「死神はただ、世界の為に回る歯車であればいい」
「無論、私自身も含めてな」
成田良悟氏執筆の『
BLEACH』スピンオフ小説である、『BLEACH Spirits are forever with you』の登場人物。
ゲーム『Brave Souls』での担当声優は
佐藤拓也
氏。
スピンオフ出身のキャラだが公式のファンブックでも名前が登場している。
更木剣八の3代前にあたる八代目「剣八」の襲名者で、
歴代剣八の中でも最強と謳われた当時の十一番隊隊長である刳屋敷剣八を決闘の末に殺害して勝利し、
入隊試験を受けず、隊長の座と剣八の名を襲名した死神。
本編時点ではある事件から反逆者扱いされて禁固19500年の刑を言い渡され無間に収監されたために、
特例として剣八の名は決闘を経ずに当時の副隊長に引き継がれていた。
無感情・無表情という言葉を絵に描いたような男であり、
何よりも効率を重視し、「無駄」なことを徹底して嫌う合理主義者。
死神はただ使命を果たす歯車としてあるべきだと考え、
その職務に余計な矜持や感情を持ち込むのは、無駄としか見做していない。
尸魂界最強の称号である「剣八」の名にも何の執着も無く、
死神の中で最も分かりやすく実力を揮える異名が、目的のための道具として有用と考えていたため。
しかし、効率的に使命を遂行するためなら如何なる手段も厭わない一方で、
彼の現役時代を知る
京楽春水からは自身の知る限りで最も使命に誠実だった死神と称しており、
初対面の
狛村左陣も「話に聞いていたような悪逆の徒と思えなかった」という第一印象を抱いた程。
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戦闘能力 |
斬魄刀の能力こそ強力だが、鬼道にも長けており、
後述の能力で操作した義骸越しに数百発もの鬼道の攻撃を放てるほど。
過去の出来事をきっかけに始解はおろか具象化・屈服といった成長手順を全て無視して、覚醒と同時に卍解まで行き着いた稀有な斬魄刀。
そのため始解は名称・解号共に不明で、使用者である痣城すら知らない。
能力はあらゆる物質・生物との「融合」、及び「融合」した対象を同化・支配するという非常に強力なもので、
小説時点での融合範囲は瀞霊廷全域にまで及んでおり、融合範囲内で起こった事象を全て知覚できるだけでなく、
融合した無機物を支配・改造して自在に操作したり、空気と同化して攻撃の無効化・瞬時の移動を行うなど、
藍染惣右介の鏡花水月と比肩するとさえ言われている程に反則的な規模を誇る能力である。
世界そのものと一体化しているために、隊長格でも膨大な霊力を消費することから数時間しか維持できない卍解状態を半永久に維持可能で、
さらにその状態でも高度な鬼道を連発できる程。
強力な能力だがいくつか代償や欠点も存在する。
まず、生物と融合することも可能だが、強い拒絶反応により使用者がダメージを受ける。
このため、やろうと思えば敵と融合して即死させることも不可能ではないが、痣城も使用することを極力避けている。
次に、卍解の使用中は魂魄そのものが固定され変化しない、すなわち鍛錬や成長によって自らの力量を高めることができない。
つまり卍解したままでは霊力にせよ肉体にせよレベルアップすることができないのである。
故に雨露柘榴の能力を除いた痣城の力は外見通りの優男でしかないが、彼は膂力を無駄なものと切り捨てている上に、
空気と融合することでほとんどの攻撃を素通りさせることができるため問題視していない。
最後かつ最大の弱点として、卍解発動中は霊子レベルで霊子そのものを吸収する攻撃に極端に弱いことが挙げられ、
融合範囲内で使用されると通常の数十倍の痛手を魂魄全体に受ける。
この性質上、空気中の霊子を吸収する滅却師は上記の通り空気と同化していると自分自身の霊子を吸収されるため相性最悪の天敵である。
斬魄刀の本体は黒い革帯で目隠しした扇情的な格好の女性。
使い手とは対照的に無駄な事を好む享楽家。
現役時代は能力は周囲にはひた隠しにしており、諸事情で本体と遭遇した浦原及び夜一以外には知られておらず、
いくつもの憶測が流れていたようで、その過程で付けられた称号の1つが本編で一貫坂慈楼坊が継いでいた「鎌鼬」である。
上記の通り卍解取得者は解号無しで発動可能なため、痣城も更木と同じく名前すら知らない。
卍解と異なり直接攻撃系だが、卍解で瀞霊廷全域と融合できるほどの莫大な霊子を凝縮した状態の刀剣は、
双殛の矛すらも遥かに超越した「最強の矛」と称される程に絶大な攻撃力を誇る。
卍解時程の利便性はないが、直接攻撃力だけなら実は始解の方が上である。
ただし、使用するには当然卍解を解除しなければならず、そうすると融合は全て解除される。
つまりそれは痣城が長い時間をかけて瀞霊廷全域まで広げた融合を台無しにするのと同義であり、
再度同じことをするには少なく見積もっても1年はかかり、その間に 涅マユリあたりに融合できないように対策されるのが目に見えており、
本来であれば使うに越したことは無いはずだったのだが……?
