登録日:2025/04/16 Wed 11:00:00
更新日:2025/04/29 Tue 21:06:45
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「これがわたしたちの流儀よ。個々人は死ぬでしょうけれど、シスは永遠に続く」
【人物】
◆風貌
金髪碧眼の美女。
癖毛らしく、特に少女時代は貧しい生活だったこともあり、鳥の巣のようにボサボサだった。
少女時代から片鱗はあったが、成人するととてつもない美女へと成長し、通りがかった人たちが見蕩れたり、ついつい二度見したりするほどだった。
もっとも、ザナー本人は「闇に潜伏するシス卿」であり「誰にも気付かれないようにする」ぐらいの心持ちでいたため、美人過ぎて却って注目されるこの容姿にはむしろ困っていたらしい。
いちおう対策として、できる限り地味な服装をしてみたり、フォースを調節して地味な気配をまとってみたりといろいろ試行錯誤したのだが、素が美人なのであまり効果はなかったようだ。贅沢な悩みである。
まあ、政治家の愛人として潜り込む時などはこの容姿も役に立っていたが。
ちなみに左利き。
◆性格
「今死なれては困ります。教わるべきことが沢山あるのです!」
少女時代のザナーはむしろ臆病で、フォースの素質があっても、それを使いこなすことができなかった。
「ルーサンの戦い」の時期にはジェダイのスカウトマンが彼女たちの村を訪れたが、従兄弟たちがフォースを使いすぐに抜擢されたのに対して、ザナーは「素質無し」として置いて行かれるところだった。
「ルーサンの戦い」に巻き込まれ、戦争のすさまじさを体験し、親しくなった霊獣をジェダイに殺されてからは暗黒面に開眼、ジェダイを殺害。その後、呆然としていたところをダース・ベインに見初められて、シスの弟子となった。
ただ、闇落ちしたとは言ってもアナキンのように憎悪で暴走したのは、上記のジェダイを殺した一度だけで、その後はルーサンを出るまでむしろ悲しみに沈んでいた。
ベインに挑もうとした従兄のダロヴィットを、右手を破裂させるという方法で妨害した際には、「なぜ妨害した?」と尋ねるベインに「死んでも喜びも楽しみもないから」と悲しげに答えていた。
成長してからは、冷静さと狡猾さ、そして繊細さを兼ね備えるようになった。
当然、シスの暗黒卿である以上、いくらでも冷酷になれる。
かつては命を救った従兄ダロヴィットに対しても、最後はジェダイから身を隠すための囮として切り捨てた。
一方、知識欲と向上心は旺盛で、ベインの指導を熱心に学び、また彼が与えるホロクロンの知識もよく学んだ。
ベインはあくまで「シスの師弟」という関係のみを持っていたが、ザナーは内心で「本当の親子というのはどんなものかしら」と思うこともあったらしい。
ザナーがベインを父親とまで思っていたかは実のところ曖昧だが、少なくとも師匠としては尊敬しており、彼が寄生虫オーバリスクの毒素で倒れて瀕死になった際には、彼を助けるために奔走した。
もちろんシスの暗黒卿として学ぶべきことがあるからであり、全て学び終えたらそのときこそベインを殺すと誓っていたが、それはそれで、ベインの理想をよく理解し実現しようとしていたのであり、彼女の真摯さの表徴と言えるかもしれない。
また、シスとしての素性を隠す必要もあったが、
普段は知的で、それなりに友好的な人物としても知られていた。
ベインより若いという事情もあるが、一時期はベインや弟子候補にした
ダークジェダイの内心を読み取れず、的外れな行動に出たり、出し抜かれたりしたことも。
◆能力
「防御だけでは敵を倒せません」
「ドジェム=ソなど攻撃重視のフォームには、強靱な肉体が求められる。お前には無理だ。敵に勝つには、素早さと狡猾さ、そして何よりも忍耐が必要だ」
シスの暗黒卿をたった二人で背負っただけあり、
フォースにも
ライトセーバーにも通暁する。
使用するライトセーバーは、長い柄の両端から光刃を発する、ダブルブレード・ライトセーバー。
ライトセーバーの剣術フォームは特に防御向けの「ソレス」に熟達した。
彼女の防御は時に
「鉄壁」とまで称され、相手が長期戦で体力を消耗したり、攻めあぐねて苛ついたりした瞬間に、一瞬の隙を突いて反撃する、と言う戦法を得意とする。
ただ、防御はうまいが攻撃は不得手で、一度ベインと戦った際には、相手がライトセーバーをなくしていたにも関わらず、彼女のほうが攻めあぐねてしまっている。
