この異聞帯のアルトリアは人ではない。
「楽園の妖精」と呼ばれる妖精種にして、六章の舞台である妖精國における伝説の存在「予言の子」である。
楽園の妖精とは1万4千年前にセファールの来襲の際、
ある理由から(詳細は モルガンの項目参照)鋳造されなかった聖剣エクスカリバーの再発注の為に星より遣わされた存在で、
聖剣の作成にはその時代の人類の在り方を材料にする必要があり、彼女はいわばより優れた聖剣を象るための集積器である。
より詳細に言えば、役割を放棄した先代に変わり派遣された2代目の楽園の妖精である。
「予言の子」としての責任感こそあるが、覚悟の下で王の道を歩んだ汎人類史の騎士王と異なり素の普通の少女のまま育ったためか何かと卑屈になりがちで、
さらに嘘や悪意を見抜く魔眼「妖精眼」を有しており、オンオフできないまま言葉の裏表を否応なく察し、
たとえ 善意でついた嘘でも裏があると分かってしまうため、根は悲観主義者。
千子村正には 「おまえさん、戦いには向いてないよ」と、 依代の少年が汎人類史の騎士王に投げかけた言葉のような評価をされている通り、
何かと卑屈になりがちで「予言の子」としてのモチベーションを使命感にのみ依存しており、
そのくせ自分のためには怒れない性格の持ち主である。
騎士道精神も皆無で、必要とあれば奇襲や盤外戦術も辞さない。
とはいえ、それ以外は汎人類史の騎士王とは基本的な思考回路は同じで、すぐに猪突猛進になりがちな部分は特に良く似ている。
彼女の来歴は悲惨という言葉では生暖かい程に壮絶である。
彼女は楽園の妖精であり、故に「亜鈴の子」からは本能的に忌み嫌われ、
家畜以下の環境で育てられてきた事、寒さで足の指を欠損してしまっている事等が作中で語られている。
さらに妖精眼の存在故に彼女は妖精達が口では身を案じていても本音では打算でしか行動しない本音が視えてしまい、
歳を重ねていくに従って彼女は「あんな醜い妖精なんて救いたくない」という考えを持つようになったが、
しかし彼女は一方で周りの空気を気にしており、言い争いをするのもめんどくさい、憎しみ合いたくない、嫌われたくない、という想いもあり、
「はいっ、任せてください!」と周りが望むがままの行動をして取り繕ってしまっていた。
唯一、ある日楽園から彼女と一緒に流れ着いた「選定の杖」を通して会話する「マーリン」と名乗る存在とは相応に交流を結び、
様々な魔術を教わったが、それも妖精の横槍が入った結果1年で終わり、旅立つ日まで選定の杖は取り上げられてしまった。
やがて彼女はひょんな事から出会ったエクターという鍛冶屋を営む妖精と交流を結ぶようになる
(汎人類史のエクターはマーリンにアーサー王を託されて養父となった老騎士であり、円卓の騎士の一人であるケイ卿の実父)。
このエクターは身分を隠していたが先代の楽園の仲間であった黒騎士であり、2000年以上の歳月を隠遁生活を送る形で過ごしていたが、
アルトリアと出会い、自身の身分を隠しつつ彼女の支援を行おうとしていたのである。
ところが頑固なエクターを疎んだ妖精達が、予言の子なら始末できるはずだとアルトリアに彼の殺害を依頼してきたのである。
いつものように断るのすら疲れるからと、望まれる事を、望まれたように依頼を引き受けたアルトリアだが、彼女にエクターは殺せなかった。
何とか取り繕うと考えていたキャスターだったが、こっそり様子を見ていた妖精により糾弾され、
予言の子を偽る存在として彼女は牢に入れられてしまい、モルガンの腹心ウッドワスの処刑舞台に差し出されかける。
しかし、間一髪で「選定の杖」を取り返してきたエクターに救出され、村が大炎上していた混乱に乗じて脱出 *1。
その際に「悪妖精」となり果てた妖精達から受けた傷が元で死にゆく彼を見届けながら送り出された。
エクターに鼓舞され、旅を始めたアルトリアだが、色々な所を周りはしたものの、
やはり妖精からは「予言の子」は疎まれる一方で、人間からも従来からの妖精嫌いが祟り嫌われる始末。
ある時辛くなった彼女は訪れた者の記憶を消す「名無しの森」へ行き、一時だけ「何者でもないわたし」になろうとしたが、
彼女に「名無しの森」の忘却効果は一切効かず、コーンウォールの村でも記憶を失くしたフリだけをせざるを得なかった。