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来歴及び劇中の活躍
旧名は痣城双也。
かつて死神としての力で名声を得ていたものの時を経るにつれ堕落し、
代わりに財力で恐れられるようになった貴族の一族・痣城家に生まれだったが、
財を狙う貴族によって姉共々冤罪をかけられ一族を滅ぼされ、最後に見世物として姉と共に虚と戦わされる目に会う。
処刑人は虚を倒せば助命すると約束し、恐怖で動けない双也を生かすために、
姉は「双蓮蒼火墜」を暴発させ相討ちとなり命を落としたが、
処刑人は約束を破って新たな虚を放ったことで、姉が無駄死となってしまった事実に絶望した所で、
虚の牙が迫った瞬間に、精神世界に引き込まれ雨露柘榴直々に力を与えられ脱出。
あらゆる方法で罠に嵌めた貴族達を惨殺するも心は癒えず、
姉の遺した「強い死神になって」という言葉だけを胸に彷徨い続けた。
やがて、隊長の座と多少の横暴は許される「剣八」の名を得るために、刳屋敷剣八に決闘を申し込み、
雨露柘榴の能力で深刻な反動を負いつつも、相手の肉体に融合し筋組織や心臓の結合を緩め切断することで勝利する。
致命傷を受けながら辛うじて生存した刳屋敷が、慕う隊長の死を受け入れずに激昂した部下達を止めるために始解を使い、
叱責するために怒号を上げたことで消耗し生存の可能性を捨てたことを、矜持による無駄死と侮蔑した。
だが、今際の際に彼が先代の剣八として送った「ある言葉」を無駄な意見として記憶の彼方に捨てた一方で、
その「無駄な言葉を言われた」というこの時の出来事の記憶だけは、釣り針が引っ掛かったように彼の記憶にこびり付いていた。
それにより隊長となった痣城は、やがて流魂街の住人全ての魂魄を改造して虚圏へ侵攻させる計画を立て
*1、
実現不可能と見下していた四十六室も承認するが、罪人で実証した瞬間に痣城に反逆で矛先を向けられる可能性を憂慮され、
強引に中止させられた上に冤罪を掛けられる。
痣城は横暴を無視し、一人で実行しようと流魂街を目指し隊長格含む数百人の死神を打ち倒すが、
彼1人を止めるために
零番隊が出動したことを察知し、無駄な戦いを避けるため投降した末に無間に収監された。
その後は長い年月投獄されていたが、藍染が
黒崎一護に敗れて投獄された後、
瀞霊廷に侵入したロカ・パラミアの反膜の糸の能力を融合した空間越しに感知して脱獄。
かつての大逆の際に店員に怪我をさせた慰謝料を支払うために眼鏡屋「銀蜻蛉」に立ち寄ったり、
綾瀬川弓親から彼の藤孔雀を奪って姿を消すなどの行動を起こした後、痣城への対策のために一番隊舎に集まる隊長達の前に現れ、
「現世の人間全ての脳と魂魄の一部を改良し虚となる要素全てを排除するという」という自身の目的について説明する。
当然ながら隊長達からは賛同を得られず、
平子真子からは1日100人改造しても60億の魂を全て手を加えるのに万単位の年月がかかり、
その目論見が叶う前に輪廻転生のバランスが崩れるから現実問題無理だと指摘され、
山本元柳斎重國からはそれ以前の問題として守るべき対象を都合の良いように改造するなど言語道断と一蹴されるが、
痣城はロカの「あらゆる物質と繋がり、霊力や情報を共有する」特性を持つ反膜の糸を用いれば机上の空論ではないとした上で、
かつてはどんな合理的で非情な戦い方も辞さなかったとして尊敬していた総隊長の変わり様を嘆き、
また賛同者を得られなかったことで無駄な時間を過ごしたことに溜息を吐きつつ、死神のあり方を説いて撤退。
痣城討伐の命を受け、彼が標的とするロカを探しに現世へ向かった更木剣八及び十一番隊、
偶々遭遇して滅却師十字を没収したがロカの糸で織った複製で戦う
鎌鼬石田雨竜、
そして反膜の糸のシステムを取り込むためロカを狙うシエン・グランツと、ロカの争奪戦を繰り広げる。
……しかし、ひょんなことからロカと遭遇して行動を共にしていた、ただの人間「ドン・観音寺」の存在が、
痣城の目論見を大きく狂わせることになる。
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ネタバレ注意 |