また、筋力・体格に劣る女性という条件はやはりライトセーバー戦においては不利で、本人が望んでいたドジェム=ソはパワー不足から断念せざるを得ず、そもそも柄が長くて被弾しやすいダブルブレード・ライトセーバーを選択したのも、時には薙刀のように振り回して遠心力を生じさせたり、長い柄を両手の間隔を広げて握り込むことで(言わばテコの原理で)力を出せるようにしたりして、非力さを少しでもカバーするためだったらしい。
直接の師匠で、太刀筋も身体能力も全て知られているというのもあるが、ベインとの決闘では圧倒的なパワー差が出てしまい、ほとんど一方的に圧されていた。
彼女の本領は、むしろライトセーバーよりもフォースの法術にある。
まだフォースの訓練を受ける前の、しかも引っ込み思案でフォースをまともに扱えなかった時期でさえ、危機的な状況に陥った際にフォースの
バリアを展開して身を守っていたらしい様子が散見される。
ベインの指導を受けて成長してからはこれらの法術はさらに巧みになった。
自分自身やベインの暗黒面の気配を完全に隠匿したり、ライトサイドのフォースをまとってジェダイに扮装したりといった芸当ができ、何度もジェダイの眼をかいくぐった。
彼女の隠蔽の術は非常に強力かつ長期間続き、ダース・コグナスがサイコメトリーの能力を使った際には、十年前にザナーの掛けた隠蔽の術を破れず、記憶が辿れなかったことがある。
マインドトリックを発展・強化して、相手を狂人にしたり、暴走させたりと言った芸当も可能。
ある相手に使用した際には、狂気のあまり自分の目玉をほじくり返して死んでしまったという。
特にこの技はザナーのオリジナルと言えるもので、似た使い手さえほとんどいない。
【生涯】
◆前歴
「やったね、トムキャット!」
出身地は惑星ソモフ・リト、種族は人間。BBY1010に生まれ、従兄弟のダロヴィット、ハーディン、ルートと四人で一緒に暮らしていた。
彼らには本名とは別にニックネームを名乗る習慣があって、ザナーは「レイン」を名乗りとしていた。ちなみに、ダロヴィットは「トムキャット」。
当時、レインは従兄弟たちと違って、フォース感応者としての素質を見せていなかった。
そのため、シスと戦う戦力を求めていたジェダイのスカウトマンが来た際も、ダロヴィットたちは勧誘したが、レインは当初置いていくつもりだった。
しかし、当時十歳の彼らは一人だけ置いていくことは嫌がった。ダロヴィットの交渉や、仲間の助力でなんとかフォースを使えたこともあり、レインも加えた四人がジェダイ騎士団にスカウトされる運びとなった。
しかし、彼女たちの行き先はコルサントではなく、戦場、それもシス卿との最前線である惑星ルーサンだった。
共和国軍の船は、ルーサンに着くやいなやシス帝国の戦闘機部隊に襲われ、被弾。
壁が壊れた宇宙船から、レインは地上へと投げ出されてしまった。
ダロヴィットたちは
「レインが死んだ」と悲嘆に暮れたが、実は彼女はルーサンの現住生物
「バウンサー」に助けられていた。
緑色をした、宙を浮かぶ毛髪の塊というか、動物と言うより
妖怪のような生き物だが、テレパシーで会話する能力を持った生物で、そのバウンサーとレインはすぐに親しくなり、名前も「ラア」だと教えてもらった。
◆ダース・ベインとの出会い
「私が誰か、分かっているのか?」
「シスよね」
「恐れないのか」
「ええ」
「私は多くの命を奪ってきた。男も女も……子供でさえもだ」
「わたしも人殺しよ」
しかし、レインとラアがルーサンを散策しているあいだにも、ジェダイ騎士団の武闘派「光明軍団」とシス帝国の首脳部「暗黒同胞団」は血みどろの戦争を続けていた。
ついには「暗黒同胞団」が大規模なフォースの術を使い、光明軍団の陣地一面を焼き払った。
この際、バウンサーたちは
大きな精神的悪影響を受けた。
もともと彼らはフォース感応種族で、ライトサイドの強い世界では優しい感情を持つが、ダークサイドが強くなると暗い感情を持ち、その感情をテレパシーで発信していくようになる。
そして、ジェダイとシスの際限ない戦争で、ルーサンが荒廃するに及び、多くのバウンサーが
闇堕ち。フォースを通じたテレパシーで、苦痛と死のイメージをジェダイの傷病兵たちに吹き込むようになってしまった。
ジェダイはやむなくバウンサーの駆除に乗り出したが、彼らはその過程で、まだ闇落ちしていなかったラアをも「駆除」してしまう。
