vol.1④Breakfast
この季節、夜が明けるのは早い。晶良は小鳥のさえずりで目を覚ました。
「きょうもいい天気、みたいね。洗濯日和だわ」
とつぶやき、ん~っと静かに伸びをする。横で寝息をたてている夫を起こさないようにベッドを後にする。歯を磨き、顔を洗い終えたころには、すっかり覚醒していた。
高校生のころ、起きぬけはいつもバタバタして、テニス部の朝練なんて遅刻ぎりぎりばっかり。なんであんなに眠かったのか、いつのころから寝覚めが良くなったのか、もう忘れてしまった。
トレーニングウエアに着替え外に出ると、夏の日差しが降りそそいでいる。ことしもカラ梅雨らしい。
夫の出張中は雨続きで、帰ってきたらよく晴れる。なんだか自分の気持ちを反映しているみたいで、そんなことを思う自分に気づいて、思わず照れ笑いがこぼれてしまう。
顔をぴしゃっとたたいて気合を入れる。腰のあたりに夕べの疲れが鈍く残ってはいるが、それも心地よい。体を動かすことが好きな晶良の休日の日課。引き締まったボディを維持する、なによりのトレーニング。
入念にストレッチをこなす。汗かきの晶良の額には、もう玉のような汗がふき出している。腕で拭って
「よ~し、いくわよ!」
と声に出して言い、軽快に走りだす。1㎞あたり7分をきるくらいのスピードで体を慣らしていく。中間地点にあるコンビニが3㎞ポイント。呼吸の乱れはない。流れ落ちる汗が気持ちいい。それでも5㎞を過ぎると疲れがにじんでくる。
「も、少しで。給水よ。ファ~イト!」
見慣れた、というより見飽きた風景が目の前に広がる。横浜市旭区、生まれ育った町だ。
家から自転車が飛び出してくる。
「文和! お出掛けぇ? それともデート?」
「バイトぉ…って、ねぇちゃん! もう追ん出されたのかよ!?」
すれ違いざま、裏拳一発。ゴンっ! と鈍い音。
「ってぇ~。怒ると手ぇつけられないんだからぁ。よくねぇちゃんみたいなのと付き合ってられるよなぁ、義兄さん」
文和がぶつくさ言いながら振り返ると、晶良は勢いよくドアを開け、シューズを跳ね飛ばすように脱いだところだった。
「きょうもいい天気、みたいね。洗濯日和だわ」
とつぶやき、ん~っと静かに伸びをする。横で寝息をたてている夫を起こさないようにベッドを後にする。歯を磨き、顔を洗い終えたころには、すっかり覚醒していた。
高校生のころ、起きぬけはいつもバタバタして、テニス部の朝練なんて遅刻ぎりぎりばっかり。なんであんなに眠かったのか、いつのころから寝覚めが良くなったのか、もう忘れてしまった。
トレーニングウエアに着替え外に出ると、夏の日差しが降りそそいでいる。ことしもカラ梅雨らしい。
夫の出張中は雨続きで、帰ってきたらよく晴れる。なんだか自分の気持ちを反映しているみたいで、そんなことを思う自分に気づいて、思わず照れ笑いがこぼれてしまう。
顔をぴしゃっとたたいて気合を入れる。腰のあたりに夕べの疲れが鈍く残ってはいるが、それも心地よい。体を動かすことが好きな晶良の休日の日課。引き締まったボディを維持する、なによりのトレーニング。
入念にストレッチをこなす。汗かきの晶良の額には、もう玉のような汗がふき出している。腕で拭って
「よ~し、いくわよ!」
と声に出して言い、軽快に走りだす。1㎞あたり7分をきるくらいのスピードで体を慣らしていく。中間地点にあるコンビニが3㎞ポイント。呼吸の乱れはない。流れ落ちる汗が気持ちいい。それでも5㎞を過ぎると疲れがにじんでくる。
「も、少しで。給水よ。ファ~イト!」
見慣れた、というより見飽きた風景が目の前に広がる。横浜市旭区、生まれ育った町だ。
