登録日:2026/10/11 Sun 00:00:41
更新日:2026/10/11 Sun 00:48:10NEW!
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物語が星の数あるように、物語の伝え方もひと通りではない。
映画、楽曲、絵画、演劇──そしてタロットもまた、物語の伝え方のひとつだ。
Tale - Artwork Resonance On Tarotとは、創作コミュニティサイト「
SCP Foundation」で実施されたアンソロジー企画である。
略称は頭文字より「
t-arot」。
概要
特筆すべき点として、
全ての作品がTaleであることが挙げられる。
加えて、これらの記事は、
それぞれの大アルカナになぞらえたアートワーク(≒イラスト)とともに制作された。
したがって、「Tale - Artwork
Resonance(=共鳴) On Tarot」ということなのだろう。
アンソロジーは、著者22名・アートワーカー(≒イラストレーター)14名・その他人員から成る制作委員会より作成された。
SCPにおける別のアンソロジーである
始のいろはと同様、アンソロジーの存在は秘匿されていたため、SCP界隈の一部では「誰がt-arotに参加しているか」を当てようとする動きもあった。
なお、アンソロジーとはいえ、
低評価削除は普通になされる……のだが、なんと
全ての記事が低評価削除されなかったという快挙を達成している。
序文
以下に、t-arotハブに記された「序文」を示す。
物語が星の数あるように、物語の伝え方もひと通りではない。
映画、楽曲、絵画、演劇──そしてタロットもまた、物語の伝え方のひとつだ。
まだ何も持たない、何者でもない旅人の、魂が成熟する様を描いた22枚1組のカード。それが我々が占いの道具として扱うタロットの正体だ。
タロット占いは、あくまでも人生を占う為だけに存在している。天候の如何を識ることや、盛者の興亡、あるいは金脈を掘り当てることなどにはめっきり用いられないのだ。
つまり、まったく奇妙なことに、我々は誰かの人生から切り出した一幕を切り貼りして、自らの人生を定義していることになる。
先人がそうしたから、と言ってしまえばそれまでだろう。しかし我々は、より身近な形で誰かの物語を己のものとしている。
漫画、小説、アニメ、ドラマ……そういった何かのワンシーンに、"まるで自分のことのように"心動かされたことはないだろうか?
思うに、タロット占いとはきわめて抽象化された感情移入だ。
誰かの物語を、己の物語に置き換え、内省する。故にタロットは人生のみを占う。
ここに、22の物語を用意した。1人の人生ではなく、22人の──或いはそれ以上の人々の──人生から切り取った物語だ。
どうかこれらの物語が、あなたの物語を形作る一助となることを祈る。
タロットという物語、そして、それをモチーフにした物語たち。
これらがあなたが主人公の物語に役立ちますように……ということなのだろう。
参加記事
以下に、参加物語とそのあらすじを示す。気になった記事はSCP-JPのサイトにて読んでみよう。
なお、前述の通り、アンソロジーにはSCPの世界観上の(強い)繋がりはない。そのため、記事間で設定の衝突や矛盾がある場合も多いが、これも財団創作なのである(
ヘッドカノンも参照)。
0 - 愚者: Are We Fool Yet?
著: ogakuzu、絵: Ruka_Naruse
Are We Cool Yet?の
リリエンタールは、自身らに貼られている"狂気の殺人芸術家集団"というレッテルに嫌気がさしていた。
芸術を知らぬ者たちは、真っ当な芸術作品よりも陳腐な殺人モンスターを話題にし、作品の意図や背景を理解しないのである。
そこで彼女は、専門的な知識を持たない鑑賞者に向けて、芸術への理解を促進する企画展
『Are We fool Yet?』を開催。
この企画展では「
鑑賞者の美に対する感受性を高める球体」を置くことにより、芸術作品の意図を素人にも理解できるようにしたのだ。
この案は、上手くいったように思えたが……?
