零〜紅い蝶〜

登録日:2009/05/27 Wed 15:16:57
更新日:2025/10/10 Fri 18:23:17NEW!
所要時間:約 30 分で読めます




地 図 か ら 消 え た 村――。

(ゼロ)(あか)(ちょう)〜』(英:Fatal Frame Ⅱ Crimson Butterfly/PROJECT ZERO Ⅱ CRIMSON BUTTERFLY)は、2003年11月27日にTECMO(現:コーエーテクモゲームス)から発売されたPS2用の3Dホラーアクション・ADVゲーム。
和風ホラーゲーム『零』シリーズの第二作目で、PS2にて展開された初期三部作の一つ。

2004年11月にはXboxにて追加要素を加えた『FATAL FRAME』Ⅱ CRIMSON BUTTERFLY DIRECTORS CUT』が発売されている。

タイトルの通り「紅」をコンセプトカラーとしており、メインビジュアルとパッケージもに染められている*1
余りにも世界観にハマりすぎたメインテーマ曲の存在や主人公が可憐な双子の少女など、多くの部分で人目を惹きつける要素が多く、シリーズでも別格的な人気を誇る。


【概要】


広大とはいえ一つの日本家屋が探索対象だった前作に対し、今回の舞台は廃村全体となっており探索する廃屋も複数が存在している。
探索する廃屋は屋敷毎に構造はもちろん、謎解きのためのギミックも違っているのが特徴。……当然のように屋敷毎に怨霊の顔ぶれも変わるのでプレイヤーを飽きさせることがない。

前作の時点でシステム周りは多くのアイディアが盛り込まれていたが、今作では方向性を引き継ぎつつ更にブラッシュアップされたのが特徴。
戦闘時に有用な特殊ショットが、前作では貴重な消費アイテムを用いなければならず、結果的に使い渋りをする羽目になったプレイヤーも少くなかったのに対して、
今作では霊を攻撃した時に自動的にチャージされるパワーを消費して行うようになったため、消費ポイントを回収しながら戦うことができるようになった&折角の特殊ショットも遠慮なく使っていけるようになったのも特徴。

前作では控え目だったクリア後のコスプレ要素も今作では主人公が美人姉妹ということもあってか大幅に増加。……何ともTECMOらしい要素だが、膨大なポイントを必要とするので全て手に入れるのはキツいかもしれない……。
尚、コスチュームを変えるとちゃんとイベントシーンに反映されるので収集意欲を刺激される。
ゴスロリやレザー衣装では細かなメイクにも注目だ。

前述の通りで、初期三部作どころかTECMOの手を離れた後の『零』シリーズを含めた全体の中でも特にというか別格的な人気と知名度を誇る。
2012年6月にはWiiで本作のリメイク版となる(ゼロ)(しん)()(ちょう)〜』任天堂から発売された。
そして、2025年には都合2度目となる再リメイクが発表された。

また、本作のメインテーマ曲である天野月子(現:天野月)によるテーマソング『蝶』も、ゲームの内容と共に大きな話題を集めた。
ゲームとつっこさん双方の知名度を大きく上げると共に、以降の『零』シリーズでもつっこさんのテーマソングが付き物と(期待されるように)なっていった。



【あらすじ】


ある年*2の夏休み。
双子の姉妹である天倉(あまくら) (みお)天倉(あまくら) (まゆ)は、幼い頃の数年間を過ごした故郷がダムに沈んでしまうことを知って、二人で沢遊びに来ていた。

しかし、繭が突然現れたい蝶」に導かれるように歩いていってしまい、澪は慌てて繭を追い、森の中へ入っていく。
いつの間にか周囲は夜の闇に包まれており、繭を見つけた澪はやがて山奥の廃村に迷い込む。
そこは、何十年も前に発生した災厄によって、一夜にして地図から消えてしまった村・皆神村(みなかみむら)だった。



【ゲームモード】


◆ストーリーモード
本作のメインとなる、「皆神村」を巡る双子の物語。
ストーリーは「一ノ刻」「終ノ刻」全九章で構成され、難易度によっては更に「零ノ刻」がプラスされて全十章となる。

前作と異なり初回プレイから難易度選択が可能だが、初回プレイで選択可能な難易度は「EASY」「NORMAL」のみ。
「NORMAL」をクリアすると更なる高難易度である「HARD」が、「HARD」をクリアすると最高難易度である「NIGHTMARE」が解禁される仕様になっている。


◆ミッションモード
ストーリーをクリアすると解禁されるおまけモード。
前作のおまけモードであった「バトルモード」は決められたシチュエーションで決められた怨霊を倒せばクリアというシンプルなものだったが、本作では各ミッションごとに様々なクリア条件が設けられている。



【射影機】


本作、及びシリーズにて主人公達が武器として使用する怨霊の姿を捉え・尚且つ撮影することで霊体を封印してしまう機能を持つトンでもキャメラ。
敵である怨霊との戦いはもちろん、浮遊霊の撮影や開かない扉を解錠するための謎解きもほとんどが射影機での撮影で行われる。
製作者はシリーズ通しての重要人物である異界研究者の麻生(あそう) 邦彦(くにひこ)博士。

本作の射影機は試作機の一つで、民俗学者である真壁(まかべ) 清次郎(せいじろう)が皆神村を訪れた際に持ち込んだもの。
前作の射影機は正方形であったが、今作の射影機はより近代的なカメラに近い横長の長方形で、中央のレンズ部分が下開きの蛇腹となった「スプリングカメラ」のようなデザイン。

通常画面の画面隅とファインダーモードの画面上部にそれぞれ表示されたランプのフィラメントが敵を感知する役割を果たすのは前作同様で、霊を感知した場合、地縛霊などのその場から動かない霊は、怨霊や浮遊霊はにランプが点灯する。
また、霊との距離が近付くとフィラメントの発光が強くなり、更に霊が真正面(澪の視線の先)に居る場合に最も強く発光するので、敵を見失った場合はフィラメントの発光具合を手掛かりにして索敵することが基本テクニックとなる。

