登録日:2012/09/26(水) 01:34:19
更新日:2024/09/08 Sun 23:31:21
所要時間:約 6 分で読めます
田口仙年堂の執筆による
ライトノベル。イラストは日向悠二。
ラノベでは珍しい
家族と御近所の絆を主テーマとした
ご町内(ご近所)アットホームファンタジー。
◆概要
エンターブレイン第5回えんため大賞・小説部門受賞作。
同社のライトノベルレーベル「ファミ通文庫」より2004年から2008年までシリーズが続けられた。全15巻。
人気により番外編となる『ガーゴイルおるたなてぃぶ』も執筆された。こちらは外伝を含めて全5巻。
2006年の春期アニメとして4月から6月まで放送されていた。
メイン製作はトライネットエンタテインメント。
音楽はavex。
配給はハピネット。
主題歌「オハヨウ」はFunta作曲の
ほのぼのな神曲で、歌うのは主演(斎藤千和・
水樹奈々・稲村優奈)の三人娘。
プロデューサーは大宮三郎に
あかほりさとる……。
さらに後述する声優陣も勘案すれば紛れもない
鉄壁の布陣であり実際
分割2クールでの企画だったのだ。
当初は。
ちなみにアニメのコンテ集もファミ通文庫より「アニメすぺしゃる」として発刊されたため、シリーズは全巻で21冊となる。
この冊数が現すように00年代中期のファミ通文庫の屋台骨を支えた作品のひとつと言っても過言ではなく、
各巻で繰り広げられる人間ドラマは(綺麗事と笑う奴もいるだろうが)その優しさ故に1冊1回は確実に涙腺崩壊レベル。
そのシリーズの終了は皆から惜しまれた。原作小説は。
◆あらすじ
商店街の福引きで当選の鐘が鳴った。
ご近所に住む小学生の女の子、吉永双葉が当てたのは、
怪しいアンティークショップ「兎轉舎」が提供した「自律式門番型自動石像」という犬の石像。
ソレは突然しゃべりだしたかと思えば双葉の家の門柱に陣取り来客を不審者として攻撃する始末。
当然、激怒する双葉だったが石像との対立の中で互いに理解を深め、そして学んでいく。
そして石像は双葉によって「ガーゴイル」と名付けられ、
彼らが住む街の「最強無敵の守護者」として成長していく。
◆用語解説
錬金術により命を与えられた石像。
様々な光線を放つ「見えざる水銀」、物理的な防御・攻撃を可能とする力場を形成する「触れざる硫黄」、魂を定着させる「魂の塩」の三つの原料で生成される。
体内には
賢者の石の模造品が内蔵されており、半永久的な駆動が可能。
人間だけではなく動物とも意思疎通可能、更に銅像や人形の言葉もわかる。
尋常では無い戦闘力を有する反面、思考回路は四角四面なことが多く天然気味。
錬金術により作られたカラクリ、要するに
ロボットの類。
自動石像に比べて複雑な機構を有しているため整備が面倒な反面、作るのに莫大な金銀やヒヒイロカネ等の希少鉱物が必要な自動石像より安上がり。
◆登場人物
●吉永さん家
CV:
若本規夫
双葉が福引きで当てた門番型自動石像。
生真面目一徹で融通がきかないが、
引き取られた吉永家や近所との触れ合いの中で成長し
漢となっていく。
CV:
斎藤千和
「吉永さん家の凶暴な方」と呼ばれる小学生(1巻の時4年生)の女の子。
元気で活発だが乱暴、
ゲーム好きで夜更かしの常習犯。大の格闘技マニアでドロップキックが得意技。
しかし心優しく正義感にあふれた漢少女でもある。成績もいい。
特に3巻でのハナ子との触れ合いは一見の価値あり。
外見は
佐倉杏子そっくりだが、中の人は
ほむほむ。
CV:宮田幸季
「吉永さん家のおとなしい方」と呼ばれる高校生の
草食系男子。1巻の時高校2年生で、12巻にて大学受験が描かれる。
母譲りの女の子顔が少しコンプレックス。双葉の兄。
CV:中國卓郎
吉永家の大黒柱で営業マン。ベートーベンに
ケンシロウの首から下をくっつけたようなマッチョパパ。
素敵な落ち着きあるパパさんだが時々暴走する。天然すぎて周囲の怒りを買ってしまうこともたまにある。
超酒乱で実はママに匹敵するほどケンカが強い。
CV:浅野るり
無口(原作では1つしかセリフが無い)だが笑顔を絶やさぬ優しいママさん。見た目若すぎ。
ただしイキナリ肉体言語をカマしてくる。具体的にはスープレックスとかスリーパーホールドとか。
怪盗百色のファン。
●百色一味
CV:千葉進歩
世を騒がせる怪盗にして奇術師。
イケメン。
仕事にポリシーを持つ気の良いお兄さん。
ガーゴイルとはライバル関係。
CV:
水樹奈々
実父に錬金術の実験台にされていた薄幸の美少女。日英ハーフ。