創作サイトとしてのSCP財団を、メタ的な視点から題材にしたともとれる一作。
I - 魔術師: 銀燭とマグス
著: H0H0、絵: Kokorikyo
新人財団職員がフロアを順に案内されるとき、1つだけスルーされる部屋があるという。
主人公がこの部屋について問うと、「そのうち分かる」とあしらわれる。
しかし、他の新人には「あなたが知るべきことじゃない」と伝えられていた。
主人公は、その言い方の違い、そしてその部屋の正体が気になっていた。
3、4年後になると、主人公は、あの部屋のことはどうでもよくなった。
その代わり、実験について考えるようになっていった。
主人公は、先輩職員と異なり、
実験でDクラス職員が死んだり苦しめられたりすることに耐えられなくなっていたのだ。
ある日、主人公が「健康診断の再検査」という口実で呼び出されたのは、例の部屋だった。
この部屋にあったのは、豪華な食事と、誕生日会のような飾り付け。
健康管理センター長によると、「特に真面目である皆様に、生まれ変わってもらうための会」だという。
そして、そこで見せられたものとは……
II - 女教皇: 皆紅のハイプリエステス
著: stengan774、絵: EveningRose
財団の博士である茅野博士。
彼女にまつわるジョークとして、「茅野博士、もしくはその作品の周囲に集中して何かしらの被害が発生する」というものが存在していた。
実際に被害は多く発生している一方、この集中した被害は偶然であるとされている。
そんな彼女が、とある絵画型オブジェクトの破壊を担当することになった。
この絵画には相手を魅了させた後に捕食するという異常性があるが、この異常性は茅野博士には効かないようだ。
破壊の様子とともに、彼女の過去と思想、そしてかのジョークの真相も明かされていく。
III - 女帝: 果ての地の女帝
著: konumatakaki、絵: Mtkani_666
とある港のある村。そこから少し歩いた所に、一軒の家がある。
そこにはお婆さんが一人で住んでいる――ずっと前から住んでいて、ずっと前からお婆さんだったという。
少女は、そのお婆さんの下へ荷物や手紙を運ぶことがある。
お婆さんによると、少女は「才能がある」「他の人には見えないものが見えるし、まちがって変なところに行ってしまうことがある」とのこと。
さて、少女はお婆さんから色々なお話を聞かせてもらった。その内の1つを語るという形式でTaleが進む。
魔女によって戦争が行われていた時代。ファインという魔女が、森の奥の大魔女を探しに向かった。
大魔女のお婆さん曰く、「あんたは世界を統べる女帝になる素質がある」「試練を乗り越えれば、更なる祝福が与えられる」という。
そしてファインは試練を受けることに決めた。試練の内容は「土鹿に勝つ」というもの。
試練の結果は。そして、ファインと大魔女の正体とは――
IV - 皇帝: 集村:38 - 戯記"笑み山の王"
著: aisurakuto、絵: of96M
カノン「
共異廻歴」に属する作品。
「共異廻歴」とは、
23世紀に発生した世界的な戦禍のために多くの文明が滅んだという世界線である。
生き残った人々は辛うじて残された土地で暮らしていた。
が、
財団も滅んでいるので、SCPオブジェクト(異類)も野放しになっている。
彼らにとっては異類は最悪の脅威である。
一方で、異類と共存したり、これらを利用したりして生きる集団も現れた。こうして、世界各地には「
集村」が誕生した。
そして、かつての文明が途絶えた後。ある組織が「
世界各地の村を巡り、異類と共存する人々を記録する」ことを始めた。
この世界で人々が生きるには何が最良なのかを知るために――
さて、この組織の一員であるスタンは、集村「ヘホイ」を訪れていた。
普通の集村が30~50人程度の人口なのに対し、ヘホイでは1000人近いという。
どうやら、"神の山"と呼ばれる火山の恩恵を受けて繁栄したためらしい。
ヘホイでは、その火山の"交信者"だという「笑顔の仮面の男」が、山から伝え聞いたことを民に届けている。
仮面の男は群衆から供物を要求し、群衆はそれに応える……ここだけ見ると、異類というより(悪徳な)宗教っぽい。
"交信者"はヘホイの統治も行っており、"交信者"を通じて火山に感謝を届けることで、ヘホイの民は災いから逃れ、繁栄を享受できる、ということになっている。