だが、 マシュとはぐれて漂着した 主人公と出会った事が、彼女の命運を大きく左右する事になる。
主人公と共に「予言の子」としての巡礼、そして妖精國を治める女王モルガンの打倒のために旅を続け、
ウッドワスとの激突や オベロンやガレスとの死別などの出来事を経ながらも、必要な条件である「鐘」を全て鳴らす事に成功したアルトリア。
やがてモルガンが倒され、新女王のノクナレアも謀殺された事で抑え込まれていた大厄災が発生するが、
ある妖精の懇願を聞いたコヤンスカヤという意外な助太刀のおかげでカルデア共々難を逃れ、
さらにモルガンが倒れた事で自由の身になったマーリンの導きで星の内海・アヴァロンへ足を踏み入れ、
アルトリアは使命を果たすため選定の場にその身を捧げようとする。
そこで彼女の悲惨な記憶を見た主人公は憤るが、アルトリアは気にする事なく指名を果たそうとした。
本音全てが視えるからこそ、彼女はブリテンも、妖精も、人間も嫌っていた。
巡礼の最中で見た 汎人類史の自分の事も、「気持ち悪い」としか思えなかった。
それでも彼女は何か一つ、裏切れないもののためにその身を犠牲にした…… はずだった。
何とその場で千子村正がアルトリアの身代わりで聖剣の材料になったのである。
元々人理最優の刀鍛冶であると同時に異星の神の手で神霊と融合していた彼は、
アルトリアにも劣らない聖剣の「材料」としての資質があったのだ。
かくしてアルトリアは、主人公とマシュに「聖剣の基型」を渡す。
聖剣「エクスカリバー」の形にはできなかったが、カルデアの技術でこれを素に予てより話していた異星の神に対抗する決戦術式が作れる算段が付いた。
同時にこうしてブリテンの間違いは正され、成立する前提を失った妖精国は今度こそ他の異聞帯と同じく消滅するはずだった。
しかし、今存在する厄災は手をこまねいていれば汎人類史にも牙をむく以上、ここで倒さなければならない。
生き延びたアルトリアは主人公と共に、厄災との戦いに同行する。
本来既に呪いの厄災については戻っても手遅れという状況にまでなっていたが、
庭から脱出していたマーリンが既に呪いの厄災に幻術をかけていた事で、
今まで起きた事は一旦無かった事になり、再び詰み状態になるまでの僅かな間猶予が生まれ、
パーシヴァルの犠牲や、妖精騎士との縁により英霊の座から駆け付けたガウェイン、 ランスロットの協力により、
「炎の厄災」と「獣の厄災」は辛くも打倒され、残るは「呪いの厄災ケルヌンノス」のみとなった。
やがてケルヌンノス相手にカルデアが応戦する中で、アルトリアはモルガンがキャメロットに準備していた12門のロンゴミニアドを用いて、
「呪いの厄災ケルヌンノス」の打倒を試みる。
「厄災」は憎しみによるものではなく、怒りと嘆き、何より「この生き物達を放置してはいけない」という「責務」だと理解しながら、
それでもケルヌンノスは間違っていた、罪を与えるだけでなく、罰を許すシステムを、罪人達が許される刻を決めるべきだったと語り、
玉座に設置されたロンゴミニアドを発動させる。
それは本来天才であるモルガン用に調節されたもので、他者には本来使用が不可能な代物であったが、
アルトリアは術式を同じ神装兵器である事を利用してロンゴミニアドからエクスカリバーに変換し、
呪いの厄災の外層を9割方を吹き飛ばし核を露出させて、カルデアの勝利に貢献した。
……自分自身を犠牲にする形で。
死したアルトリアの魂は、楽園の使命を果たしブリテンを終わらせた事への怨嗟の声の中にいた。
大量の悪意に心が折れそうになるアルトリアだが、気付くと誰かが自分を庇っていた。
それは、かつてコーンウォールの村で出会った「名無しの妖精」。
やがて少女の目の前でモースとなってしまい介錯された妖精であった。
森で名前を無くした事を悲しんでいた妖精に、アルトリアは名前を貸していた。
アルトリアにとっては投げやりになっていた所での気まぐれの行動であったが、
彼女にとっては取るに足らない出来事でも、妖精はその恩に報いるために少女をずっと守っていたのだ。
少女は気付く。自分だって妖精と変わらないのだと。
他人には下らない理由に映るかもしれないが、自分達は「そんなどうでもいい理由」のために頑張って生きたのだと……!!