「親友」を目の前で殺されたレインは、悲しみと苦痛に浸るとともに「親友を殺した」ジェダイ二名をフォースグリップで縊り殺した。
さらに、その場面を
シスの暗黒卿ダース・ベインに目撃された。
ベインは、彼女には暗黒面の素質があると気づき、彼女を弟子に迎えた。
彼女は本名を名乗り、ベインがシスの称号を与え
「ダース・ザナー」となった。
「ルーサンの戦い」は、暗黒同胞団の首領
スケア・カーンが
思念爆弾を使ったことで決着した。
ベインがザナーを連れて爆心地に赴き、残った銀色の球体を検分したところ、彼女たちの他に数少ない生き残りとなった従兄弟の少年、ダロヴィットも現れた。
ダロヴィットは「レイン」をシスから救うべく、赤い光刃のライトセーバーを起動して襲いかかったが、ベインが殺す気だと感じたザナーは突如、
フォースでダロヴィットの右手を破裂させた。
これは、ザナーがダロヴィットを死なせたくなかったがゆえの行動だったが、ベインは彼女のその意向を汲んでか、ダロヴィットを見逃して新弟子を連れて、ルーサンを去った。
◆最初の試練
「オンダロンへ向かえ。十日後にそこで落ち合おう。私は惑星ディクサンでフリードン・ナッドの墓を探してから向かう」
「でも、どうやってそこまで?」
「お前は我が教団の後継者として選ばれた者だ。然るべき方法を見つけるだろう」
「もし見つけられなかったら?」
「そのときはお前が後継者にふさわしくないことが証明される。私は別の弟子を探すだろう」
ベインがザナーに課した最初の試練は「惑星ルーサンから惑星オンダロンまで自力で行き着くこと。期限は十日以内」というものだった。
ザナーは当時十歳、一人旅も初めてで憤慨したが、今さらどうしようもない。
彼女は偶然、ルーサンを訪れた旅行者の家族に拾われた。
彼らはザナーを戦災孤児と誤認、銀河共和国に引き渡して、面倒を見てもらおうと考えていた。
実際、ザナーは悩んだ。このまま彼らの手を取れば、共和国の元で平和な暮らしができるかもしれない、と言う思いが過った。
しかし、その旅行者一家の末子がザナーに「一緒に行こう」と手を差し伸べた時、ザナーが感じたのは嫌悪感だった。
ザナーは、その一家が自分に提示する「平和」というものが、砂上の楼閣、すぐに崩れ去るモノに過ぎないと直観した。彼らの「母」が共和国兵士で、このシス戦争で戦死していたこともまた、ザナーに「平和というものの脆さ」を理解させた。
ザナーは、暗黒面のフォースを発動させて家族全員を殺害。直後には自分のしでかした罪業に嘔吐したが、それも堪えて、そのまま船を惑星オンダロンに向けた。
オンダロンでは降りて早々に原住民の武闘派集団に襲われるが、フォースで抵抗するうちにダース・ベインが到着、原住民を殲滅した。
当時ベインはオーバリスクの鎧を身につけており、その圧倒的に防御力とパワーは幼いザナーに強烈な印象を与えた。
また、ベインもザナーが最初の試験を見事こなしたことを賞賛。以後は本格的に鍛えることにした。
◆ベインの弟子
「今日はマスターから二つ学びました」
ベインとザナーの修行は、
惑星アンブリアで行われた。かつてベインが女シス卿
ギサニーと落ち合い、毒入りのキスを食らって死にかけた惑星である。
この星はフォースが弱く、実際そのせいでベインも死にかけたのだが、彼はあえてこの場所を選んだ。
ダース・ベインは、ジェダイへの敵視はやめないが、今すぐに戦うのではなく、何世代にもわたって潜伏し、実力を付け直すことを決めていた。
そのため、ザナーにはフォースの法術やライトセーバーの剣術に加えて、秘密を守る方法や、周囲の人間や生き物を操る狡猾さ、忍耐、そしてシスとしての創意工夫の仕方などを教え込んだ。
ザナーが14歳になるころには、ベインがその昔手に入れた、古代シス卿フリードン・ナッドのホロクロンからシスの魔術に関する膨大な知識を得た。
ベイン曰く「私はシスの魔術には疎い」とのことで、言わば自分が教えられないジャンルの知識をホロクロンから学ばせたらしい。意外と素直というか謙虚というか。
彼女が自分専用のダブルブレード=ライトセーバーを作ったのもこの時期である。
ザナーが20歳になるころには、彼女はただ教えを受けるだけではなく、ベインの命令を受けて現地に赴き、陰謀を巡らせてシスの教えを実践するレベルまでになっていた。
一つには「虫が皮膚に食らいついて構築する」というオーバリスクの鎧を脱ぐことができず、どう足掻いても目立ちすぎるベインには、潜伏すら困難になってしまったためである。
