ティアマト


かえってきて───かえって───
もういちど、わたしのもとに───

もういちど───もういちど───

いえ───いいえ───

もうにどと───もうにどと───

わたし を あいさない で

ティアマトとはメソポタミア神話における創世の神の一柱で、
他作品では『ファイナルファンタジーVIII』や、
とある村役場を総辞職させる彗星聖剣伝説 LEGEND OF MANA』等でも取り上げられてきたが、
本項目ではTYPE-MOON発売のゲーム『Fate/Grand Order』に登場するキャラについて解説する。
担当声優は 悠木碧 女史。

+ ※注意 この項目には『FGO』のネタバレしかありません
第一部の最後の特異点の物語である7章『絶対魔獣戦線バビロニア』のラスボス。
伝承において、メソポタミアの神々は真水であるアプスー、塩水であるティアマトから生み出されたとされ、
その後、子供である神々は原父アプスーに反旗を翻し世界の支配権を獲得するが、
夫への愛より子供達への愛が勝っていたティアマトは子供達の行為を穏やかに容認した。
しかし、神々は母であるティアマトにさえ剣を向け、ティアマトは嘆き、狂い、新しい子供として十一の魔獣を産みだしてこれと戦うが、
戦いの末、ティアマトと十一の魔獣は敗れた。神々は彼女の死体を二つに裂き、天と地を造り、これを人界創世の儀式としたとされる。
しかし型月世界にてこの伝承は完全な噓ではないものの本質を突いていない。

型月世界のティアマト神とは生命を生み出す「原初の海」、
つまり、まだ惑星に生態系が確立されていなかった原初の時代に生命を生み出した土壌そのものである。
しかし、それは同時にティアマトという神性はただ存在しているだけでランダムに「生命」を生み出す存在であるという意味で、
だからこそ生命体が星に準じた知性を獲得して生態系が確立した後は、この神性はもはや全自動ブラックバス放流装置のような、
既存の生態系を破壊する邪魔者でしかなくなり、並行世界でもなければ、一枚の敷物の下にある旧世界にでさえない、
世界の裏側──生命がおらず生まれることもない虚数世界に追放されてしまったのである。
ティアマトが自分の意志で新たな生命体の誕生を止めることは不可能。それは人に対して呼吸しないままでいろと言っているのと同義である。
故に世界は善悪抜きにしてティアマトを拒絶しなければならず、そしてティアマトは抵抗して殺し合った。
憎悪ではなく、ただ両方に「分かり合えない」「共存できない」摂理があったが故に。

かくして虚数世界に追放されたティアマトだが帰還を諦めることはなく、
そして第一部の黒幕であるゲーティアの手で帰還に成功した彼女は、
現存の生命体である人類を一掃した後、新生命体達の母へと返り咲こうと試みた。
7章に登場したティアマトは人格らしきものは確認できない。
理想を失くしたのか、始めから理性が無いのか、どちらとも取れる。
しかしどちらにせよ、この彼女は「母」という存在を極めて単調化したシステムのようなもので、
ただ子供を産み、育て、愛でる事だけを存在意義としており、しかし、これを否定されたために人類を排除しようとする「脅威」でしかなく、
それは用済みとして捨てられた恨み・憎しみ・悲しみや、自分の脅威を除こうとする防衛本能もあるが、
何よりもう一度地球の生態系を塗り替え、全ての母に返り咲く「喜び」に耽るために殲滅の道を選んだ生きた大災害に他ならない。
以上の本性を以って彼女のクラスは決定された。創世の神など偽りの名。
其は人間が置き去りにした、人類史に最も拒絶された大災害。母から離れ、楽園を去った罪から生まれた最も古い悪。
冠位の守護者グランドサーヴァント七騎を以てしか対抗できない人理を喰らう獣のクラスの一角、
「回帰」の理を持つ人類悪「ビーストII」である。

その力は第一部の他の特異点に登場した他のラスボス達全員を遥かに凌駕しており、
封印状態のファム・ファタール時でも保有する魔力量は七つ分の聖杯を上回る超々々級魔力炉心と比較することさえままならず、
この時点で水爆に匹敵する魔力の行使を可能とし、ペルシア湾に居ながらにしてウルクを吹き飛ばすことが出来る程。
また、体内には膨大な生命原種が貯蔵されており、あらゆる眷属をほぼ無尽蔵に生み出すことができる。
作中では黒泥「ケイオスタイド」から1億を超えるサーヴァントに匹敵する怪物「ラフム」を生み出しており、
中でもティアマト直属の11体のベル・ラフムは、個としては魔神柱すら上回る魔力を持っている。
自己改造、個体増殖、生体融合と様々な権能を持つが、何より強力なのが「塩基契約(アミノギアス)」で、
ティアマトの発生させるケイオスタイドに触れた生命体を侵食し、細胞クラスでの意思束縛が結ばれ、強制的に自身の眷属としてしまう。
さらに、人類悪に共通するスキル「単独顕現」の効果で時間移動を用いたタイムパラドクス等の攻撃は無効化し、
加えてあらゆる即死系攻撃をキャンセルしてしまう。
何よりティアマトの特性において最も特筆すべきは、ティアマトは存在全てが生命の源そのものであるため「死」という概念を持たず、
同時にティアマトが全生命の母という事自体が「地球上に生きている生命体がいる」という理屈で逆説的に彼女の存在を証明してしまう事にある
(生命が存在する→なら人類含め生命の起源であるティアマトが存在するはず
 →ならティアマトが死ぬ=「存在しない」状態はおかしい→生命体がいる限り不死身)。

