H&K G36

登録日: 2011/08/02 Tue 12:24:29
更新日:2025/07/29 Tue 17:44:31
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性能

全長:999mm
重量:3330g
使用弾:5.56mmNATO弾
装弾数:30+1
発射速度:750発/分
動作方式:ショートストロークガスピストン ターンロックボルト



概要

G36はドイツのH&K社が開発し、1996年よりドイツ連邦軍に配備されている突撃銃
G3の標準的な操作性とAUGの樹脂多用の構造とを掛け合わせ、そつなく堅実に仕上げられている。



前史

1970年代、冷戦の最前線であった西ドイツは最新のドクトリンを採用すべく急いでいた。
米英では「戦闘での負傷者数は口径に関係なく発射された弾の数とほぼ比例する」と結論付け、小口径で良いのでより多くの弾が撃てることを重視*1しており、西ドイツでもそういった結論に達した。
CAWSショットガンのような散弾のアプローチと、バースト射撃による威力向上のアプローチが試され、後者と前述の小口径弾を組み合わせ「小口径弾を超高速で連射しよう」という形が有効と結論付けられたのである。
このドクトリンは当時のG3主力小銃では実現が困難であるため、新規にH&K社主導でG11の研究、開発を進めることになった。
連射速度とそれでもジャムらない信頼性とを勘案した結果ケースレス弾を採用したりと独自路線を突き進んでいたが、1989年にベルリンの壁が崩壊。追ってソ連も崩壊し冷戦は終結を迎えてしまった。
独自路線により22年もの開発期間をかけ、ようやく実現したと思ったところでG11事態の必要性が薄れてしまい調達は中止。
H&K社は路頭に迷いかけて英BAE傘下に買収されるなどさんざんな目にあい、ドイツはドイツで旧式のG3のまま更新できずじまいだし東ドイツとの統合で軍備の更新が要る。
何とかして早期に5.56mmNATO弾に対応できる最新式の銃をと1993年に要求が出された。
汚名返上をしたいH&K社は冒険を控え、堅実な「HK50」を開発。東ドイツ時代のAKやAUGを抑え、G36として採用された。



特徴

操作系や動作機構などはかなり堅実なつくり。レシーバー上面に配置され左右から引けるコッキングハンドル、マグキャッチが下部レバーに統一、自動ホールドオープン機能を除けば概ねG3と変化はない。

しかし材質は繊維強化プラスチック(CFRP)を多用。射撃に直接関係しない部分には機関部であろうと積極的に用いられており、欧州の銃としては珍しくM16A2以降並みの軽量化を実現している*2。あだ名はPlastik-Peng-Peng(プラスチック・バンバン)、DesignerFlinte(デザイナー鉄砲)、LegoGewehr(レゴ小銃) など。

マガジンは残弾数を確認しやすくする為に半透明のプラスチック製。SG550などでも採用されていたマガジン同士を連結出来る突起がついている*3
また、マガジン挿入口をM16用弾倉と互換性があるものに交換でき、他国との共用にも支障がない。

標準で光学照準器が2器搭載されており、3倍スコープとドットサイトがキャリングハンドル後部に内蔵されている。不評の為現行型ではピカティニーレールに置き換えられた。



耐久性

H&K社では土に埋めても軽く土を払った程度で射撃可能である/10分程度なら水没しても射撃に支障なし と耐久性をアピールしている。

しかし2012年頃から耐熱性に関する問題が噴出し始めた(以下ドイツ語Wikipediaなどを参考に時系列純に記述する)。

2012年、アフガニスタン派遣のドイツ軍兵士から「銃身が加熱すると命中精度が下がる*4」との苦情が出され、メディアに報じられた。

2014年には原因追及のためG36の発注を凍結。警察局や研究所の調査が開始された。

この段階では特定のメーカー(MEN社)の弾薬においてジャケットの厚みにばらつきがあり、その影響で異常加熱が起きたものと報じられていて、実際弾については事実だった模様でMEN社は改善するとしていた。
しかし、同時期に樹脂材質が熱に耐えていないのでは(そしてバレル固定を樹脂製パーツで行っている*5のでは)との考えが出始める。

