「重機兵 ワッズ」





[ショートストーリー]
フレミー・ホワイトの機装兵『ノヴレス』は、追い詰められていた。彼女は両親を帝国の奇襲攻撃で亡くしており、帝国に憎しみを抱いている。その憎しみがついに限界を迎え、整備兵に「特命を受けた」と嘘をついてまで、正規の操手であるレイ・アームスフィアに先んじて『ノヴレス』に乗り込み、出撃したのである。しかし如何に訓練したとしても、実戦経験の無いフレミーには『ノヴレス』は荷が重すぎた。青い敵機装兵『センチュリオン』の攻撃で左脚先を損傷し、動きが取れない『ノヴレス』は、1機の『レギオン』に背後から組み付かれ、押さえこまれてしまう。
コウズンの『レギオン』の指が『ノヴレス』の眼窩に突き込まれ、片目の魔晶球が破壊される。『ノヴレス』のパワーならば『レギオン』ごとき、振り払う事は不可能では無かったはずだ。しかしコウズンは機体を絶妙にコントロールし、操縦の稚拙なフレミーの抵抗を柳に風と流していた。
そして「大尉」の『センチュリオン』が、着弾の砂柱とともに吹き飛び消し飛ぶ。
砂の中から機体を立ち上がらせた「大尉」は、攻撃の来た方角を見遣る。……戦域の端に、赤い重機兵が仁王立ちしていた。機装兵サイズの躯体だが、その重装甲により重機兵にカテゴライズされるその機体は、名を『ワッズ』と言う。『ワッズ』は手持ちの魔導砲を連射する。アコスの『レギオン』の装甲板に、弾痕が刻まれて行く。貫通して内部構造にダメージを与える程では無いが、明らかに普通の魔導砲とは一線を画する火力だ。『ワッズ』の桁外れの腕力が無ければ、その魔導砲は保持する事すら叶うまい。
このままではやられてしまうと、苦し紛れにアコスが機体を跳躍させる。『ワッズ』の操手が狙っていたのはソレであった。『ワッズ』はアコスの『レギオン』が着地する場所に、あらかじめ狙いをつけていたのだ。『ワッズ』両肩の大口径魔導砲が火を噴く。
爆音。
『アコス!!く、普通では命中せんからと言って、あらかじめ狙いをつけて置いた場所へ追い込むとは……!あの操手、ただものではない!!』
そして『ワッズ』は背中のランドセルと脚部に装備されている大出力バーニアを吹かし、ノヴレスを捉えているコウズンのレギオンに向けて疾走した。コウズンは慌てて自機に魔導砲を連射させるが、『ワッズ』の強靭すぎる装甲は毛筋ほどの傷も付かない。そして至近距離に迫った『ワッズ』は、コウズンの『レギオン』を蹴り上げる。『ワッズ』の操手……レイ・アームスフィアが絶叫した。
『こんのおおおぉぉぉ!!』
『ぐわっ!』
『ぐわっ!』
軽量な錬金金属イシルディンを使ってさえも、並の機兵が比較にならないほどの重量になるまで張られた重装甲。そしてその重すぎる機体重量と、それを軽快にとまでは行かないがまともに駆動できる大パワーの魔力収縮筋。それらから生み出される、絶大な格闘能力。これがあくまで副産物でしか無いのだ。呆れた話である。だが、今このときはそれが有利に働いた。
一撃。たった一撃のキックで、コウズンのレギオンは吹き飛び、動かなくなった。操手であるコウズンが気絶したのである。更には最後方から、従機『ハルマー』の支援射撃が始まった。「大尉」は、已む無しと見て自機センチュリオンを撤退させる。
そしてレイ・アームスフィアの『ワッズ』は、鹵獲機を回収するため、コウズンの『レギオン』に注意深く歩み寄って行った。
[解説]
聖華暦600年代初頭に発動した、新世代型機兵開発計画である聖焔計画の成果の1つ。魔導砲による中距離支援機兵。機体サイズそのものは機装兵級であるが、その重装甲重装備から重機兵として分類される。特殊樹脂や対魔粒子を充填した何重ものハニカム装甲を採用し、その上で各所に追加装甲を施して、鉄壁どころではない圧倒的な防御性能を持つ。その両肩には機装兵すらも撃破可能な威力を持つ、火のルーン方式の大口径魔導砲2門を装備。この2門はクロスリンクされており、2門の砲撃が1点に着弾する。そのため、1門でも破壊的な威力を持つのだが、2門同時に命中した際の威力は陸上艦主砲の直撃に匹敵する。まあ、命中すればだが……。
その他にも、手持ち式としては最大級の大型長距離魔導砲を装備している。これも火のルーン方式を採用した上に銃身を通常の物よりも延長し、威力の徹底した増進を図っている。これほどの重装甲、重装備をさせた機体をまともに動かすために、魔力収縮筋も最高品質の最大サイズの物を用い、そのパワーで強引に駆動させている。この重装甲と大パワーにより、中距離支援型でありながら、実は格闘性能は同世代機の中でもトップクラス。これがあくまで副産物なのだから、笑える話だ。もっとも運動性が鈍く機動性能が低いため、格闘距離に近づく事が困難なのであるが。なお後続の機装兵『ノヴレス』では、装甲強度はここまでで無くとも良いと判断、整理され、三重ハニカム構造に落ち着いている。
この機体は、前身たる機装兵『バラック』の改良型である。聖華暦606年5月に、『バラック』部隊が帝国の新型に全滅させられた事件により、改めて見直され修正された計画の第1号として開発された。実際に建造されたこの機体は、様々な問題点を指摘される。あまりに過剰な重装甲による、貧弱としか言いようの無い機動性と運動性の悪さ。更にはその必要以上の重装甲により、イシルディンを過剰に大量消費した事でのコスト。何より、巨大な重量を持つ大口径魔導砲を保持するために背負い式にした事により、機動性や運動性の低さと相まって、肝心かなめの命中精度が極めて悪化した事が最大の問題点とされた。背負い式魔導砲はこれ以前の従機『ハルマー』で試作されていたが、あちらは長距離の支援/制圧射撃用であり、『ワッズ』で期待された中距離戦闘とは運用自体が異なるため、あまり参考にできなかったのである。
ちなみに後の量産型では、安価にするためにイシルディン装甲の撤廃と軽装甲化による軽量化を図り、防御力は見る影も無く低下したものの、どうにかこうにか機動回避が可能になった。ただし背負い式の大口径魔導砲の命中率は、運動性の強化により若干は向上したものの、若干でしか無かった模様。
[武装・特殊装備]