乱戦の末に一度撃退されつつ遅れて現れた更木の霊圧が上がっているにも拘らず眼帯を外していないことを訝しむものの、
ロカの確保よりもまずは自分を倒す術の無いシエンと隊長格ながら卍解取得前の一護にすら負ける程度の実力しかない更木を打ち倒すことを先決と決め、
ヤクザから銃器を奪うなどの準備を整えつつ、観音寺に連れられ逃げたロカを追跡。
途中、破面ピカロと戦闘する十一番隊に銃器と融合させた義骸の群で助勢するも断られたことで、
排除を決め三つ巴の戦いを繰り広げつつ、グレネードランチャーと融合させた義骸をバイクに乗せて遠隔で操り、
ロカを追うが痣城では開く術がない黒腔に逃げられ、再び現世に現れることを予見して現世での融合範囲を広めておこうとしたが、
ピカロの使用した想定外の霊子吸収能力「菓菓楽土」により融合した空間ごと攻撃されて30秒程気絶。
その間、雨露柘榴によって姉の最期を夢の中で見せられたことが原因で、以降は少しずつ感情を乱すようになっていく。
集中するために無駄な感情を整理しようとするが、この時にドン・観音寺に対して謎の苛立ちを感じていたことを初めて認識して、
死神でも虚でも滅却師でもないただの人間に何故そんな感情を抱いたのかと疑問を抱く。
自衛隊から盗んだ様々な兵器と融合させた軍用ヘリで銃撃を加えながら二人の前に現れるが、
ロカの横槍でシエンが立ち去ったことで、更木と相対し、
雨露柘榴の融合能力で使役した軍用ヘリによる銃撃を囮とし、
融合した数百の義骸を鬼道「双蓮蒼火墜」で互いに焼き尽くさせ、
山本総隊長が藍染にも大ダメージを与えたのと同種である犠牲破道「一刀火葬」を数百同時に発動するという絶技を披露。
黒腔と現世の境界を裂き、僅かに漏れた炎だけで空座町周辺の気温を10℃高める程の火炎を直撃させて、
更木の霊圧が消えたことを確認して倒したと確信するが、
観戦していた 草鹿やちるの口から更木がまだ元気だと聞かされて *2、
少女の妄言を否定することが出来ず火柱を見つめる中で、平然と現れた更木に初めて恐怖を抱き、
ありとあらゆる物質、元素から精製した銃器を融合させ、天を衝く程巨大な融合体を作り出すも一撃で破壊され、
無間から融合した空間越しに痣城の動揺を見抜いた藍染の言葉から、更木の強さの秘密に辿り着く。
更木がかつて眼帯を外しながらも卍解取得前の一護に負けたのは、彼が未熟な隊長だからではなく、
眼帯の効力抜きでも無自覚のうちに相手と斬り合いを楽しめる段階にまで霊力を本能で抑え込んでいたためで、
先の戦いで一護の急激すぎる成長速度に開放が間に合わなかったためである。
しかし、無駄を嫌う痣城はRPGで言うならば相手のHPを丁度ゼロにするのを狙うように、
何度も必要最小限の攻撃で仕留めようとしていたのが完全に裏目に出て、
更木のリミッターを加速度的に開放させてしまっていたのであった。
更木の一撃で現世へと叩き出される形で敗北を喫し、自分が捨て足りなかったのだと認識し、
劣等感と自身への苛立ちを感じながらも、本人曰く無駄な希望に縋りロカを探し続けた結果、
幸運にも彼女が観音寺の前に現れるのを見つけ出すが、
短剣で貫いてなおロカを庇い逃げようとしない観音寺に湧き上がる苛立ちをどうしても排除できず、
内心無駄な行為と感じつつも、心をへし折るべき「敵」と認識して戦いに応じる。
隊長格の死神である痣城とただの霊能力者に過ぎない観音寺との力の差は歴然だったが、
先の出来事で観音寺に手懐けられていたピカロが加勢に入る。
ピカロの吸収技および破面の群れに気付いて更木が自分の所に現れることを警戒して撤退かロカへの融合かで迷うが、
満身創痍でありながら表情を変えない観音寺が車に乗って自身へと向かうのに気付き、
苛立ちを通り越して湧き上がる憎しみと殺意から彼を倒すのではなく始末することを決意。
最も得意とする「双蓮蒼火墜」を放とうとするが、観音寺は目前でピカロが開いた黒腔に消えた。
「ああ、そうだ! それでいい! それが弱者の正しい姿だ!」
「私は貴様を卑怯と責めたりはすまい! お前は何も間違っていない!」