ザナーはよく働き、共和国とジェダイに不和の種を撒いていった。
ザナーはザナーで、成長するに伴い誰もが見蕩れるほどの美人に育ってしまい、これはこれで目を引くので潜伏が難しかったのだが、政治家の愛人として潜り込むなどの役には立ったという。
ある時ザナーは、
惑星セレノーの反共和国グループと接触、共和国最高議長
ターサス・ヴァローラムの誘拐計画に関与した。
誘拐グループは護衛の
ジェダイに殺されたが、ザナーはもちろんジェダイに見つかることなく脱出した。
……が、トラブルから彼女の素性が時のセレノー伯爵・
ヘットンに露見してしまう。
ヘットンはシスに加わりたいと願い、30年間近くにもわたって暗黒面の遺物や知識を収集してきた。
その「知識」の中には、古代シス卿
ベライア・ダーズの遺跡の場所もあった。ベライア・ダーズはシスのホロクロンを初めて作成した人物で、しかもベインはホロクロン作成方法を知らなかったため、この情報は価値が高いとザナーは見た。
結局、ザナーはヘットンとその衛兵八人を連れて、ベインが待つ惑星アンブリアに帰還した。
ところが、ヘットンはベインを見つけると「シスに取って代わる」と言う野心を爆発させ、部下とともに襲いかかった。そしてザナーは、それを傍観した。
結果はまあ当然ながらダース・ベインが全員返り討ちにするのだが、ベインは本件を「ザナーの裏切り」と見なして一発ぶん殴った。
ただ、ザナーは直後に「ヘットンからベライア・ダーズの情報を得るために画策したのです」と弁明。
また「マスターがヘットンに負けるはずがないとは分かっていましたし、万一あなたが敗北するようならば、それはあなたがシスマスターに相応しくないとの証明です。だから私は参戦しなかったのです」と述べた。
ベインは、ザナーが「シスの秘密を迂闊に漏らした」ことは咎めたが、ザナーの返答自体には大いに満足し、処罰を取りやめた。
◆ジェダイ聖堂での再会
「レイン……? こんなところで、何を……?」
ベインは、ザナーがヘットンから盗んだ情報を頼りに、惑星タイソンにあるベライア・ダーズの遺跡へと向かった。
一方ザナーは、ベインから「ジェダイ聖堂に潜入して、オーバリスクを引き剥がす方法を調べてこい」と命じられた。さすがのベインも、四六時中皮膚に食らいつく寄生虫には辟易していたらしい。
実際、ベインのフォースに常に干渉するから微細なコントロールは難しいし、悪の魔王のような衣装を絶対に外せないので闇社会ですら潜伏できないし、顔まで覆っているから食事も大変だし、脱げないから風呂にも入れないしで、そりゃあ脱ぎたくもなるだろう……。
ザナーは、ベインが用意した「ジェダイパダワン、ナリア・アドル」という名義で惑星コルサントのジェダイ聖堂に侵入、公文書館を訪問した。
もちろん、ジェダイに見つかれば確実に袋叩きである。ザナーはシスに伝わる、ダークサイドのオーラをライトサイドのオーラで覆う呪法をベインから教えられていた。
が、ザナーはこの呪法がどうも苦手だったらしく、どうかうまくいきますようにと常時祈っていたらしい。
幸い、周囲のジェダイたちは誰も目の前の「ナリア・アドル」を疑わず、また事前に公文書館館長に依頼していたこともあって、オーバリスクのものを含む寄生虫関連の資料を数日掛けて得ることはできた。
……が、その一番役に立つ資料を発見したまさにそのとき、ザナーはジェダイ聖堂にいたダロヴィットに見つかってしまった。
従兄弟として生まれ、一緒に共和国の兵士としてルーサンに行き、一時はジェダイを裏切って女シス卿ギサニーの弟子となり、最後はザナーに右手を破裂されて決裂した、あのダロヴィットである。
彼は現在、治療師としてフォースの才能を開花させていた。ジェダイへの敵意は完全に消えてはいなかったが、別件でジェダイ聖堂に招かれていたのである。
ザナーもダロヴィットも驚いたが、ダロヴィットは聖堂に招かれた時点ですでに「ソートボムの起爆後に、シスの暗黒面をルーサンで見た」ということをジェダイに話していた。
一方、ザナーも然る者で、鍛え抜いた体術でダロヴィットを拘束し、彼を半ば引きずって聖堂を脱出、ダース・ベインの待つ惑星タイソンまで連行した。
一方でダロヴィットは、再会した従妹がシスに落ちたことは分かっていたが、だからこそなんとか引き戻したいと説得した。ザナーの言うがままについていったのも、半分はそのためである。もっとも、ダロヴィットの言葉はザナーにはもはや煩わしいだけでしかなかったが……