家から自転車が飛び出してくる。
「文和! お出掛けぇ? それともデート?」
「バイトぉ…って、ねぇちゃん! もう追ん出されたのかよ!?」
すれ違いざま、裏拳一発。ゴンっ! と鈍い音。
「ってぇ~。怒ると手ぇつけられないんだからぁ。よくねぇちゃんみたいなのと付き合ってられるよなぁ、義兄さん」
文和がぶつくさ言いながら振り返ると、晶良は勢いよくドアを開け、シューズを跳ね飛ばすように脱いだところだった。
「たっだいま~! お母さん、水ちょうだ~い!」
「晶良、じゃないの。冷蔵庫に麦茶、入ってるわよ」
「ありがとう!」
息を切らしながら冷蔵庫を開け、麦茶の入ったペットボトルをあおる。
「まあ、お行儀の悪い娘。そんなことじゃ離婚されちゃうわよ」
「うん、いいぞ。早く別れて戻ってきなさい、晶良」
「あっ、お父さん、おはよう。早く別れてって…ひっどいなぁ~。だいじょうぶだよぉ、愛されてるもん」
「そうかぁ…」
ちょっぴり寂しそうな晶良の父・寿史。話題を変えるように
「朝ごはん、食べてくか?」
「ダメよ。愛するダンナさまと食べるんだから」
「そうか…」
そんな2人を見て、くすくす笑っている母。少しでも長く家に引き止めておこうと、
「はい、晶良。バナナと牛乳くらいなら、入るでしょ」
「わっ、ありがと~、お母さん」
立ったままバナナをほおばり、牛乳で流し込む。
「ごちそぉさま。じゃあ」
「えっ、もう、帰るのか」
「うん。またくるよ」
明るく言って玄関へ。ささっとシューズを履いて復路のスタート。と、後ろの上のほうから声がかかる。
「おねえちゃん! 帰ってたの?」
「幸太! うん、もうバイバイだけど。ねぇ、一緒に走る?」
「いや、いいよ」
「勉強ばっかしてないで、運動もやんなさいよ。太るわよぉぉっ」
「あははっ。おねえちゃん、また遊びにきてね!」
右手を上げて走りだす。そのころ家の中では、
「台風みたいな娘だなぁ」
「まったく。だれに似たんだか…。はぁ~」
両親、しみじみ。
「晶良、じゃないの。冷蔵庫に麦茶、入ってるわよ」
「ありがとう!」
息を切らしながら冷蔵庫を開け、麦茶の入ったペットボトルをあおる。
「まあ、お行儀の悪い娘。そんなことじゃ離婚されちゃうわよ」
「うん、いいぞ。早く別れて戻ってきなさい、晶良」
「あっ、お父さん、おはよう。早く別れてって…ひっどいなぁ~。だいじょうぶだよぉ、愛されてるもん」
「そうかぁ…」
ちょっぴり寂しそうな晶良の父・寿史。話題を変えるように
「朝ごはん、食べてくか?」
「ダメよ。愛するダンナさまと食べるんだから」
「そうか…」
そんな2人を見て、くすくす笑っている母。少しでも長く家に引き止めておこうと、
「はい、晶良。バナナと牛乳くらいなら、入るでしょ」
「わっ、ありがと~、お母さん」
立ったままバナナをほおばり、牛乳で流し込む。
「ごちそぉさま。じゃあ」
「えっ、もう、帰るのか」
「うん。またくるよ」
明るく言って玄関へ。ささっとシューズを履いて復路のスタート。と、後ろの上のほうから声がかかる。
「おねえちゃん! 帰ってたの?」
「幸太! うん、もうバイバイだけど。ねぇ、一緒に走る?」
「いや、いいよ」
「勉強ばっかしてないで、運動もやんなさいよ。太るわよぉぉっ」
「あははっ。おねえちゃん、また遊びにきてね!」
右手を上げて走りだす。そのころ家の中では、
「台風みたいな娘だなぁ」
「まったく。だれに似たんだか…。はぁ~」
両親、しみじみ。
6㎞のコースを逆走する。気温は25℃を超えているだろう。暑さがスタミナを奪い、へろへろになってようやく自宅マンションへたどり着いた。
