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vol.3-3①AI buster

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taka18r

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だれでも歓迎! 編集

vol.3-3①AI buster






このままずっとイくのね 嘘を積み重ねても
踏み外した道を戻ることは出来ない
君が今何処にいて何を見つめていても
そんな風に心離したまま二人は愛し合うの
                 <edge>



          .hack//関係拡大 vol.3 第3章      <開始>






「海が見たいです」
 返信メールには、そう記されていた。
 晶良の怪我の回復はあまり思わしくなく、なかなかデートできなかった。だから、というわけではないが、ぼくはしばらくぶりになつめに「会えないかな?」とメールした。
 夏休みからいままでの間、ただの一度も連絡を取っていなかった。それにザ・ワールドにログインすることもなかった。だからといって、なつめのことを忘れていたわけではなかった。
 自分からは別れ話をきりだせない。そんな情けなさもあって、会わない間にぼくよりも彼女にふさわしい男性が姿を現しはしないか、淡い(というか甘い)期待はあったが…。
 しかし、ほとんど間をおかずに返信されてきたメールには、文面にこそ表れていないが、そこかしこから、いわゆる行間から喜びとうれしさがにじみ出ているのが感じられた。
 こちらまでうれしくなってきてしまい、笑みがこぼれてしまう。しかし、すぐに頭の中にある疑問が浮かんできた。
(そ、そんなことよりも、海…って。いま10月だよね。う~ん?)
 考えてもわかりそうにない。ぼくは「どういうこと? 海って」とメールを送った。
 すぐに、なつめからメールが返ってくる。

──夏休みは図書館にばかり行ってたんです。だから…海が見たいなって思ったんです。
──それに私、泳ぎは苦手です。水着になるのも照れくさいし。えへへ。
──あの、横浜、連れて行ってください。お願いします。

 なんだ。横浜でデートしたいってことか。大きく息をついてから、待ち合わせの時間と場所を打ち込んで送信した。
 ベッドに体を投げだし、少し不安に駆られる。
(横浜、か。晶良さんと鉢合わせ、とかないよね!? だいじょぶだよね。晶良さん、「中華街なんて、高1になって初めて行ったんだ」って言ってたし)
 と、メール着信音が聞こえた。のろのろと起き上がり、もう一度パソコンの前に座ってメーラーをクリック。
 てっきり、なつめからだと思っていたから、送信者の欄を見て青ざめた。
(晶良さんからだ。なんだろう)
 ドキドキしながらメールを読む。


 読み終えて、ほっとした。タイミングがタイミングだっただけに、まずい展開になりやしないか結構心配だった。もう秋も深まっているというのに、額にはうっすら汗をかいていた。
 晶良からのメールの内容は、

──久しぶり! って、きのうもケータイで話したっけ(笑)。
──きょう、病院に行ってきたよ。もう、ほとんど治ってるって。う~ん、早く走りまわりたいよぉ!
──あのさ。11月3日なんだけどさ、アタシの高校の文化祭にこない?
──アタシらは3年だから、大したことはできないけど、そのぶんヒマだからさ。
──アタシの高校、文化祭は結構おもしろいみたい。案内するから、絶対きてね!
──しばらくはリハビリと文化祭の準備で忙しいから。…会えなくて寂しいよぉ(涙)。

 誘われたうれしさと、会えない寂しさ、それにダブルブッキングを避けられた安堵感が入り乱れて、なんともいえない気持ちだ。
 ひと息ついてメーラーに目を移す。もう一通、着信があった。なつめからだった。

──はい! 楽しみにしています!
──お弁当、つくっていきます。食べてくださいね。
──
──カイトさん。
──わたし、あなたのことが好きです!

