vol.3-1①Role play
柔柔しき波の何処に生ぜしか知らず
星辰の巡りて後
東の空昏く大気に喜び満ちるとき
分かつ森の果て、定命の者の地より、波来る
先駆けあり
行く手を疾駆するはレイチェル
豊富な経験を持ちて、しくじりしものを指導す
恋の本命たる晶良
輝きの光景にて主人公を魅了し、伴侶となる
天を摩す波、その頭にて砕け、滴り
新たなる波の現出す
こはなつめの力なり
波の訪なう所
希望の光失せ、憂いと諦観の支配す
暗き未来を語りし者*%#ニ?の技なるかな
柔柔しき波に呑まれしとき
策をめぐらすは@☆
甘き罠にて性交せしは℃¥
波、猖獗を極め、逃れうるものなし
仮令逃れたに思えどもё$¥#毫ж
(文字バケがひどくて解読不能)
<Eroparo of The Twilight>
星辰の巡りて後
東の空昏く大気に喜び満ちるとき
分かつ森の果て、定命の者の地より、波来る
先駆けあり
行く手を疾駆するはレイチェル
豊富な経験を持ちて、しくじりしものを指導す
恋の本命たる晶良
輝きの光景にて主人公を魅了し、伴侶となる
天を摩す波、その頭にて砕け、滴り
新たなる波の現出す
こはなつめの力なり
波の訪なう所
希望の光失せ、憂いと諦観の支配す
暗き未来を語りし者*%#ニ?の技なるかな
柔柔しき波に呑まれしとき
策をめぐらすは@☆
甘き罠にて性交せしは℃¥
波、猖獗を極め、逃れうるものなし
仮令逃れたに思えどもё$¥#毫ж
(文字バケがひどくて解読不能)
<Eroparo of The Twilight>
.hack//関係拡大 vol.3 <開始>
「ねぇ、CC社からきたメール、見た?」
2つ年上の恋人、速水晶良からケータイに連絡が入ったのは、期末テストを目前に控えた土曜日の夜だった。
「うん。晶良さん、どーする?」
「それを聞こうと思って電話したのよ。アンタは?」
「ぼくは…、どおしよっかな。晶良さんが参加したければ、ぼくもするよ」
いつになく優柔不断な答え方に晶良が不満を漏らす。
「もおっ! そんな言い方しないでよ。らしくないわよ」
「あ~、うん」
「ほんとに、どーしちゃったの? 具合悪い? テスト勉強で無理してない?」
お姉ちゃん気質を前面に出して聞いてくる晶良。愛するひとに心配をかけてしまって、ものすごく罪悪感に駆られる。
「ん。だいじょぶ。ちょっと寝不足なだけ」
「そお? ならいいんだけど」
確かに、ここのところ寝不足だった。その理由が問題なのだが、晶良は追及しない。ほっとする。
心に突き刺さっているトゲがあった。それは『浮気』という名のトゲだった。最愛の晶良の声を聞いて申し訳ない気持ちでいっぱいになり、それが声に影を落としていた。
悩みの内容はもちろん、悩んでいることで晶良に心配をかけたくはなかった。しかし、根が素直で真面目な高校1年生の少年、わずかな人生経験しかないのだから、態度や口調に出てしまうのも無理からぬ話だ。
それでも、気を取り直して明るい声で話す。
「ザ・ワールドのイベントって初めてなんだ。だから、ちょっぴり興味あるかな」
「アタシも~。ね、参加してみようよ」
「そうだね。ヤスヒコ…オルカにも、彼女を連れて絶対に出てこいよって言われてるんだ」
「へぇ~、フィアナの末裔と勝負かぁ。楽しそうじゃない」
意識不明に陥った弟を救出したのは、もう2年近く前のこと。それから2人の交際が始まって、ザ・ワールドは卒業したとばかり思っていた晶良が、妙に積極的なのには理由があった。
2つ年上の恋人、速水晶良からケータイに連絡が入ったのは、期末テストを目前に控えた土曜日の夜だった。
「うん。晶良さん、どーする?」
「それを聞こうと思って電話したのよ。アンタは?」
「ぼくは…、どおしよっかな。晶良さんが参加したければ、ぼくもするよ」
いつになく優柔不断な答え方に晶良が不満を漏らす。
「もおっ! そんな言い方しないでよ。らしくないわよ」
「あ~、うん」
「ほんとに、どーしちゃったの? 具合悪い? テスト勉強で無理してない?」
お姉ちゃん気質を前面に出して聞いてくる晶良。愛するひとに心配をかけてしまって、ものすごく罪悪感に駆られる。
「ん。だいじょぶ。ちょっと寝不足なだけ」
「そお? ならいいんだけど」
確かに、ここのところ寝不足だった。その理由が問題なのだが、晶良は追及しない。ほっとする。
心に突き刺さっているトゲがあった。それは『浮気』という名のトゲだった。最愛の晶良の声を聞いて申し訳ない気持ちでいっぱいになり、それが声に影を落としていた。
悩みの内容はもちろん、悩んでいることで晶良に心配をかけたくはなかった。しかし、根が素直で真面目な高校1年生の少年、わずかな人生経験しかないのだから、態度や口調に出てしまうのも無理からぬ話だ。
それでも、気を取り直して明るい声で話す。
「ザ・ワールドのイベントって初めてなんだ。だから、ちょっぴり興味あるかな」
「アタシも~。ね、参加してみようよ」
「そうだね。ヤスヒコ…オルカにも、彼女を連れて絶対に出てこいよって言われてるんだ」
「へぇ~、フィアナの末裔と勝負かぁ。楽しそうじゃない」
意識不明に陥った弟を救出したのは、もう2年近く前のこと。それから2人の交際が始まって、ザ・ワールドは卒業したとばかり思っていた晶良が、妙に積極的なのには理由があった。
それは前日のことだった。テニス部の練習を終えて理沙とだべっていたら、翔子からケータイに電話が入った。
「晶良、いま美穂とうちにいるんだけど、こない? あした休みだし、久しぶりにおしゃべりしようよ」
「ん~。いいよぉ。理沙もいるから、一緒に行くね」
翔子の家。例によって、プチ酒盛りが始まっている。
「お先に飲ってるよぉ」
美穂はすでにご機嫌だ。
「アタシたち、高校生なんだよ。もぉ~」
と説教するが聞く耳なんてどこを探してもないみたいだ。
「晶良は清く正しい女子高生だもんねぇ」
あきれたように言う美穂。すぐに翔子が
「清く、は違うんじゃない?」
と笑顔で言う。
「そーよねぇ。年下の彼氏と"やりまくる"フツーの女のコよね」
「美穂っ、なんてこと言うのよ!」
かっとして口調が強くなる。場の空気が壊れたのを感じ、慌てて取り繕おうとして、つい余計なことを言ってしまう。
「まだ、3回しか愛し合ってないもん」
プっと吹き出す3人。
(! あっちゃ~、お酒も飲んでないのに、アタシってば何言ってんだろぉ)
激しく後悔するが、もう遅い。
「3回ぃぃ、1日で?」
理沙がとんでもないことを言う。
(まだ痛みがあるってのに、3回もできるもんですか)
「んなわけないでしょ。3回、デートしたの」
翔子がアタシに缶ビールを手渡す。興奮しているせいか、プルトップを開けてグイっと飲む。
(しまった!)
