Harmonia -ハルモニア-(キネティックノベル)

登録日:2025/03/30 (日) 00:20:01
更新日:2025/05/15 Thu 00:21:44
所要時間約 10 分で読めるから、それまでみんなのために歌いたいな。




届けたい。

その全てを歌に乗せて、明日へと…。

画像1

画像1の出典:Steamの「Harmonia Full HD Edition」のプロモーション動画より
サイト閲覧日:2025年3月29日


Harmonia(ハルモニア)
You taught me how important feelings are.
There is an everlasting song.





Harmonia -ハルモニア-は、ビジュアルアーツのブランド•keyが制作したキネティックノベル*1である。同社が主催するキネティックノベルとしては第2弾であり、Keyの15周年記念タイトルとして発売された。海外版から先行販売された唯一の作品である。
感動作として日本のみならず世界で好評を博している。

開発元 VISUAL ARTS/key
発売元 VISUAL ARTS(Steam、PC版)
プロトタイプ(Nintendo Switch版)
ジャンル キネティックノベル
発売日 2016年9月23日(Steamの海外版)
2016年12月29日(PC版、C91にて発売)
2017年5月26日(PC版、特典付き)
2019年4月26日(PC版、特典無し)
2022年10月20日(Nintendo Switch版)
2024年4月24日(Steam版、フルHD対応)
対象年齢 Steam、PC版
EOCS:全年齢対象
Switch版
CERO:B(12才以上対象)
プレイ人数 1人



概要

機械の少年と、彼を助けた少女、町の図書館に住む少女が心を通わせていくSFノベル。キネティックノベル第1弾の『planetarian ~ちいさなほしのゆめ~』と世界観は類似しており、戦争により荒廃した世界が舞台である。
「感情」•「音楽」が物語の主なテーマとなっており、作中で重要な伏線となっている。
プレイ中に選択肢は一切なく、小説のページを捲るように物語を読み進めていく。町の穏やかな日常生活も描写されるため、前作の『planetarian』と比較すると、荒廃した世界が強調されていない分ややマイルドな作風かと思われる。ただし、中盤から終盤にかけての劇的な展開、主人公と世界に関連する怒涛の伏線回収は必見ものである。

中村綴氏の『届けたいメロディ』という作品が本作の原案である。この作品はビジュアルアーツが主催した「キネティックノベル大賞」の新人賞に応募されたもので、惜しくも受賞とならなかった。だが作品の出来を惜しんだ同社の馬場隆博社長の働きかけもあり、ブラッシュアップされる形でゲーム化企画がスタート。大幅に加筆修正を加えた上で発売の運びとなった。

尚、本作を最後に原画担当の樋上いたる氏がビジュアルアーツを退職した。そのため、keyのゲームでいたる絵が見られる最後の作品となった。

発売

2025年時点で、発売ハードはSteam版、PC(DVD-ROM)版、Switch版がある。海外版を除いて、テキストは日本語英語、中国語(簡体字)の3言語に対応。ただし、ボイスは日本語のみ。
先行販売としてSteamにて2016年9月23日に海外版から配信が開始された。次いで日本では、2016年12月29日のコミックマーケット91で発売が開始され、2017年5月26日から一般販売された。
2019年4月26日には、特典なしの通常版が発売開始された。

Nintendo Switch版も2022年10月20日にプロトタイプ社より発売された。
Switch版では、これまでボイス付きのシオナ、ティピィ、マッドは勿論、主人公のレイやサブキャラクターにも声がついたフルボイスとなった。ボタン一つで巻き戻し•早送りも自由自在、コントローラ操作だけでなくタッチ操作にも対応し、携帯機で手軽に物語を楽しむことができる。

さらに2024年4月24日、「Harmonia Full HD Edition」がSteamで発売された。Switch版に準拠しており、フルボイス仕様。さらにFHDの解像度に対応している。タブレットPCやSteam Deckではタッチ操作が可能となった。加えて、Steam版では初めてテキストが日本語に対応している。環境設定やデジタルマニュアルも日本語•英語•中国語(簡体字) の3言語に対応しており、プレイ中いつでも言語の切り替えが可能となっている。

