特別急行列車

登録日:2011/10/19(水) 13:51:49
更新日:2025/03/19 Wed 03:54:23
所要時間:約 7 分で読めます




特別急行列車とは、普通・準急行・急行列車よりも上位の種別。
名前の由来は「特別」な「急行」で、一般的には「特急」と言ったほうが通りが良い。
英語では、「Limited Express」「Special Express」「Super Express」など。

概要

日本で最初に設定されたのは1912年に新橋~下関間で運行を開始した「1列車・2列車」で、終点下関から関釜連絡船経由で中国大陸~ヨーロッパまでを結ぶ大陸連絡列車の役割を担う国際列車だった。
その後、この列車には「富士」の愛称が設定され、これも日本で最初の愛称つき列車であった。
派生種別として、L特急・新特急(いずれも消滅)があるほか、新幹線などを「超特急」と言う事がある。

その他、特急列車は速くて早い事から、物事を急いで行う事を「(超)特急」などと表現する場合がある。
またあまりにも表定速度が遅かったり、停車駅が多い列車は「特に急がない」と皮肉られる。


各鉄道事業者での扱い

●国鉄・JR
最上位の種別で、座席指定制が原則。乗車の際は、乗車券とは別に特急券が必要。
特急券の料金は基本的にA特急料金とB特急料金の2種類で、一部の特急にはそれとは別個の特急料金が設定される。
基本的に特急専用の車両が使われ、それ以外の列車に比べて設備が良く、指定席やグリーン車が連結されている事も多い。


ほとんどの特急は専用の車両が用意されており、JRの花形、子どもの憧れ、男のロマンといえる存在なのだ。
2016年3月で国鉄・JR最後の急行列車・はまなすが廃止され、特別ではない急行列車が全廃される為、急行列車は料金制度に名を残すのみとなり*1、特別急行列車の一体何が『特別』なのかさっぱりわからない事態に。

2024年春以前で、JRの路線があるのに在来線に定期特急列車が全く走っていないのは奈良県広島県の2県であった。ただし奈良県の場合は、以前から近鉄特急がかなりの高頻度で運行されており、また京都や大阪が近く、快速電車で十分といったことが理由として考えられていた。そして昨今の着席需要に応える形で、実に57年ぶりとなる定期の特急列車『らくラクはりま』が2024年春より運行を開始。これにより定期特急列車が走っていないのは広島県のみとなった。

●私鉄
基本的に最上位の種別だが、一部事業者では、「快速特急」「快特」などのさらに上位の列車がある。また、通過する下位種別が存在する特急停車駅もある。

別料金が掛かるかどうかは、会社によってまちまち。
無料列車には一般の通勤車両が使われる場合(京王、阪神など)がある。その場合は、他列車との違いが停車駅・所要時間のみとなる。
こういった無料列車でも専用の車両を用意している私鉄も特に関西に多く、それらの車両の設備は有料特急には劣るものの、一般の通勤車よりはグレードが高いものとなっている。
また、名鉄、南海、京阪のように特急車と通勤車をひとつの編成に連結させ、特急車を指定席車両のようにして運転している私鉄もある。
さらに名鉄は「ミュースカイ」、南海は「ラピート」と全車指定席の有料特急も走らせている。
これに加え、名鉄では一部に特急専用車を普通や急行列車として使う運用もある。
京阪も特急用の2ドアクロスシート車である8000系に「プレミアムカー」を1両連結し、一部座席指定有料列車として運用されている。
この車両は「プレミアムカー」が平屋なのに対し、2階建て車両が普通車という意外な使い方をしている。

この他、通勤車両としても使用できる車両を「座席指定の有料列車」として特急とは別の専用種別で走らせている列車がある。
京浜急行の「ウィング号」は2ドアクロスシート車の2100形を使用しているが、通常の快特運用でも全く同じように使用している。
上記の京阪8000系も通常の快速特急・特急運用以外に全席指定の「ライナー」を専用種別で使用している。
東武の「TJライナー」、西武の「S-TRAIN」、京王の「京王ライナー」はロングシート・クロスシート切り替え機能を装備しており、専用列車以外ではロングシートで他の通勤車両と同じように使用されている。また、京急の「ウィング号」には同様の装備を持った1000形の1890番台が使用される。


いろいろな特急

  • 快速特急、快特
特急の上位種で、京浜急行電鉄、京成電鉄、名古屋鉄道、阪急電鉄、京阪電気鉄道に存在。
特急という種別へ更に速さを表す冠詞「快速」を付けたもので、「快速特別急行」といえる。速さのインフレ。
普通は特急が最上位で、下に急行や準急が続くため、特急より上は比較的珍しい。
京浜急行は略称である「快特」が正式名称。京成も直通先の京浜急行に合わせて「快特」が使用されていたが、2010年7月17日以降は「快速特急」を正式名称として使用している*2
阪急電鉄は土休日のみ運転の「京とれいん 洛雅」が「快速特急」として扱われており、2022年まで運行されていたは「京とれいん」は「快速特急A」扱いだった。
京阪電気鉄道は快速特急「洛楽」が運行されており、全列車が有料座席車両プレミアムカー連結となっている。
昔、京浜急行には「通勤快特」なる種別もあった。