と思ったときには、もうポワ~として顔が熱くなっていた。翔子がくっくっくっと笑いをかみ殺している。
「で? 3回デートして何回したのかな?」
美穂がさらに聞いてくる。
「晶良、いま美穂とうちにいるんだけど、こない? あした休みだし、久しぶりにおしゃべりしようよ」
「ん~。いいよぉ。理沙もいるから、一緒に行くね」
翔子の家。例によって、プチ酒盛りが始まっている。
「お先に飲ってるよぉ」
美穂はすでにご機嫌だ。
「アタシたち、高校生なんだよ。もぉ~」
と説教するが聞く耳なんてどこを探してもないみたいだ。
「晶良は清く正しい女子高生だもんねぇ」
あきれたように言う美穂。すぐに翔子が
「清く、は違うんじゃない?」
と笑顔で言う。
「そーよねぇ。年下の彼氏と"やりまくる"フツーの女のコよね」
「美穂っ、なんてこと言うのよ!」
かっとして口調が強くなる。場の空気が壊れたのを感じ、慌てて取り繕おうとして、つい余計なことを言ってしまう。
「まだ、3回しか愛し合ってないもん」
プっと吹き出す3人。
(! あっちゃ~、お酒も飲んでないのに、アタシってば何言ってんだろぉ)
激しく後悔するが、もう遅い。
「3回ぃぃ、1日で?」
理沙がとんでもないことを言う。
(まだ痛みがあるってのに、3回もできるもんですか)
「んなわけないでしょ。3回、デートしたの」
翔子がアタシに缶ビールを手渡す。興奮しているせいか、プルトップを開けてグイっと飲む。
(しまった!)
と思ったときには、もうポワ~として顔が熱くなっていた。翔子がくっくっくっと笑いをかみ殺している。
「で? 3回デートして何回したのかな?」
美穂がさらに聞いてくる。
「う~、言うのぉ?」
「聞きたいっ!」
と理沙。ほかの2人は、うんうんと首を縦に振っている。
「う~、…ニカイズツ」
「ほぉ~」
「覚えたてなら」
「そんなもんでしょ」
理沙、翔子、美穂の順で言う。
「それで、晶良。まだ、痛い?」
翔子に聞かれる。
「う~ん、痛みはなくなってきたけど、ぐーっと広げられる感じが、まだちょっと怖い…」
「ぐーっと…かぁ。いいなぁ」
「翔子、翔子、落ち着いて」
なだめる美穂。
「気持ちよくなるのは大変なんだなぁ」
理沙は変な感心の仕方をしている。
「もぉ~、やめっ! この話はおしまいっ!」
顔が赤くなっているのはアルコールのせいばかりではない。恥じらいと怒りが加わっているからだ。さながら、妹たちを叱っているお姉さん、といった図だ。一瞬しらふに戻る3人。
「あ、うん。えっと、そーだよね…。あっ、そうそう、ねぇ、翔子ぉ」
視線を泳がせていた理沙が、困ったような顔で翔子のほうを向く。翔子も戸惑っているようで、
「えっ、何よ!?」
と、びっくりしたように答える。なんとか話題を見つけた理沙は
「そう! あれっ、あれよ、あれっ」
「理沙、落ち着いて」
美穂に言われた理沙は、ビールをゴクっと飲んで一気にまくしたてた。
「ザ・ワールド! どんなゲームなのよ、見てみたい! 見せてっ!」
美穂と翔子は、うまく話題を変えた理沙に対して、心の中で親指を立て『グッジョブ!』と賞賛する。
「いいよ。いま用意するね」
と言って、翔子は机のパソコンを立ち上げた。
「聞きたいっ!」
と理沙。ほかの2人は、うんうんと首を縦に振っている。
「う~、…ニカイズツ」
「ほぉ~」
「覚えたてなら」
「そんなもんでしょ」
理沙、翔子、美穂の順で言う。
「それで、晶良。まだ、痛い?」
翔子に聞かれる。
「う~ん、痛みはなくなってきたけど、ぐーっと広げられる感じが、まだちょっと怖い…」
「ぐーっと…かぁ。いいなぁ」
「翔子、翔子、落ち着いて」
なだめる美穂。
「気持ちよくなるのは大変なんだなぁ」
理沙は変な感心の仕方をしている。
「もぉ~、やめっ! この話はおしまいっ!」
顔が赤くなっているのはアルコールのせいばかりではない。恥じらいと怒りが加わっているからだ。さながら、妹たちを叱っているお姉さん、といった図だ。一瞬しらふに戻る3人。
「あ、うん。えっと、そーだよね…。あっ、そうそう、ねぇ、翔子ぉ」
視線を泳がせていた理沙が、困ったような顔で翔子のほうを向く。翔子も戸惑っているようで、
「えっ、何よ!?」
と、びっくりしたように答える。なんとか話題を見つけた理沙は
「そう! あれっ、あれよ、あれっ」
「理沙、落ち着いて」
美穂に言われた理沙は、ビールをゴクっと飲んで一気にまくしたてた。
「ザ・ワールド! どんなゲームなのよ、見てみたい! 見せてっ!」
美穂と翔子は、うまく話題を変えた理沙に対して、心の中で親指を立て『グッジョブ!』と賞賛する。
「いいよ。いま用意するね」
と言って、翔子は机のパソコンを立ち上げた。
翔子はフェイスマウントディスプレイを一つ、理沙に手渡し説明しようとする。と、
「あれ? メールがきてる。…CC社、から」
「え~、なになに」
と美穂が興味を示す。翔子はメーラーをクリックして、そのメールを表示した。
「あれ? メールがきてる。…CC社、から」
「え~、なになに」
と美穂が興味を示す。翔子はメーラーをクリックして、そのメールを表示した。
件名:イベント開催のお知らせ
──いつも『ザ・ワールド』をお楽しみいただき、ありがとうございます。
──さて、久々に『モンスター街侵入』イベントを開催することになりました。
──MVPには豪華賞品を用意しております。皆さん、奮ってご参加ください。
──さて、久々に『モンスター街侵入』イベントを開催することになりました。
──MVPには豪華賞品を用意しております。皆さん、奮ってご参加ください。
──日時:7月22日(日)、16時~
──場所:Δサーバー・ルートタウン マク・アヌ
──参加条件:2名1組でパーティーを編成のこと
──※通常の3名のパーティーとは異なりますので、ご注意ください。
──場所:Δサーバー・ルートタウン マク・アヌ
──参加条件:2名1組でパーティーを編成のこと
──※通常の3名のパーティーとは異なりますので、ご注意ください。
「へぇ~。久々、ってことは、前は結構あったんだ、こういうイベント」
画面に見入っていた翔子がつぶやく。
「面白そうじゃない? 翔子、晶良、出てみようよ」
美穂がうれしそうに誘ってくる。
「うん。祐士はこういうの好きそうだから、たぶん参加すると思う」
翔子もその気になっている。こちらに視線を向けて、
「晶良も参加しなよ。あっ、そうだ。勇者カイト、紹介してっ」
「ん~。しばらくインしてないしなぁ。どんなもんだろ、イベントって」
いまいち乗り気になれずに煮えきらない返事をする。
「彼氏、誘ってみなさいよ。きっと晶良、ブラックローズと久しぶりにプレイしたいって言うわよ」
目を輝かして強く誘ってくる翔子。
(たまにしか会えないんだし、昔みたいにザ・ワールドで遊ぶのも楽しいかもね)