◆惑星タイソンの決闘
ダロヴィット「どうしたんだ? 何が起きた?」
ザナー「追手が掛かったようね」
ベイン「要塞に入れ。ジェダイに見つかった」
ダース・ベインは惑星タイソンにあったベライア・ダーズの遺跡にいた。ダース・ザナーはマスターの気配を追って遺跡に降り立ち、ダロヴィットも下船。
何事だと驚くベインに、ザナーは一部始終を説明しつつ「ザナーの知識をダロヴィットが使えば、オーバリスクの鎧を解くこともできます」と説明した。
が、そこにもう一隻の宇宙船が接近してきた。ダロヴィットの拉致を察知して、ジェダイの追手がやってきたのである。
シスの師弟はやむなく迎撃を決意。ダロヴィットは、かつてはギサニーに弟子と認められたこともあったが、片手を失い、また十年以上戦場から遠ざかっていたので、戦力とはなり得ない。
そしてザナーは、せっかく聖堂から手に入れた資料とダロヴィットを、近くのクローゼットに押し込んだ。
古代シス卿ベライア・ダーズの遺跡で、シス卿ダース・ベインとダース・ザナーは十年ぶりにジェダイ騎士団と戦った。
寄せ手のジェダイはわずか五名。しかし、シスと比べれば数は二倍で、しかも率いるのは「ルーサンの戦い」でも活躍したヴァレンサイン・ファーファラだった。
また、アイソリアンのジェダイはライトセーバーこそ使わなかったが「戦闘瞑想」の秘術を使い、戦場のフォースを支配して、ファーファラ以下四人の仲間を支援し、能力を底上げしていた。
だが、戦闘瞑想はなにもジェダイの専売ではない。ダース・ベインもかつてはその技を使っていた。
カラクリを読んだベインがアイソリアンのジェダイを討ち取ると、ジェダイを支援していたフォースの流れが断ち切れた。
シスは即座に反撃を開始し、ファーファラを含む三人を一瞬で討ち取り、残る一人も右手首を切り落とされた。
止めにベインは全力のフォースライトニングを最後のジェダイに叩き付けた。
ところが、その瞬間に相手のジェダイが、自分とベインをフォースの「泡」に包み込んだ。
その「泡」の中で、ベインが放ったライトニングが充満、ジェダイとシスが同時に感電した。
ザナーは慌ててライトセーバーを突き刺し、このジェダイを殺害。泡も失われたが、ベインもぶっ倒れた。
そして、オーバリスクの鎧も崩れた。
実はオーバリスクは、高圧電流が弱点だった。とはいえ、半端な電圧は効かないのだが、シスマスターが本気でぶっ放したフォースライトニングは覿面だった。
が、それはベインの望みを果たすことにはならなかった。
オーバリスクは皮膚に噛みつく寄生虫である。そして致死量の電撃を浴びたオーバリスクは、死の瞬間に口から猛毒の体液を噴き出すのだ。
ベインは全身から猛毒を注入されてしまった。
ザナーも慌てた。彼女は、まだベインから教わるべきことがあると感じており、現段階で彼に死なれては困るのである。
ザナーはダロヴィットを呼び戻すが、オーバリスクの毒素はまだ解明されておらず、彼の手にも負えない。
(同時に、彼としてはシス卿にこのまま死んでもらえば、ザナーを闇から戻せるのでは、という思いもあった)
と言って、医療には詳しくないザナーには、ダロヴィットを癇癪で殺すこともできない。
やむなくザナーは、ダロヴィットには戦死したジェダイのライトセーバーを回収させ、自分は瀕死のベインを引きずって、宇宙船に乗って飛び出した。
◆偽装・隠蔽・救出
ダロヴィット「せめて、安らかな状態で見送るべきじゃないかな」
「ふざけるな!! どんな死に方をしようが、死はただの死だ!!」
ザナーにはまだ宛てがあった。惑星アンブリアに住む治療師で、ケイレブと言う男だ。
彼はベインがギサニーに毒を盛られた際、娘を人質に取られてやむなくベインを治療した人物である。
だがケイレブはシスを嫌っており、しかも前回と違って娘はもうこの星を去っていた。自分一人となれば、脅迫に屈する男ではない。
ベインの治療を頼むザナーを彼は嘲笑った。怒れるザナーの、フォースで内臓を締め付けるという拷問にも、彼は屈しなかった。十数年前に苦汁を舐めさせたシスへの意趣返しの念もあっただろう。
進退窮まるザナーに、ダロヴィットが口を挟んだ。
彼は、ケイレブがベインを治療する代わりに、ベインとザナーの存在をジェダイ騎士団に通告する、この条件ならケイレブとザナーの双方の要求を満たせるだろう、と言った。