だが、この火山、どんどん活発になっており、現に火山が原因の死人も出ている。
にもかかわらず、民衆は何の疑問も持たずに火山と"交信者"を崇めている。
これが迷信だと気づいている者は居るが、これを公の場で言った者は消されるという。
スタンは、"交信者"の裏を暴こうとするヘホイの民・リカンと協力することになる。
そうしていくうちに、"交信者"と"神の山"の秘密を知る。
"交信者"の真相とは。そして、ヘホイの運命や如何に。
V - 法王: 二重なる法王
著: santou、絵: EveningRose
とある寺。蒐集院の時代より、"鴉天狗"と呼ばれるオブジェクトが収容されている。
このオブジェクトは結界によって収容されているのだが、住職の纐纈貴道曰く、夜間、結界が何者かによって傷つけられているという。
そのため、財団職員である砺波直弘が呼び出された。
纐纈家の結界術は強力であるし、毎日の朝夕2回点検を行い完璧な状態に保っているという。
また、纐纈には真面目な印象がある。点検しているのは事実だと推定できそうだ。
加えて、同性愛者の砺波としては、彼の外見も魅力的だという。
さて、砺波は夜間に寺に貼り込む。
そこで砺波が目にしたのは、結界を殴って壊す纐纈の姿だった!
しかし、纐纈がそんなことをするとは考えにくい。一体何故?
そして、2人の関係をきっかけに、纐纈が結界を壊していた理由が導かれる。
VI - 恋人: 恋人たちは闇を見た
著: tateito、絵: koikoi_Rainy4L
20██年、要注意団体「闇寿司」は全世界、全国家、全異常組織に対して宣戦布告を行った。
このTaleでは、この宣戦布告が行なわれた直後に死亡した、
闇寿司四包丁・ケーキナイフのクラウディについて述べられている。
日本を訪れいていたパティシエ見習いの
ネローは、同じく異常料理人の
サンデーと出会う。
当初はライバルであった両者だが、段々と親しくなっていき、ついに同棲を開始。
その際に
自業自得で世界オカルト連合に襲撃されるも、闇寿司の
闇親方に救われる。
その後、襲撃の傷に対して、闇寿司構成員より治療を受けたが、両者は片方の手に震えが残ってしまう。
後にネロ―とサンデーは、闇寿司構成員に勧められたこと、および結婚式という儀式の力を利用した異常物品が見つかったことにより、結婚することになる。
この異常――指輪の力により、ネロ―とサンデーは合体。
病魔に侵されず怪我を再生し老化せず強く美しい究極生命体、ケーキナイフのクラウディが誕生したのだ。
さて、クラウディは、先程の宣戦布告が行なわれた直後に死亡している。
クラウディの最後の戦いと、その最期を見逃すな。
VII - 戦車: Chariot in a cage
著: Rivi-era、絵: Mtkani_666
SCP-811、「沼女」こと「
アエ」。
SCP-811は、人間の女性に似た外見だが、細長い手足とわずかに膨らんだ腹部、緑の肌を持つ。
有する知性は、小さなころに捨てられた”野生児”のものと同程度。
手の平と足の裏からは、粘着質の緑がかった透明の粘液を分泌しており、この液体に触れた有機物は黒い液体へと変化、アエへ吸収される。
また、口から黒いタール状の物体を射出し、狩りを行う。
そんなアエだが、
元人間であり、何者かの手によって人為的に作成されたオブジェクトである可能性が高いようだ。
アエの担当職員であるトレビュシェット博士は、アエがオブジェクトであるとは理解しつつも、アエへの道徳心が生まれていた。
博士は、アエを、異常なアノマリーというよりは一人の少女として扱っている。
現にアエは、言語能力が回復しつつあり、精神面の成熟が見られ、捕食者としての本能が制御できるようになってきている。
怯え、暴れていたアエも、今や博士と話している時には、嬉しそうな笑顔を浮かべるのだ。
しかし、博士の道徳心を、財団上層部はよく思わない。
恐らくはオブジェクトへの過剰な介入を理由として、博士はアエの担当を外されてしまう。
確かに、アノマリーをアノマリーとしてのみ扱う冷酷な対応は、客観的には正しい判断だろうが……
しかも、トレビュシェット博士以外の担当職員は、「アエに発達は見られない」と述べている。
先述のように、アエは「言語能力が回復しつつあり、精神面の成熟が見られ、捕食者としての本能が制御できるようになってきている」はずなのに、だ。
もしかして、アエは何かを隠しているのだろうか?