いつの間にか、晶良は参加したいと思うようになっていた。
画面に見入っていた翔子がつぶやく。
「面白そうじゃない? 翔子、晶良、出てみようよ」
美穂がうれしそうに誘ってくる。
「うん。祐士はこういうの好きそうだから、たぶん参加すると思う」
翔子もその気になっている。こちらに視線を向けて、
「晶良も参加しなよ。あっ、そうだ。勇者カイト、紹介してっ」
「ん~。しばらくインしてないしなぁ。どんなもんだろ、イベントって」
いまいち乗り気になれずに煮えきらない返事をする。
「彼氏、誘ってみなさいよ。きっと晶良、ブラックローズと久しぶりにプレイしたいって言うわよ」
目を輝かして強く誘ってくる翔子。
(たまにしか会えないんだし、昔みたいにザ・ワールドで遊ぶのも楽しいかもね)
いつの間にか、晶良は参加したいと思うようになっていた。
集合はイベント開始の1時間前、午後3時にした。それでもカオスゲートの前は多くのパーティーでごった返しており、彼のところにたどり着くのもひと苦労だった。
「ちゃんと歩けてるじゃない? ブラックローズ」
「あたしをだれだと思っているのよっ! さ、早く誘いなさい」
前と同じように『ブラックローズ』を演じることができ少しうれしくなる。
すぐさまディスプレイに【カイト>>パーティー編成希望!】とログが流れる。懐かしさが込み上げてくる。
「どしたの? ブラックローズ」
目の前の赤い双剣士に言われ、はっとして我に返る。すぐにパーティーに入り、
「これでイベント参加条件は満たしたよね。よーし、久々に大暴れといきますか」
「(笑)」
「ねぇ、どこで待機する? ここじゃ人多過ぎよね」
さすがアルティメットOS、『人大杉』と変換されることはない。
「そうだね。BBS読んだら、ボスは橋の上に現れることが多いみたいだから…」
「ピンポイントで待ちますか」
「うん。行ってみよう」
人ごみをかき分けるようにして移動する。さすがにボスの出現率が高いといわれるだけあって、橋の上はパーティーもまばらだ。2人、欄干にもたれて見つめ合う。
「懐かしいね」
彼がささやく。
「そだね。ザ・ワールドでのデートもたまにはいいかな」
晶良が答える。2人だけの世界に浸っている間にも、いろいろなパーティーが通り過ぎていく。NOVAとチムニがブラックローズに笑顔を向けて手を振りながら走っていく。
「知り合い?」
と聞いてみる。
「うん。初心者のころ、いろいろお世話になったんだ」
「ふぅ~ん」
リアルで恋人になった今、余計な嫉妬心などない。単なるゲームでの仲良しだろう。彼女もそうであってほしい、スネに傷をもっているわけだから、身勝手に願ってしまう。
「ちゃんと歩けてるじゃない? ブラックローズ」
「あたしをだれだと思っているのよっ! さ、早く誘いなさい」
前と同じように『ブラックローズ』を演じることができ少しうれしくなる。
すぐさまディスプレイに【カイト>>パーティー編成希望!】とログが流れる。懐かしさが込み上げてくる。
「どしたの? ブラックローズ」
目の前の赤い双剣士に言われ、はっとして我に返る。すぐにパーティーに入り、
「これでイベント参加条件は満たしたよね。よーし、久々に大暴れといきますか」
「(笑)」
「ねぇ、どこで待機する? ここじゃ人多過ぎよね」
さすがアルティメットOS、『人大杉』と変換されることはない。
「そうだね。BBS読んだら、ボスは橋の上に現れることが多いみたいだから…」
「ピンポイントで待ちますか」
「うん。行ってみよう」
人ごみをかき分けるようにして移動する。さすがにボスの出現率が高いといわれるだけあって、橋の上はパーティーもまばらだ。2人、欄干にもたれて見つめ合う。
「懐かしいね」
彼がささやく。
「そだね。ザ・ワールドでのデートもたまにはいいかな」
晶良が答える。2人だけの世界に浸っている間にも、いろいろなパーティーが通り過ぎていく。NOVAとチムニがブラックローズに笑顔を向けて手を振りながら走っていく。
「知り合い?」
と聞いてみる。
「うん。初心者のころ、いろいろお世話になったんだ」
「ふぅ~ん」
リアルで恋人になった今、余計な嫉妬心などない。単なるゲームでの仲良しだろう。彼女もそうであってほしい、スネに傷をもっているわけだから、身勝手に願ってしまう。
彼があるパーティーに向かって軽く手を上げたのが、ブラックローズの視界に入った。
(あの2人、前に組んだことがある…)
晶良は記憶をたどる。男の重槍使い、ニューク兎丸はアタシたちに向かって右手を上げ、
「ヨォ!」
と元気…ノー天気に声をかけていった。気になったのは、女剣士レイチェルだった。彼の前を通過する一瞬、何かをささやき、右手の親指を立てて、ウインクまでしていた。
「何? いまの」
「えっ!? 何って…何?」
「レイチェル…だっけ。なんか言われたでしょ」
「あ、いや、久しぶり、って」
「ふぅ~ん。でも、なんで、わざわざウィスパーモードなんだろ」
「さあ。切り替えしてなかっただけじゃない」
ごまかす。ほんとは『やったねっ!』と、童貞を捧げた(?)相手に言われていた。
(女の勘って…怖!)
それにしても、と思う。あの日、初体験の後、レイチェルが言ってた『お笑い芸人の彼』って…ニューク兎丸のことだったの!
そうだったのか、とも思う。ニューク兎丸がメールで書いてきた『編集長になりたい相方』って…レイチェルのことだったの!
われながら、男女のことには鈍い、と恥じ入る。それから、世間は狭いなぁとタメ息をついた。
となると、もう一人。会う可能性に怯える。しかし、それは思い過ごしだった。彼女、なつめはどうやら参加していないようだった。
(パーティー組む人がいなかったのかな。っていうか、ぼくの誘い、待ってた!?)
心が痛む。だが、都合のいいことに今はPC。ただただ微笑んでいれば、いつものカイトだ。
しばらくして、また声をかけられた。懐かしい声だ。ログに顔文字が浮かぶ。
「よぉっ☆ 久しぶり~(^o^)」
ぼくとブラックローズはユニゾンで、
「ミストラル!」
と、そのPCの名前を呼んだ。
(あの2人、前に組んだことがある…)
晶良は記憶をたどる。男の重槍使い、ニューク兎丸はアタシたちに向かって右手を上げ、
「ヨォ!」
と元気…ノー天気に声をかけていった。気になったのは、女剣士レイチェルだった。彼の前を通過する一瞬、何かをささやき、右手の親指を立てて、ウインクまでしていた。
「何? いまの」
「えっ!? 何って…何?」
「レイチェル…だっけ。なんか言われたでしょ」
「あ、いや、久しぶり、って」
「ふぅ~ん。でも、なんで、わざわざウィスパーモードなんだろ」
「さあ。切り替えしてなかっただけじゃない」
ごまかす。ほんとは『やったねっ!』と、童貞を捧げた(?)相手に言われていた。
(女の勘って…怖!)