[背負い式2連80mm口径魔導砲]
発射方式に火のルーン方式を用い、口径も通常の物の倍以上に大型化した魔導砲。大重量化したため、手持ちではなく背負い式にしてある。このため狙いが付けづらく、命中精度は低い。
クロスリンク・システムを採用しており、2門同時発射の際には2門の砲撃が1点に同時着弾する。これによる破壊力は、陸上艦主砲に匹敵するか、あるいは凌駕する。
発射方式に火のルーン方式を用い、口径も通常の物の倍以上に大型化した魔導砲。大重量化したため、手持ちではなく背負い式にしてある。このため狙いが付けづらく、命中精度は低い。
クロスリンク・システムを採用しており、2門同時発射の際には2門の砲撃が1点に同時着弾する。これによる破壊力は、陸上艦主砲に匹敵するか、あるいは凌駕する。

[XMR-L長距離魔導砲]
発射方式として火のルーン方式を採用、更には銃身を通常型よりも延長し、威力を高めている。銃身を延長すると、火のルーンにより発生した爆圧がいつまでも逃げずに、砲弾の加速が効率的に行われるため、初速が高まり威力が上がるのだ。
ちなみにショットガンの銃身を切り詰めれば威力が上がる、などと思っている○○がこの世には存在するが、あれはショットガンの散弾の弾が広がってバラけ易くなるため、近距離で敵に命中し易くなるだけの話だ。威力自体は逆に下がる。
銃身を延長するなどの処置を行っているため、重量が激増。桁外れの腕力を持つ重機兵『ワッズ』でなければ扱う事はできないだろう。
発射方式として火のルーン方式を採用、更には銃身を通常型よりも延長し、威力を高めている。銃身を延長すると、火のルーンにより発生した爆圧がいつまでも逃げずに、砲弾の加速が効率的に行われるため、初速が高まり威力が上がるのだ。
ちなみにショットガンの銃身を切り詰めれば威力が上がる、などと思っている○○がこの世には存在するが、あれはショットガンの散弾の弾が広がってバラけ易くなるため、近距離で敵に命中し易くなるだけの話だ。威力自体は逆に下がる。
銃身を延長するなどの処置を行っているため、重量が激増。桁外れの腕力を持つ重機兵『ワッズ』でなければ扱う事はできないだろう。