まだ眠っているかもしれない彼を気づかい、そっとドアを開けると
「おかえり~」
と、寝ぼけたような声。
「ただいまっ。起きてたんだぁ」
「うん、いま起きたとこ。よく寝たぁ」
ん~っと伸びをする。そんな仕草に目を細めて、
「シャワー、一緒に浴びよ?」
「うん!」
手を引かれてバスルームに導かれ服を脱ぐ。汗がきらきら光る晶良の肌を見ていると目が覚めてくる。
シャワーのお湯を出す晶良の背後から手を伸ばそうとすると、鏡で見ていたのか
「ダ~メ。汗、流してから、ね」
2人、頭からシャワーを浴びる。互いに自分の体を流した後、顔を近づけキス。晶良がムスコを握る。夕べ、自分の中で暴れまわったものを慈しむように、お湯を浴びせながら、そっとしごく。
「きれいに、しなきゃ、ね」
「勃ってきちゃった…」
「わっ、ダメダメ。朝からなんて、できません!」
「こいつ、言うこと聞いてくれればいいんだけど…」
「ダメったらダメ! それにバナナと牛乳、実家で飲んできちゃったし」
「えっ、実家って6㎞はあるよね!?」
「うん! あっそうだ。今度からさ、ちゃんと書いてくよ。『実家に帰らせていただきます』って」
「なんか、それはイヤだなぁ」
2人とも笑ったら、お腹がぐぅ~と鳴った。
「朝ごはん、食べよ?」
「そ、そうだね。晶良はその後、だね」
「ばかもの~」
まだ眠っているかもしれない彼を気づかい、そっとドアを開けると
「おかえり~」
と、寝ぼけたような声。
「ただいまっ。起きてたんだぁ」
「うん、いま起きたとこ。よく寝たぁ」
ん~っと伸びをする。そんな仕草に目を細めて、
「シャワー、一緒に浴びよ?」
「うん!」
手を引かれてバスルームに導かれ服を脱ぐ。汗がきらきら光る晶良の肌を見ていると目が覚めてくる。
シャワーのお湯を出す晶良の背後から手を伸ばそうとすると、鏡で見ていたのか
「ダ~メ。汗、流してから、ね」
2人、頭からシャワーを浴びる。互いに自分の体を流した後、顔を近づけキス。晶良がムスコを握る。夕べ、自分の中で暴れまわったものを慈しむように、お湯を浴びせながら、そっとしごく。
「きれいに、しなきゃ、ね」
「勃ってきちゃった…」
「わっ、ダメダメ。朝からなんて、できません!」
「こいつ、言うこと聞いてくれればいいんだけど…」
「ダメったらダメ! それにバナナと牛乳、実家で飲んできちゃったし」
「えっ、実家って6㎞はあるよね!?」
「うん! あっそうだ。今度からさ、ちゃんと書いてくよ。『実家に帰らせていただきます』って」
「なんか、それはイヤだなぁ」
2人とも笑ったら、お腹がぐぅ~と鳴った。
「朝ごはん、食べよ?」
「そ、そうだね。晶良はその後、だね」
「ばかもの~」
短パン、Tシャツに着替えて2人仲良く朝食の用意。卵を焼くのはぼくの役目。力まかせに卵を割る晶良がやると、『イニス』みたいなのを食べさせられる羽目になる…。
「ねぇ、普通のトーストでいいの? アタシはチーズトーストにするけど」
「うん。晶良、ハムはどうする? 卵と一緒に焼く?」
「別に焼いてぇ」
「おっけぇ。ぼくはハムエッグにしよっと」
晶良がサラダをつくっている間に、コーヒーメーカーをセット。
「ん~。いい香り。あっ、牛乳も沸かして、カフェオレにするから」
「はいはい」
テーブルに朝食を並べて、向かい合って座る。
「いっただっきま~す!」
で、チュっとキス。
「あっ、タバスコ、とって」
と晶良。
「汗かきなのに、辛いもの好きだよねぇ、晶良は」
「人生、スパイスも必要よ」
「うん、わかる。だから晶良と結婚したんだ」
「なによ、それ。ムカつくわねぇ」
「はははっ」