非人道的な生体実験により山勘と注意力がずば抜けて高く、
読心術に長ける。
ある事件により怪盗百色に引き取られて双葉の同級生に。
「おるたなてぃぶ」では「怪盗
白色」を名乗る。
アニメでは典型的な美少女キャラとして描写されていた。
が、原作では割とクソガキ度高め
CV:飯島肇
梨々の父・ハミルトン教授に作られた城門破り用自動人形。常に浮遊している。通称首無し
ガンタンク。
両腕が
ガトリング砲になった西洋鎧(の上半身)の姿をしており、胸から放つ突撃杭はガーゴイルの装甲を割る程の威力。
無邪気で純朴。梨々に忠実。
アニメだと声が無機質でちょっと怖い。
名前の由来はハミルトンの故郷スコットランドに伝わる死霊騎士「デュラハン」から。
●錬金術関連
CV:
桑島法子
本名・
高原イヨ。ガーゴイルの制作者の一人にして日本最高峰の錬金術師。
桑島だが不老不死。しかし実は子持ちの未亡人。
桑島と同じく東北出身で
宮沢賢治は友人である。
青龍刀をぶん回し年甲斐なくはっちゃけるが、その実は思慮深い人物。
大東亜戦争から戦後をくぐり抜けた生き様は伊達ではない。
アニメでは蛯原友里のコスプレも披露していた
そりゃバストだけはそっくりだけど歳考えろ歳を
CV:菊池正美
日本を代表するコングロマリッド、トーグーグループの中核企業、トーグーエレクトロニクスの若き社長。実は錬金術師。
イヨを超える事を目標にしているが肝心のイヨからはパシリにされ、オマケに姪(「おるたなてぃぶ」の主人公)が可愛くて仕方ない姪バカという、
残念なイケメンにしてシリーズ随一の
ネタキャラ。
CV:岡野浩介
天祢が祖父の研究から完成させた
金獅子型自動石像。
慇懃無礼なナルシストで、天祢に忠実だが気位高く、
猫獅子と犬だけあってガーゴイルを小馬鹿にする。
一応、ガーゴイルの
ライバル……つかケンカ仲間。
心理ステルス機能による攪乱、超音波による物質破壊などの搦め手に長ける。
名前の由来は天使の第二階級「智天使」であり、当初はガーゴイルからクソ天使呼ばわりされていた。
東宮電機(トーグーの前身)が開発した、ケルプのプロトタイプである銀豹型自動石像。
太平洋戦争中に祖国防衛の為実践投入された
兵器であり、劇中唯一完全な軍事目的で使用された錬金術の産物。
アメリカ軍の
B-29爆撃機を撃墜して回るも、重爆を受け続け大破、戦死する。
東宮電機が
軍と結託し非人道的兵器を錬金術で作ろうとしていたことが露見したことで、イヨは東宮と完全に袂を分かつ結果となる。
名前の由来は天使の第四階級「主天使」。戦時中に英語で名前を付けてよかったんだろうか?
CV:中國卓郎
エジプトからやって来た植物学者にして錬金術師。
砂漠に負けない植物を創るため、なぜかガーゴイルに挑む。
アニメでは訛ってガーゴイルを「カゴイールさん」と呼ぶが原作では訛らず普通に呼ぶ。
「おるたなてぃぶ」では本編以上に大活躍する。
訛ってるせいと民族的な衣装で変人に見えるが、ものすごく常識人で素晴らしく良い人。
CV:浅野るり
ヒッシャムが錬金術で創造した万能植物。食用だが無茶苦茶戦闘力が高い。体液は万能薬になる。
性格は悪い意味で姫様。
元々は
ビオランテのような気色悪い姿だったが、一度死んで生き返った後は上半身が巨乳美女の姿になった。
地中を穿孔する、毒液を作る、全身を斬り裂かれてもすぐに復活するなど器用さはガーゴイル以上かもしれない。
デュラハンと仲が悪い。
CV:岡野浩介
南米発祥の邪教「ツァコル教」教祖の、隻眼の催眠術師。
錬金術を用いて犯罪を行っており、過去に百色により組織を壊滅され復讐を誓う。
初登場8巻及びそれを原作としたアニメ版では単なる小悪党であったが、
原作小説では護送中に脱走し、錬金術とは別系統の古科学を治めた秘密結社ミヅチを結成。
自動石像ケツァルコアトルを作り出し、命を共有することで不死身の肉体となり本作のラスボスとして御色町を蹂躙する。
●御色町の人々
CV:稲村優奈
双葉・梨々の級友で心優しい常識人。
盲目の父とその盲導犬であるエイバリー少尉(後に中尉)と暮らしている。
家族仲は良好。
髪の色がド紫だが特に誰も突っ込んでいない。まあお姉さんもド青だし今更突っ込むまでも無いのかも。
原作では1巻第4話で主役を飾った以降は脇キャラだが、アニメでは第1話でいきなり同エピソードが再現され、メインキャラの一人として登場する。
CV:風間勇刀
御色署の刑事部長。ガーゴイルと共に百色を追いかけ回すのが日常。
ちなみに原作とアニメでは全く外見が異なるというか、
同姓同名の別人。