 喜びを隠しきれない文面。罪の意識がどんどん大きく、そしてドス黒くなっていく。
(二股どころか三股だもんなぁ…。こんな悩み、だれにも相談できっこない…。どうすればいいんだろう? どうすれば、だれも傷つかず、みんなが幸せになれるんだろう?)
 リセットできないゲームもある。人生という「RPG」には都合よくヒントや正解は用意されていない。
(まあ、なるようにしかならないよね。それに、毒を食らわば皿まで、っていうし)
 数ある選択肢のなかから、ぼくが選んだのは「開き直る」だった。となれば…。
(もしも、ってこともあるしね…。いや、可能性はかなり高そうだけど…)
 自分に言い訳しつつ、パソコンの画面をインターネットに切り替える。「ファッションホテル 横浜」と入力して検索。時間がたつのも忘れて、いろいろなホテルのホームページに見入ってしまった。


 デート当日。高くなった空が秋を感じさせてくれる。
 待ち合わせは桜木町の歩道橋の上にした。エスカレーターは使わず、階段を一気に駆け上がる。
 少し離れたところになつめが見えた。声をかけようと右手を上げかけて、
「!?」
 様子がおかしいことに気がついた。なつめの前に2人の男が立ちはだかり、落ち着きなく体を揺らして、なにやら話しかけている。
 なつめは両腕を体の前にもってきて身を硬くしている。拒んでいる。嫌がってもいる。表情や態度から、それは明らかだ。
「やめてくださいっ。人を待っているんですっ」
 小走りに近づいたぼくの耳に、なつめの切羽詰まった声が届いた。
「なつめっ!」
 3mほどのところまできて、ぼくは叫ぶように呼んだ。まるで危機一髪のところで正義のヒーローが登場したかのように表情を一変させるなつめ。
「カイトさん!」
 2人の男を突き飛ばして駆け寄ってくる。ぼくはなつめを自分の後ろにまわし、ずいと一歩前へ出る。
「なにか用ですか?」
 にらみつけ強い口調で言う。男たちはニヤニヤと不快な笑いを浮かべて、
「おいおい、怖い顔すんなよ。彼女が退屈そうだったから、相手をしてやってただけだよ。待たせるお前が悪いんだぜ」
 その物言いにムカっときたが、振り上げようとした右手をなつめがつかんで言った。
「いきましょう、カイトさん」
 泣きそうだけど、しっかりした目をぼくに向けてくる。
「うん…。そうだね。行こう」
 なつめの手をとって歩きだした。背中越しに下品な口笛が聞こえたが無視することにした。
 階段を下り、しばらく歩いたところで、なつめが足を止めた。ぼくの目をじっと見つめて
「ありがとうございました」
 と言ってペコリと頭を下げる。
「ぼくがもっと早くきていれば、なつめに嫌な思いをさせずにすんだのに…。その、ごめん」
「そ、そんな。わたしが悪いんです。わたしにスキがあったから…」
 なつめは悲しげに顔を伏せてしまう。


「忘れちゃおうよ。ね?」
 ぼくはそう言って、顔を上げたなつめに微笑みかけた。なつめの表情もぱっと明るくなった。
「そうですね。あんなののせいで、わたしの大事な時間を無駄にしたくありません」
「うん。そうだよ」
「でも…」
「え? でも、なに?」
「うれしかった」
 そのときの感激がよみがえったのか、頬が紅潮している。なつめが続ける。
「カイトさんの姿が見えたとき、涙が出るほど、うれしかったです」
「そ、そお?」
 照れくさくて頭をかく。
「それに、盾になってわたしを守ってくれた。やっぱりカイトさんは、わたしのヒーローです!」
「いやぁ、そんなにカッコいいもんじゃないよ。ぼくはフツーだよ。…ただ、なんとかしなくちゃいけないって思ったんだ。そうしたら、自然に体が動いてたかな」
 なつめはぼくの二の腕に頭をちょこんと寄せて、
「やっぱり…大好き」
 ひとり言のようにつぶやいた。自分の顔が赤くなっていくのがわかる。ぼくは上を向いて、
「いまになって足が震えてきたよ。あ~、怖かった」
 ゆっくりとなつめのほうに顔を向けていく。なつめも顔を上げ視線が交差した。どちらともなく、ぷっと吹き出し、それはやがて笑い声に。ひとしきり笑って、なつめが
「あんなヤツら、カイトさんのデータドレインで『ザコ』とか『わんころ』にしちゃえば、わたしがキュっとしめて、キャンっていわせちゃうのにぃ」
 頬を膨らませて言う。
「なつめには、そんな言葉遣い、似合わないなぁ」
 すぐに憤りを沈め、いつもの気弱そうにも見える穏やかな顔に戻るなつめ。話題を変えることにした。
「どこに行こっか? なにも考えずにただ歩きだしちゃったから…。ん~っと、こっちだと…」
 歩道の端に寄って、きょろきょろと辺りを見まわす。ヒントになりそうなものはない。いや、あったとしても土地勘がなかった。なつめはバッグからガイドブックを取り出し、
「ランドマークタワーがあそこだから…。カイトさん、このまま歩きましょう」
「あ、うん。えっと…、どこに行くのかな、なつめさん」
 いつになくしっかりもののなつめに敬意を表し「さん」付けで呼んでみる。