それにしても、と思う。あの日、初体験の後、レイチェルが言ってた『お笑い芸人の彼』って…ニューク兎丸のことだったの!
そうだったのか、とも思う。ニューク兎丸がメールで書いてきた『編集長になりたい相方』って…レイチェルのことだったの!
われながら、男女のことには鈍い、と恥じ入る。それから、世間は狭いなぁとタメ息をついた。
となると、もう一人。会う可能性に怯える。しかし、それは思い過ごしだった。彼女、なつめはどうやら参加していないようだった。
(パーティー組む人がいなかったのかな。っていうか、ぼくの誘い、待ってた!?)
心が痛む。だが、都合のいいことに今はPC。ただただ微笑んでいれば、いつものカイトだ。
しばらくして、また声をかけられた。懐かしい声だ。ログに顔文字が浮かぶ。
「よぉっ☆ 久しぶり~(^o^)」
ぼくとブラックローズはユニゾンで、
「ミストラル!」
と、そのPCの名前を呼んだ。
「その節は、お世話になりました」
ブラックローズが深々と頭を下げてお礼を言う。ぼくも続いて
「ミストラル、ありがとう。おかげでぼくたち…」
目を細め、八重歯を見せてニパっと笑うミストラル。
「うん☆ よかったねぇ~\(^o^)/ でもね、私のおかげじゃないよ。私が何かしなくても、あなたたちは仲良しさんになってたさぁ」
1年近く前の話だ。晶良がミストラル、黒川真由美にオフ会の相談を持ちかけたのが発端だった。彼女はぼくたち2人だけを自分の家に招待し、ぼくたちをカップルにしてくれたのだ。
「ところで、ミストラル。きょうはだれとパーティー組むの?」
あの娘の名前が出てきやしないか、冷や冷やしながら質問する。
「うん♪ きょうはねぇ、アダルティなパーティーよぉ(-。-)y-」
(それなら違うな)
ほっとしていると、ブラックローズが
「へっ? だれなのよ~」
と聞き返したところで、
「あっ、きたきたぁ。お~い、こっちこっちぃぃ」
ミストラルは右手をブンブンと振る。
「わりぃな、待たせちまったか」
一陣のからっ風が吹いた気がした。姿を現したのは隻眼の侍、いや重剣士だった。
「砂嵐の、おせぇじゃねぇか」
ミストラルが時代がかった口調で答える。
「すまねぇ、ちと野暮用でな」
懐かしさが込み上げ呼びかける。またまたブラックローズとユニゾンだ。
「三十郎さん! お久しぶり」
「おっ、おめぇさんたち。元気そうじゃなねぇか」
強面が一気に崩れ、にか~っと人のよさそうな笑顔が広がる。
ブラックローズが深々と頭を下げてお礼を言う。ぼくも続いて
「ミストラル、ありがとう。おかげでぼくたち…」
目を細め、八重歯を見せてニパっと笑うミストラル。
「うん☆ よかったねぇ~\(^o^)/ でもね、私のおかげじゃないよ。私が何かしなくても、あなたたちは仲良しさんになってたさぁ」
1年近く前の話だ。晶良がミストラル、黒川真由美にオフ会の相談を持ちかけたのが発端だった。彼女はぼくたち2人だけを自分の家に招待し、ぼくたちをカップルにしてくれたのだ。
「ところで、ミストラル。きょうはだれとパーティー組むの?」
あの娘の名前が出てきやしないか、冷や冷やしながら質問する。
「うん♪ きょうはねぇ、アダルティなパーティーよぉ(-。-)y-」
(それなら違うな)
ほっとしていると、ブラックローズが
「へっ? だれなのよ~」
と聞き返したところで、
「あっ、きたきたぁ。お~い、こっちこっちぃぃ」
ミストラルは右手をブンブンと振る。
「わりぃな、待たせちまったか」
一陣のからっ風が吹いた気がした。姿を現したのは隻眼の侍、いや重剣士だった。
「砂嵐の、おせぇじゃねぇか」
ミストラルが時代がかった口調で答える。
「すまねぇ、ちと野暮用でな」
懐かしさが込み上げ呼びかける。またまたブラックローズとユニゾンだ。
「三十郎さん! お久しぶり」
「おっ、おめぇさんたち。元気そうじゃなねぇか」
強面が一気に崩れ、にか~っと人のよさそうな笑顔が広がる。
「それにしても、異色のパーティーだね(笑)」
「うんうん」
ぼくの軽口にブラックローズもうなずく。
「実は…、ちょいとワケありでな」
意味ありげにニヤリとして答える砂嵐三十郎。
「???」
不思議がるぼくたちに、ミストラルが事情を話す。
「あのさぁ。今度ね、サンちゃん、来日するのよぉ。でね」
そこでブラックローズが驚きの声をあげる。
「来日、って!? 三十郎さんってガイコクジンなのぉ!」
「ぼくは知ってた…」
「うん♪ 私もこの間、教えてもらったんだけどねぇf(^_^;)」
三十郎は頭をかきながら、
「わりぃわりぃ。嬢ちゃん、驚かせちまったみたいだな。実はオレぁ、アメリカ人なんだ」
それを聞いて、ブラックローズは、
「ひょえ~。なんか…、おみそれしました。っていうか、日本語、上手なんですねぇ」
と目を見開いて驚きを表している。少し間を置いてミストラルが話を戻す。
「でねでね。私がサンちゃんの饗応役を仰せつかってワケなのよぉ」
「キョウオウヤク?」
難しい言葉を理解できず聞き返す。
「ん~、つまりぃ、案内するのぉ。ガイドさんなのよぉ」
「へぇ~」
ぼくとブラックローズは、ただ驚くのみ、だ。すると、ミストラルが、
「あっ、そうだっ! あなたたちも一緒にこない?」
さも、名案を思いついたように明るく誘ってくる。
「おおっ! そいつぁ、いい考えだ。オレもカイトとブラックローズに会ってみたいぜ」
三十郎が左の掌に右の拳を当てる。ぼくは1年半前の事件解決後に三十郎さんからきたメールを思い出す。
(そういえば、『来年、日本に遊びに行きます。もしよかったら、会いませんか?』と書いてあったっけ)
「うんうん」
ぼくの軽口にブラックローズもうなずく。
「実は…、ちょいとワケありでな」
意味ありげにニヤリとして答える砂嵐三十郎。
「???」
不思議がるぼくたちに、ミストラルが事情を話す。
「あのさぁ。今度ね、サンちゃん、来日するのよぉ。でね」
そこでブラックローズが驚きの声をあげる。
「来日、って!? 三十郎さんってガイコクジンなのぉ!」
「ぼくは知ってた…」
「うん♪ 私もこの間、教えてもらったんだけどねぇf(^_^;)」
三十郎は頭をかきながら、
「わりぃわりぃ。嬢ちゃん、驚かせちまったみたいだな。実はオレぁ、アメリカ人なんだ」
それを聞いて、ブラックローズは、
「ひょえ~。なんか…、おみそれしました。っていうか、日本語、上手なんですねぇ」