そんな中、地殻変動により、収容エリアが崩壊、複数の収容違反が発生した。
そこで博士が耳にした無線は、「…811..収…違反」「負傷者…複数…逃走…」
アエは、やはり、制御不能なアノマリーであったのか。
トレビュシェット博士は、他の収容違反オブジェクトとの遭遇を覚悟して、アエを探しに向かう――
VIII - 力: かなしみはちからにみちびかるべし
著: kskhorn、絵: koikoi_Rainy4L
作家・宮沢賢治。
彼の作品に登場する空想上の存在が実際に存在していたり、彼と面識があるSCPオブジェクトがあったりすることから、財団は宮沢賢治氏を要注意人物に指定している。
宮沢賢治とこれらのオブジェクトの関与にはいろいろな考え方があるが、「宮沢賢治本人がSCPオブジェクトを意図的に創造している」というのが可能性の一つである。
さて、『永訣の朝』にあるように、宮沢賢治は妹のトシと死別した。
トシの死と、彼女が亡くなる直前に伝えたこと。
そして彼がオブジェクトを創るに至ったきっかけについて。
IX - 隠者: さよならハーミット
著: machikawa、絵: Kuronohanahana
"青の隠者"と呼ばれる異常存在は、
奇跡論を用いた転移能力を得意とする。
しかも"青の隠者"は、弟子に転移の方法を教えているそうだ。
本人の攻撃力は低いが、他の異常存在を弟子にすることがあるため、厄介な存在ともいえる。
転移して逃げ隠れする者、的なニュアンスで"隠者"と呼ばれているのだろうか。
世界オカルト連合の若造、コードネーム"ジェリーフィッシュ"は、その弟子の調査と粛清に向かう。
調査対象の地域は、"ジェリーフィッシュ"が育った孤児院のある地域だったが、彼はしばらくこの街に来ておらず、愛着もないという。
さて、"青の隠者"が潜んでいると思われるバーに向かうと、昨晩まで営業していたはずのバーがもぬけの殻に。
しかも、バーの2階にいたのは、同じ孤児院で育った「妹」であった。
そして、彼女もまた「タイプ・ブラック」と分類される異常存在なのであった。
襲い来る敵対者との戦闘を経て、読者は孤児院の真相を知ることとなる。
そして、兄妹が最後に選ぶ未来とは。
X - 運命の輪: 運命の輪から出られずとも
著: NorthPole、絵: sian628
カノン「Thanatomania」に属する記事。
この世界線では、人の死を死因ごとに、タナトーマ(タナトマ)という液体として抽出できる技術があり、しかも一般に広まっている。
タナトーマを抽出されると、その抽出された死因に対しては不死になるし、
逆にタナトーマを注入されるとその死因通りに死亡する。
例えば、「轢死のタナトーマ」を抽出すれば、車に轢かれても死ななくなるし、
「窒息死のタナトーマ」を注入すれば窒息死する。
そしてそんな世界では、死の価値が軽くなり、生の価値も軽くなる。
コインの山に高所から飛び込みその美しさを競う競技(当然、転落死のタナトーマを抜いた人が行う)なんてのもあるようだ。
さて、この世界でファイナンシャルプランナーとして働くハバキリは、客がタナトーマを抽出することに反対している。
そんな保険屋の下に、変な客が訪れる。
XI - 正義: 秒速420メートルの正義を
著: rokurouru、絵: KeiShirosaki
世界オカルト連合(GOC)のコードネーム"クランク"。
家族とともに異常存在に襲われたが自分だけ偶然生き残り、そのまま保護されてGOCで生きることになったという、一定数いるタイプの構成員だ。
"クランク"らの班は、蛾を式神とする異常な能力者の殺害へ向かう。
相手の脅威度合いもそれほど高くなく、そのうえ、本人も装備も強力な先輩が班長として同行している。
能力者の殺害は速やかに終わる……はずだった。
しかし、その班長が、能力者に殺されたのだ。
この先輩はかつて、訓練の際に、「"クランク"には迷いがある」と指摘していた。
そして、迷いこそが誰かを傷付けるとも伝えた。
