貧乏デッキ/Budget Deck(TCG)

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貧乏デッキ/Budget Deck(TCG) - (2022/03/27 (日) 14:26:42) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2012/07/10(火) 11:11:36
更新日:2023/11/01 Wed 21:35:08
所要時間:約 4 分で読めます



■概要


貧乏デッキ/Budget Deckとは、トレーディングカードゲーム(TCG)において比較的少ない予算で構築されたデッキを指す俗語。
デッキの強さ弱さは関係なく、あくまでデッキの値段の高低で分類される……が、基本的にはTier1相手に一矢報いられる程度の強さのものを指す。
値段の高低の基準はあくまでそのカードゲーム内やフォーマットにおいての相対的なものやプレイヤーの主観であるため、それなりの値段がするデッキであっても更なる高額デッキの溢れる環境では貧乏デッキと呼ばれることがある。

対義語は札束デッキ。類義語に見えて全く違う事が多いのは紙束。詳細は札束(TCG)を参照。
基本的にはお金の掛からないデッキ構築を行う場合、高額なパワーカードをデッキ投入できないため、一枚一枚のカードパワーでは劣ることになりやすい。そのためカード同士のシナジー(相互作用)を重視した構成になったり、安い下位互換カードを使用することなどが多い。
また、強いことは強いが他のデッキに使うだけの汎用性に欠けるために値段が安いというカードもある(MtGの【ドネイト】や【ベルチャー】におけるキーパーツなど)。
大抵は「安いカード=需要(人気)の無いカード」であり、その安い理由にまで考えが及ばないと無駄な買い物ばかり増えてしまうだろう。

低予算で強力なデッキを構築するために必要なのは紛れも無くカードプールに対する知識と探究心であり、安価なカードを探す中で既存環境には無い新たな発見が見つかるかもしれない。
ショーケースに入った環境一線のカード群に無理した予算をひねり出すのでは無く、ストレージボックスに雑多に納められたカードを眺め、新たな発見を楽しみながらデッキを構築することもTCGの醍醐味の1つである。

初心者にはなかなか難しいが、ある程度ゲームに慣れてきたプレイヤーにはぜひお薦めしたい。
金が無いなら知恵と時間を絞ればいいのだ。

よくあるのが「当初は安価だったが、そのデッキが結果を残し環境デッキ相手に渡り合えると判明した結果、人気が急上昇。カードの値段も急上昇してしまう。」という事態。
MtGで言えば《虚空の杯》などは今でこそ1枚1万円弱するが、登場から相当期間の間は1000円前後で買うことができたのだ。
まったく再録がないカードがある日突然注目を浴びて大高騰という例も多く、旧神河の伝説土地は3枚ほどがこれによる大高騰を経験している。

非常によくあるのが、口では初心者に向いているなどと言いながら実際に初心者に使われると不機嫌になるというプレイヤー。
「金が無いなら知恵と時間を絞ればいい」と誰もが口をそろえて言うが、実際にそういうデッキに殺されたときの反応で「なるほど、そういう組み方があるのか!」と感心する人は意外と少ない。
それどころか「貧乏な奴に負けた」「金がないなら別のゲームでもやってろ」という趣旨の嫌味を飛ばしてくるプレイヤーの方が多いため、そういう意味でも初心者が組むことはあまりお勧めできない。
そもそもTCGというのは、突き詰めていけば「強いカードを強く使って勝つのが楽しい」ゲーム。たとえばMtGなら、レガシーなら《渦まく知識》とフェッチランドとデュアルランドの組み合わせを楽しむための、ヴィンテージなら他環境で禁止のパワー9をはじめとした高額カードを楽しむための環境だ。
つまりどうしても「金をかけて勝利を買う」という要素がある。そんな環境に土地をガチガチに攻める単色デッキやアーティファクトをガッチガチにメタったデッキで「金をかけたくない初心者」が挑んできたらどうかというと、どうしても不快感が勝ってしまう*1
しかしこれが顔見知りのプレイヤーだったら「なるほど、あの人こういうデッキも使うのか。気をつけないとな」という評価基準に変わる。こういうこともあって、プレイヤーが片手間に組む程度がちょうどいいのである。

