小説 仮面ライダー電王 東京ワールドタワーの魔犬

登録日:2013/09/30 Mon 22:20:47
更新日:2025/07/06 Sun 18:49:28
所要時間:約 5 分で読めます




『小説 仮面ライダー電王 東京ワールドタワーの魔犬』は、講談社キャラクター文庫から発売された小説。
タイトル通り『仮面ライダー電王』のノベライズ

著者はTVシリーズのプロデューサーを務めた白倉伸一郎
何故メインライターでなくプロデューサーが執筆したかというと、当のメインライターが「自分は脚本家なので小説は書けない」と脚本家の矜持から執筆を断ったため。
その結果、電王に極めて強い思い入れがある白倉Pの手で書かれることとなった。


【概要】

舞台は主に2013年で、そこから過去に飛んだり戻ったりする。
しかし基本設定が幾つか変更されており、TVシリーズの後日談というよりはパラレルワールドの話だと思われる。

主人公はTVシリーズと同じく良太郎であり、おなじみのレギュラー陣もほとんど登場する。
戦闘シーンは少なく、謎解き中心のストーリー進行。
契約者の物語と、良太郎や侑斗の物語が並行して進んでいくため、TVシリーズを彷彿とさせる作りになっている。


【主な設定変更】

◆モモタロス達味方イマジンが実体化していない。現実世界はおろか列車内でも実体化しない
常に良太郎や侑斗の頭の中にいて、日常生活をずっと共有している。TV最終回での別離も、揶揄ではなく実際に無かったようだ(というか不可能であろう)。
TVシリーズとは異なる戦いを経てきたのかもしれない。
宿主以外の者と喋りたい時は自由に表出して、宿主の口で喋る。ハナやオーナーと会話する時も同様。
良太郎の頭の中でモモタロスウラタロスが取っ組み合いすることはあるが、モモタロスとデネブがイマジン体で顔を合わせることは出来ない。
ただし、宿主を離れて他者に憑依することは可能なようである。
*1

特異点の設定が存在しない。特異点というワードは一回も出てこない。
良太郎もハナも、通常の過去改変の影響を普通に受けている。
逆に、ハナ誕生に関する特殊な改変の影響は、本来受ける筈だったものが無かったことになっているが、これも「特異点の誕生を改変すると特殊なことが起きる」というTVシリーズで見られた現象をスルーしていることになるため、やはり特異点の設定は無くなっていると言える

◆2013年でもハナや良太郎が子供化していない。
子供化に関する話題は一切なく、「ある時大人に戻った」などの記述も無い。(下記同様、超・電王はパラレル設定が多いので良太郎に関してはなんとも言えないが。)

◆超クライマックスフォームは存在するが、エピソードレッドは無かったことになっている。

◆2013年でもゼロノスがまだベガフォームに変身できる。
これは『超・電王シリーズ』などにも言えるが、本来ゼロノスはもうアルタイルとベガには変身出来ない筈である


【あらすじ】

2005年2月10日。
猫のイマジンを倒して2013年に帰ろうとした電王こと良太郎は、深刻な顔をしたオーナーに止められる。
もしかしたら自分達は何か大事なことを見過ごしているのではないかというのだ。
時の運行――時間の河の流れは、小石一つ投げ込むだけで大きく方向が変わってしまうことがある。
良太郎達は事の経緯を振り返ることにした。それは「未来を知る男」と呼ばれた老投資家と、彼が建設している日本一高い塔「東京ワールドタワー」、そして彼の周囲に出没する謎の「魔犬」にまつわる一連の事件であった。



【登場人物】

+レギュラーキャラクター

変わっていない者もいれば変わっている者もいる。

野上良太郎/仮面ライダー電王
主人公。
普段は日常生活を送りながら、時折電王となってイマジンを倒す日々を今も過ごしている。
モモタロス達とは出会ってからずっと身体を共有して暮らしてきたらしく、TV最終回で一度別離した様子は見られない。
心なしかTVシリーズよりヘタレ度が上がっている。だが頑固なところは健在で、強さや厳しさも垣間見せる。
今回も姉の愛理のことで頭を悩ませることになるが…。
ちなみに本作では、良太郎が職の無い青年であることに少しだけ触れられている。
相変わらず不運な事象に見舞われているようだ。そのせいで成人式に参加できなかったらしい。

桜井侑斗/仮面ライダーゼロノス
2号ライダー。
口数は少ないがしっかりしていてとても頼りになる男。
苦いコーヒーは今でも苦手なようだ。
デネブとの絡みは少なく、デネブが実体化していないためプロレスも出来ない。
今回も愛理のことで密かに心を曇らせることになる…。
生身でバイクに乗った。

ハナ
ヒロイン。
長年の付き合いの結果か、TVシリーズより良太郎への当たりがきつくなっている。モモタロス=良太郎の事を容赦なくぶっ叩く。
子供化はしておらず、ずっと大人の姿で飲酒も可能。
TVシリーズでの子供化は、あれでもちゃんとそうなる理屈があったのだが、全てスルーされている。
だからなのか、侑斗と愛理が結ばれる可能性も、ハナ誕生の可能性も、オーナーが全否定してしまっている

◆野上愛理
良太郎の姉。
本作でも裏の流れを司るキーキャラクターを務める。
ミルク・ディッパー閉店の是非を巡り、良太郎を悩ませる。
“あの人”への想いは一体…?