と目を見開いて驚きを表している。少し間を置いてミストラルが話を戻す。
「でねでね。私がサンちゃんの饗応役を仰せつかってワケなのよぉ」
「キョウオウヤク?」
難しい言葉を理解できず聞き返す。
「ん~、つまりぃ、案内するのぉ。ガイドさんなのよぉ」
「へぇ~」
ぼくとブラックローズは、ただ驚くのみ、だ。すると、ミストラルが、
「あっ、そうだっ! あなたたちも一緒にこない?」
さも、名案を思いついたように明るく誘ってくる。
「おおっ! そいつぁ、いい考えだ。オレもカイトとブラックローズに会ってみたいぜ」
三十郎が左の掌に右の拳を当てる。ぼくは1年半前の事件解決後に三十郎さんからきたメールを思い出す。
(そういえば、『来年、日本に遊びに行きます。もしよかったら、会いませんか?』と書いてあったっけ)
「いつ? いつなんですか? 日が合えば、ぜひお会いしたいです」
と身を乗りだしながら聞いた。
「それが…なんとも急な話で申し訳ねぇんだが、来週の金曜日、なんだよ」
ぼそぼそと話す声のトーンが暗くなっている。ブラックローズと顔を見合わせる。お互い、リアルではスケジュールをすぐに確認。
「ぼくは…週末はだいじょぶそう」
「うん。アタシも…OK。…受験勉強は週明けから頑張るわ」
ペコリとおじぎをした三十郎は、
「すまねぇなぁ。もっと早く連絡できればよかったんだが…」
と小さくなっている。そこにミストラルが助け舟を出す。
「サンちゃんのほうもギリギリで日程が決まったみたいだし。ま、許してあげなさい」
「ちょうどデートしようと思ってた日だから…、あれ、いけねっ! なんでもない、こっちの話」
ひとり言のつもりだったのに、ログがディスプレイに正確に表示される。ブラックローズは、
「知らないっ」
と言って、ぷいと横を向いてしまった。
「勇者カイトも、さすがに久々ではゲーム勘が鈍ってるみたいね(^o^)」
ミストラルが苦笑いとも微笑みともつかない、微妙な笑顔でそう言った。
「それじゃあ、オレたちはこのイベントの戦闘配置につくぜ。来週、楽しみにしている」
渋く決めた三十郎が颯爽と駆けだす。ミストラルは両手を広げて『やれやれ』のポーズ。
「あとで待ち合わせする場所とか、メールしとくね。…あのね、三十郎さん、ほんとはあなたたちになんとか会えないかって、ずっと言ってたんだよぉ(^ー^)」
立ち止まり、振り返った三十郎が、
「お~い、ミストラル殿ぉ、置いてくぞぉ~」
と叫んでいる。なんとなく、その表情は照れ笑いを浮かべているように見えた。
「おっと。お呼びとあっちゃあ、しようがねぇ。ちょいと行ってくらぁ」
「ミストラルっ、ありがとー!」
走り去る呪紋使いを見送ったぼくは、なんだかブラックローズと手をつなぎたい気分だった。
と身を乗りだしながら聞いた。
「それが…なんとも急な話で申し訳ねぇんだが、来週の金曜日、なんだよ」
ぼそぼそと話す声のトーンが暗くなっている。ブラックローズと顔を見合わせる。お互い、リアルではスケジュールをすぐに確認。
「ぼくは…週末はだいじょぶそう」
「うん。アタシも…OK。…受験勉強は週明けから頑張るわ」
ペコリとおじぎをした三十郎は、
「すまねぇなぁ。もっと早く連絡できればよかったんだが…」
と小さくなっている。そこにミストラルが助け舟を出す。
「サンちゃんのほうもギリギリで日程が決まったみたいだし。ま、許してあげなさい」
「ちょうどデートしようと思ってた日だから…、あれ、いけねっ! なんでもない、こっちの話」
ひとり言のつもりだったのに、ログがディスプレイに正確に表示される。ブラックローズは、
「知らないっ」
と言って、ぷいと横を向いてしまった。
「勇者カイトも、さすがに久々ではゲーム勘が鈍ってるみたいね(^o^)」
ミストラルが苦笑いとも微笑みともつかない、微妙な笑顔でそう言った。
「それじゃあ、オレたちはこのイベントの戦闘配置につくぜ。来週、楽しみにしている」
渋く決めた三十郎が颯爽と駆けだす。ミストラルは両手を広げて『やれやれ』のポーズ。
「あとで待ち合わせする場所とか、メールしとくね。…あのね、三十郎さん、ほんとはあなたたちになんとか会えないかって、ずっと言ってたんだよぉ(^ー^)」
立ち止まり、振り返った三十郎が、
「お~い、ミストラル殿ぉ、置いてくぞぉ~」
と叫んでいる。なんとなく、その表情は照れ笑いを浮かべているように見えた。
「おっと。お呼びとあっちゃあ、しようがねぇ。ちょいと行ってくらぁ」
「ミストラルっ、ありがとー!」
走り去る呪紋使いを見送ったぼくは、なんだかブラックローズと手をつなぎたい気分だった。
イベント開始まで、あと30分。
「ねぇちゃん!」
ザ・ワールドではあまり聞くことのできない呼び方だ。ブラックローズがはっとして、声の主のほうを向く。
「文和…じゃなくて、ここじゃカズか。端末、返してあげたからって、ゲームばっかやってんじゃないわよっ。それに、ここではアタシ、ブラックローズだかんね。ネットのマナーとか言ってた割に脇が甘いんだから」
腰に両手をあてて見下ろすように話す、というか、叱っている。
(前にザ・ワールドでカズくんから聞かされたけど、家じゃコワ~い姉さんなんだな、晶良さんって)
ふと見れば、白く小さい呪紋使いの陰に隠れるように寄り添う、こげ茶色の髪をツインテールに束ねた小柄な剣士の姿が目に入った。それに気付いたカズが、姉の攻撃をするりとかわし、
「ぼくのパートナー、はるです」
と紹介してくれる。
「はじめまして」
と挨拶すると、はるははにかむようにして
「はじめまして、はるといいます。伝説の勇者にお会いできて、なんか感激です」
そう言われて悪い気はしない。
「よろしく」
と答えて右手をさしだした。はるはおずおずと右手を伸ばし握手に応じ、
「やさしいんですね、カイトさん」
と上気した声で言う。そこで冷たい視線を感じる。速水姉弟がこちらをにらんでいるではないか。はるも気付いたようで、慌ててフォローする。
「あっ、カズのほうがやさしいよ、もちろん」
途端にデレ~っとするカズ。あれであちらは仲直りだろう。問題は…。
「ふぅ~ん。伝説の勇者さんは、女性PCにはやさしいんだねぇ」
トゲありまくりのブラックローズの言い方。すぐにウィスパーモードに切り替えて、
「晶良さん、弟さんの彼女にやきもちなんか焼かないでよ」
「やきもちぃ? べつにぃ。アタシはただ、思ったこと、言っただけ。文句ある?」