また、口さがないプレイヤーの間では貧乏デッキにかなりひどい俗称をつけることもある(例:MtGのスタンダードの青単テンポの「青ゴミ」など)他、「プレイヤーが貧乏人」ということを揶揄する文化が生まれることもある*2
自分が気に入って使っているデッキをゴミだの貧乏だのとバカにされるのは楽しい経験ではないだろうが、つけてる側も悪意があるわけではない。そういうちょっと刺々しい身内ネタを理解するためにも、最初はある程度金をかけた方がいい*3
「金かけたくないんでwwwでも勝ちたいんでwww」なんて考えが甘ったれな意見にしか見えないというのも一理あるだろう。貧乏デッキはプレイヤーが片手間に組む程度がちょうどいいのだ。
ここ最近はデジタル化によるカード価値の均一化やストラクチャーデッキの強化、テーマデッキ化による構築の自由度の低下などにより、5000円程度でかなり強力な……ひねた言い方をすれば「姑息な手を使わない正攻法」のデッキを組めるようになっている。
一部のカードゲームでは、貧乏デッキなんて言葉が次第に死語になりつつある。ちょっとした気晴らしの縛りプレイ、あるいはデジタル版を始めたばかりの頃の資産集め用程度に考えておいた方がいいだろう。


貧乏デッキの組み方


貧乏デッキというと「メインになるカードの単価が安い」というイメージがあるが、このほかにも「○○円以内でデッキを組む」という縛りプレイのようにデッキを組むこともできる。
現実的な値段でこれをやってみると「あのカードを入れたいがこのままでは値段をオーバーする」という状況で「別のカードを諦める」「このカードの代用品を探す」というところで頭を使うことになる。
ここから代用品で済ませることによって意外な強さを発見したり、無理があると思っていたコンボが実は意外と現実的に炸裂したりと様々な発見につながっていくことになる。
単に安く済ませる、人気がないから安いだけ、といったものとは違った魅力に気付いてくることだろう。長寿ゲームの場合は車輪の再開発になりやすいけど。

……ただし最近はそういう遊ばせ方をさせてくれない、あるいはできたとしてもぬか喜びになりやすいゲームも多いため、 素直にお金をかけてちゃんとしたデッキを組んだ方がむしろゲームを長く楽しめる
貧乏デッキは商売的に見ると利益を出さないため、環境整備者の動向が追い風になることはほとんどない。
一昔前の「カードファイト!ヴァンガード」などなら、たとえば少し前の環境のデッキは安値で組むことができるがカードパワーのインフレが激しすぎるため、
下手に安い代用品で済まそうとせずに素直に最新弾のデッキを買っておいた方がむしろ安上がりだったりした。うまく環境に噛み合った貧乏デッキを組めたとしても、環境の変化や移行であっさり台無しにされてしまう。そしてゲーム的にそういうカードが返り咲くことはほとんどない……というわけ。
むしろ昔のテーマを救済してくれる遊戯王や、昔のカードが突然脚光を浴びるMTGがゲーム的には異例なのである。

早い話が、 長く楽しみたいならちゃんとお金を払おう という話。貧乏デッキは環境の変化どころかルール改訂などで構築理論そのものが崩れることが多いため、むしろ高くついてしまうことも多いのだ。
また、2010年以降はカードの高額化が揶揄的な意味を込めてニュースになるようになってきている。こういったイメージダウンを避けるためにも構築済デッキが強力になっているため、素直に構築済デッキを買った方がよほど安上がりということも多い。MtGですら最近はそういう時代になってきている。
《ヘルフレイムエンペラー》だの《魔王ディアボロス》だのというしょうもないカードが看板モンスターのパーツ取りという時代ではなくなったのだ。
とはいえ、同一デッキを複数買ってピン挿しの強力なカードを軸に組み直したものから始めることは今もあるが……。


各TCGにおける貧乏デッキ


Magic the Gathering


多色のデッキは必然的に高価な土地カードを多用するため、単色デッキになりがち。
デッキを多色化する場合2色以内に抑えるか、土地の扱いに長ける緑を中心として基本地形を多用する構成などが有力タイプ。
Magic Onlineでは低予算でも遊べるようコモンカードのみで構築するフォーマット「Pauper/パウパー(貧困者の意)」が公式にサポートされており、トーナメントプレイヤーからも人気がある。
紙でプレイする場合も数十円~数百円のカードがほとんどなので非常に安くデッキを構築することが出来る。

代表的な貧乏デッキには以下のようなものがある。
  • ウィップ・バイパー
  • 白ウィニー
  • 赤単スライ・「ケルドの炎」*4型アグロ、バーン、ゴブリン(ゴブナイト)
  • 緑単エルフ