ファインダーモードでは画面中央にキャプチャーサークルという円が表示されており、怨霊との戦闘時にはこの円の範囲内に怨霊の姿を捉えることがダメージを与えるための必須条件。
ファインダーモードのままでも移動することは可能だが、このモードではカメラの視点移動以外の動きが極端に制限されるので、俯瞰視点とファインダーモードの使い分けが肝心である。
前作では、怨霊の姿をキャプチャーサークルに捉え続けることで攻撃のための霊力をチャージする形式であったが、本作で重要視されているのは「怨霊との距離」
キャプチャーサークルに沿った形で自動車のスピードメーターのような「霊波計」が表示されており、怨霊との距離が近い程に霊波形の光っている範囲が広がり、攻撃力が上昇するという仕様になっている。
霊波形のデザインには、時間・方角を示す際にも使用される十二支の漢字が使用されており、梵字が使われていた前作のファインダーモードとはまた違った雰囲気となっている。

射影機の基本性能に三つのパラメーターが存在し、後述の霊力ポイントを割り振って強化することができるのは前作同様だが、今作では強化可能な内容が大きく変わっている。
本作における射影機の基本性能のパラメーターは以下の三つ。

◆範囲
キャブチャーサークルの大きさ。
強化することで広くなり、霊がキャプチャーサークルに収まらずフィルムを無駄にするというケースが減る。

◆蓄積
撮影によって獲得した霊力ポイントを、後述の強化レンズの使用に必要な「霊力」としてストックできる数。
強化すると、最大で四つまで「霊力」をストックすることができる。

◆感度
威力と射程距離に関係するパラメーター。
射影機には射程距離があり、敵から離れ過ぎるとダメージを与えることができなくなるが、「感度」のパラメーターを強化するとこの距離が延びる。
また、強化すると敵に与えるダメージも上昇するので、優先して強化しておきたいパラメーター。



【フィルム】

射影機に使用する専用フィルム。
種類は〇七式一四式六一式九◯式零式の五種類。
最強フィルムである零式以外は数字が増える程に強力となり、怨霊へ与える基本ダメージが増加する。
強力な怨霊用に強力なフィルムを装填したまま、うっかり浮遊霊の撮影や仕掛けの解除を行ってしまって後悔するのはお約束。

本作ではフィルムに「装填時間」の概念が追加されており、強いフィルムほど装填時間も早く連写できる仕様。
ただし、最強フィルムである零式に限っては、高威力の代わりに装填時間が最も遅く設定されている。

また、本作では最も弱い〇七式所持数無限で補充の必要もない仕様となっている。



【シャッターチャンス】

相対する怨霊が攻撃してくるタイミング等に生じる、大きなダメージを与えられる瞬間のこと。
シャッターチャンスの発生時には、目印としてキャプチャーサークルが赤く発光する。

成功させるとダメージを与えると同時に敵をノックバックさせて一気に距離を離すことが可能で、その上フィルムの装填時間もカットされる



【フェイタルフレーム】

本作より追加された、シャッターチャンスより更に大ダメージを与えることが可能な瞬間。
追加機能の「瞬」を獲得することで解禁され、目印としてファインダーモードの画面中央上に設置された小さなランプが赤く点滅する。

多くはシャッターチャンス中の更に短い一瞬だが、成功させれば三回まで繋げることが可能なフェイタルフレームコンボで相手を大きく吹き飛ばすことが可能。
手に入る霊力ポイントも大幅に増加する。



【霊力ポイント】

霊力ポイントとは、敵である怨霊や浮遊霊・地縛霊を撮影することで手に入るポイント。
射影機の基本性能や後述の強化レンズの強化、おまけ要素のアンロックなどに必要となる。
条件を満たすとボーナスが発生して入手できる霊力ポイントが増加する仕組みとなっており、以下のようなものが存在する。

  • 敵をキャプチャーサークルの中心に捉えて撮影する「CORE SHOT」
  • 敵と一定距離内に接近して撮影する「CLOSE SHOT」
  • 複数の敵を同時に撮影する「DOUBLE SHOT」及び「TRIPLE SHOT」
  • 敵の残り体力と最後に与えたダメージの差が一定以内であった場合に発生する「JUST SHOT」
  • シャッターチャンスもしくはフェイタルフレームを撮影する「ZERO SHOT」



【強化レンズ】

射影機での撮影に様々な追加効果を付加するためのアイテムで、前作における「補助機能」の代替。
探索中に「射影機のパーツ」として拾得したり、条件を満たすことで解禁することができる。
使用する際には、霊力ポイントを稼ぐことでストックできる「霊力」を一定の数消費する。




【追加機能/装備機能】

戦闘を有利に進めるための様々な機能で、強化レンズと同様に「射影機のパーツ」として拾得したり、条件を満たすことで解禁することができる。
本作では追加機能が四つ、装備機能が四つの計八個。
装備機能のみ、オプションにてON/OFFを選択できる。
なお、本作はシリーズ作で唯一「無限ロケットランチャーに相当する最強機能」が用意されていない作品である*3




【アイテム】


◆万葉丸/御神水/鏡石
前作から引き続き登場の回復アイテム。

万葉丸は体力を2/5回復。
比較的入手量は多め。

御神水は体力を全回復。
ここぞという時に温存しておきたい。

鏡石は、所持していると体力が尽きた瞬間に自動的に全回復してくれる特殊アイテム。
ただし、発動と同時に割れて消費してしまう上に一度に一個ずつしか持てない仕様。
前作は鏡石がやたら多く、相対的に数の少ない他の回復アイテムを使うくらいなら鏡石から割るのが最適解となっていたが、今作では入手数が調整され、ようやく最後の切り札的な扱いに落ち着いた。


◆念珠
射影機の強化のために必要なアイテム。
今作では射影機の基本性能や後述の強化レンズに三段階の強化段階が設定されており、各段階につき一個の「念珠」が必要となる。
念珠を任意の項目のスロットに嵌めることで強化が可能になり、そこに霊力ポイントを割り振ることで強化が完了する仕組み。
村の中で拾うのが主な入手手段だが、怨霊が戦闘後に落としていく場合もある。