と笑ってごまかす。2枚目のトーストを平らげ、お腹も落ち着いてきた。食後のコーヒーを飲みながら、ノートパソコンを開く。メール着信を表すアイコンが点滅している。
「良子さんからだ」
「ん~。なになに!? なんなのなん?」
カフェオレボウルを持って背中のほうにまわり、ディスプレイをのぞきこむ晶良。
「ねぇ、普通のトーストでいいの? アタシはチーズトーストにするけど」
「うん。晶良、ハムはどうする? 卵と一緒に焼く?」
「別に焼いてぇ」
「おっけぇ。ぼくはハムエッグにしよっと」
晶良がサラダをつくっている間に、コーヒーメーカーをセット。
「ん~。いい香り。あっ、牛乳も沸かして、カフェオレにするから」
「はいはい」
テーブルに朝食を並べて、向かい合って座る。
「いっただっきま~す!」
で、チュっとキス。
「あっ、タバスコ、とって」
と晶良。
「汗かきなのに、辛いもの好きだよねぇ、晶良は」
「人生、スパイスも必要よ」
「うん、わかる。だから晶良と結婚したんだ」
「なによ、それ。ムカつくわねぇ」
「はははっ」
と笑ってごまかす。2枚目のトーストを平らげ、お腹も落ち着いてきた。食後のコーヒーを飲みながら、ノートパソコンを開く。メール着信を表すアイコンが点滅している。
「良子さんからだ」
「ん~。なになに!? なんなのなん?」
カフェオレボウルを持って背中のほうにまわり、ディスプレイをのぞきこむ晶良。
件名:お薬は 差出人:"あなたの"寺島良子
──お薬は効きましたか?
きっと、燃えるような夜をすごされたのでしょうね。
晶良さんが、うらやましい…。
実は…、あのお薬は「正露丸」なのですが。うふっ。
晶良さんに飽きたら、いつでもおっしゃってくださいね。
本当にすごいお薬、ありますから。
もちろん、良子でお試しになっていただいて構いませんわ。
それでは、ごきげんよう。晶良さんにも、よろしくお伝えください。
きっと、燃えるような夜をすごされたのでしょうね。
晶良さんが、うらやましい…。
実は…、あのお薬は「正露丸」なのですが。うふっ。
晶良さんに飽きたら、いつでもおっしゃってくださいね。
本当にすごいお薬、ありますから。
もちろん、良子でお試しになっていただいて構いませんわ。
それでは、ごきげんよう。晶良さんにも、よろしくお伝えください。
晴れのち暴風雨、の予感…。目の前、真っ暗。そこに稲妻が走る。──ピシャっ!
「…アンタ、二度と九州行っちゃダメ、だかんね! なによ、"あなたの"って。ほんっとーに、あの女狐とは何にもなかったんでしょーねぇ?」
「ないよっ!」
「ったくっ! なんか…、もぉ、どぉ~でもよくなってきちゃったっ!」
「…お~い…」
思いっきり背中をつねられる。
「いてっ、ててっ!」
昨日の夜、晶良に爪をたてられたところをピンポイント攻撃!
「? あれっ、血がにじんでるよ、アンタ。どしたのぉ?」
いままでの怒りはどこへやら、うろたえる晶良。
「いや…なんでも、ないよ」
「なんでもないことないっ。Tシャツ、脱いで!」
有無を言わさず脱がす晶良。
(うわぁ、お姉ちゃん気質、全開だぁ。でも話題がそれて、よかったぁ)
「ミミズ腫れが右に3本、左にも…。ひどい。どうしたのよ、これ?」
「…アンタ、二度と九州行っちゃダメ、だかんね! なによ、"あなたの"って。ほんっとーに、あの女狐とは何にもなかったんでしょーねぇ?」
「ないよっ!」
「ったくっ! なんか…、もぉ、どぉ~でもよくなってきちゃったっ!」
「…お~い…」
思いっきり背中をつねられる。
「いてっ、ててっ!」
昨日の夜、晶良に爪をたてられたところをピンポイント攻撃!
