おおすみがたゆそうかん
艦種 |
輸送艦 |
建造期間 |
1995年~2003年 |
就役期間 |
1998年~就役中 |
排水量 |
基準:8,900トン |
満載:14,000トン |
全長 |
178m |
全幅 |
25.8m |
深さ |
17m |
吃水 |
6m |
機関 |
三井16V42M-Aディーゼルエンジン (13,000ps) |
2基 |
推進器 |
2軸 |
速力 |
最大22ノット |
乗員 |
約135名 |
兵装 |
高性能20mm機関砲(CIWS) |
2基 |
搭載艇 |
エアクッション艇1号型 |
2隻 |
レーダー |
OPS-14C 対空捜索用 |
1基 |
OPS-28D 対水上捜索用 |
1基 |
OPS-20C 航海用 |
1基 |
電子戦 対抗手段 |
Mk.137 デコイ発射機 |
4基 |
海上自衛隊公式紹介動画
概要
おおすみ型輸送艦とは、海上自衛隊が保有する輸送艦である。1998年から2003年にかけて3隻就役。
名目上は輸送艦だが、型番上での分類は戦車揚陸艦(LST)となっており、実際の分類はドック型揚陸艦のLPDに相当する。
ヘリの離発着は出来るが、固有音格納スペースや整備能力を持たないため、強襲揚陸艦には当たらない。(ただし、
いずも型ないし
ひゅうが型とコンビを組めば、強襲揚陸作戦は可能と考えられる。)
おおすみ型1隻の建造費は272億円前後とされている。
艦内後部のウェルドックには2隻の輸送用ホバークラフトを搭載しており、大きな船体と見通しの良い全通飛行甲板のお陰でヘリコプターの発着も容易であることから、従来の輸送艦よりも輸送揚陸能力が向上した。
陸上自衛隊の部隊であれば、330名の一個普通科中隊戦闘群と装備品を搭載でき、民間人は約1,000名が収容可能。この隊員の人数は資料によって前後するけど大体300から350の間。また、優れた医療機能も備えている。
「おおすみ」は海上自衛隊初の全通甲板型の輸送艦である。これにより、国際貢献任務や災害派遣など多種多様な任務に対応が可能となった。今でこそ本格的なヘリコプター運用が可能な
いずも型護衛艦などがあるが、当時この見た目は衝撃的だった。
先代のみうら型は基準排水量2,000tだったがおおすみ型は8,900tと四倍以上であり運用方法も大きく変化。
それまでの
自衛隊の輸送艦は艦首が観音開きで船底は平らだった。この理由は、船体をそのまま浜辺に乗り上げるビーチングという方法で艦首から車両やら人員やらを下ろすため。
……ただし、こんな形状だと波の影響が大きくなる。
(具体的に知りたい場合は風呂で洗面器を湯船に浮かべてみればわかりやすいと思う。)
その他にも、天候によっては上陸も出来ず長期航海にも向かないなどの弱点があった。
これらは理屈ではわかっていたが、海上自衛隊の補給艦、輸送艦として初のカンボジアPKO派遣(1992年)で痛感することになる。
航海中、台湾とフィリピンの間にあるバジー海峡では低気圧の影響で船がものすごく揺れ、多くの陸上自衛隊員が深刻な船酔いに悩まされた。
居住環境は最悪。スピードも出ず3週間もこんな感じだった。小さい艦のため単独では動けず、補給艦も随行して各種支援も必要になった。
そのためこの反省を生かし、船体を大型化して長期航海に適し、かつ多数の車両やヘリコプターなどを運べるような艦を作ることになった。
それが本型。
アメリカ海軍のドック型揚陸艦を参考に、ビーリング方式を止めてホバークラフト型の輸送艇を搭載する
LCAC、エルキャックという方式を採用した。
これは母船を出ると時速約130kmで航行可能(積載時はもっと遅くなる)で、そのまま浜辺に乗り上げることも出来る。これが揚陸戦にかなりの速さをもたらした。
おおすみ型の最大の特徴は全通甲板だが、後部甲板のみを2機分のヘリ甲板として使い、艦橋構造物横から艦首までは車両甲板として用いる。そのため、ヘリ空母と形状こそ似てるけど全くの別物。
艦内には広い空間が確保されている。74式戦車を12両搭載できる車両格納スペースに、前述の1,500人分の居住スペースも有り。艦尾には上記のLCAC2隻分のスペース。
しかし航空機用の格納庫はなく、ヘリコプターなどの航空機は露天甲板に繋留駐機するしかないため、軽空母的な運用は難しい。
今後のおおすみ型は島嶼防衛強化型へと改修を行う予定。水陸機動団の創設に伴い、主力装備である水陸両用車のAAV7を運用できるように艦内及び艦尾ハッチを改造する。さらにV-22の運用も出来るようにヘリ甲板に耐熱処理を施し、エレベーターも大型化。PKO型補給艦は島嶼防衛型輸送艦へと生まれ変わるのである。