総評して1騎で世界を滅ぼせる攻撃力、無尽蔵に戦力を生み出せる創造能力、普通の環境下では絶対殺せない不死性を備え、
型月のボスキャラにありがちな「普通では勝てない相手だけど突かれたら格下相手でも負けてしまう特定の弱点」が一切無い、
全く付け入る隙が見当たらない理不尽すぎる敵で、Dr.ロマンの分析結果に対してあのギルガメッシュすら「ええい貴様ティアマトの太鼓持ちか!」
と思わず八つ当たり気味に怒鳴ってしまう程であった。

+ 劇中における活躍
ティアマトは人理定礎の崩壊の黒幕であるゲーティアが送り込んだ聖杯の力により、虚数世界から第七特異点メソポタミアへ帰還を果たした。
ソロモンに扮したゲーティアはロンドンにて「七つの特異点を全て消去したならその時初めて解決すべき案件として相手をしてやる」
と主人公に言い残していたが、これは「特異点の起点である聖杯を7つ集めてみせろ」という意味ではない。
そもそも第一から第六までの特異点はゲーティアがあらかじめ人理定礎が大きくなる時代を見越し、
その時代に現れるように設定した聖杯を使って、ソロモンの子孫である魔術師達が事を起こした結果発生したもので、
カルデアもそう考えてソロモンが生きた時代よりも後世の時代を調べて特異点を探していたが、
第七の特異点だけはゲーティアが自らが存在した時代より過去に聖杯を送り人類史の土台を破壊したもの。
つまり、この最後の聖杯をどうにかしないかぎり、他の一から六の特異点を修復しても人理の焼却は止まらのである。
だが、当初はマーリンの魔術によって死なない限り眠りから目覚めない状態にされており、特異点崩壊は水際で食い止められていた。
そして第六特異点で神霊化して千里眼を得ていた獅子王の助言により、ついに第七特異点の時代をカルデアが突き止め、覚醒前に主人公達の介入を許した。

しかし、エルキドゥの亡骸にかつて軍団の長の神の精神性の再現を宿して誕生した「キングゥ」主導で復活が画策され、
そして自らの神性を取り込み同期していたゴルゴーンの消滅に伴い、「一度死ぬ」ことで眠りから覚め、早々にマーリンを消滅させる。
さらに放ったラフムに用済みとなったキングゥから聖杯を奪い持ち帰らせることで完全に顕現した。
最初に現れた頭脳体(ファム・ファタール)は自身を拘束していたが、
これを本体と勘違いしたカルデア陣営が破壊したことにより枷が解かれた姿(巨神状態)となり本格的に行動を開始。
その本能に従って人類掃討に乗り出した。
ケイオスタイドの浸食と自身やラフムの攻撃を以てメソポタミアを蹂躙し最後の砦となったウルクをも飲み込まんとするも、
ケツァル・コアトル、ゴルゴーンと化したメドゥーサの宝具、そして叛旗を翻したキングゥの「天の鎖」による足止めを受け、
イシュタルの全力の権能によってウルクの地下に相転移された、生きた生命体のいない冥界に物理的に叩き落されてしまう
(主人公達カルデア一行は別の時代から来た異物扱いでこの特異点の「生きた人間・生命体」に含まれない)。

これが原因で上述したティアマトの不滅の要因の一つであった存在証明を一時喪失。
おまけにイシュタルの冥界下りの伝承の如く冥界ではエレシュキガルの許可がなければ神性がマイナスに働く、
弱いものはそのままだが、強いものは弱くなるという、神々を無力化するシステムにより大幅に弱体化。
自身の霊基をジュラ紀にまで回帰させた真の姿(巨竜状態)になってしまう。
それでもなおケイオスタイドとラフムで冥界を飲み込み、創世神としての権能で冥界を逆に侵食し、
地上へ脱出を図ろうとするが、アヴァロンから徒歩でサーヴァントではないマーリンの本体が駆け付け、
ケイオスタイドの生命を生み出す権能を魔術で綺麗なだけの無害な花を生む効果に変えられてラフムを生める数が激減し、
さらに山の翁こと初代ハサンの冠位を返上した一撃*1によって翼を壊され死の概念を付加され、冥界という地も相まって完全に可殺状態にされてしまう。
焦りを見せながらも冠位英霊資格者二人からの追撃を強引に凌ぎ、地上まで300mという所まで到達したティアマトだったが、
冥界故に先刻死んだギルガメッシュがアーチャーとして加勢。
慢心の無い英雄王の助力を受けた主人公の攻撃で霊基核をついに砕かれ、跡形もなく消滅したのだった。

