04式空対空誘導弾

まるよんしきくうたいくうゆうどうだん

日本国航空自衛隊の視程内距離空対空ミサイル(WVRAAM)。実在する。

※出典:航空自衛隊岐阜基地飛行開発実験団HP 実用試験時の物(https://www.mod.go.jp/asdf/adtw/adm/shiken/kakoshiken_missile2.html
諸元
全長 2,860mm
全幅 440mm
直径 126mm
重量 83.9kg
動力 固体燃料ロケットモーター(推力偏向装置付)
近接信管 アクティブ・レーザー
中間誘導 慣性誘導+指令誘導
終末誘導 赤外線画像誘導
性能
最大速度 M3.0
射程距離 35km


概要


04式空対空誘導弾(AAM-5)は防衛省技術研究本部と三菱重工により開発された国産の赤外線誘導短距離空対空ミサイル(SRAAM)である。
90式空対空誘導弾(AAM-3)の後継として1991年から開発に着手し、2004年に採用された。

特徴


AAM-5の特徴は高い機動性と優れた誘導性能である。

機動性

新たに装備された推力偏向装置によって、高い機動性を持つAAM-3と比較しても隔絶した機動性を持っており、固体燃料が尽きる前であれば180度近い方向転換も可能である。
AAM-3では前翼が動翼だったがAAM-5では後翼が動翼になっており、外観上の特徴である本体中央部の細長い前翼は整流用のストレーキである。
後翼を操舵翼としているのはAIM-9XやIRIS-Tも同じで、推力偏向装置と連動する事で高い機動性を発揮する。

シーカー

シーカーには赤外線画像誘導式が採用されており、赤外線の放出量だけで目標を認識する通常の赤外線誘導とは異なり、目標の形状まで認識するため、赤外線誘導ミサイルの妨害に用いられる一般的なフレアがほとんど通用しない。
またシーカーの首振り角も大きく取られており、前述の高機動性に加えてヘルメット装着式照準器(HMD)と組み合わせることで、機体に装備されているHUD(ヘッドアップディスプレイ)では捉えることができない真横に位置する敵機への攻撃も可能なほど高いオフボアサイト(非砲口照準)能力を有している。
さらに、ミサイルを発射した後に照準を付ける発射後ロックオン(LOAL)も可能である他、射程距離もAAM-3の倍以上に廷伸している。

調達価格

AAM-5は高性能ではあるものの、その代わりに調達価格が先代のAAM-3の約3倍、MRAAMであるAAM-4とほぼ同額にあたる1発あたり約5,500~6,000万円に上がっている*1
しかし、同世代のSRAAMであるAIM-9X サイドワインダー2000が米軍導入価格で1発あたり約40万ドル、完成品輸出額では1発あたり120万ドル以上である事を考えると、さほど高額とは言えない。

搭載機

AAM-5の持つオフボアサイト能力やLOAL等の性能を完全に発揮させることが可能なのは、JHMCSの運用能力を持つF-15J改のみである。
但しAAM-3との互換性が確保されているため、LOALが出来なくなる等の性能制限があるものの、ランチャーを改修していればPre-MSIP型のF-15Jでも運用は可能で、実際に2013年頃からAAM-5を搭載したPre-MSIP機がアラート待機任務に就いている。
F-2については、2010年よりAAM-5対応型ランチャーの開発が行われており、能力向上改修により運用能力が付与されると思われる。

能力向上型の開発


2011年から、能力向上型AAM-5の開発が開始され、2015年に04式空対空誘導弾(B)(AAM-5B)として採用された。開発経費は約60億円。
AAM-5からの主な変更点は、以下の通り。

  • 二波長赤外線(遠赤外線+中赤外線)画像シーカーを採用。
  • シーカーの首振り角拡大。
  • シーカー冷却をガス式からスターリングクーラーへ変更。

最初の項の改修により、高性能化したフレアを発射しつつ赤外線を乱反射する雲海を利用して回避を試みる目標であっても十分追尾可能になっている。
二番目の項の改修によってオフボアサイト能力の向上が図られており、ほぼ同時期に開発されたAIM-9X Block2では交戦範囲が真後ろまで拡大していることから、AAM-5Bでも同様と考えられる。

最後の項については、AIM-9Xでも導入されている技術で、空中給油機の導入により長時間の空中警戒が可能になったことに対応したものである。
赤外線誘導ミサイルは目標が発生する熱源を感知する関係上、シーカーを冷却しておかなければ誘導することができないという弱点がある。
このため、赤外線誘導ミサイル内部に設けたタンクの冷却用ガスを用いて冷却を行うのが一般的だった。
しかし、ミサイル内に設けることが出来る程度のガスタンクでは長時間の冷却は不可能であり、これが戦闘機の空中警戒飛行時間のボトルネックとなっていた。
そこで、電力さえ供給できれば冷却時間に制限のないスターリングクーラー式に冷却方式を変更することで、上記の問題を解決している。

作中での活躍


明記されていないが、ロウリア王国東方征伐軍ギム司令部攻撃時に、爆装したF-2の護衛としてクワ・トイネ公国のエジェイ基地から出撃したF-15J改が、ギム上空直衛にあたっていたワイバーンに対する攻撃で使用している可能性が高い*2
はっきり明記されているのは、93式空対艦誘導弾(ASM-2)装備のF-2の護衛として築城基地から出撃したF-15J改による、警戒飛行中のパーパルディア皇国海軍竜母艦隊所属のワイバーンロード攻撃時である。
またエストシラント空爆においても、制空任務のF-15J改が離陸中の第18竜騎士団第3飛行隊のワイバーンオーバーロードへの攻撃に使用している。

