ゲゲゲの鬼太郎(第4シリーズ)

登録日:2018/07/06 Fri 01:20:11
更新日:2024/02/07 Wed 22:57:35
所要時間:約 5 分で読めます




君の後ろに黒い影……。


1996年1月7日から1998年3月29日までフジテレビ系列で放送された『ゲゲゲの鬼太郎』の第4期。全114話。
アニメーション制作は東映動画(現:東映アニメーション)。

各シリーズの項目はこちらを参照



【概要】

熱血ヒーロー路線だった3期から一転し、「原点回帰」をテーマにしたシリーズ。

原作の「1960年代」の雰囲気を壊さずに「漁村・農村が舞台の時代劇」をコンセプトにアレンジし、
登場キャラクター達も親しみやすさが全面に出ている。
「1990年代」を即座に思い出させる要素はあまり出さないように心掛けたという。

作中のエピソードそのものは原作から大幅に改変され、感動路線が多いのが特徴的。
また、当時流行していた『学校の怪談』を意識してか、序盤では準レギュラーの小学生3人組の身の回りで事件が起き、鬼太郎に依頼をするという流れも多かった。
しかし、昭和という時代が終わってからの「バブル崩壊からの経済不況」「ソ連崩壊」「阪神・淡路大震災」「オウム真理教」といった様々な社会不安が影響してか、
どこか退廃的・陰気な作風でもあった。事に人間ドラマや妖怪の末路について救いのない・後味の悪いエピソードも多い。
明るい意味でも暗い意味でも「感動路線」というべきか。

2年目では宿敵ぬらりひょんとの対決エピソードも加わったが、登場頻度は他期に比べると控えめである。

監督は西尾大介が、メインライターは武上純希が務めた。
脚本においては、ゲストとして小中千昭京極夏彦が参加したことがある。
キャラクターデザインは荒木伸吾と姫野美智のコンビ、音楽は和田薫と、同時期に放映されていた金田一少年の事件簿を彷彿とさせるメンバーでもあった。
また、ゲスト声優として先に挙げた京極が自身が脚本を書いたエピソードのメインゲストとして出演したほか、水木ファンを公言する佐野史郎や本人役として主題歌を歌う憂歌団が出演した。

原作者の水木しげるから「宮崎アニメの雰囲気で作ってほしい」とリクエストされたため、色遣いは独特かつ温かみのあるものとなっている。
シリーズ後半からは仕上げ作業がデジタル化し、今作が東映アニメーション初のデジタルアニメとなった。*1
ただし、同社最初のデジタル化導入ということもあって現場のノウハウ不足のためか、それまでのセル画彩色と比べると色遣いがビビッドになってしまい、この点を惜しむファンも少なくない。

終盤はマンネリ化で視聴率が伸び悩み、打ち切りとなったという。
ただし最終回が最終回らしくないのは1期や2期も同じ、というかまともにピリオドを打ったのは、23年時点では3期と6期くらい。
つまり鬼太郎としてはあまりに平常運転過ぎて、最終回らしさの欠如に突っ込まれることは当時からして少なく、ファンの間では打ち切りという認識すらもなかった。

劇場版に『大海獣』『おばけナイター』『妖怪特急!まぼろしの汽車』がある。


【登場人物】

CV:松岡洋子
ご存知 鉄パイプ 主人公。アホ毛が3本生えており、出っ歯が目立つ。ちゃんちゃんこの模様がギザギザ。(資料設定によるとシワらしい)
普段は落ち着きがあり、紳士的な性格をしているがその反面、妖怪らしさも他期より目立つ。
また、せると指名手配犯や悪党妖怪がガチでビビるレベルでとても怖い。しかも無表情or穏やかな笑顔のまま、相手を恐怖のドン底に引きずり込む。
目玉おやじとの絆が明確に描かれており、歴代一ファザコn父親想いなことで有名。
猫娘が絡むと途端に沸点が低くなる
3期同様に妖怪オカリナを使用するが、ロープとしての用途が多め。オカリナソードも設定上はあったものの実際に作中で使われることはなかった。

CV:田の中勇
ご存知鬼太郎の父。今作においても知恵袋として活躍する。

CV:千葉繁
本作から衣類の色が原作と同じ黄色になった。
担当声優がアドリブ大王様なのでアドリブもめっちゃくちゃ多い
歴代でも特に騒がしいキャラクターだが、その一方で彼の人情深い面が深く掘り下げられており、
主演のエピソードはどれも泣けるものや考えさせられる内容が多い。割とドライでもある。
CMのアイキャッチではよく酷い目に遭う(いずれも自業自得だが)。