名前の由来は維新志士で、
新選組を作ろうとした張本人の清河八郎。
CV:儀武ゆう子
双葉の悪友。超美形のショタだが
上条当麻ばりのトゲ頭で素行がアホ丸出しのため全くモテない。
実家は薬局で、行き倒れていた梨々を介抱した。
ちなみに友人に島崎勝太という真面目な少年と、藤原宗次郎というすごいバカがいる。アニメではモブだったが。
この三人の名前でピンときた読者も多かったが、8巻口絵で
元ネタが公表された。(まあ菊一文字の名前が最大のヒントだよね)
★アニメ顛末
これだけの人気作を原作として、ここまでの布陣を敷きながら、企画の蓋を開ければ
大赤字という憂き目にあってしまった。
そのために企画は急遽中止。各社に企画から撤退され、予定されていた第2期は幻と消えた。
原作の雰囲気をしっかりトレース、時に原作以上というハートフルな作風を守り品質もまずまず……だったのだが
アッサリとポシャった。
理由は
妥協しなさすぎた製作ゆえに
そこそこ程度のヒットでは回収不可能だったトコロへ、
同期作にあの『
ハルヒ』をぶつけられて
話題と人気を一気に吸い上げられたため、と言われる。
相手が全力であろうとなかろうと角川本体と対抗するには資本と戦略の物量が違いすぎたのだ。
そもそも角川本体レベルの会社の言う「ヒット」は他の一般出版社が認識する「ヒット」とは
ケタが違い過ぎる事も考慮せねばならない。
またガチでニチアサな作風を独立U局の深夜アニメでやった、というのも影響したとも言われる。
マーケティングの重要性を視点に置けなかった製作費管理の甘さが最大の原因だと言われれば、
その通りなのだが……
そうでなければここまでのモノは作れなかったろう。
頑張って名作レベルまで仕上げ作品としては評価も上々だったのに逆にソレが仇になったかの如きハルヒの来襲。
まさしく
どうしてこうなったと言うのは本作ファンと作者・プロデューサーの
魂の叫びであろう。
結果、この一件のせいで
いいものを作れば売れるというのが
下らない幻想であると証明してしまった作品でもある。
大手のバックアップの無い零細が名作を作ろうと思ってはいけないのか……?
「む。貴様何者だ。この項目を追記・修正するならば名を名乗り身の証を立てよ。さもなくば」
「何しやがる、石っころ!」
「悪ィな。しっかり追記・修正してやってくれ」
- ガチでニチアサwwww普通に全日でやりゃよかったのにとは思ってたな。アニメ放送当時はうちの学校の図書館でも貸出数が五指に入るレベルだったし -- 名無しさん (2014-02-21 01:58:58)
- 「世界中でオハヨウ言えば♪」…深夜のテーマとしてはどうかと思った。話はつまらなくなかったけど、いかんせん地味でした。 -- 名無しさん (2014-07-11 07:03:09)
- 角川翼文庫で再販されてたけど、イラストの日向さんが頭打ったとしか思えないくらい絵柄かわってたな -- 名無しさん (2014-09-14 22:08:32)
- 良くも悪くも深夜アニメっぽくなかった。朝か夕方にやれば違う結果になったかもしれないけど、枠が高いからな…。 -- 名無しさん (2014-09-26 16:17:14)
- 分割2クールならガーゴイル創世記、幽霊騒動、VS喜一郎辺りまでやる予定だったのだろうか -- 名無しさん (2015-07-14 02:24:54)
- NHKで土曜の夕方やってもいい内容だったよね -- 名無しさん (2015-10-18 16:12:29)
- 原作もアニメも大好きだったが、まさか経済的な事情があったとは……まあ、良作だとは思うけどSAOやはがないみたいな大流行になるタイプじゃないとは思うしね -- 名無しさん (2016-03-05 14:06:31)
- まあ深夜アニメではなかったな・・・昨今流行りの萌えしかないあれやこれやの枠全部潰して一年かけてこれやれよってぐらい「子供に読ませたいラノベ」してたんだけど -- 名無しさん (2017-07-11 18:29:25)
- 昨今のリバイバルブームにのっとってまたアニメ化してくれないかな…ケツァルコアトル編まで -- 名無しさん (2018-11-17 18:39:36)
- ハルヒがまるで悪者のように言われてるけどあっちも相当気合入った企画だったからねえ ちなみにハルヒと本作は共に角川つばさ文庫に収録されていて今では同じレーベルのお仲間だったりする -- 名無しさん (2020-01-05 22:31:35)
最終更新:2024年09月08日 23:31