  • 青単テンポ
Tempest Djinn / 大嵐のジン (青)(青)(青)
クリーチャー — ジン(Djinn)
飛行
大嵐のジンは、あなたがコントロールしている基本島(Island)1つにつき+1/+0の修整を受ける。
0/4
出すのは「基本島」に限定される。が…そうすれば 3マナで6/4+飛行 という青らしかぬガチムチになってしまう。このカードのおかげで、ショックランドやチェックランドは不要…むしろ邪魔と言えるトンでもな事態となった。「執着的探訪」で手札を溜めつつ、打ち消しで邪魔しながら隙を見てこいつを投入…。というデッキがスタンダードに流行した。


  • ターボゲート/Turbo gates(門デッキ/Gates)
MtGの貧乏デッキには珍しい多色だが、特徴的なのは以下に示す主力カード達。
  • 8マナ8/8。ファッティ。
  • 2緑マナで2/2。緑基準なら貧弱クリーチャー。
  • 0威力の火力。
  • ただの置物。
  • アンタップインで無色マナ出すだけの土地。

単体のカードパワーはこの通り非常に弱い。
しかし、前述したように貧乏デッキはシナジーで伸びるカードを軸に組まれるものもあり、これもその一つである。
そのシナジーの根幹こそがデッキ名にある『門』である。


  • 青緑スレッショルド(スタンダード時)

また、以下は多少高価ではあるものの環境内の他のデッキから比べると 相対的に安い デッキ。(理由も追記)

◆レガシー
  • 女魔術師/エンチャントレス
  • 青単BtB*5(基本でない土地、とりわけ二色土地が役立たずになるため)
  • 赤単ドラゴン・ストンピィ(こちらも特殊土地対策カード*6が多め)
  • ウルザトロン系ビッグマナ(ウルザ土地三種が主力となるため)

◆ヴィンテージ
どちらも高額カード筆頭のパワー9とデュアルランドを入れる必要性があまりないデッキ。
ただドレッジは4積必須のBazaar of Baghdadが1枚37万(2021/6/19、Wisdom Guild調べ)
土地単はデッキパワー自体がそこまで強くないのが弱点。


遊戯王OCG


再録されたことのない汎用カード、環境デッキのキーカード、素材の縛りが緩いシンクロモンスターエクシーズモンスターといったエクストラデッキのカード等は高額になりやすく、それらのカードのなるべく頼らないようにすることで安価で構築できる。
また、レアリティが複数種類あるカードは希少度が低い方にすれば、構築費用を安くできる。

また、近年のストラクチャーデッキ(構築済みデッキ)の質が高く、同じストラクを3箱買って組み合わせるだけでもそれなりに完成度が高いデッキが作れるので、これから遊戯王を始めるプレイヤーにもオススメ。
「青眼龍轟臨」以降のストラクではエクストラデッキも充実しており、HERO's STRIKEでは融合モンスターが5枚も入った大盤振る舞いとなっている。
逆に「真帝王降臨」のように、あえてエクストラデッキを使用しないことで強力な効果を生み出すデッキもある。
ストラクは再録も豪華であり、強欲で謙虚な壺等の高額だったカードも収録されている。

ゴールドシリーズ等で過去の強力カードの再販も盛んであることから、比較的貧乏デッキが組みやすい環境であるといえる。
2016年には強力なエクシーズモンスターのArk Knightヴェルズビュートが再録されている。

最近ではレア以下でありながら優秀な効果を持つエクシーズモンスターやシンクロモンスターがよくパックに収録されるため、エクストラもそこそこ充実させることができるようになった。
また、月華竜、琰魔竜、閃珖竜、ホープ・ザ・ライトニングのような単行本付録で強力なシンクロ、エクシーズも存在しており、それらを頼るのもいいだろう。

余談だが、アニメでもチーム太陽などが貧乏デッキ使いであった。
また苦学生である城之内も、原作では《死者蘇生》を使用していない、エース級のカードは元々他人のカードであることが多いなどカード資産に欠ける描写が多い。

以下のようなデッキが貧乏デッキと言えるだろう。
過去の第一線級のデッキや強力なカテゴリのものも多くあり、やりようによっては現在の環境でも十二分に戦えるものも少なくない。
環境を意識したり、レアリティに拘り過ぎると、そこそこの構築費用が掛かることもあるが。


他多数
ぶっちゃけ「ストラク2~3つにチョイ足しパーツ」って感じで買うだけで全然戦えるゲームであり、下手に貧乏デッキを組もうとするよりそちらの方が賢い選択肢だったり。
あとはそのテーマが強化されたらそれに合わせてデッキを組みかえていけば十分長く遊んでいけるため、社会人プレイヤーや復帰勢にはこういう遊び方の人も多い。