CV:西村ちなみ
キャラクターデザインは原作に忠実だが、幼く可愛らしい風貌に仕上がっている。毛髪が紫色になった。
鬼太郎とは友達以上恋人未満の関係で、家族のような付き合いをしている。
鬼太郎への想いと複雑な深層心理が描かれたラクシャサ回や、母性が描かれた人食い肖像画冷酷さが炸裂した地獄流しなどは必見。(後述)

  • 砂かけ婆
CV:山本圭子
担当声優が2期の山本に戻る。肌の色はピンクで毛髪は水色となっている。
目玉おやじに次いで知恵袋として活躍し、要所で鬼太郎を助ける。

  • 子泣き爺
CV:塩屋浩三
前掛けの色が赤と金になった。かなり呑気な性格でお茶目さん。
砂かけ婆とコンビも健在で、ピンチの時には共に立ち向かう。
実はパソコンを使いこなせる。
演じた塩屋は、『映画 妖怪ウォッチ シャドウサイド 鬼王の復活』でも子泣き爺の声を担当した。

  • 一反木綿
CV:龍田直樹
九州弁で喋り、語尾に「~でごわす」が付く。
今作において、鬼太郎は一反木綿に乗る時には正座することが多い。
夜叉の回では魂を抜かれたねずみ男の顔に被せられたことも…。

  • ぬりかべ
CV:龍田直樹
ご存知壁役。台詞が少ないからか、担当声優は一反木綿と同じ。
また、台詞にエフェクトがかかっている。

  • ぬらりひょん
CV:西村知道
ご存知鬼太郎の宿敵。妖怪王となって妖怪界を牛耳ろうと目論むが、やや間抜けな面が目立つ。
妖怪大裁判で鬼太郎を冤罪に陥れようとしたことで時代流しの刑に処され、戻ってきてからは鬼太郎と対決を繰り広げる。
仕込み刀で奮闘する場面も多く、決して弱くはないのだが、ぶっちゃけ妖怪としての闇の深さで鬼太郎に位負けしており、ある時は精神崩壊寸前にまで追い詰められた。

  • 朱の盆
CV:郷里大輔
ご存知ぬらりひょんの子分。のんびり屋でドジっ子。
余計な一言を言ってはぬらりひょんに制裁されることが多い。

  • 村上祐子
CV:前田このみ
小学4年生の少女。小学生トリオの一人。
見上げ入道に神隠しされたのを機に鬼太郎と知り合う。
実はかなりの行動派で、草薙の剣を巡ってぬらりひょんと戦ったこともあったが、
出番の少なさが災いしたのか結果として鬼太郎ファミリーとは薄い関係になり、次第に物語からフェードアウトしていった。

  • 谷本淳
CV:沼田祐介
小学4年生のやんちゃな少年。小学生トリオの一人。
勉強は苦手なようで、0点のテストを野づち塚に捨てたことで騒動を引き起こした。
祐子同様、次第に物語からry

  • 鈴木翔太
CV:松井摩味(現:摩味)
小学4年生の眼鏡をかけた小柄な少年。小学生トリオの一人。
鏡に落書きしたことで鏡爺の怒りに触れ、鏡の中に捕まったことも。
他の二人同様、次第にry

  • 一刻堂
CV:京極夏彦
陰陽道いかるが流の当主にして言霊使い。声が遅れて聞こえる腹話術師ではない。むしろ古本屋の方。
妖怪達の天敵とも言える存在で、ぬらりひょんの依頼で鬼太郎と対峙することになるが…。
この世に不思議なものなどないのだよ。


【エピソード】

  • 1話:妖怪!見上げ入道
記念すべき第1話。自然保護の訴えを子供や妖怪の目線から描く。
同時に鬼太郎や鬼太郎ファミリーの紹介もされており、それぞれのキャラの立ち回りや性格などが分かりやすくまとまっている。
鬼太郎の「喧嘩が強いことは自慢にはならないよ」という台詞が印象的で、鬼太郎の戦いに対する思いや今後の行動理念に関わってくることとなる。

  • 3話:ギターの戦慄!夜叉
名匠・雪室俊一が初登板。ホラー・アクション・笑い・キタネコをバランスよく兼ね備え、4期の基本路線を提示した秀作。

  • 5話:ダイヤ妖怪・輪入道
猫娘をダイヤモンドにした輪入道にブチギレ、近くに落ちていた鉄パイプでぶん殴る鬼太郎。
おかげで「4期=鉄パイプ」というイメージが深く根付くハメになり、『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』のヒットに伴ってまた蒸し返された。

  • 19話:恐怖!妖怪くびれ鬼
「少年時代への憧憬」と「現実逃避」をテーマに、後年の名作『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』にも似た味わいを出したエピソード。
同系列の第28話「幻想譚・猫町切符」も良回。

  • 24話:怪談!妖怪陰摩羅鬼、26話:復活!妖怪天邪鬼、36話:仰天!おりたたみ入道、42話:がんぎ小僧とねずみ男!
「4期ねずみ男4部作」とでも呼ぶべきエピソード群。
アドリブに隠れがちな「ねずみ男」という男の暗く泥臭い生き様が深く描かれる。