◆霊石
収集アイテムの一つ。
前作では特殊機能の発動のために必要なアイテムとして「霊石」が存在したが、今作では霊の声が封じられた様々な鉱石を指す。
対応する霊ごとに鉱石の種類が異なり、霊石ラジオを入手するとそこに封じられた霊の声を聞くことができる。


◆フィルムリール
収集アイテムの一つで、映写機用のフィルム。
桐生家と立花家の屋敷には映写室があり、そこで内容を見ることができる。


◆ファイル
収集アイテムの一つであり、皆神村に関係する様々な文書。
かつて村で暮らしていた人々が残した日記、新聞記事の切り抜きやメモ、儀式に関する古文書など、設定を理解するための様々な資料が用意されている。



【主な登場人物】


天倉(あまくら) (みお)
(声:神田 朱未
今作の主人公で、15歳の少女。
黒いキャミソールとベージュ色のオフショルダーという平成に入ったばかりとは思えないおしゃれなトップスに、白いスカートと七分丈の黒いスパッツを重ね着した、スパッツでカッパツな妹。
蝶を思わせる胸元の赤いリボンは繭とお揃い。
髪型は外ハネのボブカットで、前髪に分け目を作っている。

双子の姉である繭が幼少時に足を怪我してしまったことを自分の責任だと思い込み、常に繭を気遣っている。
皆神村に迷い込んだあとは、謎の少年・樹月や血塗れの着物の女・紗重から「八重」と呼ばれ、困惑しながら村の中を彷徨うこととなる。
霊感はあるが、繭ほどではない。
幼少期に行方不明となった父・(みさお)は婿入り前の姓が麻生であり、実は射影機の開発者である麻生博士の子孫でもある。

『眞の蝶』では、任天堂からの要望もあったことで年齢が繭共々17歳に引き上げられた。
繭と異なり、い蝶』からデザイン面での大きな変更はなく、多少のアレンジ程度に留まっている。
そして年齢設定が引き上げられたのでバストアップした。


天倉(あまくら) (まゆ)
(声:川澄 綾子
澪の双子の姉。
やっぱり平成に入ったばかりとは思えない立て襟(チャイナカラー)の黒いシャツに、澪のトップスと同色のワンピースを重ね着しており、右膝には包帯を巻いている。
蝶を思わせる胸元の赤いリボンは澪とお揃い。
髪型は澪同様外ハネのボブカットだが、前髪を分けていない。

もう一人の主人公ではあるものの、ビジュアルイメージから受ける印象と違って一緒に行動できる期間は少ない。
しかし、その短い間は妹の目線を借りた変態どもの際どいアングルからの撮影に晒されまくる可哀想な娘。
澪とは反対に、控えめで内気な性格。
幼少時、澪を追って走っている最中に山道から滑り落ちたことが原因で右足が不自由。今も昔もよく妹に置いてかれる。

強い霊感を持つが、霊に対して耐性を持っていないため取り込まれやすい。なので、序盤も序盤を除いては彼女は“紗重”である。
中盤以降は生きてるのに上記の理由から霊リストに入ったりする。
難易度「HARD」以上で追加される「零ノ刻」では、繭の澪に対する心情を聞くことができる。
詳細は個別項目も参照。

『眞の蝶』では、ワンピースではなく澪と似たデザインのトップスに黒いスカートを着たデザインに変更。
髪型も、内気な性格に合わせて内ハネのボブカットに変わっている。
そして澪と同様バストアップした。


黒澤(くろさわ) 八重(やえ)
双子の黒澤姉妹の姉で、最後の「双子巫女」の片割れ。
ショートカットの黒髪に白い着物姿で、年頃は天倉姉妹より少し上といったところ。
誰かさんに似た活発な性格で、身体の弱い妹を気遣っている。

儀式を行う直前に紗重と共に逃げ出すが、途中で紗重が山道から滑落したことに気付かず、彼女とはぐれてしまう。
妹を捜すために村へ戻ろうとしたものの、森で迷ったために時間が掛かり、その間に「大償」と呼ばれる災厄の発生で村は闇の中へ消えてしまっていた。
村の入り口があったはずの場所まで辿り着くも村の痕跡一つ発見できず、一人だけ生き残ってしまったことを悟った八重は、様々なショックから全ての記憶を失ってしまった。

……あれ?どこかで名前を見たような……。


黒澤(くろさわ) 紗重(さえ)
双子の黒澤姉妹の恐すぎるヤンデレ妹で、最後の「双子巫女」の片割れ。
髪型や服装は姉である八重とお揃いで、身体が弱く、誰かさんに似て控えめで内気な性格。
樹月の手引きにより、八重と共に村からの逃亡を図ったものの、山道を走っている途中で足を踏み外して滑落してしまう。
生前は樹月に好意を寄せていた様子。

詳細は個別項目も参照。


立花(たちばな) 樹月(いつき)
(声:保志 総一朗
蔵に幽閉されている白髪の少年。
かつての「双子巫子」の片割れで、現世に残る「鬼隻」としての宿命を背負っていた。
しかし、弟の睦月と共に臨んだ儀式は、樹月の睦月を想う心が強すぎたために失敗してしまい、そのショックで髪が白くなってしまう。

樹月と睦月は、もしも自分たちの儀式が失敗すれば次は八重と紗重が儀式を行わなければならないということを以前から憂いており、自分たちと同じ苦しみを与えたくないと、彼女たちを村から逃がすことを画策する。
樹月は外の世界の友人である良蔵に密かに協力を求め、二人を逃そうとしたものの、その行為を見咎められて蔵に幽閉された。

物語が行き詰まったらヒントをくれる優しい方。
頭は良さそうなのに澪を「八重」と呼ぶが、この点については「鬼隻」の説明も参照。
何故か浮遊霊登録されるのは……まぁ察して。


立花(たちばな) 睦月(むつき)
樹月の双子の弟。
本編では出番はないが、千歳が言うには良い人。でも千歳は樹月おにいちゃんの方が好きっぽそう。
生前は身体が弱かった様子。地縛霊としては登場する。カッコいい。