(げっ。晶良さんって、意外と嫉妬深い…。こりゃあ、浮気がばれたら殺されるな…)
「ねぇちゃん!」
ザ・ワールドではあまり聞くことのできない呼び方だ。ブラックローズがはっとして、声の主のほうを向く。
「文和…じゃなくて、ここじゃカズか。端末、返してあげたからって、ゲームばっかやってんじゃないわよっ。それに、ここではアタシ、ブラックローズだかんね。ネットのマナーとか言ってた割に脇が甘いんだから」
腰に両手をあてて見下ろすように話す、というか、叱っている。
(前にザ・ワールドでカズくんから聞かされたけど、家じゃコワ~い姉さんなんだな、晶良さんって)
ふと見れば、白く小さい呪紋使いの陰に隠れるように寄り添う、こげ茶色の髪をツインテールに束ねた小柄な剣士の姿が目に入った。それに気付いたカズが、姉の攻撃をするりとかわし、
「ぼくのパートナー、はるです」
と紹介してくれる。
「はじめまして」
と挨拶すると、はるははにかむようにして
「はじめまして、はるといいます。伝説の勇者にお会いできて、なんか感激です」
そう言われて悪い気はしない。
「よろしく」
と答えて右手をさしだした。はるはおずおずと右手を伸ばし握手に応じ、
「やさしいんですね、カイトさん」
と上気した声で言う。そこで冷たい視線を感じる。速水姉弟がこちらをにらんでいるではないか。はるも気付いたようで、慌ててフォローする。
「あっ、カズのほうがやさしいよ、もちろん」
途端にデレ~っとするカズ。あれであちらは仲直りだろう。問題は…。
「ふぅ~ん。伝説の勇者さんは、女性PCにはやさしいんだねぇ」
トゲありまくりのブラックローズの言い方。すぐにウィスパーモードに切り替えて、
「晶良さん、弟さんの彼女にやきもちなんか焼かないでよ」
「やきもちぃ? べつにぃ。アタシはただ、思ったこと、言っただけ。文句ある?」
(げっ。晶良さんって、意外と嫉妬深い…。こりゃあ、浮気がばれたら殺されるな…)
冷や汗をかいていると、ブラックローズの周りの空気が緩んだ。
「そーだよね。弟の彼女だもんね。ごめんね。アタシ、ちょっと大人げなかった」
ほっとしたついでに、
「ぼくが愛してるのは晶良さんだけ」
とささやく。
「ばかっ」
照れてブラックローズが口走る。それを見ていたカズがニヤニヤしながら、
「そこの2人、ゲームの中でいちゃいちゃしな~い」
と冷やかしてくる。
「カズ! 覚えときなさいよ。また端末取り上げるわよ」
ひゃっと声をあげて自分の頭を押さえるカズ。はるがおずおずと前に出て、
「あの…、ブラックローズさん、またお会いできましたね。あのときは、ありがとうございました」
深々と頭を下げる。カズは驚いて、
「えっ!? はるとねぇちゃん、知り合いなの?」
声が裏返っている。
「カズが行方不明だったとき、何度も助けてもらったんだよ」
はるが懐かしげに答える。
「げっ。ねぇ、はる。な、なんか変なこと言われなかった?」
「ううん。そのときね、カズとブラックローズさんって似てるって思ったんだよ。それに、カズがよく話してくれたお姉さんと同じこと言うし。ひょっとしたらって思ってたんだ」
「え~っ、ボク、こんなに乱暴じゃないよっ」
「文和っ、アンタ、なんてこと言うの! アタシが乱暴だってぇのぉ」
「あっ、いっけね。わぁ~、ご、ごめんなさいっ」
ぼくとハルは顔を見合わせ大笑いする。
「そこっ! 笑うトコじゃないっつーの!」
ブラックローズは拳を振り上げ、カズの頭をぽかりと殴りつけた。
「ってぇ~。ったく、ねぇちゃんときたら、怒ると手ぇつけらんないんだからぁ」
ひとり言のようにブツブツ文句を言うしかないカズだった。
「そーだよね。弟の彼女だもんね。ごめんね。アタシ、ちょっと大人げなかった」
ほっとしたついでに、
「ぼくが愛してるのは晶良さんだけ」
とささやく。
「ばかっ」
照れてブラックローズが口走る。それを見ていたカズがニヤニヤしながら、
「そこの2人、ゲームの中でいちゃいちゃしな~い」
と冷やかしてくる。
「カズ! 覚えときなさいよ。また端末取り上げるわよ」
ひゃっと声をあげて自分の頭を押さえるカズ。はるがおずおずと前に出て、
「あの…、ブラックローズさん、またお会いできましたね。あのときは、ありがとうございました」
深々と頭を下げる。カズは驚いて、
「えっ!? はるとねぇちゃん、知り合いなの?」
声が裏返っている。
「カズが行方不明だったとき、何度も助けてもらったんだよ」
はるが懐かしげに答える。
「げっ。ねぇ、はる。な、なんか変なこと言われなかった?」
「ううん。そのときね、カズとブラックローズさんって似てるって思ったんだよ。それに、カズがよく話してくれたお姉さんと同じこと言うし。ひょっとしたらって思ってたんだ」
「え~っ、ボク、こんなに乱暴じゃないよっ」
「文和っ、アンタ、なんてこと言うの! アタシが乱暴だってぇのぉ」
「あっ、いっけね。わぁ~、ご、ごめんなさいっ」
ぼくとハルは顔を見合わせ大笑いする。
「そこっ! 笑うトコじゃないっつーの!」
ブラックローズは拳を振り上げ、カズの頭をぽかりと殴りつけた。
「ってぇ~。ったく、ねぇちゃんときたら、怒ると手ぇつけらんないんだからぁ」
ひとり言のようにブツブツ文句を言うしかないカズだった。
「晶良ぁ~」
リアルの名前を呼ばれて、ガクっとするブラックローズ。
「だ、だれよ? その名前を呼ぶのは」
「ごめんごめん。私よ、翔子よ。あっ、ここじゃSyuaっていうの。よろしくね、ブラックローズ」
その呪紋使いは右手を軽く上げて、そう名乗った。
「翔子? 翔子なのっ。わ~っ、なんか、なんかさ。すっごい変な感じぃ」
Syuaとパーティーを組む双剣士が口をはさむ。
「ほぇ~、ほんとに速水なの? 女ってのは化けるねぇ。オレ、祐士だよ。ここじゃマックだ」
「うわっ、祐士なの。実物よりずっといいじゃん」
思ったことを素直に口に出すと、
「でしょお」
と翔子、Syuaが同意する。3人ともリアルではクラスメート、おまけに翔子と祐士は恋人だけに遠慮がない。喧嘩にならないかとハラハラしていると、
「Syuaにマック、お久!」
とカズがタイミングよく話に割り込む。姉に似ず気配り上手だ。
「あら、カズくん。元気になったみたいね。彼女連れとは、やるじゃない」
とSyuaが笑顔で答える。怒るタイミングを逸したマックは不満そうに横を向いてしまった。
速水姉弟を中心に話が盛り上がっていて、ぼくは一人ぽつんとたたずんでいた。すると、