ザナーは最初憤慨したが、他に手はなく、やむなく同意。
ケイレブとしても、医療者の端くれとしての思いもあってか、ダロヴィットの案を呑んだ。ただしケイレブは、そこに「シスの船を破壊して、治療後に逃げられない状態にすること」も付け加えた。ザナーに拒否はできなかった。
シスの船を航行不能にし、そして機能を残しておいた通信機でジェダイ騎士団に通報すると、ケイレブは約束通りベインを治療した。
さすがに腕利きであり、ベインは立つことはできないが、容態が安定し、二日目には短期間ながら意識も取り戻した。
が、ザナーから「約束」の件を聞かされたベインは激怒した。しかも、完治していない肉体ではケイレブたちを始末することも逃げることもできない。
ついには「俺を置いてザナーだけでも逃げろ」とまで言いつのるが、宇宙船は破壊されていてそれも果たせない。
ベインはもはや「俺を殺せ」と弱々しく呻くだけだった。
そして、ついにジェダイの部隊が惑星アンブリアに降り立った。
その瞬間、ザナーは突然ライトセーバーを起動させた。
彼女は問答無用で治療師ケイレブを殺し、あっという間にバラバラに切り刻んだ。
さらに、驚愕するダロヴィットをシスに伝わるフォースの秘術で発狂させた。マインドトリックの変種である。
そしてうずくまるダロヴィットの周囲に、ザナーは惑星タイソンで倒されたジェダイのライトセーバー五本を置いた。
最後に、ザナーは昏睡状態のベインを、ケイレブ家の床下に押し込み、自分と師匠の気配を隠した。
通報を受けたジェダイ部隊がケイレブの小屋を見つけたとき、そこにいたのは、ライトセーバーを弄ぶダロヴィットだった。
彼はかつて暗黒面のフォースに開眼し、ジェダイナイトを討ち取り、シスに加わった経験もあった。そしてザナーの魔術で狂った彼は、ライトセーバーを手に、暗黒面のフォースを剥き出しにしてジェダイ部隊に襲いかかった。
そして、今度訪れたジェダイ部隊は、腕こそファーファラには劣るが、数は十四人もいた。
ダロヴィットはたやすく討ち取られ、そしてジェダイは、ケイレブの死体や一緒に落ちていたライトセーバーが惑星タイソンでの戦死者のものだったことから、このダロヴィットを「最後のシス」と誤認。
「シスは完全に根絶された」と信じて、惑星アンブリアからコルサントへと帰還した。
ザナーはその後、三日掛けて宇宙船を修理。
ベインの治療もすでに必要なところはケイレブが果たしていたので、ザナー単独でもなんとかなった。
さらにしばらくして完治したベインは、ジェダイがダロヴィットを「最後のシス」と誤認して立ち去ったこと、ダロヴィットもケイレブもこの世にいないことを伝えられ、大いに満足した。
「よくやった、ザナー。私はお前を見誤っていたようだ。ジェダイの手に落ちる前に殺してくれ、などと……お前の計画を知っていたのなら、決して口にはしなかっただろう」
「あなたからはまだ教わるべきことがたくさんあります。これからもあなたの元で学び続けます、マスター。あなたの智慧を学び、あなたの持つ秘密を探り、一つずつ解き明かして、あなたの知識と力の全てを継承します。そしてあなたから学ぶべきことが本当になくなった時に、確実にあなたを殺して見せます、マスター」
ベインは、ザナーの宣言に、満面の笑みを浮かべた。
◆マスターへの道
ベイン「本当に私を倒せると思っているのか?」
ザナー「傭兵に捕まった。邪魔な女性を殺せなかった。ライトセーバーも持たずにこのホールに閉じ込められた。あなたの時代は終わったのです、ベイン」
ダース・ザナーの活躍で、ジェダイはもはやシスを探さなくなった。銀河共和国も軍縮を開始し、ジェダイ騎士団も「ジェダイ卿」を解体するなど、軍縮の流れに乗っていた。
そして、ベインとザナーは惑星シウトリックIVに移り、さらに十年間シスの修行を続けた。
しかしこの十年間、ザナーは一度もベインに挑戦しておらず、その気配も見せない。
ベインは不安になった。彼はザナーが、ベインが老衰してから襲いかかるつもりなのかと疑ったのである。
さらにベインは、近年は徐々に調子が悪くなっていた。治療を受けたとは言え、やはりオーバリスクの毒素は彼の肉体に深刻な影響を与えていた。年齢こそまだ四十六歳だが、彼は先行きを不安視していた。
実はザナーは、ベインが弱っていることは気付いていた。
ただ彼女は、師父の弱体化は偽装であって、真の力を隠すのがよりうまくなったのだと誤解していた。忍耐を教わったこともあって、粗忽な攻撃を仕掛けるべきではない、と思っていたのだ。