◆オーナー
デンライナーのオーナー。
相変わらずチャーハン棒倒しに専念している。
だが、言うことがどれもかなりシビア。
石丸氏のコミカルな演技が無いため余計に突き刺さる仕様になっている。
終盤では列車を守るオーナーらしい戦い方を見せてくれる。

◆ナオミ
デンライナーの乗務員。
相変わらずお気楽。
モモタロス達が列車内で遊んだりしないので、必然的に出番が少なくなっている。
幕間での会話では...。

◆尾崎正義&三浦イッセー
ミルク・ディッパーの常連客。
5年以上経っても全く変わっていない。
序盤に意外と活躍(?)する。


+味方イマジン

実体化していないので、おなじみのコントも良太郎の脳内イメージか口頭に終始している。
それぞれのなつき度やコミカル度はTVシリーズの中盤程度。
良太郎が酒を呑むと皆酔っ払う。

モモタロス
良太郎に憑いているイマジンその1。
本作は「犬」をメインに扱っているため、犬嫌いのモモタロスは非常に苦々しい思いを強いられることに。
犬がいると奥に引っ込んで大人しくしているので、全体的にTVシリーズより威勢が無い。
4体の中では一番良太郎と通じ合っている。

ウラタロス
良太郎に憑いているイマジンその2。
女好きの嘘つきなのは変わらず。
その頭の回転の速さと要領の良さで次々に情報を手に入れたり、分析したりしてくれるので、案外頼もしい。

キンタロス
良太郎に憑いているイマジンその3。
人情派だが今回も物凄い空回りをしでかす。

リュウタロス
良太郎に憑いているイマジンその4。
人を操る催眠術は健在だが、今回は人だけではなく動物も操っている。
暴走することこそ無いものの、基本的にフリーダム。最後の最後に大活躍した。
侑斗には塩対応とかではなく冷たい。*2

ジーク
忘れた頃にポッと出てくる習性は変わらないようである。

デネブ
侑斗に憑いているイマジン。
世話焼きで、侑斗の面倒を見たがるオカンのまま。
ただし実体化していないので、内緒で椎茸料理を作ったり、股間からキャンディ出したりは出来ない。
憑依すると声が甲高くなるらしい。


+ゲストキャラクター

◆青砥健介
「未来を知る男」と呼ばれるほど目利きが良い、とされている投資家。
東京スカイツリーを超える高層建築物「東京ワールドタワー」とその周辺街を作るため、ミルク・ディッパーを含む地元商店街に立ち退きを命じている。
年老いた小柄な男で、パッと見では頼りなさげだが、その目と心と言葉は非常に冷たい。
過去に何かあったらしく、動物を含む全ての生き物を信用していない。

◆津野崎
青砥の秘書。
ボディガードも務めているのか、とても体格が良い。
常に青砥の傍にいるが、こちらもなかなか読めない人物。

◆ジェイド
青砥がいつも抱いている小さな犬。
可愛がられているのかと思いきや、たまに邪険に扱われている。

◆北浦
商店会の副会長。
北浦酒店という酒屋を営んでいる。
東京ワールドタワー建設に伴う立ち退きに賛成しており、商店街の経営者達を説得して回っている。
一方で店の経営にはあまり熱が入っていない。

◆祐馬
北浦の孫。
何故か酒と飲酒者をとても嫌っている。
北浦酒店の店先には、彼の名に似た酒の樽が置かれているが…。

◆魔犬
青砥の周囲に度々出没する、謎の犬。
犬では有り得ない大きさの身体と、左右で色の違う目(オッドアイ)を持ち、体毛は炎や火花に包まれている。
瞬きする間に一瞬で消え失せてしまうなど、霊体じみた行動もする。
果たしてその正体とは…?


+ゲストイマジン

◆キャットイマジン
良太郎とモモタロスが本作の冒頭で倒したイマジン。
長靴を履いているので、恐らく「長靴をはいた猫」の猫がモチーフだと思われる。
語尾に「~ッス」とつけるなど、特徴的な喋り方をする。
高速ネコパンチを繰り出してくる。

◆七面鳥イマジン
契約したのは驚きの相手。
鶏ではない。狡猾で愉快犯的。


【余談】

著者の白倉伸一郎Pは、後に同じく電王の小説として『小説 仮面ライダー電王 デネブ勧進帳』を同じく講談社キャラクター文庫のレーベルで執筆しており、
こちらは本作よりも映像作品の設定に近い下地の上でオリジナルストーリーが展開されている。


追記・修正は時の運行を乱さずにお願いします。

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最終更新:2025年07月06日 18:49

*1 これはおそらく電王の企画当初にあった「フォーム毎に人格が変わるヒーロー」をモチーフにしていると思われる。で、コレが何故今知られるイマジンの憑依に変化したかというと多重人格という設定が放送コードに触れる為(多重人格、所謂『解離性同一障害』は精神障害のひとつ)で、肉体を持たない怪人が人に憑依することで性格、能力が変化する設定に変化した。それによって大成功を収めたのはいうまでもない。

*2 なお、テレビ版とかなり近い世界(あるいは同一)と思われる小説版電王の次回作こと『デネブ勧進帳』でもだいぶひどいことを言っている。