「あの…、カイトさん。ちょっといいですか」
はるにウィスパーモードで話しかけられる。
「なんだい?」
こちらもウィスパーモードにしてささやき返す。
「メンバーアドレス、いただけませんか」
「えっ?」
「実は…相談に乗ってほしいこと、あるんです」
「うん。ぼくで役立てるなら、いいよ」
「うれしい!」
ニコっと笑顔を見せてメンバーアドレスを渡してきたはるに、自分のメンバーアドレスを返信した。それだけではるはカズの近くへと戻っていった。
リアルの名前を呼ばれて、ガクっとするブラックローズ。
「だ、だれよ? その名前を呼ぶのは」
「ごめんごめん。私よ、翔子よ。あっ、ここじゃSyuaっていうの。よろしくね、ブラックローズ」
その呪紋使いは右手を軽く上げて、そう名乗った。
「翔子? 翔子なのっ。わ~っ、なんか、なんかさ。すっごい変な感じぃ」
Syuaとパーティーを組む双剣士が口をはさむ。
「ほぇ~、ほんとに速水なの? 女ってのは化けるねぇ。オレ、祐士だよ。ここじゃマックだ」
「うわっ、祐士なの。実物よりずっといいじゃん」
思ったことを素直に口に出すと、
「でしょお」
と翔子、Syuaが同意する。3人ともリアルではクラスメート、おまけに翔子と祐士は恋人だけに遠慮がない。喧嘩にならないかとハラハラしていると、
「Syuaにマック、お久!」
とカズがタイミングよく話に割り込む。姉に似ず気配り上手だ。
「あら、カズくん。元気になったみたいね。彼女連れとは、やるじゃない」
とSyuaが笑顔で答える。怒るタイミングを逸したマックは不満そうに横を向いてしまった。
速水姉弟を中心に話が盛り上がっていて、ぼくは一人ぽつんとたたずんでいた。すると、
「あの…、カイトさん。ちょっといいですか」
はるにウィスパーモードで話しかけられる。
「なんだい?」
こちらもウィスパーモードにしてささやき返す。
「メンバーアドレス、いただけませんか」
「えっ?」
「実は…相談に乗ってほしいこと、あるんです」
「うん。ぼくで役立てるなら、いいよ」
「うれしい!」
ニコっと笑顔を見せてメンバーアドレスを渡してきたはるに、自分のメンバーアドレスを返信した。それだけではるはカズの近くへと戻っていった。
「カイト~」
ブラックローズに呼ばれる。彼女のところに行くと、
「アタシの友達、紹介するね」
「うん」
「こっちの呪紋使いがSyua、リアルではアタシの古くからの親友で、翔子っていうの。そっちの双剣士が彼氏のマック。どっちも高校のクラスメートなの」
「あっ、カイトです。よろしく。晶良さんがいつもお世話になってます」
「へぇ~、年下なのにしっかりしてるね。晶良をよろしく、ね」
Syuaはそう言うと、にっこりと微笑んだ。
「速水のパートナーって…、伝説の勇者カイトなのかよ! うわ~、ビックリ」
マックが驚きの声をあげる。
(なんか、照れくさいなぁ。それに、年下ってバレてるし…)
求められるまま2人と握手し、メンバーアドレスを交換する。そこに、聞き覚えのある声が…、
「あ~、そこのパーティーたち。リアルの話をザ・ワールドでしてると、こわ~い騎士さまに怒られちゃうよぉ」
「ヤスヒ…じゃなかった、オルカ! それに」
懐かしさに目を細める。
「よぉ」
と言って、気軽くバンバン肩をたたいてくる巨漢の剣士。そして、
「久しぶりだ。カイト」
呆気にとられるSyua、マック、ハル。だれからともなく、その2人の名前が口をつく。そう二つ名付きで。
「蒼海のオルカに…」
「蒼天のバルムンク…」
「フィアナの末裔!」
伝説のパーティー、そろい踏み。いやが応にも目立つ目立つ。大勢がごった返していたマク・アヌに一瞬の静寂が訪れ、すぐに全員がこちらを見ながらひそひそと話しだす。そんな状況を無視するように、
「あ~ら、アタシだってきてるんだからね」
さも不満そうにブラックローズがずいと前に出る。
「これはこれは、ザ・ワールドに咲いた黒薔薇さま、ではありませぬか」
オルカがおどけて大仰に言う。
ブラックローズに呼ばれる。彼女のところに行くと、
「アタシの友達、紹介するね」
「うん」
「こっちの呪紋使いがSyua、リアルではアタシの古くからの親友で、翔子っていうの。そっちの双剣士が彼氏のマック。どっちも高校のクラスメートなの」
「あっ、カイトです。よろしく。晶良さんがいつもお世話になってます」
「へぇ~、年下なのにしっかりしてるね。晶良をよろしく、ね」
Syuaはそう言うと、にっこりと微笑んだ。
「速水のパートナーって…、伝説の勇者カイトなのかよ! うわ~、ビックリ」
マックが驚きの声をあげる。
(なんか、照れくさいなぁ。それに、年下ってバレてるし…)
求められるまま2人と握手し、メンバーアドレスを交換する。そこに、聞き覚えのある声が…、
「あ~、そこのパーティーたち。リアルの話をザ・ワールドでしてると、こわ~い騎士さまに怒られちゃうよぉ」
「ヤスヒ…じゃなかった、オルカ! それに」
懐かしさに目を細める。
「よぉ」
と言って、気軽くバンバン肩をたたいてくる巨漢の剣士。そして、
「久しぶりだ。カイト」
呆気にとられるSyua、マック、ハル。だれからともなく、その2人の名前が口をつく。そう二つ名付きで。
「蒼海のオルカに…」
「蒼天のバルムンク…」
「フィアナの末裔!」
伝説のパーティー、そろい踏み。いやが応にも目立つ目立つ。大勢がごった返していたマク・アヌに一瞬の静寂が訪れ、すぐに全員がこちらを見ながらひそひそと話しだす。そんな状況を無視するように、
「あ~ら、アタシだってきてるんだからね」
さも不満そうにブラックローズがずいと前に出る。
「これはこれは、ザ・ワールドに咲いた黒薔薇さま、ではありませぬか」
オルカがおどけて大仰に言う。
「どうですか? お嬢さま、私めの親友は? 何か粗相など、してはおりませぬでしょうか?」
うやうやしく頭など下げながら話すオルカ。
「ヤスヒコ! じゃなくて、オルカ! お前、なんてこと言ってんだよっ」
つい声が大きくなる。それを見ながら、笑いをかみ殺している蒼の騎士。それに気付いて、
「バルムンク! 何、笑ってんの!」
と強い調子で言う。
「いや、失敬。仲良きことは善きことかな」
横で聞いていたブラックローズが感心したように、
「へぇ~、バルムンクって…、こーゆーので笑うんだぁ」
「ブラックローズ。そうだな。お前たちが変えてくれたんだ、石頭だったオレのことを」
