいな形状のドレスが基本的な私服である。
このドレス、思いっきり足を絞っているような形状なのだが、すっ転んだり何よりも脱ぐのに手間にならないのだろうか?
日除けも兼ねているのか鍔の大きな帽子を愛用しているのだが、その上で日傘を持ち歩いていることが多く、その甲斐(?)もあってか色白である。


【人物】

物語の始まりの舞台となったイングレッサ領のお隣・ルジャーナ領を治めるボルジャーノ公の末娘。

本作に於いてはグエン・サード・ラインフォードキエル・ハイムと並ぶ地球側の代表ではあるのだが、先の2人に比べると表に出てくる機会が遅いこともあってか外部作品だと脇役扱い止まり。
なので、本編を見ないと「誰?」レベルのキャラなのかもしれないが、作品ファンにとっては結構な重要キャラクターである。
その甲斐もあってか『∀ガンダム』が客演する『スパロボZ』シリーズでは無印のみの登場でちょっと良いこと言うだけのモブに落ち着つくかと思ってたのに『第3次天獄編』では翠の地球のアメリア地方のレジスタンスのリーダーとまでなっていた。

幼い頃から決められたグエンの許嫁という立場であり、それどころか既に婚約も交わしてしまっているという関係。
なので、旧態的な価値観も守るリリ様としては思いっきりグエン様に媚を売ったり不必要な程に未来の旦那様を立てる発言・態度が多かった。

……尚、本来はイングレッサとルジャーナはいがみ合っている間柄であるらしいのだが*1、そんな立場にある両家が婚姻関係を結ぼうとしていることについてはやっぱり政略結婚的な意味合いが大きかったのだろう。
それならばグエンが失脚した時点で見限ってもよさそうなものだがグエン個人の才覚というものを見抜いていたのかスポンサーのような立場で彼を迎え入れて、(実質的に)自分が率いていたルジャーナ・ミリシャと敗走してきたイングレッサ・ミリシャを統合して“ミリシャ(地球軍)”とも呼べる勢力を作る礎となった。
これについては、後半で明らかになる支配者の器からアメリア全土の支配のためにグエンが使えそうだから世話をしていた……なんて考察をされることも。恋敵になるかもと思った相手(キエル)に意地悪をするような子が流石にそこまでは打算的ではなかったと信じたいが、そういう“視点を持てる”位には視野が広いのは否定できない所。

特に年齢設定は明かされていないが許嫁のグエンから換算しても他の同年代と思われるメインキャラクター達と同様に10代中頃〜後半位かと思われる。
その年齢にしては老成しているというか覚悟完了し過ぎている感じだが、寧ろリリ様くらいの家柄の娘ともなれば、そんな価値観を持つように育てられるのが当たり前というレベルなのだろう。
同じお嬢様でも政略結婚なんて考えずに済む程度の家柄で割と好き勝手にしてたキエルやソシエとは家柄の格が違うのが解ろうというもの。

終盤ともなると個人として素で喋ったり行動していると思われるのだが、含みが無くなって自分が前面に出るようになっている以外は特に態度や口調やらに変化が無いあたり、やっぱり元から完成された人格の持ち主なのが解る。
実際、地球人を端から下賤な存在と見下しており女王ディアナ傅くことさえ止めていたアグリッパ・メンテナーもリリ様の醸し出す高貴な雰囲気には相当にやられていたらしく鼻の下を伸ばしていたらしい。

そんな訳で、実は余り個人の感情や趣味が見えない位に完成されたレディ(淑女)な訳なのだが、そんなリリ様の好物と呼べるのがココア。
月でムーンレィス謹製のココアに舌鼓を打つシーンは、その後でキエルと個人的な友達になるのを申し出るのも含めて隠れ名場面の一つ。