傷付けるどころか殺すために訓練をしているのではないか、と応じた"クランク"に、先輩は「殺す事と傷付ける事はまるで違う」と返す。
かつての"クランク"はこれを理解できなかった。
繰り広げられる戦闘と並行して、"クランク"は迷いと向き合っていく。
誰かを傷付けないために誰かを殺すのがGOCであり、その正義は時として矛盾をはらむだろう。
だが、"クランク"はもう迷わない。
放たれた銃弾は、誰かを、そして相手自身を傷付けないために、相手を殺す。
ありありと描かれたスピーディな戦闘と心情の描写が魅力の一作。
XII - 吊るされた男: 吊られ揺らぐ影、微光の果てに
著: Kuronohanahana、絵: Kuronohanahana
高瀬は、新人職員の中村颯太と共に、新たに運ばれてきたAnomalousオブジェクトの管理を行う。
このAnomalousアイテムは「周りの人の心理を安定させるランプ」であり、危険性の低いオブジェクトのようだ。
管理を進めていく中で、高瀬は、どうやら中村の能力が高く、かつ几帳面であることに気づく。
一方で、自分も能力が高いはずなのに、実力を発揮できる仕事が与えられていないと改めて思う。
さて、中村がこのランプの管理をしてからしばらく経った日のこと。
几帳面だった中村の報告書に、ミスが目立つようになってきた。
しかも、例のランプを長時間見つめるようになり、業務に支障も出始めた。
中村は、あたかもランプに依存しているかのような振る舞いも見せていた。
中村はこのランプの担当を外され、異動となる。ランプに近づくのも禁じられた。
高瀬が聞いた噂によると、どうやら当初の几帳面さを失ってしまったようである。
高瀬はどうしても中村のことが気になり、中村の部屋を訪れる。
そこで彼が目にしたのは、今にも首を吊ろうとしている中村の姿だった……
XIII - 死: 死神の鎌の刈るものは
著: KeiShirosaki、絵: Phylliidae
「相貌失認」という言葉がある。
一般的な意味では、「顔のパーツは知覚可能であるのに、顔全体を見て個人の識別ができない状態」ということ。
つまり、人間を顔で覚えることができなかったり、他人の表情が分からなかったりするというものだ。
一方、財団では、同名のカノンが存在する。
このカノンでは、多くの人類が常に『幸せ』を感じるようになり、ネガティブな感情を感じられなくなった。
ただし、一部の人類や、人間ではない存在は、我々と同じ普通の感情を抱く。
この設定を採用していれば、他の設定は自由であるカノンだ。
そして、この記事では、カノン「相貌失認」の世界で、症状「相貌失認」の人物にスポットを当てている。
この記事では、ネガティブな感情を感じられなくなった人々が新人類、そうでない人が旧人類と呼ばれている。
オールドは少数派であるが、「ネガティブな感情を抱けないと務まらない役割」を担っている。
例えば、財団の任務は、「恐怖心」とか「危険だ」という感情がないとやっていけないだろう。
しかし、オールドは、ネガティブな感情のないニューの中では生きづらい。
「白い髪に鮮やかな赤いスカート」という特徴的な外見の根本は、
症状としての相貌失認を持つ佐倉に頻繁に話しかけられるようになる。
これは、相貌失認の佐倉でも、根本は簡単に見分けがつくからである。
この2人は仲が良くなり、一緒に小説について語りあったりしている。
物語では、オールドとニューとが分かり合えない描写が綴られる。
ただし、それは、オールドどうしなら分かり合えることを意味しない。
相貌失認の佐倉とそうでない根本との間にも、すれ違いが生じていく……
XIV - 節制: 節制者ブライト
著: Jiraku_Mogana、絵: Kokorikyo
ブライト博士は、O5評議会(財団の最高指揮権を持つ評議会)の1人に呼び出される。
このO5は、ブライトに
「地球規模の破壊兵器を止めるための書類を奪う」任務を与える。
ブライトは「私ではなく、荒事が得意な奴に任せるべきだ」旨の反論をするが、