また、ザナーはシスマスターとなってから弟子を探すよりも、弟子の候補を見つけてからベインに挑むべきだと考えていた。「二人の掟」は、先代シスマスターを殺した後、次のシス・アプレンティスを探すまでの間、どうしてもシスが一人になる時期がある。彼女はその期間をできるだけ短くしたかった。
ともあれ、お互いの真意を知らないまま、ベインは「不老長寿の秘術」を模索することにした。
古代シス卿、ダース・アンデッデュは、自分の魂を他人に移し替えることで、千年以上生きたという。ベインはこれに目を付けた。
自分の老衰や病弱化を克服して、ザナーが倒すに足る「強いシス」であり続けるためにも、あるいはザナーに変わる新しい弟子を今から育てるためにも、ベインは老衰などしていられないのである。
折しもザナーは、惑星ドアンでジェダイナイトが殺害された事件を調べに派遣されていて、その間にベインはダース・アンデッデュのホロクロンを探しに向かった。
さてザナーは、ジェダイ殺人犯を首尾よく発見した。
セット・ハースという名の
ダークジェダイである。
ザナーは簡単にハースをボコったが、殺すのはいったん保留し、意識を取り戻させると
「私の弟子になるか、それともここで死ぬか、選びなさい」と脅迫。
ハースは渋々ながらも、弟子となることを受け容れた。
ザナーはハースを引き連れながらシウトリック IV に戻り、ベインに挑もうとしたが、マスターは不在。
首をかしげながら師匠の足跡を辿ると、その過程で「ダース・アンデッデュ」という名前を得た。
これにはハースが反応した。彼はジェダイだったころ、シスの歴史を好んで研究していた。ダース・アンデッデュは惑星プラキスで神として崇められ、また永遠の命を持つ方法を見出し、ホロクロンに記録したという。
ザナーは激怒した。彼女は、ベインが不老不死になることで、彼自身が定めた「二人の掟」を反故にするつもりだと考えたのである。
さらにザナーは、ベインが惑星ドアンで
イクトッチイ種族の
女ハンターに捕まり、投獄されたことも知る。
現地に到着したザナーは、ハースに船の見張りと確保を命じてベインを捜索。
ベインはすでに牢から脱出していたが、ザナーは構わずに強襲。
ザナーはベインが不死を求めて「二人の掟」を反故にしたことを、ベインはザナーがいつまでも師匠超えを果たそうとしないことを、それぞれ批難し、決闘を開始した。
ベインはこの時、ライトセーバーを没収されていて素手だった。しかし、ベインはフォースの稲妻と念力だけで互角に戦い、ザナーにつけいる隙を与えない。
さらに、星の女王セラがシスを葬るべく監獄を自爆させ、通路が崩落。ザナーもベインも脱出を優先し、勝負はお預けとなってしまう。
しかも、監獄崩壊を見て取ったセット・ハースが、ザナーを待たずに単身逃げてしまった。
まんまと裏切られたザナーは、一周回って冷静になった。
まず、『弟子がほしい』と思うあまり、セット・ハースの内心にまったく気付かなかったことを反省した。
さらに、ベインの叱責を思い返した。ベインがダース・アンデッデュのホロクロンを求めたのを、ザナーは「ベインが死にたくないだけ」と思ったが、「ベインの弱体化は事実で、それを克服し、シスマスターとして弟子を鍛えるために延命と肉体の維持を図っている」と悟った。
ザナーは改めて決意した。強いベインと正面切って対決し、シスマスターの称号を掴み取ろうと、
◆惑星アンブリアの決闘
「なぜこの場所を指定したのか不思議でした。あなたにとって何か象徴的な意味があるのではないかとも考えました。前回ここに来たとき、あなたは立つこともできないほど衰弱していた。あなたは弱り果て、わたしがあなたをジェダイに売ったとまで思った。残りの人生を囚人として過ごすくらいなら死んだほうがましだとも。私に殺してほしいとまで言いました。でもわたしは断った」
「あなたからは、わたしがまだ教わるべきことがあったからです。わたしは秘密をすべて知るまで、あなたを殺さないと誓いました」
「その日が来ました。私はあなたを超えたのです、ベイン。私は、今やマスターだ」
「ならば証明してみせよ」
やがて、ザナーの宇宙船にベインからのメッセージが届いた。
惑星アンブリアの、今は亡きケイレブのキャンプで合流するように、とのことである。
ダース・ザナーは覚悟を決めた。