  • 準特急
阪急電鉄に存在する種別。神戸本線と京都本線に設定されている。
神戸本線は特急停車駅に塚口駅と六甲駅が、京都本線は同停車駅に西院駅と大宮駅が加わる。
また京王電鉄にも2022年3月11日まで設定されていた。

  • 通勤特急
東急や阪急など一部の私鉄で平日朝夕ラッシュ時のみに通常より1~3駅停車駅が多いか少ない「通勤特急」が運転されている。
「通勤」なので平日ダイヤ限定…かと思いきや、京成本線の成田空港から出る京成上野行き終電として休日ダイヤに設定されていたこともあった
相鉄にも通勤特急はあるが、東急直通線方面限定種別であることと、直通先によって色を変えて案内するシステムに従い自社のラインカラーを発車標や車両で表示しない。
なお、阪急の通勤特急は関西の事業者では唯一「通勤」を使用する種別となっている。
JR西日本では、「らくラクはりま」・「らくラクびわこ」・「らくラクはりま」のいわゆる「らくラクシリーズ」に「通勤特急」という呼称を用いているが、これは単なるブランド名に近い。強制的に指定席、しかもA特急料金のため通常価格だけ見ると他所の有料特急と比べてバカ高いのは内緒。

  • 直通特急
山陽電気鉄道と阪神電気鉄道、Osaka Metroと阪急電鉄で運転されている種別。略称は「直特」。
定期列車で設定されているのは山陽~阪神のみ。

山陽・阪神の列車は赤地に白で表示される「赤直特」と黄色地に青文字で表示される「黄色直特」があり、赤直特は神戸高速線内の西元町・大開・西代の三駅を通過する(黄色直特は神戸高速線内各駅停車)。
また、赤直特は山陽電鉄線の起点駅である西代駅を通過し、自社運転列車が自社線の起点駅を通過する珍しい列車でもある。
また、阪神・山陽電車内の停車駅(甲子園・白浜の宮・荒井・滝の茶屋)も時間帯・上り下りで差異がある。

OsakaMetro・阪急は春と秋の行楽期の土日祝日に運転されており、堺筋線天下茶屋駅・神戸高速線高速神戸・宝塚線宝塚の3駅を始発として阪急嵐山駅まで運転されている。
また、関西圏の地下鉄線で通過運転をする唯一の列車でもある。

  • 区間特急
一部区間で各駅に停まる種別。
阪神本線の平日朝ラッシュ時に阪神御影~阪神梅田間で梅田行きのみ運転している。
上位種別である特急及び直通特急(以下特急に統一)の停車しない駅に停車する所謂「千鳥停車」をしているため特急の停車する西宮駅に停車しない。
(ちなみに現ダイヤにおいて阪神線内で特急が停車し下位種別が停車しない駅は近鉄の車体長の問題で快速急行が停車出来ない御影駅を除くと西宮駅のみである。)
2016年3月19日のダイヤ改正までは阪神なんば線との乗り換え駅である尼崎駅も通過していた。
昔は各停区間以外では区間「特急」という名に恥じぬ飛ばしっぷりをしていたが、今や
御 影~魚 崎 特急・急行
魚 崎~今 津 各停(西宮は通過)
今 津~甲子園 急行
甲子園~尼 崎 特急
尼 崎~梅 田 急行
と特急の停車駅である区間よりも急行の停車駅である区間の方が長くどちらかと言うと区間急行のような停車駅である。
(なお阪神本線には区間急行が走っており、こちらは梅田~甲子園間の運転である。)

  • S特急
山陽電鉄で下りは深夜に阪神神戸三宮発(土休日の1本は高速神戸発)山陽姫路行きが、上りは朝に高砂発阪神神戸三宮行き(土休日は東二見発阪急神戸三宮行きも)が運転されている種別。略称は「S特」
S特急の「S」は「Service」「Smart」「Speedy」「Short」等の英単語の頭文字から採られたもので、一般公募により付けられた物である。
山陽電鉄線内で運転されている他の特急に比べ停車駅数の格差が大きく、他社における急行のような立ち位置の種別であるが、前身が通勤特急であり、この列車とは別の性格を持つ急行が山陽電鉄に休止中として存在しているため特急という種別を名乗っているものと思われる。
西元町駅と舞子公園駅は上位種別である直通特急(西元町駅は一部列車のみ)と特急が停車しているがこの列車は通過する所謂「千鳥停車」をしている。
なお、山陽電鉄本線内において阪神線から直通してくる須磨浦公園駅・東須磨駅止まりの特急(通称:阪神特急)を除くと現ダイヤでは唯一1本も山陽姫路駅発の列車がない種別である。
(2016年3月19日のダイヤ改正までは山陽姫路駅発のS特急も設定されていた。)