バトルスピリッツ


全体的にシングル価格が安めなので、蜂王リュービ*7だとかの裏Xレアを使うデッキを組もうとしない限りは全体的に安め。
構築済みデッキの完成度が高いことが有名で、スターターデッキ(1000円)を二つ合わせただけのデッキでも大会に参加できるほど。
特に「陽昇ハジメデッキ バーストヒーローズ」の完成度は語り草となっており、当時下手に新しいデッキを組もうとすると「そのデッキでスターターデッキに勝てるの?」と言われたくらいの完成度を誇っていた。
後に「1つ買えば環境トップレベルのデッキがすぐ手に入る」というコンセプトの構築済みデッキ「メガデッキ」シリーズ(2700円)が販売されており、事実メガデッキを少しいじっただけのデッキが全国大会で優勝している。

また、ウィニーによるデッキも相手によっては痛烈に刺さる。最近こそ砲天使カノンなどのメタも登場したものの、当初は大天使ミカファール(Battle Spirits)に対する最善対抗策だった。
ついでにコモンカード同士のシナジーを組み合わせることでどんなスピリットでも葬ることが基本的に可能なので、お金がない方々にもオススメだったりする。
また、安めのデッキ破壊手段を集めたデッキ破壊を勝ち筋とするデッキはそれらに対するメタカードを積めないデッキも多く、バトスピの試合形式がシングル戦であることも相まってそこそこの勝率を期待できる。

え?XXレア?創界神?ご勘弁を。


カードファイト!!ヴァンガード


デッキ構築の上での鬼門は一律RRに設定されている「守護者」完全ガード)であり、それが安いデッキは基本的に他も安い。
だが当初、完ガはトライアルデッキについてこなかった為、その分敷居は高かったが、「ヴァンガードG」からはトライアルデッキに完ガが含まれるようになった。
トライアルデッキが出ないクラン?まだそんなクランがあったんですね(笑)
また、デッキの切り札であるグレード3やその他デッキを回すためのカードが安価なデッキも、全体的に安くなる傾向にある。



デュエル・マスターズ


グッドスタッフデッキは重いカードを多用する都合上札束化しやすい。王来篇現在だと【5Cコントロール】が該当する。
【速攻】は軽いカードを中心に組まれる都合上、全体的にレアリティが低いので、比較的安価に組めるデッキ。
特に黒緑速攻は速い、安い、強いと三拍子揃った優良デッキで、神化編環境から長きにわたって愛され続けている。

……というのは過去の話。革命編で《轟く侵略 レッドゾーン》が登場したのを皮切りに、自力でコスト踏み倒しできる大型クリーチャーが多数登場。【ドギラゴン剣】など、速攻並みのスピードを持ちながらも高レアリティのカードを何枚も使うデッキはもはや珍しくなくなっている。

超天篇になると、速攻と相性のいいGRクリーチャーが多数登場。メインデッキはともかく、超GRのせいで【速攻】の方がむしろ高くなるという事態も頻発することに。
どうしてこうなった……

エピソード2からははバニラを並べての物量戦法が確立されたので、バニラビートで戦うことも可能。
青単バニラビートの主要パーツは「神秘の結晶龍」一個で揃う。お値段(税抜)500円である。
そこにバロンスペード4枚とストリーミング・シェイパーを挿してやればなかなか強力なデッキになる。

超次元コントロールもかつては札束に近かったが、エピソードシリーズからは安価になりつつある。
ガンヴィートやジオ・ザ・マン、四つ牙などの安くて強い超次元も多い。
特にチャクラ、メビウス、ガンヴィートは再録されたので、枠色に拘らなければ安く手に入る。

ただ、BAGOOON・パンツァーのようなビクトリーカードは今でも割高なので、使用する超次元呪文に合わせてうまく取捨選択してやろう。他にはデビル・ディアボロスZはガード・ホールと併用されることが多いので、その辺も避けるといい。


他に安上がりなのは、構築済みデッキ、特にスーパーデッキやクロニクルデッキを買うことだったりする。
デュエマの構築済みデッキは必須カードやコンボパーツが初めから3~4枚ずつ積まれており、無改造でもある程度回せる。

3000円~5000円程度のデッキともなると環境レベルの強さを持つものも多く、それらを手にすることで結果として楽に強いデッキが組めるともいえる。
中には無改造で持って行っても実践で勝てる商品まで存在するのである。



追記・修正は、お値段以上!?なカードの可能性を信じながらお願いします。

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