なお、上述した通り現存の生命体である人類を一掃した上で世界の覇権を握る新生命体達の母になろうとする存在でしかなかったが、
ファム・ファタールが自分を封じていたことや、主人公の夢を介して見せた「もう二度と私を愛さないで」と言う台詞から察するに、
自身のビーストとしての本能に抗う地母神としての理性や、既存の生態系を壊したくないという自制心は僅かでも残っていたようである。

後に明かされる所によると、人類悪の本質とは人理を守ろうとする願いそのもの、つまり人類愛であるとされている。
自分の子たる生命である人類を愛するが故に、母であることを拒絶され人類が滅びる方向に行動してしまったティアマトは、
その分かり易い例であると言える。

+ 第一部以降のティアマト
『Fate/GrandOrderArcade』では別霊基「ラーヴァ/ティアマト」として実装された。
カルデアにより、討伐され再び眠りについていたが、ビーストⅥ/Sの存在を感知。「自分の負けが無駄になるのは気に入らない」という理由で、
自らの幼体として作り出したアルターエゴを「黙示記録帯」へと送り出した。
通常のアルターエゴは、核となる「サーヴァントの断片」が欠けた部分を何らかの形で補って成立する存在だが、
ティアマトの場合はオリジナルが規格外のため、断片だけでもサーヴァントとして成立してしまっている。

アーケード版とのコラボイベント『螺旋証明世界 リリムハーロット』ではイベントに先駆ける形で実装された。
やはりクラスはアルターエゴ。
第二再臨まではラーヴァ(幼生)の名の通り少女のような容姿だが、第三再臨になると以前のファム・ファタール相当にまで成長する。
全ての生命の母親という側面を強調してか、第二再臨までの通常攻撃は巨大な台所用品で攻撃するなどコミカルな描写が目立つ
(巨大なしゃもじを直接振り回す等ではなく、手元で包丁トントンしたり、おたまで鍋を掬う等のままごとのような可愛らしい仕草をすると、
 それに対応して敵を巨大な刃が裁断したり、巨大なおたまから黒泥が降り注いだりとまるで可愛くない規模の破壊が齎される)。
宝具は自我を保ったまま一時的にビースト本来の姿に回帰する「毅き仔よ、創世の理に抗え(ナンム・ドゥルアンキ)」。
巨神兵か真聖ラーゼフォンの如き宝具の一閃は迫力満点だが、たまにおちゃらけたセリフのバージョンが混じるのはご愛敬。

ハイパーおかあさん、しゅつどう──
ごごごごご──

おべんとう、わすれないで──
わかりました──KAAAAAAAAAA!

カード構成はBuster寄り。攻撃力・NP獲得に優れた全体宝具アタッカーで周回・攻略ともに活躍が見込める。
宝具そのものの威力は高くはないが、発動時に3ターンBusterカード性能をアップさせる効果が高倍率で優秀。


MUGENにおけるティアマト

N氏の製作した『JUS』風ドットを用いたMUGEN1.0以降専用のちびキャラが某所で公開中。
見た目はビースト時のファム・ファタール準拠で髪で隠されてはいるがきわどいので注意。
アーケード版のような光弾やビーム主体で戦うキャラとなっており、超必殺技では全画面攻撃を放つ。
AIもデフォルトで搭載されている。
紹介動画

上記の他にも、francis-zabi氏によるものも存在する。


出場大会

  • 「[大会] [ティアマト]」をタグに含むページは1つもありません。


*1
通常のサーヴァントを「個人に対する英霊」とするならば、グランドクラスは「世界に対する英霊」で、
別次元の戦闘力を発揮できるが、彼らは活動内容こそ個々の裁量にゆだねられているものの、
世界のためにしかその力を振るえない制約が課せられている。
よって菌糸類曰く、人類全体を救うために存在する資格であるため、誰か個人(『FGO』の場合は主人公)のために力を使う場合は、
その資格を返上する必要があり、そして返上した英霊はその世界線では原則二度とグランドサーヴァントになれないという。
ただし、冠位の資格を失っても連続して現界している間はすぐに霊基の強さが落ちるわけではなく、
世界から力は供給されなくなるが、放棄後もその霊基に蓄えられた分は消費するまで冠位相当の力を行使でき、
消費後に通常のサーヴァント達と同じ出力になる模様。

簡単に例えると、通常のサーヴァントを10とし仮定して、同じ英霊がグランドとして呼ばれた場合に1万になるが、
世界の脅威しか攻撃できず個人に肩入れできなくなり、それをしたければ冠位を返上する必要があるが、
返上した瞬間に通常の10の出力に戻るわけではなく、使い切るまでは1万の出力のまま、
つまり1発に限り冠位の力をサーヴァント個人の私情で使用可能になるのであり、初代ハサンが行ったのがこれである。
通称「退職金アタック」

とはいえ、初代ハサン含めて『FGO』に登場したグランドサーヴァント達はどいつもこいつも冠位に執着が無く、
役割はしっかり遂行するものの、大半が捨て時とみなせばホイホイ捨てるのだが。


最終更新:2025年07月30日 16:30
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