初登場は1話だが、その時点では顔見せ程度の登場(グエン様の取り巻きのモブお嬢様の1人)であり、本格的な登場はノックスが壊滅に追い込まれて物語のステージが変わる13話以降と、メタ的にも序盤のエピソードが消化されて物語が大きく動き出すタイミングからであった。

演じる小林愛は元々は舞台女優(当時はきだつよし率いる『TEAM 発砲・B・ZIN』所属)であり、ロラン役の朴璐美などと共に富野の復活作品『ブレンパワード』の時に見出されて声優業にも進出した一人。
富野作品では次作『キングゲイナー』のメインヒロインであるサラ・コダマのが有名かもだがリリ様だって悪くないぞ。
声優としては劇場版『クレヨンしんちゃん』の最も内外から評価されている二作(『オトナ帝国』『アッパレ!戦国大合戦』)にてゲストヒロインを演じていることでも有名で、他ならぬ一連の富野作品での演技が当時の原恵一監督に認められての起用だった。
ついでに言うと、当時の富野は毎回の劇場版のクオリティの高さから『キングゲイナー』製作時には「ライバルはクレヨンしんちゃん」と(割と本気で)言っていたので、その意味でも興味深い話である。

【劇中での活躍】

前述のように首都ノックスが陥落して這々の体で逃げ出してきたグエンを助ける形で本格的に登場。
リリ様と共にルジャーナ・ミリシャの面々も登場しており、お馴染みボルジャーノンも画面を彩ることになった。

その後はイングレッサ・ミリシャとルジャーナ・ミリシャが統合されて地球側の軍隊としての体裁が整えられていくと共に司令官的な立場に就いたグエンの補佐……というか、その未来の妻として盛り立てる役を担う。
ナルシストなグエンが大袈裟に自分の境遇を嘆いているのにも一見すると乗ってあげつつ、グエンが本心ではどうしたいのかを的確に見抜いているようで、その一方で物事を軽く見がちなのを然りげ無く諭したり、完全に自分の駒とグエンが(下心込みで)が気楽に考えているローラ(ロラン)が既にグエンの手中に収まるような器ではないと忠告するようなやり取りもしている。

そして、この頃のリリ様の悪行()として知られるのが、グエンの書紀程度で貴族としての家柄も遙かに劣るキエル・ハイムがグエンに意見したことを嗜めると共に恋敵になるかもと危惧したのか、嫌がらせで野戦病院送りにしたエピソード。
……実は、この時のキエルが入れ替わった月の女王ディアナ・ソレルその人なことも含めて、ディアナ様可哀想、リリ○ね……と為りかねない話ではあるのだが、予想外のディアナ様の可愛さや人柄が明らかになる(そして全自動洗濯機∀の勇姿)名編としても有名であり、それを生んだのがリリ様のちょっとした嫉妬からだった訳で……。
まあ、この頃の悪印象なんて後述の通りで遙か彼方に吹っ飛ぶ活躍をするのがリリ様なのだが。

そんな訳で、要所要所で鋭い発言をすることこそあったものの暫くはそんな感じの役割に落ち着いていたものの、リリ様の真価というか本性が見えてくるのは月に渡って以降の終盤までの展開であった。


【終盤での活躍】

流石にお空にぽっかりと浮かぶお月様への道中……となれば、宇宙服を着るのにドレスを脱ごうとしたり、可愛くひっくり返ってみたりと定番の萌えポイントをアピールしていたリリ様だったが、その実は黒歴史が封印されて以降、地球に押し込められていた側の人類が初めて目にする宇宙でのテクノロジーにも順応していく。

因みに、本作のラスボスにして愛されキャラであるギム・ギンガナムを最初にやり込めたのはリリ様。
女王不在の月を守りつつ、ムーンレィス内部に不協和音を生じさせていた原因と目されるアグリッパとの面談を迫りながら放置されていたグエンに助け舟を出し(というか月側の代表であるアグリッパとギンガナムの器を測るためか)、見事にアグリッパとの面談を取り付けている。