「最初はですね。赤レンガ倉庫!」
 楽しくてしようがないといった笑顔。
「横浜、くわしいの?」
「いえ。くるの、初めてです。…あの、好きなひとと横浜にくるのが、わたしの夢だったんです」
 両手を体の前で交差させてもじもじするなつめ。こっちまで照れてきてしまう。
「あ…っと。じゃあ、そこ行こう、赤レンガ倉庫。あっ、そうだ。そのバッグ、ぼくが持つよ」
 ひったくるようにバッグを手に取ると、危うく落としそうになってしまった。
「おっと、重いね、これ。ずっと持ってたんだ…。気づかなくて、ごめん」
「そんなぁ。お弁当、頑張っていっぱいつくっちゃったから。あ、持たせちゃって、ごめんなさい」
「持つのは全然オッケーだよ。…そっか、お弁当かぁ。楽しみ!」
 腕に力を込め、目の高さまでバッグを引き上げて眺めていると、なつめが申し訳なさそうに言う。
「あっ、もう少し我慢してくださいね、お弁当」
「? 食べるとこも決めてるんだ?」
「…はい」
 はにかんだなつめの顔は、はっきりわかるほど赤くなっていた。答えは聞けそうにない。着いてからのお楽しみ、ということか。ついでに、お弁当の中身もお楽しみ、だ。
 左手でバッグを持ち、右手をなつめに伸ばす。
 なつめは赤ベースのタータンチェックのロングスカートで掌をごしごしとこすり、それからぼくと手をつないだ。白いブラウスの上に着た、これまた白いカーディガンがとてもかわいい。
「きょうの服、かわいいね」
 素直な気持ちを口にすると、なつめは恥ずかしそうに目をそらしてしまう。
「そ、そんなぁ。でも、一番お気に入りの服、選んできたから、うれしいです」
「とても似合ってる」
「スコットランド、好きなんです。アイルランド、イングランド、ウエールズも好き。なんといっても、ファンタジーの聖地ですから」
 熱っぽく語るなつめ。ぼくは黙って聞いている。
「やだ、わたしったら。つい、夢中になって自分だけ話しちゃった」
 右の掌を自分の頬にあてて、うつむいてしまった。
「ぼくの知らない世界の話。興味あるし、とても面白い」
 少し身をかがめ、なつめの耳元でささやくように言う。