どうやらこれはブライトにしかできない任務だという。
というのも、書類があるのは過去であり、それを奪うには財団の小型時間遡行機が必要だ。
そしてその時間遡行機だが、「手乗りサイズの物品」しか過去に送れない}という。
つまり、人間は送れないが、ブライトの不死の首飾りなら過去に転送できる。
首飾りを転送することにより、実質的にブライトという財団職員を過去に送れるのだ。
乗り気でないブライトは反論を試みるが、このO5は用意周到で、ブライトが断れないような理由を作っている。
しかも「ブライトを過去に向かわせるのが最適」とさえ言っている。
結局、ブライトは向かう先の時代についての情報を詰め込まされ、首飾りは過去へ送られた。
ところでこのO5だが、いくつか含みのある発言が描写されていた。最後にその真相が明かされる。
XV - 悪魔: デビルアラモードの謀略
著: CRC-601、絵: sian628
新宿歌舞伎町のホストクラブ「VALKOMMEN」は、超常社会とのつながりを持っている。
そして彼らの一番の目的は、新宿から財団を排除することである。
VALKOMMENの設立者である"ネル"は、歌舞伎町を細かく監視しており、「歌舞伎町の神」とすら表現されている。
ある日、VALKOMMENの"
ラプラス"は、「別れた息子を一目見たい」という母からの依頼を受ける。
ただし、その母は
石榴倶楽部会員だし、"ラプラス"も
弟の食料品の料理人なので人肉料理を作りうる。息子を食べたいのは確定だろう。
そして、VALKOMMENに依頼が来ているということは、その息子は歌舞伎町に来ているということになるが……
その息子の名は、天。15歳であり顔は良い。
が、歌舞伎町にて、何人もの年上女性に声をかけて関係を持ち、振ったり振られたりしており、こじれた関係をもつ人物だそうだ。
普段、VALKOMMENは、子供を懐柔して(≒てなずけて)超常社会へ引き入れており、ラプラスもヘヴンの懐柔を試みた。
ヘヴンを懐柔するため、ホストで働くことを持ちかけてみたところ、交換条件として「ヘヴンが"ミク"という女性と付き合えるように協力する」ことになる。
だが、ネルがミクのことを調べると、不自然な点が浮かび上がる。
結果、「
ミクが財団の人間である」可能性が浮上した。
そして、「ヘヴンを引き入れつつミクのことを探る」計画が立案される。
計画に用いられたのは、
SCP-1321-JPだった……
XVI - 塔: 九剣の塔
著: Ruka_Naruse、絵: Phylliidae
まず、要注意団体「
黒の女王」とは、(基本的には)「さまざまなパラレルワールドに存在する
ギアーズ博士の娘たち」で成る要注意団体である。
(同じ世界に「ギアーズの娘」は基本1人だが、平行世界を合わせて何人も存在するということである)。
彼女らの一部は、特殊な場所や技術を利用して、平行世界間で交流している。
彼女らは、突如として姿を消した父(ギアーズ)を取り戻したい。
そして、彼女から家族を奪った財団に復讐したいと考えており、「財団を破壊することが目的」とされることも少なくない。
……少なくとも最初は、彼女たちはこのように考えている。
だが、心の底では、父を取り戻すことを諦めている黒の女王もいるかもしれない……
さて、黒の女王たちは、興味深い塔の情報を得た。
複数の平行世界にほぼ同時に発生したその塔には、「その周囲に剣に串刺しにされた死体が現れる」という異常性がある。
そのうえ、現実改変の異常性も持っているようだ。
とある黒の女王・カルディナは、思うところがあり、その塔へ向かう。
塔に入ると、謎の老人がおり、塔を登るように伝えられる。
塔では、積みあがってきた「変えられない過去」を追体験するような光景が見られる。
塔の最上階で再び会った例の老人が、カルディナに伝えたことは……
そしてカルディナの選択は如何に。
XVII - 星: 『星が滅ぶまで』は約束の期限として使わない方がいい - ████████████
著: Dr_Knotty、絵: n_djamena