実際アッパーレシーバーは銃身と樹脂製アッパーレシーバーのラグを上から金属製パーツで覆うようになっているのが確認できる。バレルとそれ以外の間に金属が介在していない部分がかなりあるのだ。

2015年、「G36の精度は弾薬の種類に関係なく高温地域および高温状態での発射時に低下する」という旨のフォルカー・ヴィーカー監察総監からの書簡が公開された。
比較は2011年生産のH&K 416の軽機関銃試験型(G26)と比較されたとされており、H&K社は比較先がおかしいと非難している。

軍と国防総省はH&KにG36 17万挺を改修するよう求める訴訟を申し立て、H&K社はそれの否定として逆訴訟。2016年にH&K社の意見が認められた。
裁判所は契約状の瑕疵担保権は存在せず、アサルトライフルは契約で合意された品質から逸脱していないと判断した。
一応の決着がつき、リトアニア軍などへの供給などは再開された。

H&K社は2010年頃から一貫して「信頼を失墜させるための組織的な謀略だ*6、本銃に欠陥はない(意訳)」と主張しており、根本的な原因などが不明瞭なままとなっている。
ともあれ2017年から次期小銃の入札が始まり、2020年まで争った*7のちH&K HK416A8が選ばれた。



バリエーション

  • G36K
銃身長を480mmから318mmに短縮。Kはドイツ語で 短い(Kurz/クルツ) から。

  • G36C
Kよりもっと短い228mm。CompactのC。

  • MG36
二脚を付け、ドラムマガジンにも対応した軽機関銃版だが、G36に統一され廃盤。

  • SL-8
民間用のサムホールストックモデル。



採用実績

その他オーストリア、ノルウェー、フィンランド、ブラジル、ヨルダン、etc…
イラク派兵やPKO、対テロ作戦や凶悪犯逮捕作戦に実戦投入されている。ロサンゼルスSWAT等の一部部隊ではあるがMP5から突入装備として配備されていた。



フィクション

ガン=カタに目を奪われがちだが、最初から最後まで登場。

  • Phantom(アニメ)
最終話でツァーレンシュヴェスタンが使用。

マオが使用。


ミスティアが使用。

  • 西部警察(2004スペシャル)


G36Cが登場し、プレイヤーを含むSAS隊員が使用。特にギャズが愛用している。
何故かロシアのテロリストの中にも所持している者がチラホラ。

アサルトライフルカテゴリにG36C、ライトマシンガンカテゴリにMG36が登場。
どちらもリロードが早いという特徴がある。
PMCや義勇軍の兵士が使用している。

エアガンでは、東京マルイが(CとK)を販売しています。使い勝手はなかなか良く箱出しでも十分な強度はあり、インドアでもアウトドアでもオールOKな一品。また、社外パーツもそこそこ豊富に出回っており、フルサイズのG36やMG36等の再現も簡単に出来ます。





追記修正よろしくお願いします。







画像出典:「能美クドリャフカ3」
作者:たはるコウスケ氏
url:http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=24335348

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最終更新:2025年07月29日 17:44
添付ファイル

*1 SPIWやそのバックアップであったM16の考え方

*2 光学照準器込みなので実際はもっと軽い

*3 通称ジャングルスタイル。二つの弾倉をテープでぐるぐる巻いているアレ。交換が早くできポーチなしでも予備マガジンを持てる。しかし、予備の方はマガジンリップが露出するので給弾不良や異物混入の原因にもなる。

*4 2013年の連邦防衛技術調達局からのリーク曰く「90発の射撃後、100mで直径50cm集弾となった」とのこと。フルオートの連射としてはそこまで悪くはないが…

*5 本来振動や熱に強い部品でないと銃身が動いてしまう

*6 2020年代まで続いた軍縮の一環やPKO批判としてのスキャンダルと考えれば辻褄が…あうのか?

*7 ハーネルMK556が一度選ばれたが、公共調達法違反とH&K社を特許侵害している疑惑で取り下げられた