  • 11話:毛羽毛現とがしゃどくろ、35話:鬼太郎の地獄流し、53話:霊園行き!幽霊電車
いずれも鬼太郎が人間に対して本気で怒る回。「普段温厚な奴ほど怒らせると怖い」の典型をこれでもかと見せつけてくる。

  • 12話:陰謀!猫仙人の猫王国、48話:えんま大王とねこ娘、84話:怪奇!人食い肖像画、103話:化けネズミ!妖怪旧鼠
これらは4期猫娘を語る上で欠かせない回。
「優しさ」、「母親への憧憬」、ねずみ男に対する「小生意気な態度」と「面倒見の良さ」──この多面的な性格をよく覚えてから89話を見ると、格別の感動が味わえるはず。

  • 61話:妖怪いやみにご用心、88話:妖怪ふくろさげの罠!
鬼太郎恒例のお下劣編。61話では女装したオッサンにディープキスされる鬼太郎、88話では敵をおびき出すために女装する鬼太郎が見られる。
89話は猫娘の「玉袋」発言にも注目。これの次の回が後述のラクシャサだってんだから恐れ入る。

  • 78話:ぬらりひょんと蛇骨婆
3期114話以来となる「鬼太郎の誕生」を描いたエピソード。妖怪でも人間でも、幾多郎を本気で怒らせた者は破滅あるのみ。

  • 89話:髪の毛地獄!ラクシャサ
4期猫娘の集大成。「少女の複雑な内面」を丁寧に描いた小中千昭のシナリオを、角銅博之の演出と塩沢兼人の名演が見事にサポート。
同時に鬼太郎もヒーローとして、男として最高のカッコ良さを見せてくる。
脚本家繫がりで、この回の鬼太郎にマドカ・ダイゴをダブらせる見方もできるか?

  • 94話:鬼太郎魚と置いてけ堀、105話:迷宮・妖怪だるま王国、113話:鬼太郎対三匹の刺客!
後に『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』でその名を轟かせる細田守の演出作。
いずれも単に鬼太郎が戦って終わりというだけではない異色の雰囲気を発する。

原作者・水木しげるの四人の弟子*2の一人である京極夏彦が脚本、ゲストキャラのデザインおよび声優を担当
京極氏によって投げかけられた鬼太郎の存在意義に対する問いは、ファンにも、そしてアニメ製作スタッフにも少なからぬ影響を与えるに至った。

  • 107話:山の神・穴ぐら入道
人間と妖怪、それぞれの信念のぶつかり合い。その板挟みになった鬼太郎は、何もすることができなかった。
終盤になって投げ込まれた、本シリーズきっての鬱回。

  • 114話:絶体絶命!死神の罠
最終回のテーマは「鬼太郎の母」。すでに死んで久しい彼女が、意外な形で鬼太郎を助ける。
妖怪自動車や妖怪オカリナも久しぶりに活躍する、総決算にふさわしい佳作。

【オープニング】

  • ゲゲゲの鬼太郎
Vocal:憂歌団
本作ではブルースバンドの憂歌団が主題歌を手掛けた。
曲調はやや1・2期に近くなっており、華やかさや力強さをあえてそぎ落としたような陰のある落ち着いた雰囲気。

いい意味でしゃがれてくたびれたような独自の味わいを放っており、鬼太郎のイメージにはよく似合っている。

映像では都会のビル街や雑踏が描かれており、現代社会に溶け込む鬼太郎や妖怪達が登場する。
また、「学校の怪談」の影響からか運動会の会場が墓場ではなく学校となっている。そこには各シリーズでも最強格といわれる牛鬼の姿も。さらに校舎には無数の妖怪が出現する姿が見られる。


【エンディング】

  • カランコロンのうた
Vocal:憂歌団
EDとして起用されたのは2期以来。
映像では原作の絵をアニメ風にアレンジしたものや、百鬼夜行に追いかけられる小学生トリオが登場。

  • イヤンなっちゃう節
Vocal:憂歌団
歌詞は大人になってから聴くと身につまされる要素が多い。
映像では墓場や夜の街で踊る鬼太郎ファミリーが描かれる。無表情のまま踊る鬼太郎は色んな意味でシュール。



ふ、ふ、ふ……
さぁて、どこを追記・修正するのかな……?

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

最終更新:2024年02月07日 22:57

*1 ただし本編のみで、OPとEDの映像(クレジットはVTRテロップ合成)、アイキャッチは従来のセル画のままである。

*2 「漫画家」ではなく「思想家」としての水木しげるの弟子。小説家・博物学者の荒俣宏、イラストレーターの南伸坊、評論家の呉智英、小説家の京極夏彦の四名。