おおすみ型は揚陸艦としては酷評されている。ヘリが整備できず、エレベーターが小さいため同時に2機以上のヘリコプターは離発着できない、固有の揚陸手段はLCACだけだしウェルデッキは乾式で注水ができないなど。つまり通常の揚陸艦としての運用が難しい。
しかし、建造当時は海上自衛隊は強襲揚陸作戦を行わないと公言しており、おおすみ型は揚陸艦ではなくただの輸送艦であるとしている。
見た目は空母同様全通甲板を持ちながら、ヘリがハンガーで整備できるわけでも、同時に多数のヘリの離着艦が出来るわけでもない。1番艦の「おおすみ」にはヘリ離発着時の安定性を向上させるためのフィンスタビライザーすら装備されていなかった。
フィンスタビライザーは2番艦から装備され、後から「おおすみ」にも追加された。これは「おおすみ」が空母か否かの議論が収まってから装備したという見方もできる。
おおすみ型は就役以来、多くの災害派遣活動で救援物資輸送などでその優れた能力を発揮している。
しかし、おおすみ型は3隻しかなくローテーションを考えると常時出動が可能なのは1隻になる。そのため、海上自衛隊では大規模災害などが発生したときの輸送力不足が懸念されてる。
フィリピンなどの海外に災害派遣した時は、離島奪還訓練で上陸部隊を輸送できなかったりもした。一応
ひゅうが型等のDDHにも輸送能力はあるが、本来の用途ではないため、輸送に特化した艦艇が必要である。
日本にはおよそ7,000個の離島があり、離島防衛のために海上輸送力の充実はとても重要である。
LCAC用格納庫と全通甲板で高い輸送、揚陸能力を持つ本型は、海上自衛隊の輸送能力向上にのみならず、自衛隊全体の戦略機動性を高める結果となった。
航空機格納庫を持たないのが弱点である。
おおすみ型の構造と車両搭載のプロセスは基本的にカーフェリーと同じ。車両は船体両舷のサイドランプから艦内へ自走で乗り入れ、エレベーターを使い第1と第4甲板へ移動させる。
艦尾にはウェルデッキがあってエアクッション揚陸艇を2隻搭載可能。
ヘリは専用の格納庫を持たないため露天駐機しかできない。ローターブレードを外せば車両甲板を使用可能となる。
普段は硫黄島などの離島にある自衛隊基地に対して物資の補給や資材の輸送などをしてる。
3隻とも巡視船に同名船が存在しており、「おおすみ」はPLHで他2隻もPLである。
詳細な性能
最上甲板の前半部(第1甲板の露天部分)が搭載面積約1,200㎡の他、艦体内の第4甲板にも長さ100m×幅13mの車両甲板搭載面積役1,000㎡が設けられていて車両は艦体両舷の高さ7.6m×幅5mのサイドランプから車両甲板へ直接出入りする。
第1甲板と第4甲板の間の車両上げ下ろしには第4甲板の車両甲板前瑞エレベーター(力量20t長さ14m×幅6m)と艦橋構造物後方のエレベーター(力量15t)を使用する。
戦車は第4甲板にのみ収容可能である。
また戦車を搭載した場合、第4甲板へのトラック収容能力は減少する。
第4甲板の車両甲板は、前部エレベーターの前方部分を除く大部分で甲板分の高さを確保しており、その上の第2甲板の上はギャラリーデッキを形成している。
第2、3甲板には、上院居住区とは別に、数区画にわけられた陸自隊員用の居住区が設けられており、1隻で完全武装した陸自隊員330名と戦車など中隊相当の戦闘群を輸送できる。
第1輸送隊に所属する3隻の全力なら隊員2,000名、戦車1中隊、特化1個大隊などの普通科連隊戦闘団半個の輸送が可能。
また、被災者などの民間人を輸送する際には車両甲板などのその他スペースも活用して最大で1,000名を収容可能。
舟艇運用能力
あつみ型やみうら型など、海上自衛隊が、おおすみ型以前に使用してきた輸送艦には物資を揚陸する際には直接砂浜に乗り上げるビーチング方式を採用していたが、おおすみ型では艦内に2基を搭載する
エアクッション艇1号型を使用して揚陸を行う。
ビーチングだと揚陸に利用できる海岸が世界の海岸線の15%ほどだったのに対して、ホバークラフトによる揚陸では世界の海岸線の70%程度が利用できるとされている。
また、従来用いられてきた上陸用舟艇の設計を踏襲した交通船2150号型も搭載できるが、こちらは普段は呉基地での港内支援任務に従事している。
舟艇に車両を搭載する場合は、第4甲板前部の車両甲板から直接に自走して乗り込む。