立花(たちばな) 千歳(ちとせ)
(声:米本 千珠)
樹月と睦月の妹。
黒髪を内ハネのボブカットにした、手首に括られた鈴とい着物姿が印象的な少女。
年頃は天倉姉妹より少し下といったところだが、口調は若干幼め。
弱視だった上に人見知りが激しい性格のため、いつも押し入れに隠れているが、たまに出て来る。
手首の鈴は、視力が弱い彼女を心配した樹月から「危険な場所に近付いたらすぐに助けられるように」と持たされたものであり、登場時には鈴の音が鳴る。

本作…いや、ホラーゲームの中でも一二を争う最強の萌キャラ。
「呪」ではなく「萌」で殺す恐ろしくも素晴らし過ぎる妹。
彼女のいる部屋は強力な強化レンズがあるため、取ったら戻るというプレイヤーが続出。
詳細は個別項目も参照。


桐生(きりゅう) (あかね)
黒澤姉妹や立花兄弟より更に昔に儀式を行った「双子巫女」の片割れであり、儀式を終えて現世に残った「鬼隻」の少女。
長い黒髪に覆われ、その表情は窺えない。
儀式によって妹が常世へ渡ったことで精神を病み、からくり師であった父・善達(よしたつ)(声:筈見 純)が作った等身大のお人形を妹と思い込むようになる。
紗重らが儀式を行う番が回ってきた時には、既に一族は滅んで空き家になっていた。
声が低くて口がキモい。


桐生(きりゅう) (あざみ)
黒澤姉妹や立花兄弟より更に昔に儀式を行った「双子巫女」の片割れであり、儀式を終えて常世へ旅立ったはずの少女。
見た目は姉である茜と瓜二つ。
父・善達は残された茜が心を病んだことを憂い、薊を模した等身大の人形を作って茜に寄り添わせるが、その人形にはいつしか悪霊が宿り、(むくろ)と化してしまった。

作中で茜と共に登場する「薊」は上記の人形(躯)だが、それとは別に薊本人の霊も登場し、人形を壊すよう懇願して回っている。


黒澤(くろさわ) 良寛(りょうかん)
(声:有本 欽隆)
村でも一番の有力者である、黒澤家の当主。
村で行われていた秘祭・贄祭」の祭主でもあり、八重と紗絵の父親。

彼自身も過去に儀式で弟を失った「双子巫子」「鬼隻」であり、妻は我が子が「双子巫女」となる可能性が高いことに耐え切れず、娘たちが生まれてすぐに自ら命を絶ってしまっている。
村の長としての使命と弟や妻の死を背負い、村のためなら非情な選択もやむを得ないと考えているが、紗重と八重に対する愛情と罪悪感はあった様子。


宗方(むなかた) 良蔵(りょうぞう)
民俗学者見習いで、真壁の弟子。
行商人であった父と皆神村を訪れたことがあり、その時に出会った同年代の立花兄弟とは、村を離れた後も文通を続けるなど親友と呼べる存在。
樹月からの手紙で八重と紗重を村から連れ出す手伝いを依頼されており、師である真壁に村の神事についての情報を提供し、彼に同行する形で村を訪れていた。

師からの忠告に従って一旦村を離れることとなるが、村人から立花兄弟は病死したと伝えられたことを訝しんでおり、樹月が生きていると信じて彼に宛てた再訪を約束する手紙を残していた。
黒澤姉妹を迎えるために再び皆神村に向かった際、既に村は「大償」によって闇の中に消えていたが、村の入り口があったはずの場所で立ち尽くし泣いていた八重を発見し、彼女を保護する。
棚ぼたで美少女ゲットだぜ。

……はて?どこかで名前を見たような……。


真壁(まかべ) 清次郎(せいじろう)
(声:有本 欽隆)
村の祭りを調べに来た民俗学者。良蔵の師匠。
各地の風習を研究する一環として黄泉の国に関する調査も行っており、良蔵から聞かされた皆神村の秘祭に関する話に興味を抱き、彼を連れて村を訪れる。

異界研究者である麻生博士とは友人関係にあり、皆神村での調査にも役立つと考え、彼から試作品の射影機霊石ラジオなどを借り受けていた。
これらの品物は闇に閉ざされた村に残され、脱出を目指す澪たちの助けとなった。


槇村(まきむら) 真澄(ますみ)
ダム建設前の地質調査を行うために山に入っていた作業員。
皆神村に迷い込んでしまったことで行方不明扱いとなり、神隠しに遭ったと噂されていた。
山間部での地質調査に携わっていたからか、それなりの体力と知識を兼ね備えており、脱出を果たすために村の各所を調べ回っていた。
彼が調査に行った場所を巡ることで進行するサイドストーリーでは、彼の頑張りをより詳細に追うことができる。


須堂(すどう) 美也子(みやこ)
真澄の恋人で、神隠しに遭った彼の捜索が打ち切られたあとも愛する人を捜し続け、一人山奥に足を踏み入れてしまうある意味ヤバい人。
まぁ、前作の主人公からして似たようなもんだったし。
かつては長めの黒髪が美しい美人であったと思われるが、澪が出会う彼女は恐怖を抱かせるような険しい目付きをしている。

恋人との再会を果たすことはできたが、村の異様な環境で心身共に衰弱していたため、村の調査を続ける真澄に同行するのを諦め、屋敷の一室で彼を待っていたが……。


暮羽(くれは)
(声:田中 理恵
眞紅の蝶の新キャラ。
村の外れにある暮羽(くれは)神社」の巫女で、白い着物の上から豪奢な黒い打掛を羽織った姿と長い白髪が印象的な美女。
双子の姉妹が死産だったため、生まれながらに「鬼隻」となっており、ほとんどの感情を失い、死後の世界への憧れを見せる。
本編でも浮遊霊として登場するが、お化け屋敷の案内が主な仕事。