前述のように自分を高貴な存在であると信じて疑わないアグリッパもリリ様の魅力には抗えなかったようで、お戯れを経て玉座まで辿り着いた時にはなめ回すような視線で見ていたとか……。うーん。

もはや、自分の言うことも通じなくなったと見切っていたディアナもリリ様の手腕には本心から驚いていたが、それに対して事も無げに「高貴な者同士の気心ってございますのよね」と言い切っている。

そして、その後は黒歴史の真実を開示される中で曾ての科学万能文明の記録に圧倒される下賤な男共とは違い、極めて冷静に「人類って、少しも偉くはございませんのね」と、この時点で黒歴史の(というか『ガンダム』シリーズの)真実を見切ったような発言も残している。
この時に、リリ様の意見に賛同しているのがキエルなのだが、月に来てからのやり取りの中でキエルがディアナと入れ替わっていたことを知り、以前に軽い嫉妬で意地悪した相手が実はディアナと知って気まずい思いをする一方で、そのディアナと入れ替わり見事に代役を務め上げていたキエルの才覚を(恐らくはディアナ以上に)認めていた所でのこの反応だったので、内心では余計に(野心的な意味で)嬉しかったのだろうと思われる。

ここからリリ様無双が続き、

黒歴史の真実を知っても尚も和平の道を歩もうせず、それまでの行動をディアナとキエルから「反逆」と断じられた末に、アグリッパは配下のミドガルドからも見放され続けて粛清される(本人曰く「女王への最後の忠誠」)。だがミドガルドは女王にも非があるとしてディアナとキエルまで撃とうとしたのを見事な射撃(ミドガルドを殺さずに銃のみを撃ち落とす)で阻止。

「ふふ、月の女王様に貸し一つですわね」
(※この後でグエンに心配された後でわざとらしく「熱い」などと言ってるが、絶対に護身用に訓練してましたよね!?)

キエルを本当のパーソナルスペースと呼べる空間に招き入れて個人的な友人同士(●●●●)に。(エピローグでのキエルがディアナになる未来を確実視してた説あり。)

あれだけ媚を売っていたグエンが怪しい動きを始めたのを見切っており、一部の手勢を率いて黒歴史の情報を抜き出した挙げ句にギンガナムと手を結んだことについても冷静に受け止めていた。

地球に戻ってからは大暴れを始めたギンガナム艦隊との戦いに突入する訳だが、やや場違いな雰囲気を演出されつつもギャロップで前線に突入するなどの御姿を披露。
尚、ロランに対して色仕掛けでグエンをたらしこみなさいと、とんでもない発言もかましているが、此れについては冗談なのは勿論だが後述のグエンとの最後のやり取りから女(許嫁)としてグエンに必要とされなかった悔しさもあったと見る向きもある。

結局、ディアナの帰還に伴うディアナ・カウンターとミリシャの合同軍結成やギンガナムの暴走、暴れていた∀の奪還……もあってか戦争は地球側の勝利に傾いた所で抱き込んでいたミハイル大佐達にも遂に見放されたグエンの前に現れたのはやっぱりリリ様。


グエン 「リリ嬢は、私がどん底になると現れますね」

リリ 「もう、日は昇りませんわね」

グエン 「それはわかりません。
人生の最後に成功すればいいことなのですから」

リリ 「その成功も、アメリアがあってこそでしょ」

グエン 「今の私にできるのは、愛するローラの勝利を願うことだけです」

リリ「ローラは男の子です!
そんなにも愛しているなら、ご自分がスカートをお穿きになれば!?」

グエン「スカートを穿いて産業革命を起こせるようになるにはまだ時間が……」


この後、落ちてきたメリーベルと共にわちゃわちゃしつつグエンは去っていくことに。

ここで言い放たれるのが、


リリ「ご機嫌よう〜、アメリアは私がスカートのまま治めますわ〜!!」……なのである。


……何か、深いようでそうでないような的を射ているようでズレているようなやり取りだが、ちゃんと『∀ガンダム』という物語━━ことに、グエン・サード・ラインフォードという男のことを理解できていれば、その思想と生き様がしっかりと現されているのが解る筈。
……この男、純粋なのかもしれないが所詮は夢想家、そしてガチである。