ストーリー


遠い未来の話。
大きな戦争で、地球が大きな傷を負っていた。
大気は灰色に汚れ、大地では生命の芽吹きが途絶え、水は干上がっている。
そして人口は最盛期の頃より大きく数を減らしていた。
ニンゲンたちは、その日を生きるために身を寄せ合っていた。
そんな時代の中、感情人形「フィロイド」と呼ばれるロボットが、朽ちた施設で目を覚ました。
戦争前の人類科学の結晶で、文字通り感情機能を持つ人型のロボットだ。
ニンゲンの新たなパートナーとして、生活をよりよいものにしていくと約束されていた存在。
しかし、目覚めたフィロイドは、すぐに自分の感情機能の欠落に気づく。
製作途中で放置されていたのであろう、右手も人工皮膚に覆われておらず機械の骨格が剥き出しだった。
少年型のフィロイドは、本能的にニンゲンを求めた。
そして自分に欠落している感情を得るため、荒廃した世界を歩き続ける。
そんなある日、フィロイドはひとりの少女に拾われた。
少女は彼のことをニンゲンだと思い丁寧に介抱してくれる。
小さいけれど温かな町。
フィロイドの少年は、少女との生活の中で徐々に感情を学んでいく。

(Harmonia公式サイトより引用)

登場人物


レイ

CV:西谷亮(Switch版)

画像2

画像2〜5の出典:発売元プロトタイプの「Harmonia(Nintendo Switch版)」の公式ウェブサイトより
サイト閲覧日:2025年3月29日

感情機能が欠落した機械の少年

主人公。廃工場のような施設の中で目覚めた機械の少年。「フィロイド」の本能からニンゲンを探し、荒廃した世界を彷徨って行き倒れたところをシオナに助けられる。それ以来ニンゲンの為に役立とうと奮闘する。ティピィほどではないが知識の吸収力は優秀で、図書館の本の内容を短期間で覚えて、機械製品を修復するスキルを得た。
右手が機械剥き出しであり、人工皮膚に覆われていない。それを人目から隠すため、常に手袋をしている。
レイという名前は、シオナが付けてくれた。シオナや町の人々と交流するうちに、ニンゲンの感情を学んでゆく。

「優しさとかそういうのじゃないんだ。ただ、それが僕の役目だと思っているだけなんだ」

シオナ


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想いを歌に乗せる少女

行き倒れていたレイを助けた少女。ポケモンのシンオウチャンピオンではない。
町の教会に住み、聖女のような出立ちをしている。心優しい性格で、常に微笑みを絶やすことなく、周囲に安らぎを与え続けている。そのため町の人々からの人望も厚い。人の気持ちや感情を伝えるのに、色や擬態語を用いた独特な表現を用いる。ポワポワスープはファンの間では有名。
歌を歌うことが好きで、教会や町の広場でよく歌う。音楽家の兄がいるらしく、兄の音楽が入ったオルゴールを大切にしている。オルゴールは物語当初は壊れていたが、レイに治してもらった。それ以来町の広場に繰り出しては、オルゴールのメロディと共に町の人々に歌声を届け、『喜び』を与え続けている。
人々のために奮闘するレイの身を常に心配している。

「おかえりなさい」

「とってもとっても嬉しいな。心の中が丸くてオレンジ色だよ」

ティピィ


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図書館の青い少女

町にある図書館の奥に住んでいる少女。ロリータ。クマのぬいぐるみを肌身離さず持ち、毎日絵を描いている。シオナは彼女のことを「青い子」と表現する。
なぜかずっと泣き続けている。レイも放っておけず、定期的に彼女に会いに来るようになる。
司書の役割を1人でこなす。館内の本の位置を正確に把握し、レイが探す本を見つけてくれる。博覧強記でもあり、難解な本の内容も誦じる。

「人体を構成する骨は約206個存在し、頭部から後頭骨、前頭骨、側頭骨、頭頂骨、蝶形骨、篩骨、槌骨、砧骨、鐙骨、下鼻甲介、涙骨、鼻骨、鋤骨、上顎骨、口蓋骨、頬骨、下顎骨、舌骨、etc.」

「3.14159265358979323846264338327950288419716939……」

「万物は有限で、魂さえその例外ではない。魂が枯渇した後生まれ落ちる子どもは、無魂の器であるだろう。エドワード=モルグ」

積極的に外に出ようとはせず、図書館に閉じこもるように過ごしている。町の人たちも彼女の存在を知っているものの、あまり近づこうとはしない。悲しみに暮れている反面、時折冷静な様子も見せているが…

「ティピィね、ほんをならべていたの。えらいでしょ?えらい?」

「ねえ、レイ、きょうはどんなほんをさがしにきたの?」

マッド


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画像2〜5の出典:発売元プロトタイプの「Harmonia(Nintendo Switch版)」の公式ウェブサイトより
サイト閲覧日:2025年3月29日