所変わって、ブリテンでは主人公が真の黒幕である「 奈落の虫」と対峙していた。
既に厄災との戦いでカルデアは満身創痍で、キャスターの クーフーリンは退去し、
妖精國では人類の歴史が無いため汎人類史のサーヴァントは召喚できず、
例外的に妖精騎士とのギフトが縁で駆けつけられた円卓の騎士達も活動限界は過ぎた。
もはや主人公に逆転の目はない事を「奈落の虫」は嘲笑うが、主人公は希望を捨てていなかった。
「こい、キャスター!!!!」
「『異邦の魔術師』との契約に基づき、召喚に応じ参上しました。」
「奈落の虫」の見立ては9割正しかったが、彼は一つ重大な見落としをしていた。
「妖精國のアルトリア」が死して守護者と化していた事で、英霊アルトリアが召喚可能な状態になっていたのだ。
村正が聖剣の身代わりになり、妖精が彼女を奮い立たせ、呼び水となる主人公が健在であったため、この奇跡は起きたのであった。
そしてケルヌンノスもモルガンも恐れた「奈落の虫」であったが、この状況は彼にとって最悪であった。
何故なら彼の同位体は汎人類史でアーサー王、つまりアルトリアに敗れていたのであり、
モリアーティが ホームズに勝てないように、メイヴがチーズを受けると死ぬように、アルトリアに絶対勝てない因果を持っていたのだ。
かくして、守護者となった「アルトリア・アヴァロン」と共に主人公は「奈落の虫」を打倒。
今度こそ、本当にブリテンと人理を護り切り、役目を終えたアルトリアは座へと帰り、主人公の壮絶な妖精國攻略も完遂された。
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詳細 |
第2部六章をクリアするとマテリアルが一斉に入れ替わり彼女の真実が全て開示される他、
第一~二霊基宝具は「選定の杖」によってアルトリアの心象世界を開放し、
楽園より響く鐘の音で共に戦う者達を守り、強化する「きみをいだく希望の星(アラウンド・カリバーン)」だが、
第三霊基以降は妖精國での使命を果たし「ブリテンの守護者」となったアルトリアの宝具である、
黄昏のキャメロットを顕現させ、共に戦う者に「円卓の騎士」のギフトを与える「真円集う約束の星(ラウンド・オブ・アヴァロン)」となる
(ゲーム内の効果は同じ)。
他にも資料によってはエクスカリバーやロンゴミニアドと同列に扱われる使用者を影に潜ませるとされる短剣「カルンウェナン」、
汎人類史ではラムレイ、ドゥン・スタリオンと並びアーサー王が所有すると言い伝えられている馬の名を冠する剣「スピュメイダー」、
ヘラクレスが所持していたとされるローマ神話の火の神ウルカヌスに鍛えられた神話礼装「マルミアドワーズ」を魔術触媒として所持している。
ぶっちゃけセイバーの霊基より剣の宝具を多く持っているがこの状態が聖剣の騎士としての概念が具現化した存在、
いわば歩く聖剣図鑑と化したためらしい。
なお、この第三霊基のアルトリア・アヴァロンはアルキャスとは別に「A・A」という愛称がある。
2部六章の主人公は彼女とされており、同章公開後に2部後期OP曲「躍動」は彼女の歌と公式から明かされている。
なお、アルトリア・キャスター、FGO主人公、2部六章の黒幕には、
「一個人が成すには重すぎる使命を望む望まないに拘らず背負わされ、代わってくれる者もいなければ帰る場所も無い」
という共通点がある。
2022年夏のコミケにて型月から頒布された『Avalon le Fae Synopsys』によれば、
第2部六章の初期案ではアルトリア・アヴァロンがグランドセイバーとして登場予定であったようだが、最終的には没になったらしい。
ただし、第2部七章のある人物の回想で描写された七騎のグランドクラスとの戦いに参戦していたグランドセイバーは彼女と同じ姿であったが、
このグランドセイバーがアルトリアかどうかは断言されていない。
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