資材の搬入、搬出は艦橋構造物、煙突横に設置されたクレーン(力量15t)で行うことも出来る。
LCACを運用する場合は艦尾門扉を開くだけで良いが、交通船等の舟艇を運用する場合はバラストタンクに注水して艦尾を下げることでドックに海水を導く必要がある。
船体姿勢制御のためのバラスト水は約1,300~3,000t搭載できる。
ただし現状では、バラストポンプの能力不足のため、艦尾側水深を2.4m程度とするためには、注水に約1.5時間を要する。
なお、アメリカ海軍のホイッドビー・アイランド級ドック型揚陸艦では、本型の約2.2倍の大きさのウェルドックに対して、漲排水の水深は艦首側では1.8m、艦尾側では3.0mとなる。
LCACは大量の兵員や銃火器などを投入する能力が低いこと、また同規模のアメリカ海軍ドック型揚陸艦がLCACを3隻搭載しているのに対して、本型の搭載数は2隻であることから、従来のLSTが揚陸艦としての機能に重点を置いたのに対して本型では補給艦としての機能に重点を置いていることも指摘される。
また、島嶼戦闘能力強化の必要からまず平成26年度のおおすみの定期点検において、LCACのスカート部分の改修で、Conventional skirtから Deep Skirtに変更するに伴う浮揚高度上昇に対応するためのウェルデッキ天井部上昇に対応するためのウェルデッキ天井部クレーン撤去と、AAV7水陸両用装甲兵員輸送車両運用のためのLCAC甲板中央部分へのすべり止め施行が行われた。
更に次回定期点検時には第1エレベータの耐荷重向上や注排水能力強化、艦尾門扉の開閉機構の強化。
飛行甲板への耐熱塗料施行。LCAC甲板内バターボードの追加施行、3段から4段等が計画されている。
航空機運用能力
ヘリコプター用の格納庫やエレベーターはなく、固有の搭載機は持たない。
必要に応じて陸上自衛隊の輸送ヘリコプターを搭載、運用するとされており、航行しながらヘリコプターを発着艦させる機動揚陸戦ではなく、漂泊ないし錨泊状態での海上作戦輸送方式が前提とされた。
ヘリコプター甲板には、
CH-47J/JA輸送ヘリコプターの駐機スポット、離発着スポットの各1個が設定されている。
甲板にはアメリカ海軍のニミッツ級航空母艦やタラワ級・ワスプ級強襲揚陸艦、ひゅうが型ヘリコプター搭載護衛艦と同じ滑り止め剤のMS-440Gが施されている。
前甲板の車両用エレベーターの力量20tはUH-60系ヘリコプターの揚降に対応しており、第4甲板の車両甲板を航空機格納庫として転用することが出来る。
この場合、ローターブレードをすべて取り外す必要があるため、エレベーターでの揚降状態と飛行可能状態との転換には相当の時間を要する。
スマトラ沖地震被災地への人道援助活動のため、3番艦「くにさき」が陸上自衛隊のヘリコプター5機を搭載して派遣された際には
UH-60JAは、ブレードを外して第4甲板の車両甲板に収容されたものの、CH-47JAは防錆シート等で梱包されて上甲板に搭載された。
航空機整備能力は持たないため、
UH-60JAの整備はしらね型ヘリコプター搭載護衛艦「くらま」で行い、陸上自衛隊のCH-47J/JAについては派遣期間中、点検以外の整備はできなかった。
1番艦「おおすみ」には、概要のようなヘリ離発着の安定性を向上させるフィンスタビライザーという横揺れ防止装置が政治的判断から装備されず、2番艦からの装備となった。
後に、平成18年度防衛庁(当時)予算において、国際緊急援助活動に対応するための大型輸送艦の改修費としてスタビライザー取り付け改修費用が予算化され、同時に航空燃料の容量も増大。
就役当初にはなかった戦術航行システムも搭載。
2013年6月14日に実施された日米共同演習、ドーン・ブリッツ13にはアメリカ海兵隊のMV-22Bが「しもきた」に着艦している。
また平成26年度以降、オスプレイの運用に対応した改修が計画されている。
作中での活躍
LST-4001 おおすみ
現在は、
ムーを侵攻中の
グラ・バルカス帝国陸軍を迎え撃つべく、陸上自衛隊第7師団を民間船とともに輸送し上陸させることに成功した。
上陸させた規模等は現状不明。詳細待ちである。
LST-4002 しもきた
LST-4003 くにさき
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〔最終更新日:2024年05月06日〕
最終更新:2024年05月06日 16:02