「またぁ。すぐそーやってシブがるんだからぁ」
「バル、さすがの蒼天も、か・た・な・し・だな?」
「オルカ! お前には言われたくない」
フィアナの末裔とドットハッカーズ、そのどちらもを神格化している大勢のプレイヤーにとって、まさか漫才みたいな会話をしているとは、夢にも思えまい。さらに驚くのは、
「それにしても久しぶりだ、カイト。去年の5月、熱海へツーリングして以来だ」
リアルの話をするバルムンク! 驚愕するオルカ。
「バ、バ、バ、バル! お、おまえ、ほんとにバルムンクか?」
「フフフ。まあ、おまえが驚くのも無理はない、か。俺ももうすぐ社会人になる。ゲームの中とはいえ、大人にならねばな」
これまでの涼やかだった視線ではない。温かみのある、それでいて自信に満ちた瞳だ。このバルムンクの変化はきっと皆に歓迎されるだろう。ぼくも、オルカも、ブラックローズも、柔らかな空気に気持ちよく身を委ねた。
「おっと。そろそろ時間だ。バル、動くとするか」
「うむ」
フィアナの末裔が背を向ける。
「健闘を祈る」
「そっちもね」
エールを交換すると、2人は自分たちが予測するボス出現の地へ向かっていった。そこは一番奥の広場だった。
うやうやしく頭など下げながら話すオルカ。
「ヤスヒコ! じゃなくて、オルカ! お前、なんてこと言ってんだよっ」
つい声が大きくなる。それを見ながら、笑いをかみ殺している蒼の騎士。それに気付いて、
「バルムンク! 何、笑ってんの!」
と強い調子で言う。
「いや、失敬。仲良きことは善きことかな」
横で聞いていたブラックローズが感心したように、
「へぇ~、バルムンクって…、こーゆーので笑うんだぁ」
「ブラックローズ。そうだな。お前たちが変えてくれたんだ、石頭だったオレのことを」
「またぁ。すぐそーやってシブがるんだからぁ」
「バル、さすがの蒼天も、か・た・な・し・だな?」
「オルカ! お前には言われたくない」
フィアナの末裔とドットハッカーズ、そのどちらもを神格化している大勢のプレイヤーにとって、まさか漫才みたいな会話をしているとは、夢にも思えまい。さらに驚くのは、
「それにしても久しぶりだ、カイト。去年の5月、熱海へツーリングして以来だ」
リアルの話をするバルムンク! 驚愕するオルカ。
「バ、バ、バ、バル! お、おまえ、ほんとにバルムンクか?」
「フフフ。まあ、おまえが驚くのも無理はない、か。俺ももうすぐ社会人になる。ゲームの中とはいえ、大人にならねばな」
これまでの涼やかだった視線ではない。温かみのある、それでいて自信に満ちた瞳だ。このバルムンクの変化はきっと皆に歓迎されるだろう。ぼくも、オルカも、ブラックローズも、柔らかな空気に気持ちよく身を委ねた。
「おっと。そろそろ時間だ。バル、動くとするか」
「うむ」
フィアナの末裔が背を向ける。
「健闘を祈る」
「そっちもね」
エールを交換すると、2人は自分たちが予測するボス出現の地へ向かっていった。そこは一番奥の広場だった。
彼らの姿が見えなくなると、ブラックローズが近寄ってきて、
「ねぇ。熱海にツーリングって、何よ?」
「ぼくたちがリアルで会う前のことだよ。ワイズマンがサッカーの試合に出るんで、その応援に行ったんだ」
「へぇ~。でも、ツーリング…ってことは、バイク?」
「そうだよ。バルムンクが新車を買ったっていうから、慣らし運転に付き合ったんだ。もちろんタンデムシートだったけど」
「ふぅ~ん。怖いこと、されなかった?」
「だいじょぶ、だよ。高速道路で220㎞/h出されたときは、さすがにビビったけどね」
「な、なんですってぇ~」
ブラックローズの全身から怒気が立ち上る。
「えっ?」
「そんな危ないことしてっ! もし、なんかあったら、どーすんのよっ!」
お姉ちゃん気質、というより恋人の怒り。
(ワインディングロードのテールスライドやハングオン、それにウイリーもシビレた、とは、とても言えない…)
「アンタと会えなかったら、なんて、もう考えられないんだからっ!」
本気で怒っている。ぼくは何も言えずにいたが、すぐにブラックローズの微妙な変化に気付く。
(晶良さん、泣いてる…)
「泣かないでよ」
「ば、ばかねぇ! だれが泣いてるって? 見えもしないくせに、勝手な想像で言わないでくれるっ!」
「……」
「まぁた、そーやって」
ブラックローズは笑みを浮かべ、ぼくのほうへ振り返った。
「てんてんてん、じゃないっちゅーの」
「ごめん。これからはもう、晶良さんに心配かけるようなことはしないよ、…その、なるべく」
「あったりまえでしょっ! ったく、バルムンクったらぁ。今度会ったら、思いっきり文句言ってやるんだっ」
怒るブラックローズを見ながら、ぼくはうれしい気持ちと申し訳ない気持ちでいっぱいになっていた。
「ねぇ。熱海にツーリングって、何よ?」
「ぼくたちがリアルで会う前のことだよ。ワイズマンがサッカーの試合に出るんで、その応援に行ったんだ」
「へぇ~。でも、ツーリング…ってことは、バイク?」
「そうだよ。バルムンクが新車を買ったっていうから、慣らし運転に付き合ったんだ。もちろんタンデムシートだったけど」
「ふぅ~ん。怖いこと、されなかった?」
「だいじょぶ、だよ。高速道路で220㎞/h出されたときは、さすがにビビったけどね」
「な、なんですってぇ~」
ブラックローズの全身から怒気が立ち上る。
「えっ?」
「そんな危ないことしてっ! もし、なんかあったら、どーすんのよっ!」
お姉ちゃん気質、というより恋人の怒り。
(ワインディングロードのテールスライドやハングオン、それにウイリーもシビレた、とは、とても言えない…)
「アンタと会えなかったら、なんて、もう考えられないんだからっ!」
本気で怒っている。ぼくは何も言えずにいたが、すぐにブラックローズの微妙な変化に気付く。
(晶良さん、泣いてる…)
「泣かないでよ」
「ば、ばかねぇ! だれが泣いてるって? 見えもしないくせに、勝手な想像で言わないでくれるっ!」
「……」
「まぁた、そーやって」
ブラックローズは笑みを浮かべ、ぼくのほうへ振り返った。
「てんてんてん、じゃないっちゅーの」
「ごめん。これからはもう、晶良さんに心配かけるようなことはしないよ、…その、なるべく」
「あったりまえでしょっ! ったく、バルムンクったらぁ。今度会ったら、思いっきり文句言ってやるんだっ」
怒るブラックローズを見ながら、ぼくはうれしい気持ちと申し訳ない気持ちでいっぱいになっていた。