エピローグではディアナと入れ替わり月へと向かうキエル達を見送っており、立ち位置的には地球側の代表とまでなっている。
未だ、立場的には代理とかなのかもしれないが他に替われる人間など居ないだろうし、何よりもディアナ(キエル)がリリ様との対話を望むだろう。

『∀ガンダム』は富野のフェミニズム的思想が中核の一つとなっている物語だが、最終的には月と地球は2人の女王に導かれる形となった……とも言える。
勿論、女は女として望まれて支配者となる形で。


【リリ様名言集】



「沈んだ太陽がもう一度朝日になろうとあがく姿は、面白い見物でしょ?」
「殿方はそういう時が一番素敵」
※落ち目のグエンを評して。
こう言われたらイングレッサ・ミリシャの面々もグエンを見限れないしリリ様を信じてみようと思わざるを得ない。

「まあ〜大きいのに不細工!!」
主役メカに。

「頑張れ~~! ソシエさんとか~~~!
※∀の操縦を会得しようと奮闘する知り合ったばかりのソシエに。

「グエン様、あなたのローラは天使ではございませんね」
「若くてきれいな、豹でございましょ?」
「ええ。お二人ともまだ気付いていらっしゃらないようですけれど、今にあの鋭い爪は、グエン様を引き裂くかもしれませんね」
※リリ様のロラン評……だいたい合ってる。


「ふふ、地球には、高貴な女性を待たせる無礼な殿方はおりませんことよ」
※剛の者であるギンガナムにこの胆力。
この後で足を掴まれて(重力が軽くなっていたとはいえ)軽々と持ち上げられているが、それでもギンガナムが礼節を持っていると見切ってか少しも動じず。

「高貴な者同士の気心ってございますのよね」
※アグリッパをあっさりと懐柔したことに驚くディアナに。

「人類って、少しも偉くはございませんのね」
※黒歴史として記録される繰り返されてきた人類の最終戦争を見て。

「ふふ、月の女王様に貸しひとつですわね」
※余裕でディアナ&キエルを助けて。

「兵隊は命を賭けているのに、命令を出す者が後ろにいられますか!」
※ギャロップで前線に飛び出して。
自分がトップに立った途端にこの有り様である。

「ギンガナムだわ。ムーンレィスって、何でもかんでもお空に映すのよね」
「ギンガナムがそんなに可愛いわけないでしょう!」
※月光蝶を見て。貴女も黒歴史の映像見てましたよね?
そして、ギンガナムの性格を見切っている。

「ごきげんよう~、アメリアは私がスカートのまま治めますわ〜!!」
※グエンとの別れの際に失敗したことを認めず時期尚早だったと言い訳をするグエンに対して、自分ならば今のままで女の立場でも人々を導けると言ってのけたのである。


【余談】


  • 小説では夭逝して死んだことになっている。
    そして、その死を慈しんで名付けられたのが“ボルジャーノン”……という設定。

  • ちなみに小林女史は本作後の2003年1月のTEAM 発砲・B・ZINでの舞台『オス!』にて、男性陣全員が女子セーラー服・女性陣が全員学ランなんてシチュエーションを体験。本当に殿方がスカートを履く姿を一杯見る事になった。脚本と出演を兼任し自らスカートを着たきだつよし氏がリリの事を意識していたかは謎だが。




ギンガナムだわ。ムーンレィスって追記修正もお空に映すのよね。

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最終更新:2025年04月06日 18:42

*1 実際、イングレッサでマウンテンサイクルから機械人形が掘り出されたと聞いた後は自分達でも独自に調査を開始してボルジャーノンを掘り当てている。