現地では、ベインがイクトッチイの女性を一人伴っていた。彼女は、ベインを襲撃して見事に捕え、あの監獄に放り込んだ人物である。
フォース感応者であり、優れた使い手であり、また必要な冷酷さと度胸を持っていた彼女を、ベインは
「ダース・コグナス」として新たなる弟子の候補者としていた。
しかし彼女は、少なくともこの戦場においては中立だった。これから始まるベインとザナーの決闘で、勝った側の弟子となる。
今度のベインは、ライトセーバーを取り戻していた。状況は五分。
ザナーはベインに斬りかかった。
しかし、衰えつつあってもなおベインは膂力でもフォースのパワーでも、そして技巧でも上回り、「ドジェム=ソ」の圧倒的パワーで圧しまくる。
その上、ベインは剣術の合間にパンチやキックといった体術も織り交ぜる。
ザナーは肋骨が折れ、体力を消耗し、反撃にフォースの幻影を使えども簡単に撥ねのけられる。
勝敗はベインの圧勝で決まるかと思われた。
しかしザナーは、苦戦しながらも惑星アンブリアに存在するフォースの「核」に気付いた。
彼女はとっさに、その「核心」をフォースで引き出した。
すると地中から奇怪なツタのような植物が飛び出し、ベインに襲いかかった。その植物は、一撃を与えるだけでも激しい苦痛をベインに刻みつけた。
だがザナーも、この植物を操るために意識を集中する必要があり、植物を操りながら斬りかかるというようなマネはできない。
ベインはそこに勝機を見出し、一気に討ち取るべくザナーめがけて突撃した。ザナーはそれでもライトセーバーを構えたが、ベインは彼女の手から剣を叩き落とした。
しかし、ベインがザナーを切り捨てる寸前、例のツタがベインの全身に絡みついた。
ベインは全身からの激痛に悶えたが、悶絶しながらも、すでに習得していたダース・アンデッデュの発明した、精神転送の秘術を発動した。
ザナーの肉体を奪おうとするベインと、ベインの精神を払おうとするザナーとの、意思の戦いが始まった。
そしてベインの肉体がダークサイドの植物によって完全に破壊された瞬間、シス卿師弟の精神の戦いも終わった。
満身創痍となり、ふらつきながらも立ち上がったダース・ザナーは、自らを新たなるシスマスターと名乗り、ダース・コグナスをシスの弟子として迎え、ダース・ベインのライトセーバーを彼女に与えた。
◆その後
その後のダース・ザナーの消息は分かっていない。
彼女の弟子、ダース・コグナスはシスとして大成し、やがてシスマスターとなったが、いつ・どの段階でザナーを殺したのか、あるいはザナーはコグナスとはまったく関係なく落命したのか、など一切不明である。
また、ダース・ザナーの次代のシスマスター・ダース・コグナスは、最初は三つ目の人間(?)ダース・ミレニアルを弟子としたが、彼はやがて「二人の掟」に背を向け、独立してしまった。
ダース・コグナスはなぜか彼を討伐せず、新たな弟子を取って潜伏。やがて、ベイン、ザナー、コグナスの系譜から、ダース・シディアスを中心とした、映画本編のシス卿たちが輩出されることとなる。
【余談】
シスはダース・ベインとその最初の弟子により、「二人の掟」のもと千年間秘匿された……という設定は、EP1の小説版ですでに記述されていた。
しかし小説版が発表された1999年時点では構想はなにもなく、ダース・ベインの弟子は「彼」と男性扱いだった。
本格的にダース・ザナーが描かれたのは2001年からのコミック。
しかし主にルーサンの戦いのみが描かれ、彼女がベインの弟子になってからの情報はほとんど描かれていない。
その後のことは小説作品で詳述された。
カノンでのダース・ザナーについては本格的には触れられていないが、シリーズのヘルメットに関する設定資料集にて一度だけ名前が触れられたらしい。
また、正確には不明と前置きした上で、ザナーは惑星アンブリアでベインを倒したとされ、詳細を煮詰めていないだけにせよ、基本的なところは変化していない模様。
「これからもあなたの元で追記・修正を続けます、マスター。あなたの智慧を学び、あなたの持つ秘密を探り、一つずつ解き明かして、あなたの知識と力の全てを表現します。そしてあなたから学ぶべきことが本当になくなった時に、確実にあなたを殺して見せます、マスター」
- 師弟の行き違いのせいで一瞬ダース・アンデッデュがダース・アンジャッシュに見えた -- 名無しさん (2025-04-17 09:30:12)
最終更新:2025年04月29日 21:06