【用語解説】


皆神村(みなかみむら)
本作の舞台となる、闇に閉ざされた古びた村。
一応は村全体が探索範囲ということになっているが、流石に一般村人が住んでいたであろう民家の類は探索範囲に含まれていない。
村の各所には木製のく光る灯篭」が設置されており、セーブポイントの役割を果たす。

村の最奥、「朋鳴池」に架けられた「囁き橋」を渡った先にある大きな建物は、祭主である黒澤家の屋敷。
その手前、村の中心部と思しきエリアには「四人の宮司の家系」とされる桐生家、立花家、逢坂家、槌原家の屋敷が確認できる。
ただし、桐生家は村を襲った災厄の時点で既に断絶しており、槌原家も屋敷の入り口が崩れて入れなくなっている。
また、村の外れには暮羽(くれは)神社」「皆神墓地」が存在する。


◆双子巫女
かつて皆神村にて行われていた神事、(あか)贄祭(にえさい)の主体となっていた存在。
必ずしも女性である必要はなく、男性が務める場合は「双子巫子」と表記される。
その名の通り双子であることが前提条件であり、白い着物に映えるい帯締めの紐が特徴的。
行われる儀式も結末も前作に負けず劣らずの鬼畜の所業である。


(くさび)
贄祭」の用意が間に合わないと判断された場合、時間稼ぎのために執り行われる神事、陰祭(かげまつり)の主体となる存在。
あくまで時間稼ぎであり、いずれは「本祭」である贄祭」を執り行う必要がある。
また、「楔」にはマレビト、つまり村の外から訪れた人間が選ばれる。



鬼隻(きせき)
紅贄祭を終えた「双子巫女」の片割れ、現世に残った姉(兄)のことを指す。
残酷な宿命を背負っており、心を病んでしまう者も多い。



(うつろ)
皆神村において、その名を口にしたり文字に残したりすることすら禁忌とされていた、隠された場所。
そのため文章では「×」と伏せ字にされている。

その正体は、黄泉の国(死者の世界)へと繋がる深く巨大な穴
前作の「黄泉の門」のように門の形をしているわけではないものの、「黄泉との境界」という意味では紛れもなく「黄泉の門」と呼べる存在である。
奥底には想像を絶するような黄泉の怨念が渦巻いているらしく、まともに覗き見ると目が潰れてしまうので単純に危険が危ない。
ぶっちゃけ、元ネタは諸星大二郎の『生命の木』。
本篇では自重されているが、宣伝ムービーでは忌人が漫画で“いんへるの”を指差すか如くに“虚”を指差すポーズが見られる。
繭「おらといっしょにぱらいそさいくだ!」


大償(おおつぐない)
皆神村が地図から消える原因となった災厄。
虚から噴き出した瘴気に覆われた皆神村は現世から隔絶され、明けることのない惨劇の夜に閉じ込められることとなった。


(あか)贄祭(にえさい)
黄泉との境界である「虚」を鎮めるために執り行われていた神事。



【怨霊】


◆迷い込んだ女
恋人を捜して村に迷い込んだ女性・美也子の成れの果て。
逢坂家で恋人の帰りを待っていたが、戻ってきた彼は「縄の男」に殺されて怨霊と化しており、そのまま恋人に扼殺され自らも怨霊と化すという凄惨な末路を迎えた。

澪が初めて射影機で戦うこととなる霊であり、行動パターンはシンプル。
時折こちらに背を向けてすすり泣くが、その間は顔が隠れるのでダメージが通らず、泣き終わると大きくワープする。


◆切り刻まれた男
村に迷い込んだ作業員・真澄の霊。
美也子を逢坂家の屋敷に残して村内の探索を続け、脱出の糸口を掴むことには成功したものの、黒澤家の大広間で「縄の男」に遭遇し、全身を切り刻まれてしまう。
近くの納戸に逃げ込んだがそこで力尽きてしまい、美也子に対する未練のためか逢坂家で待つ彼女の元へ向かったものの、怨霊と化していた真澄は最愛の人の首を絞め殺害してしまった。


◆双子を探す村人
◆鎌を持った村人
◆竿を持った村人
大抵ジェットストリームアタック三人一組で登場する、概ね名前通りの風体をした村人の霊。
「双子を探す村人」は松明を片手に持っている。
「八重」とか「何故逃げた」とか恨みがましい上にとっても五月蝿い。

立ち位置的には無限湧きする雑魚怨霊で、ダブルショットやトリプルショットも比較的簡単に狙える。
ただし、「竿を持った村人」は攻撃のリーチが長めで回避が難しく、モーションもフェイタルフレームのタイミングが掴みにくいものであるため注意が必要。


◆沈められた女
澪たちよりも以前に皆神村に迷い込み、怨霊によって黒澤家の屋敷の前に広がる池・朋鳴池の底へと引きずり込まれた女性の霊。
そのため、和服ではなく白いワンピースという近代的な服装をしている。
朋鳴池に架けられた「囁き橋」を渡る澪の前に浮遊霊として登場し、その姿を撮影すると怨霊として襲ってくるという一種の罠的存在。

水面を漂うように動き、時折水面下に潜り込み足元から襲ってくる。
左右への移動が制限される橋の上での戦闘だが、動きは比較的緩慢なので対策は容易な部類。
水面下に潜られた場合は後退りしながら足元にカメラを向けると、水面から手を伸ばしてこちらの足を掴もうとする瞬間のフェイタルフレームを捉えることができる。


◆顔を隠した宮司
紅贄祭の執行を補佐する宮司。
黒い狩衣姿で錫杖を片手に持ち、烏帽子から白い布を垂らして顔を隠している。

ワープしたり周囲をぐるぐると高速で旋回する行動パターンを持ち、射影機を構えたまま姿を捉え続けようとするよりは、立ち止まって攻撃をしようとした瞬間にカウンターを合わせる方が無難。
攻撃のために錫杖を振り翳す瞬間がフェイタルフレームだが、コンボを繋げて相手が壁にめり込んだ場合、遠距離攻撃の人魂が壁の中から飛んでくることがあるので注意が必要。