「? あれっ、血がにじんでるよ、アンタ。どしたのぉ?」
いままでの怒りはどこへやら、うろたえる晶良。
「いや…なんでも、ないよ」
「なんでもないことないっ。Tシャツ、脱いで!」
有無を言わさず脱がす晶良。
(うわぁ、お姉ちゃん気質、全開だぁ。でも話題がそれて、よかったぁ)
「ミミズ腫れが右に3本、左にも…。ひどい。どうしたのよ、これ?」
「あは。あのね、え~と、ね。きのうの晩、晶良がつけたんだけど…、覚えてないよね?」
「うそっ!?」
晶良はみるみる赤面し、
「ごっめ~ん! 痛いでしょ、大丈夫?」
今にも泣きださんばかりにオロオロしている。
「へぇき。ぼく、痛いのには慣れてるから…。こんなの、ツバつけときゃ直るよ」
強がるとロクなことはない。この一言で、さらなる地獄をみることに。
「ほんとに? じゃあ、嘗めてあげる」
ペロっと晶良が嘗めた瞬間、
「ぎょえ~!! あ、晶良ぁ、タ、タ、タバスコォ、オオオ…、し・み・るぅ~!」
「あれっ…。あっ! いっけなぁ~い。ごめん、ごめん、ごめんっ!」
慌ててタオルを濡らし、傷に当てる晶良。冷たい感触が痛みを和らげてくれる。
「ふぅ~、なんとか落ち着いたよ」
「…ご、ごめんなさい…。今度、埋め合わせ、するから…。あの、嫌っちゃ、ヤ、だかんね…」
「大丈夫だよ。嫌いになったりなんてしないよ」
やさしく微笑む。キスしようと顔を寄せたところで、ピンポ~ンとチャイムが鳴った。
「は、はぁ~い」
すっと立ち上がりドアに走る晶良。
「ぶぅ~」
(せっかく、いいところだったのにぃ)
すねながら、冷めたトーストの残りを口に放り込む。
「お届けもので~す。サイン、お願いしま~す!」
不必要に元気な声。快楽への過程を邪魔されて、ちょっとイラつく。と、
「ねぇ~、手伝ってよぉ~!」
と晶良に呼ばれる。
「どしたのぉ?」
胸騒ぎを感じながら玄関へ。
「あっ、ご主人さまですか? 荷物、多いんですよ」
愛想笑いをする宅配便のお兄さん。
「多いって?」
「うそっ!?」
晶良はみるみる赤面し、
「ごっめ~ん! 痛いでしょ、大丈夫?」
今にも泣きださんばかりにオロオロしている。
「へぇき。ぼく、痛いのには慣れてるから…。こんなの、ツバつけときゃ直るよ」
強がるとロクなことはない。この一言で、さらなる地獄をみることに。
「ほんとに? じゃあ、嘗めてあげる」
ペロっと晶良が嘗めた瞬間、
「ぎょえ~!! あ、晶良ぁ、タ、タ、タバスコォ、オオオ…、し・み・るぅ~!」
「あれっ…。あっ! いっけなぁ~い。ごめん、ごめん、ごめんっ!」
慌ててタオルを濡らし、傷に当てる晶良。冷たい感触が痛みを和らげてくれる。
「ふぅ~、なんとか落ち着いたよ」
「…ご、ごめんなさい…。今度、埋め合わせ、するから…。あの、嫌っちゃ、ヤ、だかんね…」
「大丈夫だよ。嫌いになったりなんてしないよ」
やさしく微笑む。キスしようと顔を寄せたところで、ピンポ~ンとチャイムが鳴った。
「は、はぁ~い」
すっと立ち上がりドアに走る晶良。
「ぶぅ~」
(せっかく、いいところだったのにぃ)
すねながら、冷めたトーストの残りを口に放り込む。
「お届けもので~す。サイン、お願いしま~す!」
不必要に元気な声。快楽への過程を邪魔されて、ちょっとイラつく。と、
「ねぇ~、手伝ってよぉ~!」
と晶良に呼ばれる。
「どしたのぉ?」
胸騒ぎを感じながら玄関へ。
「あっ、ご主人さまですか? 荷物、多いんですよ」
愛想笑いをする宅配便のお兄さん。
「多いって?」