土壇場で観音寺が保身のために逃亡したと認識して憎しみの感情を消失すると同時に高揚感を抱くが、
実際には観音寺はまだ諦めておらず黒腔を通じて上空から不意打ちを仕掛けようとしていたのであり、
これに気付いた痣城は再び苛立ち、空気と融合し素通りさせて観音寺の負け顔を見ようと考えるが、
その目に映った観音寺の姿に、かつて自分を庇い虚相手に玉砕した姉の面影を見出してしまい激しく狼狽。
結果、偶然にも観音寺が拾っていた霊圧を喰らう更木の眼帯をステッキに巻き付けていた事に気付くのが遅れ、
融合した空気ごと霊圧を食われて大ダメージを受け、融合が解けた体に、
「観音寺流最終奥義・観音寺弾キャノンボール」を叩き込まれたことで双蓮蒼火墜を暴発させて自滅同然の形で敗北。
朦朧とする意識の中で、自分の苛立ちの対象が観音寺ではなく巨大な力を前に姉を護れず怯えて何もできなかった幼き日の自分自身だと気付き、
重症を負い、更木が接近することに気付きながらも、自分に過去を拾い直させた観音寺に最大の敬意を持って感謝の言葉を送り、
更木の一撃を避けることなく受け止めた。
断界で意識を取り戻し、痣城が満足していないだろうという理由から勝負を続けようとする更木に、
痣城の戦い方は、弱者が強く思わせようとする戦い方だと指摘される。
それを認め見透かされていたことに自虐するが、それでなお自分を強者だと称する更木の言葉を聞き、
かつて殺した刳屋敷の「いずれお前の前に剣八の名を懸けて決闘を挑む者が現れるからその時は本気でぶつかってやれ」
という最期の言葉を思い出したことでようやくにして「剣八」の名の意味を理解し、
雨露柘榴を自身の手札で攻撃力だけなら最強の始解に戻し、更木との決闘を受けて立つ。
互いに渾身の一撃を繰り出し大きな傷を与え合い痣城は敗北して姿を消すが、
弓親に藤孔雀を、そして石田に滅却師十字を返却するなどした後
霊圧を追ってきた京楽に刳屋敷の墓に酒を供えることを頼み、無間へと戻った。
そこでの藍染との語らいを通して、更木の自分が負けることを見越していた藍染への意趣返しとして、
彼も予想できなかったであろう出来事として自分に臆さず立ち向かって結果的に打ち負かしたドン・観音寺の存在を語り、
そこで彼が崩玉と一体化した藍染にさえも高校生の少年少女達を助けるため歯向かっていたという事実を当の藍染から聞き、納得の表情を浮かべる。
語り終えた後、痣城は独房の中で自身に原液の超人薬を打ち込み、精神内で雨露柘榴と再会した彼は、
解号すら知らない彼女の無駄話が、自身を止め正しい道に導こうとするものだったことに遅まきながら気付き、
これまでに無駄として捨てた全てを拾い直し改めて雨露柘榴の力を手に入れることを宣言し、長い精神の旅に出たのであった。
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MUGENにおける痣城剣八
Mounir氏による、『
JUS』風
ドットを用いた
MUGEN1.0以降専用の
ちびキャラが公開中。
主に飛び道具を駆使した遠距離戦主体の性能となっており、
必殺技も戦闘ヘリと融合した攻撃など広範囲の物や、
敵の動きを止めて拘束するものがある他、一定時間無敵になる
特殊技もある。
超必殺技では小説でも用いた融合した大量の義骸による「一刀火葬」の重ね掛けを行う。
AIもデフォルトで搭載されている。
出場大会
*1
痣城の投獄後に残された改造計画の資料を引き継ぎ、それを下地に義魂丸に改造を用いて戦闘用
改造魂魄を作り、
流魂街の住人を戦闘要員に改造するのではなく死体に改造魂魄を入れて戦闘要員にすれば良いという理屈で、
「
尖兵計画」を立案したのが護廷十三隊侵軍篇アニオリキャラの由嶌欧許である。
つまり痣城は
コン誕生の元凶のさらに発端とも言える。
*2
実際には無意識のリミッターがさらに外れて上がった更木の規格外の霊圧に当てられた痣城の感覚が狂い「感知できなくなっていた」だけ。
要は1話で
朽木ルキアが一護のすぐ側にいながら彼の力を見誤ったのと同じ理屈である。
最終更新:2025年04月04日 12:59