◆闇に囚われた男
◆闇に囚われた女
かつての皆神村の村人で、大量の瘴気によって自我が壊れてしまい、闇の中を彷徨うだけとなった男女の霊。


◆紅い着物の少女
押し入れに隠れたまま闇に囚われたちーちゃん千歳の霊。
兄・樹月が蔵に幽閉されてしまった理由を知ったことで、黒澤姉妹に対する強い怒りを抱えている。

周囲を暗闇にする特殊攻撃を持つのだが、弱視で暗闇が怖いため発動中は自分もおろおろと逃げ回っている。
かわいい。

なお、押し入れに隠れた彼女を捜しながらイベントを進める七ノ刻の展開は、本来「いつ、どこの押し入れから千歳が出てくるか分からない恐怖」を意図して制作されたもの。
しかし、スタッフによるテストプレイの段階で「千歳に逢いたくて片っ端から押し入れを開けていく澪(プレイヤー)」という展開が頻発し、「こんなはずでは……」となったとか。


◆飛び降りた女
「大償」から逃げ惑っていた際、誤って高所から転落した女性の霊。
高所からの墜落によって手足は折れ曲がり、立ち上がることもできずに床を這って動く。

大きくはだけた着物から胸の谷間が覗くなどセクシー要素も強めだが、エクソシスト状態仰向けのまま蜘蛛の如く床に這いつくばる姿はそれ以上に悍ましい。
文字通りに地面にへばり付いたように動くので、プレイヤー側としてもフェイタルフレームを狙おうと思ったら相当に接近させねばならず、見た目のみならず敵としても中々に厄介な存在だったりする。

登場時には、前作の「首が折れた女の霊」の如く悲鳴と共に上から降ってくる。
特に、初登場時はムービー付きで多くのプレイヤーが下に降りたくないと思ったことだろう。
零シリーズ21周年を記念したファミ通主催の『最恐の霊は誰? キャンペーン』では問答無用のインパクトと悍ましい造形からか第四位にランクインしている。


◆双子少女の人形
◆双子少女の霊
儀式によって心を病んだ「鬼隻」の少女と、彼女と共に行動する悪霊の宿った人形。

ダメージを与えることができるのは本体の茜の霊のみであり、人形はノックバックさせることはできるがダメージは通らない。
外見は瓜二つだが、声が高く攻撃時に首を傾けるのが薊の人形(躯)、声が低い方が茜の霊(本体)なので、戦闘時は声の低い方を優先して狙いたい。


◆からくり師
かつての桐生家当主・善達の霊。
その名の通りからくり人形の作成などを行うからくり師であり、村に存在するからくり仕掛けの数々を作成した。
人形が「躯」となったことに気付き処分しようとしたのだが、自らの存在を脅かされた人形は、「薊」を二度と失いたくないと願う茜に父親の殺害を唆し、彼は人形の処分を果たせないまま娘の手で殺害されてしまった。

攻撃の頻度は非常に低いのだが、その分大ダメージを与えられる機会も少なく、フィルムの消費が激しくなりがち。
操り人形を浮かせてけしかけてくる瞬間がフェイタルフレームなので、見逃さないようにしたいところ。


◆箱に隠れた女
「大償」の際、箱の中に逃げ込みそのまま闇に呑み込まれた老女の霊。
大抵は箱から這い出してきて戦闘開始となるが、たまに井戸から這い出してくる
前作から引き続きの鉄板ネタである。

背が曲がっている上に長い髪で顔が隠れているため射影機が反応せず、通常撮影がそもそも不可能という特殊な霊。
一定間隔で顔を上げると同時に発生するシャッターチャンスか、突進攻撃の際のフェイタルフレームを的確に撮影する必要がある。


◆首が折れた女
「大償」の際、悪夢のような惨劇から逃れるために渡り廊下から身を投げた女性の霊。
前作に登場した同名の怨霊とは異なり、首が真横に倒れているのが特徴。
『最恐の霊は誰? キャンペーン』では、オリジナルとも呼ぶべき前作の“首が折れた女”より一つ上の第七位にランクイン。
造形からか、初遭遇時の逃げ場のない状況というシチュエーションも加味されたものか。


◆鬼ごっこをする少年
◆鬼ごっこをする少女
「大償」の発生時、鬼ごっこで遊んでいた二人の少年と一人の少女。
ジェットストリームアタックふたたび。
惨劇の発生に気付く前に闇に呑み込まれ、今も遊び続けている。
三人で襲いかかってくるため人によってはラスボス以上の強さを誇る。
笑い声が非常に怖い浮遊霊としても度々登場。


◆忌人
紅贄祭の準備のために仕える人々で、虚に近付くことが許されている唯一の存在。
目を縫われて塞がれ、喉も潰された上で一生を地下で過ごす過酷な役目であり、村の禁を破って虚を覗いた者や罪人なども「忌人」とされることがある*4

目を塞がれているため、音を頼りに行動しており、シャッター音などを感知すると地味に攻撃範囲が広いグルグルパンチで殴り掛かってくる。


◆楔に殺された男
◆楔に殺された女
楔によって全身を切り刻まれた男女の霊。


◆黒澤家当主
黒澤家当主・良寛の霊。
儀式の際の正装なのか、僧侶が被る誌公帽子のような頭巾を被っている。
浮遊霊として登場した際は頭巾を脱いだ生前そのままの姿であったが、怨霊として登場する際には顔や手などがまるで骸骨のように変化しており、面影がない。
この変化は、「闇に呑み込まれたことで溶けてしまった」という設定であることが、『眞の蝶』の攻略本兼設定資料集である『くれなゐの杜』で明かされている。

「楔」を捧げることで一時的に「虚」を鎮め、娘たちの儀式を間に合わせるために慌ただしく準備していたが、そこで二人が脱走を図るという不測の事態に見舞われる。
慌てて村人総出で捜させたものの、発見できたのは山道から滑落し動けなくなっていた紗重だけであった。
「虚」の鳴動が激しくなっていることから、八重が見つかるのを待っている余裕はないと判断した良寛は、残された僅かな資料を頼りに紗重のみで儀式を決行する。
しかし、正式な手順を踏まずに捧げられた贄では「虚」を鎮めるどころかトドメを刺す結果となり、「虚」から噴き出した瘴気と共に黄泉還った紗重と真壁によって村は滅ぼされることとなる。