「ほんとですか? よかったぁ。カイトさんだって、スコットランドの民族衣装、似合いそうですよぉ」
「へぇ? それって、どーゆーの?」
 なつめは自分のスカートをつまんで少し持ち上げ、
「へへへ。スカートです! スコットランドの正装なんですよ、男の人のスカートって」
「え~っ!? なんか、それはヤだなぁ(笑)」
「そんなことないですよ。そういうのを着て、バグパイプを持ったら、きっと素敵です」
 自分のスカート姿を想像してしまい、なんともいえない気分になる。と、
「あっ! 見えたっ。赤レンガ倉庫です」
 テレビとか写真では見たことがあった。でも、実際に見てみると、それは歴史という風格を身にまとい、思っていたよりかなり大きく感じられた。
「へぇ~。これって、古い建物だよね。でも、ずいぶんきれいで、なんかいい雰囲気だね」
 立ち止まって、じっと見ていると、なつめが歴史やらなにやら、いろいろと説明してくれる。ぼくは一生懸命に話すなつめの顔をじっと見つめ、それでも真剣に話を聞いていた。
 ひととおり話し終えたなつめは、ぼくが持っている自分のバッグに手を差し入れて、古いコンパクトカメラを引っ張り出した。
「そのカメラ…」
「いまどきフィルムを入れるカメラなんて、おかしいですよね。…でも、わたし、好きなんです」
「ふぅ~ん。そーいえば、プリントした写真って、あんまり見ないなぁ」
「私は、写真は、液晶のディスプレイで見るのより、昔ながらのプリントが好き。おかしいですよね?」
「いや、そんなことないよ。ちっちゃいころの写真を張ったアルバムとかって照れくさいけど、たま~に見ると、つい見入っちゃうんだよね」
「ですよね! 私も、写真の入ったCDをパソコンに入れる気にはなかなかならないけど、アルバムはなんとなく見ちゃうんです」
 カメラを手に、きょろきょろと周りを見まわすなつめ。30歳くらいに見える長身で細身の男性をまっすぐに見て、小走りで近寄っていく。
「すみませ~ん」
 と声をかけるなつめ。どうやら、写真を撮ってほしいとお願いしにいったようだ。相手の男の人は身をかがめて熱心にカメラの操作法を聞いている。
 なつめは自分でファインダーをのぞいて構図を決め、ペコリとお辞儀をするとぼくのほうに走って戻ってきた。


「あの、カイトさん。腕、組んでも…いいですか?」
「えっ、あぁ、いいよ」
 肘打ちでもするように慌てて左腕をさしだすと、なつめは恥じらいながら、ぶら下がるように右腕を絡ませてきた。はにかんだ顔が秋の太陽に照らされ、やわらかく輝いている。
「いいかい、撮るよ」
 なつめの目線に合わせるため中腰になってカメラを構えた男の人が、右手を上げて声をかけてくれる。
「はいっ! お願いします」
 返事をするなつめの右腕にぐっと力が入る。
「チィィズっ、ハイっ。…もう一枚、ハイっ」
 気を利かせてくれたのか、男の人は2枚撮影してくれた。カメラを返してもらい、なつめは深々とお辞儀をする。男の人は側においたジャケットを拾うと、さっと右手を上げて立ち去っていった。
 すたすたと歩いていくその男の人に向かって、少し離れたところにいた女性が呼びかける。
「か・ず・し・さ・ん」
 その男の人は立ち止まって、顔だけ女性に向け笑みながら少し楽しげに答えた。
「ずっと見ていたの? はるかさん」
 年齢からいって夫婦だろうか、とても自然に歩きだす2人の後ろ姿から目を離せずにいた。お互いがお互いをわかりあって同じ空間にいて同じ空気を吸う、とてもいい雰囲気をまとっている2人だった。
 それは、なつめも同じ考えだったようで、
「すてきなカップルですね~」
 思いを熱い息に込めて吐き出す。
「そうだね…」
 ふわふわとした答えをこぼす。なつめは頬を紅潮させて話している。
「あこがれちゃうなぁ。ああゆうふうに年とっていけたらいいなぁ」
 ぼくは15年後の自分を想像していた。いま、すぐ近くにいて話しているなつめには悪いけれど、ぼくの隣にいるのは、手をつないでいるのは、晶良だった。
「カイトさん?」
「え? あ…、あぁ。あ、あのさ、次はどこに連れていってくれるのかな」
 ごまかすように笑顔を向けると、なつめは複雑な表情をさっと隠し、
「はい! 次は…、次は大さん橋です!」
 明るさを装うようにして元気に言った。

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