  • 甲特急、乙特急
近鉄における特急種別だが、旅客案内には原則使用されない。
甲の方が上位で、大阪(大阪難波or大阪上本町)・京都・名古屋と名古屋・賢島間のみで走っている。
南大阪線系統と奈良線(布施~近鉄奈良間)を走る特急は一種別しかないため、全て乙特急扱いされる。

  • L特急
かつて国鉄→JRが1972年から一部の特急列車に対して使用していた呼称。この認定がされた列車は時刻表やヘッドマークに「L」を図案化した記号がつけられていた。
制定当時は当時増収策として急行の特急格上げによる大増発が図られており、その際料金が高く利用しづらかった特急列車の大衆化を図るため、「数自慢、かっきり発車、自由席」をコンセプトにしたイメージ戦略の一環として「L」を冠された。なおL特急の「L」の由来は謎である。
しかし、特に定義があるわけではないので次第に乱発されるようになり、JR化後はそれぞれの会社方針でL特急の扱いについて差が生じるようになった。
JRになった時点で既に特急列車が特別でなくなっていたこともあって各社「L特急」の看板を外すようになり、2018年3月ダイヤ改正で最後までL特急の名を冠されていた「ひだ」「しなの」「しらさぎ」がL特急指定解除されるのをもって名称が消滅した。

  • 新特急
かつて国鉄→JRが東北本線や高崎線を走行する特急に1985年から使用していた呼称。特急のさらなる利用拡大を図るため、定期乗車券+自由席特急券での利用が可能であり普通車全車自由席という当時としては画期的な方策がとられた。
……といえば聞こえはいいのだが、この列車群、「通な方々」からは白眼視の対象だった。何故ならこのニックネームの背後には、使用車両を含めた国鉄末期の大人の事情を満載したある意味後ろ向きな営業方針があったからである。
まず、エル特急は特急列車の大衆化という一種のブランド向上戦略だったのに対し、新特急……というか使用車両の185系が、本来は急行形として開発された車両なのにもかかわらず、言うなれば「急行形のサービスレベルの車両で特急料金分捕っちゃおうぜ作戦」のせいで無理矢理特急に使用された結果、近郊型とたいしてサービスレベルが変わらないことになってしまったからである。
さらに両路線はただでさえ快速列車が強く急行列車とも遜色がないのにもかかわらず、新特急の所要時間はほぼ快速と同じであった。なら長距離輸送は、と言おうにも、東北本線にも高崎線にも新幹線が並行しているので……。
流石に民営化後に185系をまともな特急型としてリニューアルしたものの微妙な立ち位置は相変わらずであり、2002年にJR東日本がL特急の名称を廃止した際に諸共「新特急」のニックネームも消滅した。
2025年現在、新特急の系譜にある列車は「あかぎ」と「草津・四万」のみだが、両者ともJR東日本の営業方針変更から数少なめ、普通列車の隙間に強引に挿入、全車指定席と「新特急」の姿は見る影もない。


●通過する下位種別が存在する特急停車駅の例

一部の湘南が停車するが、湘南新宿ライン特別快速は通過する。

あかぎが停車するが、快速アーバンは通過する。

すずらんが停車するが、特別快速エアポートは通過する。

東京メトロ千代田線と直通する一部の特急ロマンスカーが停車するが、快速急行は通過する。

急行は通過する。

東海道新幹線の各駅停車に相当するこだまが停車するが、在来線は全ての快速系統種別が通過し、普通列車のみの停車である。
新幹線は特急列車の扱いであり、特に東海道新幹線は東海道線の線増として建設され、また新幹線・在来線共に同じ鉄道会社が保有しているというやや特殊な例である。

  • 阪急神戸本線・今津線西宮北口駅
準急は通過する。

  • 阪神本線西宮駅
前述の通り区間特急は通過する。

大阪上本町⇔鳥羽発着の一部特急が停車するが、快速急行は通過する。
なお、奈良線系統は特急・快速急行どちらも通過する。




追記・修正は超特急でお願いします。


この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • 特急
  • 特別急行列車
  • 鉄道
  • 電車
  • ゆず
  • 種別
  • JR
  • 列車
  • 大手私鉄
  • 私鉄
最終更新:2025年03月19日 03:54

*1 不定期に設定される臨時急行の時に使われる

*2 快特(かい「と」く)」だと発音の関係で快速(かい「そ」く)との区別が付きづらくなるため、2007年8月16日以降は駅構内や車内では「快速特急」とアナウンスしていた。