カノン「定命種エミュレータ事例集」における、特殊な記事。
定命種エミュレータ事例集とは、非常に長い寿命を持っていたり、そもそも死ななかったり、転生したりする存在が、
定命種(寿命が一般的な長さで、転生もしない)と共生していくために相互に情報共有している……というカノン。
これ以上の詳細な設定は、記事ごとにまちまちである。
このカノンは「健常者エミュレータ事例集」から着想されたものだが、元ネタとは性質が大きく異なることが強調されている。
さて、天野恵祐(※現在の名前)は、死ぬたびに転生して、新たな人間へ生まれ変わる性質を持っている。
天野はもともと異星人であるが、故郷の星が滅んだ後に、地球の人間として転生した。
が、記憶を持ったまま転生したとして、人間としてどう振る舞えばいいのかはわからない。
現に、最初に人間として転生したときは、知らない種族にパニックしてしまい、
産声も上げずにじたばたして逃げようとしたことから、何かに憑かれていると判断され殺された(そういう時代だった)。
何度も転生を繰り返し、次第にうまく振る舞えるようになってきたが、
それでも「周囲から疑われるような振る舞い」をせずに生きられるようになるにはまだまだだ、と感じていた。
天野は、とある村に向かっていた。
その村には「おひかり様」という信仰対象と、それを祀るお堂がある。
おひかり様は「星守」とされる男性・白鳥光河に管理されているが、
天野の前世はその白鳥光河本人だったのだ。
裏のありそうなライター・西村椿とともに村へ向かうこととなった天野
読者は、白鳥光河の真相と、おひかり様の正体を知ることとなる。
そして、定命種とは何なのか、天野は定命種をどう解釈するのかが綴られていく。
XVIII - 月: 月下
著: hyoroika09、絵: hyoroika09
カノン「大正150年」に属する記事。
このカノンでは、本来15年で改元に至った大正時代が150年まで継続している。
自動人形や人間の機械化が発達し、見えない電脳網が敷かれている、それでいつつ大正の雰囲気があるという、
「SF・サイバーパンクかつ大正ロマン」といった世界線だといえるだろう。
さて、語り手は、父親の後をつけて、森林の中の小堂にたどり着く。
父は色に狂ったため離婚されたが、その原因を探ろうとしていたのだ。
語り手は、父親が去った後に、小堂へ入り込む。
中には人間型の像のようなものが、布に被さった状態で存在していた。
そして、語り手は、この布を捲ってしまった……
場面は変わり、ある写真家がインタビューを受けているシーンが描写される。
大正150年になってわざわざフィルムカメラを使うような者は珍しく、そのために取材されたのだ。
「月は永遠に美しい」と語る写真家。
しかし、写真家は、月を恐れてもいるのだという。
話が進むにつれ、写真家の裏側が明らかになっていく。
そして、そんな写真家の下に、突如郵便物が届くが……
XIX - 太陽: 陽と影は決して離れない
著: roneatosu、絵: kihaku
要注意領域神音町」。
兵庫県の南東部に位置するこの町では、呪詛事象が頻繁に発生する。
「呪詛」とは「負の情動を儀式によって具象化・現実化する行為、あるいはそれによって引き起される現象」と定義されている。
「呪詛」の一部を技術化したものが「呪術」であるが、神音町での呪詛事象はほとんどが呪術である。
ただし、神音は、呪詛を除けば一般的な町である。
財団と日本政府の協定により、神音町への財団の介入は制限されているのだ。
そして、神音町の呪詛に対処(解呪)し、呪詛を研究するのがサイト-81ETである。
呪詛や呪術の研究で最先端を行くこのサイトでは、呪術的な道具も開発されている。
また、土地柄か、呪術を使える人物も少なくないようだ。
さて、エージェントの伊方玲香は、若年ながらも解呪の実績が多い。
伊方が参加した会議で語られたのは、神音町長の幸多原敬之の汚職、および要注意団体との癒着の疑惑だった。
