都市同盟軍士官学校ラ・カルト校
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南部諸国連合のクメール王国第3の都市、ザイファ市に存在する、自由都市同盟は都市同盟軍の士官を育成する士官学校。士官学校に在籍するものは、大学部の学生に匹敵するエリートとして扱われる。基本全寮制で、留年しなければ4年の教育課程を熟した上で卒業し、普通は少尉として都市同盟軍に任官する事になる。ただし普通留年する様な成績の者は、基本放校処分になる。留年が認められるのは、何らかの特殊技能や一芸に極めて秀でているなど、特殊な事情がある場合だけだ。
付け加えて言えば極まれに、全ての科目でトップの成績を取り、なおかつ経歴にまったく傷がなく、そして教官の覚えが良い(一説にはこれが一番大事だとも言われる)場合、卒業直後に少尉中尉をすっ飛ばしていきなり大尉として任官できる例も、わずかに存在する。ただしこのラ・カルト校は規模がやや小さい事も要因の1つではあるのだが、かつては都市同盟軍士官学校アマルーナ校に比較して格下と見られている傾向があった。そのためトップ成績であっても、大尉どころか中尉として任官する事すら難しかった。現在では後述する理由により、不公平は是正されている。
ラ・カルト校だけの特色としては、操手訓練課程に最低機兵(ロアコフ)操縦訓練が含まれている事が挙げられる。無論、基本の機装兵による訓練がしっかり行われるのは当然だが、ラ・カルト校では最低機兵の操縦技術についても単位として計上され、おろそかにはなっていない。かつてはこの件も、他の士官学校と比較して格下扱いされる理由の1つであった。
この不公平が是正されたのは聖華暦834年、バフォメット事変の最終局面においての、とある事件が切っ掛けであった。アマルーナ校をトップの成績で卒業し、いきなり大尉任官した超エリートのお坊ちゃん士官が居た。バフォメット事変の最終局面、中央都市アマルーナ防衛戦において、彼に率いられた中隊は後方の補給路を護る任務を受ける。しかしそこへ、土中から魔獣の群れが出現。お坊ちゃん士官の中隊長は、泡を食って恐慌状態に陥り、指揮を放り出して敵前逃亡した。3個小隊で編制されたその中隊だったが、中隊長は敵前逃亡、第2小隊小隊長は部隊混乱の煽りを受けて、直後戦死した。
ここで部隊指揮を立て直し、魔獣の群れから見事補給部隊を救ったのは、第3小隊の指揮を任されていた中尉である。彼女はラ・カルト校の卒業生であり、それ故に出世コースからも外れた万年中尉であり、最低機兵で構成された威力偵察用小隊の指揮官として、中隊でもやや軽視されていた存在であった。しかし彼女は半壊した半個中隊強の戦力を率いて奮戦し、その的確な指揮と戦術で、増援が来るまで補給部隊を護り抜いたのだ。残念ながら彼女はその際に負った戦傷で眼を患い、生き残ったものの極端な視力低下により、現役引退を余儀なくされる。しかし補給部隊や生き残った中隊員の証言により、彼女はバフォメット事変後に勲章をもって賞され、大尉に特進した。そして母校である都市同盟軍士官学校ラ・カルト校の教官任務に就く事になる。
この事件で彼女の卒業校であるラ・カルト校の名誉は高まり、不公平は是正された。まあ未だにラ・カルト校とその卒業生を、色眼鏡で見る軍高官も存在する。しかしあからさまな差別は無くなったし、士官ではない兵たちの間では、「権威のアマルーナ校、実力のラ・カルト校」などと言われていたりもする。
なお、ラ・カルト校は南部諸国連合の各国政庁を介してシームド・ラボラトリーズと関わりがあり、最低機兵から軽機兵レンフルーやエディンバラ、アルタキエラを経て開発された軽機兵オートクレールの廉価版を、訓練機として下ろしてもらっている。この機体は廉価版とは言え、訓練機としては非常に贅沢だ。これを知った者たちの間では、シームド・ラボラトリーズに何らかの意図があってこの様な事をしているのではないか、と噂されていた。後に『海洋温度差発電所および完全電化工業都市群建設計画』(当時はOTEC計画と言う、何の頭文字かわからない計画名だけが知られていた)により、シームド・ラボラトリーズの仲介で南部諸国連合のバラライカ共和国で大工事が始まったときは、それを知った人々は「ふむ、なるほどな」と思ったものである。