怨霊としては、人魂を飛ばす遠距離攻撃や「顔を隠した宮司」を二体召喚しつつ一定時間姿を眩ます特殊攻撃を持ち、実質三対一の戦いを強いられることとなる。
守りを固めつつこちらの体力を削ろうとしてくるような行動パターンであるため、体力を削られる前に決着できるよう本体に効率的にダメージを与えることが求められる。


◆縄の男
本作のラスボスその一であり、「陰祭」によって「楔」とされた民俗学者・真壁の成れの果て。
真っ白な髪を逆立て咆哮するその姿に、かつての理知的な民俗学者の面影は残っていない。

実は、立花兄弟の儀式の失敗や「虚」の鳴動などでピリピリした状況であった村に真壁たちが招き入れられたのは、「楔」となるマレビトを確保し、黒澤姉妹の儀式までの時間稼ぎを行いたいという思惑からであった。

真壁は自分たちが招き入れられたことに隠された意図があると察し、弟子である良蔵には「先に村から出ろ」と命じたものの、自身は学術的好奇心に勝てず居残ってしまい、結果として己の命を無駄にしてしまった。
……いや、ある意味本望ではあったのかも知れないが。
ただ、その結果として人の所業とは思えない程の苦痛を与えられることになるとは流石に思わなかったであろう。
しかし、その後に行われた誤った手順による儀式の失敗により、紗重と共に闇の中から黄泉還り、怨霊となって村を滅ぼした。

「楔」となった真壁は、紗重と同様に「大償」の象徴とも呼べる怨霊であり、白黒演出と一撃死を備える。
最後に対峙する際にはダメージが通るようになっているものの、ワープを繰り返しながら接近してくる上に体力が一定量ずつ回復し続ける仕様であるため、当たったら即死の攻撃に的確にカウンターを合わせ続ける必要がある。


◆血塗れの着物の女
本作のラスボスその二であり、最後の「双子巫女」の片割れ、紗重の霊。
真っ白だった着物は血に塗れ、その顔に浮かぶ笑みは絶望と狂気に満ちている。
首に残された縄の痕は、彼女がい蝶」となれなかったことを示す残酷な刻印でもある。
難易度「NORMAL」以下では彼女との戦闘は発生しないが、難易度「HARD」以上では「縄の男」を倒した後に「零ノ刻」に突入し、彼女と戦うこととなる。

山道から滑落して一人だけ村人たちによって村に連れ戻され、助けに来てくれると思った八重は戻って来なかった。
こうして八重に置いて行かれたのではという疑念を抱いた上、紗重が捕まってしまったことを知らない樹月は首を吊って命を絶っており、その遺体を発見してしまう。
その後、祭主でもある父・良寛が「もはや八重を待つ余裕はない」と判断したことで儀式は紗重のみで行われることとなり、宮司の手によって鳥居に掛けられた縄に首を吊らされる形で殺害され、彼女の遺体は「虚」に投じられた。
しかし正式な手順を踏まずに捧げられた贄に「虚」を鎮める効果はなく、彼女の絶望が引き金となって「大償」が起きることとなった。

澪を「八重」と呼び、愛憎込めて追ってくる。
前作の“霧絵”と共通した画面が白黒になる演出からも解るように、一撃死を備えた彼女との鬼ごっこは怖過ぎるの一言。
件の『最恐の霊は誰? キャンペーン』でも堂々の第三位にランクイン
造形そのものは大人しいのだが、宣伝ムービーでも効果的に使われた狂った哄笑と、上記の遭遇時の怖すぎるシチュエーションが大きな支持を集めた理由だろうか。

「零ノ刻」で戦うことになる彼女は、「一定時間高笑い」、「澪の近くにワープしてきて掴み掛かる行動を三回行う」、「棒立ちになって澪に呼び掛ける」という行動を順番に繰り返す仕様になっている。
「縄の男」と異なり即死効果のある攻撃は持っていないが、一撃の威力はラスボスに相応しい強さを誇る上、最後の棒立ち時に発生するシャッターチャンスかフェイタルフレームでしかダメージを与えることができない。
そのため、攻撃を避けつつひたすら機会を窺うという、「縄の男」戦とはまた違った立ち回りが求められる。
『眞の蝶』では、カメラ視点が澪の背中を追うビハインドカメラに変更されたことで掴み掛かってくる紗重の姿が見えにくくなっており、若干難易度が上昇した。



【エンディング】


  • い蝶
    • 一周目で辿り着くこととなる、「最高のバッドエンド」
    • 次回作以降の物語に続くのはこちらのエンディングであるため、一番最初のエンディングでありながらトゥルーエンドでもある。
    • 二周目以降、難易度「HARD」以上でクリアすると辿り着ける、「最悪のハッピーエンド」
  • マヨイガ
    • とある章で、選択肢次第で辿り着くことができる途中離脱エンド。
    • ゲーム上の位置付けとしてはクリア扱いにならないゲームオーバーだが、本作の発売と前後してサンケイスポーツ紙上で連載された小説版はこちらのエンディングをベースにしている。
  • 約束
    • Xbox移植版で追加された、「最高のハッピーエンド」
  • 凍蝶
    • 『眞の蝶』で追加されたエンディングその一。
    • 後述の「陰祭」と同様に、開発段階で「悲惨なエンディング」として考案された「双籠り(仮称)」を元にしている。
    • 元となったエンディング案のコンセプトからその内容は……お察しください。
  • 陰祭
    • 『眞の蝶』で追加されたエンディングその二。
    • 前述の「凍蝶」と同様に「双籠り」を元にしている。