普通だったら幸多原は即座に確保されているだろうが、先述した協定がそれを認めない。
したがって、幸多原を秘密裏に捜査する必要があったのだ。
法律がらみの制約を、会議の参加者・東風浦澄世は煩わしく感じる。
ところで、伊方と東風浦には面識があるようだが……
その後、思いがけず同じ班になった伊方と東風浦は、(仲が悪そうだが)共同で作戦を実行していく。
政治的なサスペンスと呪術バトルが開幕する――
XX - 審判: 最初の審判
著: 2MeterScale、絵: gero_mince
カノン「
1998年」に属する作品。
このカノンでは、1998年に出現した
SCP-1710-JPの被害よって、ヴェールが崩壊してしまった。
――つまり、
財団やSCPオブジェクトの存在が、一般人に知られるようになったのだ。
財団は今でも世界を守っているが、その態度は柔らかであり、例えば異常な存在でも収容するとは限らなくなった。
異常は広く知られるようになり、テクノロジーは著しく発達する。
しかし、有害な異常現象は何度も起き、「異常」と「正常」の摩擦も無視できない。
それでも、この世界の人々は、前に進み続けていく……
そして、ヴェールが崩壊してから約1世紀が経った2090年代。
加速する技術についてゆけなかった「国家」による秩序は崩壊した。
中国北東部にはサイバーパンクで無政府状態のメガロシティが発達している。
高層ビルの隙間を縫うように飛ぶのは、人型の機体。
これは、この地で後ろ暗いビジネスを行う、叛客が操縦する機体であった。
場面は変わり、大連先端科技高校の生徒・メイウーについて語られる。
メイウーは、体を機械や生体パーツで置き換えているようだが、
これはこの地域では当たり前であるし、父の方針上メイウーもそうしているらしい。
さて、メイウーは、友人の華果と高校に向かっていたところ、彼女の違和感に気づくが……
話が進むにつれ、関連する人物の過去や真相が明らかになっていく。
そして、メイウーは突如、様々な叛客に狙われるようになる。
彼女を取り巻く真相が、戦闘と共に描かれる。
メイウーの運命や如何に。
XXI - 世界: World
著: 1NAR1、絵: Ruka_Naruse
午後のカフェテリアには、「良く当たる占い師」と呼ばれる財団職員が居る。
彼は、
タロットの、スリーカードにて占いを行っているのだ。
「こんなものに神秘性は無い」と彼は述べる――実際、彼は単なるアマチュアの占い師であり、異常な呪術師ではない。
だが、多くの財団職員が、彼に占いを乞うているのも事実であった。
彼のタロットの「世界」のカードには、彼だけがわかる目印がついている。
「世界」の正位置は、「完成」「完全」を示す、非常に良い結果のカードといえる。
そして彼は、「出産の成否」か「死者の安寧」を占うときにだけ、意図的に「世界」の正位置を出してよい、としていた。
一方で、その他の事例では、故意にこれを出すことはしなかった。
その男の占いと、男の生涯が、反復されるモチーフとともに語られる。
以上、22名の著者・14名のアートワーカーによるアンソロジーであった。
(なお、うち4名は、著者とアートワーカーを兼任している。)
余談
タロット占い
t-arotのハブページでは、上掲のタロットカードが、ランダムな種類・向きで表示される。
(おそらく)1分ごとに、カードの結果は変化する。
つまり、ハブページにアクセスすると、タロットカード1枚を用いた占いができるのだ。
気になった方は、t-arotのハブページにアクセスしてみよう。
下記の「CC BY-SA 3.0に基づく表示」内にある「Tale - Artwork Resonance On Tarot ハブ」のリンクよりアクセスできる。
Tarot in your hand
このタロットの実物が、主催のRuka_Naruse氏のBOOTHにて販売されている。
興味のある人はぜひ購入してみよう。
追記・修正はタロットで運勢を占ってからお願いします。
最終更新:2026年10月11日 00:48