町の雑貨屋の店主

町で雑貨屋を営む強面の男。ぶっきらぼうな口調で話す。
シオナ曰く「赤くてチクチクしている人」
屈強な身体に似合わず、細かな作業を得意とする。廃工場のゴミ捨て場で壊れた道具を発掘しては修理して売っている。店の品揃えはとても充実しているようだ。
だが些細なことでもすぐに怒り、客に対しても基本的に喧嘩腰で応対するので接客態度は良くない。一例を挙げると

「あの……マッドさん?」

「お、おおう、何の用だ?*2おまえ、なんで勝手に入ってきた?」

「勝手にというか、お店だから入るのは自由なんじゃ……」

「ふざけるな!俺の許可なしで店に入るとは不埒な野郎だ!!」

といった具合である。よく経営が成り立つものだ。
シオナはマッドの言葉が翻訳?できるらしく、レイに意図を伝えてくれる。

+ 翻訳された言葉
「二度と来るなと言ったはずだ……」
「『そこまで言うのなら許してやる』って意味だから」


「それで、おまえら何の用だ?」
「『いらっしゃいませ、何かご用ですか?』だよ」


「まさか、用もないのに来たわけじゃないだろうな?」
『せっかく来てくれたから、ゆっくり見ていってください』


「おっと……おまえら絶対に、その棚には近寄るんじゃねえぞ?いいな」
『本日のおすすめは棚の中です。ご自由にご覧ください』


「シオナ……絶対違うって。マッドさん怒ってるって。もう帰ろうよ」
(表情と言葉が全く合っていないよ…)


家出していった息子がいるようで、どことなく哀愁漂う節もある。
「また来たのか!何しに来やがった!」

スタッフ


音楽

メインテーマ

  • 「届けたいメロディ」
作詞:魁
作曲:折戸伸治
歌:北沢綾香
編曲:塚越雄一郎(NanosizeMir)

挿入歌

  • 「永遠の星へ」
作詞:魁
作曲:竹下智博
歌:霧月はるか
編曲:Meeon

終盤に1度だけ、絶妙なタイミングに声付きで流れる。名シーンなので必見。

余談

  • Harmoniaはギリシア語で「調和」。


  • 一般販売が開始された2017年5月26日には『永遠の星へ』のメロディが流れるオルゴールや、書き下ろし小説が掲載されたブックレット「千年図書館」等が付属する6大特典が付いた初回限定版が発売された。C91版の購入者向けに、特典のみのセットも同時に発売された。

  • 海外版発売後当初は、外国語のテキストを翻訳サイトで訳したり、辞書を引いたりして読んでいた日本ユーザーも存在したが、しばらくしてテキストの日本語化パッチが非公認ながら公開されたので、日本語でのプレイも可能となった。

  • 英語版のままプレイすると、学校では滅多にお目にかかれない日常生活にそのまま使うのは難しいネイティブ表現が意外と良い学習教材になる。特にその密度が高いキャラはマッドである。*3

  • ゲームをクリア(読了)するとタイトル画面が大きく変化し、そこで流れるBGMも別のものに差し代わる。クリア後に相応しい調べであり、実に感慨深い余韻に浸ることだろう。

  • 2015年4月11日、12日に行われたライブイベント「KSL Live World way to the Angel Beats! -1st-」にて、立華奏とシオナが並んでプリントされたパンフレット、Tシャツ、クリアポスターが販売された。パンフレットにはAngel Beats! -1st beat-やHarmonia -ハルモニア-といった作品の情報が掲載されている。また、Harmoniaの主題歌CDも販売された。

  • 2022年12月に開催されたビジュアルアーツの「VA冬フェス」において、一部の販売品に付属した『Kinetic Novel robot trilogy arrange album “JUKEMATA”』というアルバムに、『planetarian』•『Harmonia -ハルモニア-』•『終のステラ』の楽曲がアレンジされて収録された。これらの作品はキネティックノベルのロボット三部作として扱われている。



追記•修正は、ポワポワスープを飲んで調和の世界を実現させてからお願いします。


この項目が面白かったなら……\ポワポワ〜/

最終更新:2025年05月15日 00:21

*1 ストーリー上の選択肢が皆無、あるいは極力少なくしており、ゲームというより対話式要素を盛り込んだ小説に近い作品。

*2 このとき、マッドは思い入れのある四角形のチップをじっと見つめて物思いに耽っており、レイから呼ばれて我に返り、慌てて取り繕った。

*3 例えば、時計を壊した翌日に謝りに来たレイに対して「なんて野郎だ/"You're a real piece of work."」と言ってくる。piece of work は作品という意味だが、人に対して使った場合は、「不愉快な」、「厄介な」といったネガティブな意味になる。その上で頼み事までしてくるレイに対して、「良い度胸しているな/"You have some nerve."」とぼやく。