EDテーマ曲は、天野月子が歌う『蝶』
つっこさん直々に書き下ろしたという歌詞は、本編とのシンクロ率も抜群。
本作のディレクターからは事前に詳細なプロットを提供されていた*5のだが、数年後にそのあらすじを読まずに作詞していたことが判明し、スタッフは「歌詞の親和性の高さは驚くべき偶然」と評している*6
情念たっぷりにこぼれるように叫ぶように響く歌声は、ラストシーンで放心状態のプレイヤーの精神にトドメを刺す。



【眞紅の蝶での変更点】


◆Wiiに合わせた仕様変更
『眞紅の蝶』は『月蝕の仮面』の次作として発売されており、Wiiリモコンを活用した操作体系などの基本的な部分は『月蝕の仮面』から引き継がれている。
まず第一に、カメラ視点は固定カメラを切り替える方式ではなく、澪の背中を追うビハインドカメラに変更されている。
霊を感知するフィラメントが前後左右の四方向を示す四つ葉のような「霊フィラメント」になっている点、敵怨霊に対するロックオンが存在する点も、『月蝕の仮面』から引き継がれている。
また、原作の『紅い蝶』では敵怨霊との距離に応じて攻撃力が上昇する「霊波計」が特徴であったが、『眞紅の蝶』では十二支の漢字を使用したメーターなど一部デザインを引き継ぎつつも、他のシリーズ作品と同様に「怨霊の姿をキャプチャーサークルに捉え続けることで霊力をチャージする」形式に変更された。


◆新たな強化レンズと強化装置
『眞紅の蝶』では強化レンズが「紅」「蒼」「碧」の三つのグループに分類され、レンズの数も大幅に増えている。
各グループから一つずつ、最大三個の強化レンズを射影機にセット可能。
強化レンズの使用時にはセットされている強化レンズ全てが一度に使用されるため、消費する霊子の数は三個のレンズの合算となる。
そのため、霊子の消費を抑えながら立ち回りたい場合は、あえてセットする強化レンズの数を減らすことも戦略の一つ。

強化装置は原作の『紅い蝶』における追加機能/装備機能で、原作や過去のシリーズ作品で実用性の高かった四種類に絞って実装されている。




◆もっとさわるシステム
『月蝕の仮面』で搭載されていた、ボタンを押し続けることでアイテムに手を伸ばし、触れることで入手するという「さわるシステム」の発展形。
『月蝕の仮面』では「まどろっこしい」という意見も存在したシステムだが、本作では物陰を覗き込んだり布をめくったりと、恐怖心を煽る演出として上手く活かされている。


◆ゴーストハンド
キーアイテムを除くアイテムに手を伸ばした際、ランダムで「ゴーストハンド」が出現し、手首を掴まれてダメージを受ける。
ゴーストハンドに掴まれる直前に触るのを止めれば回避できる。


◆二人協力プレイ
ただし、戦闘中に一緒にシャッターを切ると「SYNCHRO SHOT」としてダメージや霊力ポイントにボーナスが加算される程度。


◆闇帰り
倒された怨霊がパワーアップして復活するシステム。
『月蝕の仮面』に搭載されていた「咲く」システムと概ね同じ仕様。

雑魚はランダム、ボスは最終戦で必ず「闇帰り」し、体から紫色のオーラが立ち上り攻撃が激しくなる。
ただし、オーラのせいで敵の居場所が分かりやすい、積極的に攻撃するので攻撃のタイミングが取りやすいなどの利点もある。


◆お化け屋敷
ステージを歩いて抜けるミニゲーム。
リモコンの動きに対して「ビビリポイント」が蓄積され、クリア後にビビリポイントやステージ中の行動に応じて暮羽が評価してくれる。
ステージごとに、霊を撮影する、人形を取るなどのノルマがあるものもあり、ビビリポイントを規定以上溜める、後ろから追いかけてくる霊に捕まるなどでゲームオーバーになる。
ぶっちゃけ自分でやるより、素人さんにやらせてそのリアクションを楽しむ方が楽しいかも。

ステージは、本作に登場した「立花家」、「逢坂家」、そして『月蝕の仮面』に登場した「灰原病院」の三つ。
お化け屋敷モードのみに登場するゲストキャラクターとして、『月蝕の仮面』からは亞夜子、初代からは「目を隠された霊(目隠し鬼)」と「首が折れた女の霊(後ろに首が折れた女)」が登場しており、初代からのゲスト二人はしっかりリファインされている。


◆エンディングの追加・エンディング分岐条件の変更
追加されたエンディングは「凍蝶」「陰祭」の二つ。

『紅い蝶』では難易度がエンディングの分岐条件だったが、『眞紅の蝶』では下記の二つの条件で分岐するようになった。

①村の特定のスポットに繭と共に訪れると発生するイベントを起こしたか否か
ラスボスを倒した際に条件を満たせたか否か

このため、一周目から全てのエンディングを見ることが可能。
ちなみに事前情報なしの場合、い蝶」エンドか「約束」エンドに分岐しやすい。


◆エンディングテーマの変更
『紅い蝶』の『蝶』から新曲『くれなゐ』に変更された。
同じく天野月が歌う相変わらずの名曲だが、歌と映像のマッチが絶妙だった「紅い蝶」エンドでは「『蝶』が良かった」との声も聞かれる。
しかし、新エンドでは好評の声も多い。



追記・修正はお姉ちゃんを捕まえてからお願いします。

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最終更新:2025年10月10日 18:23

*1 『濡鴉ノ巫女』リマスター版公式サイトに掲載された「『零』シリーズ20年のあゆみ」でも、コンセプトカラーが「紅」であることに触れられている。

*2 次作である「刺青ノ聲」によれば1988年。

*3 『月蝕の仮面』のオリジナル版ではバグによって当該機能の片割れがロックされたままになっていたが、データとして用意されてはいた。

*4 虚はその名を文字に残したり口にすることすらも禁じられた存在であり、その奥底を覗き見た者は目が潰れてしまう(物理)ため。このことから、村では罪人への罰としても用いられていたのだろう。

*5 このため、当時発売されたファンブック『怨霊の刻』ではプロットを参考に作詞したと記載されている。

*6 「『零』シリーズ20年のあゆみ」より。