グラ・バルカス帝国ムー侵攻時において、F-2アルー避難民を追撃するアンタレスへの攻撃時に使用している。

AAM-3同様、「ワイバーンには反応するが、導力火炎弾には反応しない」様に誘導シーカーが調整されていると思われる。

随時加筆願います。
関連項目
兵器自衛隊日本国

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過去のコメント
  • よくわからんことがあるんだけど、赤外線画像認識っていうのは、航空機みたいな常時高温を出すものではなく、ワイバーンみたいな生き物相手にも有効になるほど低温の敵も感知できるのか? - 名無しさん (2018-08-12 16:47:20)
    • 出来なくも無い、 - 名無しさん (2018-08-29 16:59:14)
    • 対戦車や対艦で使われてる通り普通に可能、ロックオン可能な距離は短くなるかもしれんけど - 名無しさん (2018-08-29 18:21:57)
      • 嘘はいけないぞい、04式空対空誘導弾は対地対艦攻撃モードは用意されてないし母機の火器管制も非対応だぞい。 その上で、出来なくも無いが現実的な答え、シーカーはIIRなので中赤外線での目標追尾ができるけどシーカーのドット数は非公開、恐らくAIM-9Xよりは上なので目標が極端に小型でもない限り追尾できる、よって人間が乗って戦える程度のサイズのワイバーンなら恐らくミサイルは追尾モードには移行する。 ロックオンから発射までのプロセスはミサイルの性能は関係なく母機の火器管制の処理能力とレーダーの性能に左右され、日本のF-15は無人偵察機や大型ドローン程度はロックオンできる他、LOALでマニュアル誘導もできるのでロックオン距離は短くならない。 母機からの誘導後、追尾モードに移行しロストせずに目標追尾し続けるかは現実では事前にテストして調整しないと当らない可能性もある。(まぁ近しい性能のAIM-9Xは熱を殆ど発しない上に小型の攻撃目標である大型ドローンや電動の小型無人機を落とせてるので多分当たるとは思うけど) - 名無しさん (2018-08-29 22:37:25)
        • 赤外線画像認識の採用はAAM5より前のASM2や96マルチで使われてる日本では一般的な誘導方法だぞ?温度差が小さい艦艇と海面、車輌と地面を識別できるのに対空用になったら識別不能になるのはおかしいという話なんだが。つか、IIRミサイルの特徴として正面や側面の敵機も攻撃可能だからその程度の温度なら普通に識別可能 - 名無しさん (2018-08-30 03:03:29)
          • >IIRミサイルの特徴として正面や側面の敵機も攻撃可能だからその程度の温度なら普通に識別可能 誤り。 IIRだからできるのではなくシーカーのセンサー可動域の拡張とLOALと中間誘導能力が寄与されたからできるのであって画像解析誘導とは何の関係もない。 また対空用に最適化されたシーカーと対艦・対地用のシーカーを同じ物とするのは軽自動車とスポーツカーを同列するのと同じくらい的外れな主張、識別に関しては予め目標の形状データを入力しそれと中赤外線シーカーが捉えた目標形状を比較し赤外線センサーの画像も合わせて目標を追尾する、その過程でワイバーンが変温動物であり低空での交戦だった場合赤外線センサーは補足できず、中赤外線センサーの画像のみで判断する、ワイバーンの形状が航空機からかけ離れていた場合認識しない可能性もある。 恐らくはちゃんと追尾するとは思われるけど絶対ではない。 - 名無しさん (2018-08-30 17:14:20)
            • 赤外線画像認識全般の話をしている相手にAAM5の赤外線画像認識の話をしているという間違いを起こしている件。通りで会話が成立しないと思った - 名無しさん (2018-08-30 20:53:49)
              • 長文書く奴って変な奴多いよな - 名無しさん (2019-07-14 01:05:06)
    • 航空機の発する熱量と生物の熱量とは全く違う為、同一の赤外線シーカーでは対応出来ない。可視光のシーカーを使用しなければ、生物相手にロックオンは出来ない。 - 名無しさん (2020-03-04 17:56:49)
    • 導力火炎弾をフレア扱いにして、ワイバーンそのものを敵機判定する様に調整すれば出来るかも。技術者じゃないので正しいかどうかは分からん。 - ドリフ提督 (2020-04-12 14:27:50)
  • 1発当たりの調達価格が高いなぁ。ワイバーン用にもっと小型化して搭載量を増やせる対空ミサイルの開発はどうだろう。結局誘導装置と推力偏向装置が肝だからあんまりコストは下げられないのかな? - 名無しさん (2022-10-28 11:58:46)
    • ワイバーンが飛び立つ前に飛行場や空母を撃破した方がずっと安上がり - 名無しさん (2022-11-03 13:25:09)

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〔最終更新日:2021年11月03日〕

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最終更新:2021年11月03日 23:38
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*1 制式化以降、概ね80発/年程度調達している様である

*2 漫画版ではAAM-3を使用